【イニストラード:真紅の契り】第3回 訪れる日の出【ストーリー】

2023年3月9日

はじめに

霊魂となったカティルダの助力により、拘禁されていたシガルダは解き放たれ、婚礼から招待者以外を締め出していた魔法も消失します。

式場の外で待ちぼうけを喰らっていた英雄たちの突入の時!

オリヴィアのもたらした永遠の夜に決着をつけるべく、彼らは式場を奔るのでした。

 

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【イニストラード:真紅の契り】背景ストーリーまとめ

 



目次

狼と吸血鬼

魔法の解けた式場にて。

チャンドラが門を燃やし。

ケイヤは苦しむ霊たちを解放し。

それらの手助けを得て、アーリンはオリヴィアの元へと駆けたのでした。

溢れる血の匂いに内なる狼が目覚めそうになるのを抑えながら、彼女はオリヴィアを追い詰めます。

しかし、宝玉の剣を振るう吸血鬼の攻撃に、アーリンは劣勢に立たされたのでした。

オリヴィアは刃の端を指でこすった。彼女はそれを綺麗に舐め、そして顔をしかめた。

「わかっていましたが、お前の血は不味いですね。そうでしょうとも。お前は何故自らを解き放たないのです? その姿では、勝つことなど決してできないでしょうに」

その通りだった。忌々しい事実、だがその通りだった。

 

オリヴィアの一言により、解放される獣の力。

鍵を取り戻す。終わらせる。

人間的な怒りか、動物的な怒りか、アーリンは衝動のままにオリヴィアへと迫りますが。

吸血鬼が背後にまわる一瞬。それに狼は気づくのが遅れたのでした。

何という皮肉だろう――吸血鬼の硬直した腕は、絶好の杭となる。

アーリンの喉から哀れなうめき声が漏れた。

彼女は倒れた。

 

一方、チャンドラはエーデリンと背中を守りつつ、なだれ来る吸血鬼たちを倒し続けていたのです。

ケイヤやテフェリーも戦線に加わる中、ただ一人戦いの場にいないアーリン。

チャンドラがアーリンを手助けすべく走り出そうとしたとき。

衛兵の槍を受け止めるが如く、巨躯の狼が乱入したのでした。

そして、背後に控えるように、数十体の狼たちも。

その狼は、エーデリンの見覚えのある傷を持つ男。

トヴォラーだった。

「手助けをしに来てくれたと?」 テフェリーが尋ねた。

その狼は頷いた。ケイヤはひとつの扉を指さした。

「アーリンさんはあっちに」

彼女が言い終わるや否やトヴォラーは駆け、シャンデリアの残骸を跳び越えてアーリンのもとへ向かっていった。




吸血鬼の因縁

ソリンはエドガーと相対しながら、祖父へと積年の思いを吐きます。

イニストラードのために捧げたものを。

そして、祖父の未来への熟慮の期待を。

しかし、エドガーは嫌悪と嘲りの目でソリンを睨みます。

「お前はまるで子供だな。ずっとそうだ」 エドガーは言い聞かせるように言った。

「心底恥ずかしい。数千年前、お前に贈り物を与えた。今、私は残る生涯を、お前がそれを浪費したと知りながら過ごさねばならない」

「そんなものは頼んでなど――」 ソリンはそう言いかけた。

「わからないかね、贈り物とはそういうものだ」

 

一度は、エドガーの力に圧倒されたソリン。

しかし彼は闇から舞い戻ると、今度はソリンが祖父を追い詰めます。

迷いのない彼の剣は、やがて祖父の首を捉えー。

それでも、何かがその命を奪う手を押しとどめていたのでした。

それは、死して久しい天使の見えざる手かもしれない。

ソリンは顔をしかめた。

「行け。私の前から消えろ」

 

遁走するエドガー。

ソリンは虚ろなる気持ちで、彼のあった場所を見つめていたのでした。

心配を瞳に宿し、話しかけてくる紅蓮術師。

そして、憐れみをたたえたまなざしで同情の意を述べるテフェリー。

ソリンは彼を睨みつけたかった。お前に何がわかる? お前などに判断されてたまるものか。それでも彼はわかっていた――テフェリーもまた、古い存在だ。テフェリーもまた、喪失を知っている。想像を超える物事を見てきた者なのだと。

(中略)

「感謝する」

彼に言えたのは、それだけだった。




蘇る日の出

アーリンが見るのは、森の夢。

かつての群れ仲間たちとともに、狩りに駆ける夢。

今や自分たちの元から去った仲間を思い出させる、喪失の夢。

すると、彼女は夢の中で自分を呼ぶ声に気づいたのでした。

「アーリン、狩りの時間だ」

(中略)

目を開けると、まずトヴォラーの姿が見えた――今もなお、前回の遭遇での傷を負いながら。柔らかな表情が力強い身体に安堵を分け与えた。

「あなたがここに?」

「助けを呼んだだろう」

その返答は狼の鼻面から粗く発せられた。

 

気づけば、彼女たちの周りにはかつての群れ仲間たちがいたのです。

トヴォラーの過去の行いは許さないと宣言しつつも、一時的な協力を結ぶアーリン。

狼たちがオリヴィアを追い詰めると、彼女は捨て台詞とともに月銀の鍵を手放し。

そして、狼たちに引き裂かれる前に、エドガーとともに逃走したのでした。

 

かくして、彼らは再びケッシグへと向かっていたのです。

新しく、月銀の鍵に繋がれた霊のカティルダとともに。

「処理すべき物事がある」と語ったソリンをステンシアに残しつつ。

曖昧な表現をしつつも、彼が死者や負傷者の世話をしていたことは、アーリンにも推測がついたのでした。

 

やがて彼女らは、セレスタスの中央へと戻ります。

魔女の詠唱、そして手に入れた鍵と錠が合わさった時。

閃光が溢れ…それらが徐々に消え去り…ついには念願の"その時"が訪れたのです。

やがて地へと沈みゆく月。

アーリンはすぐに、セレスタスの外縁で日の出を待つ仲間の元へと寄りました。

そしてその後を、今や傍から離れない彼女の群れ仲間も追ったのです。

全員が共に、この数か月で初めて訪れるイニストラードの日の出を見守った。他のあらゆる日の出と何ら変わりない――だがそこには美があった。日の出のひとつひとつが贈り物なのだ。それは予想を拒み、信念すら拒んでしまいかねない。あらゆる朝、黄金の球が地平線から昇る。ただそれだけで、世界に光をもたらしてくれる。

この数か月で、初めて訪れる日の出。他のあらゆる日の出と何ら変わりない。だからこそ、完璧な日の出だった。




エピローグ

アーリンはイニストラードに沸く祝宴の中、葉の影にエーデリンとチャンドラの姿を見とめます。

別れの時を惜しみ、抱擁をかわす二人の姿を。

そっとしておこうと離れた時、彼女に話しかけたのはケイヤでした。

「一緒に仕事できて楽しかったわ、アーリンさん」

「私もです。これが最後にならないことを願います」

「最後にはならないでしょうね。ここには無念の幽霊が沢山いるもの。きっと長くしないうちに私の力が必要になるわよ。ただ覚えておいて、私は無料じゃ働かないってことを」

「わかっていますよ」

アーリンも笑った。

 

揺らめいて消えるケイヤに代わり、彼女が話しかけたのはテフェリー。

彼の手にあるのは、月銀の鍵。

テフェリーはそれの特性が時間魔法に寄与すると笑ったのでした。

いずれ必ず返すよう念押しするアーリンに、テフェリーは突如声を落とします。

テフェリーはアーリンから少し離れたまま、言葉を探した。

「悪い知らせでも?」

「そうかもしれない。気にかけておいて欲しい物事がある。最近、厄介事が起こった。古い厄介事が」

 

曰く、深刻な脅威の影が多元宇宙にあると。

黒い油や、機械交じりの肉体を見たら知らせるようにと。

その脅威の名は”ファイレクシア”。

「イニストラードは耐える」。そう言ったアーリンに見せた彼の微笑みは。

普段のものとはまるで違う、曖昧なものになっていたのでした。

やがて静かに消え去るテフェリー。

 

アーリンが残されたのは、幼き頃から知るケッシグの森。

それでも森は彼女を呼んだ。常緑樹の木漏れ日が見えた。花弁のように、雪が森に舞い降りた。大気には冬の匂いが強く満ちていた。

今に、友人たちは離れていく。

けれど、アーリン・コードには自分の群れがいる。




今回はここまで

最近のストーリーでは珍しい、完全なるハッピーエンド!

思い返せば、ゼンディカーはニッサとジェイスの喧嘩別れだし、カルドハイムは悪役の逃げ切りだし、ストリクスヘイヴンではウィルが片足を失った…。

 

近年ロクな終わり方してねーな!!( ゚Д゚)

 

ただ、ソリンは祖父エドガーのことで心に傷を負い、アーリンはトヴォラーの罪を晴らすための責務を負う、といった幕引きでしょうか。

オリヴィアも死んだわけではないし、イニストラードの物語は続きそうですね。

そして、テフェリーからもたらされる「ファイレクシア」の情報!

来年のドミナリア再訪の流れのままに、来るか!?ファイレクシアとの全面対決!

物語も水面下で大きな物事が動いてそうです。次回の物語が楽しみでたまらんですな!

 

では!続きものだったイニストラード紹介もここまで。

次回は神河にて~!

 

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*出典*

メインストーリー第4話:結婚式をぶち壊せ

メインストーリー第5話:死が我らを分かつまで