【サンダー・ジャンクション】第1回 オーコと集う悪党たち【ストーリー】

2024年4月10日

はじめに

悪党参集!

「サンダー・ジャンクションの無法者」というタイトルなだけあって、悪党が大集合しひとつの作戦を実行する。

MTG界のスーサイドスクワット、ここにあり!

というわけで、ついにアイツが帰ってきます。

カードゲーム側でも環境を荒らしまわり様々なフォーマットを出禁になったアノ悪党と、そしてその息子がついに同じ次元に…!

ストーリー紹介をしてまいりましょう!




目次

サンダー・ジャンクションのケラン

サンダー・ジャンクションに来て数週間。

ケランは中継塔の立ち並ぶ砂漠にて、その建設作業を手伝っていたのでした。

 

現場に現われたのは、スターリング社と契約を受けたラル・ザレック。

彼の属するギルドの長二ヴ=ミゼットは、領界路の介する通信手段を開発しており。

サンダー・ジャンクションにおける未開発の中継塔は、その通信中枢になりえたのです。

 

その日の終わり、監督官はケランに指示をします。

明日からは、別業務につくことになる。

スターリング本社のあるプロスペリティまで赴くラルに同行するのだと。

ケランは、心臓が高鳴るのを感じました。

プロスペリティは、サンダー・ジャンクションで最も裕福な街。

つまりそこには、自分の父がいる可能性が高い。

噂を耳にしていた――オーコは悪名高いトリックスターで、信用ならないという評判だと。

けれどケランは決して噂を信じる性質ではなく、過去の失敗を理由に相手を遠ざけるよりもその人物の可能性を信じたかった。そうでなくとも、自分はオーコの息子であり、そこには何か意味がある。

あるに違いない。

父と対面する覚悟はできていた。




アニーを誘う者

アニー・フラッシュは、愛騎フォーチュン号とともに砂漠を訪れ、そして崩れ落ちた馬車の跡を発見したのでした。

事故ではなく、明らかな破壊行為。

そしてその犯人を、彼女は正確に推測できたのです。

アクルがここにいた。

 

彼女は金色の目を周囲に向け幻飾がないことを確かめると、破壊跡を探りはじめます。

やがて彼女は、札束の入った箱が放置されているのを見つけたのでした。

それはつまり、ここに来たアクルは札束よりも求めていたものがあったということ。

アニーはサドルブラシの街を訪れ、なじみの店へとその金を預けると、家路に着きます。

が、すぐに彼女は、階段の下に何者かがいることに気づいたのでした。

皺ひとつないスーツ、磨き上げられたブーツ、もはや嫌悪感を抱くような出で立ち。

その者は歯を見せて笑うと、「悪名高き無法者」であるアニーの名を呼んだのです。

その言葉に彼女はひるんだ。犯罪者とつるんでいた日々のことは考えたくなかった。甥にあんなことが起こってからは。

「そっちは何者?」

(中略)

アニーは冷たく言った。その左目がかすかな橙色にひらめき、幻飾の下にその男の本当の姿が見えた。彼女は眉間に皺を寄せた。

「こんな荒野にフェイが何の用?」

男の笑みが悪戯っぽく歪み、本来の姿が現れた――墨色の髪、尖った耳、銀をちりばめたような青白い顔。そして男は嘲るようなお辞儀をした。

「お目にかかれて嬉しく思いますよ、アニー・フラッシュさん。オーコといいます。その幻飾を見抜く力こそ、貴女を探していた理由でしてね」

彼はまるで絵画を鑑賞しているかのように見つめた。

「その目は天使が与えてくれたものだそうですね。本当に珍しい賜物です」

 

なんであろうと興味はない、と言い放つアニーへ、その男…オーコは告げます。

アクルへの復讐には興味がないか、と。

自分たちは、アクルから重要なものを盗むためにチームを作ったのだと。

意に反してこわばる身体。

「もしも気が変わったら」。そう言いつつ、酒場の名前の書かれたマッチ箱を渡すオーコ。

そして彼は、自分ですら特定できたアニーの場所を、地獄拍車団はもっと簡単に突き止め、そしてその際は何を街にもたらすかわからない、と言い添えたのでした。

「貴女は本当に熱心にこの町を守っている。心から愛しているのですよね」

アニーは肩をすくめた。

「それは脅迫?」

オーコは片手を胸に当てた。誠実さを示す仕草。

「違いますとも。明白な事実を指摘しているだけです」

そして手を離すと笑顔が戻った。

「気が変わったら、その酒場に会いに来てください。そうする価値はあると約束します」

 

その夜。

寝台で寝返りをうてど、遠くに聞こえる獣の声に集中せど、アニーの耳からオーコの声が消えることはなかったのでした。

勢いよく起き上がり、闇の中を進むと、何も刻まれていない墓石に辿り着いたアニー。

その場所をシャベルで掘り起こすと。

数か月前に埋めたそれは、そのままの状態で姿を現したのです。

木箱から取り出されたのは、サンダーライフル。

彼女はフォーチュンを呼びだすと、その愛騎は武骨な武器に黒い目を光らせたのでした。

「わかってるよ」

アニーは相棒の首を叩きながら言った。

「けどね、この町は返しきれないくらいのものを私たちにくれたんだ。皆が無事でいられるようにするのが私たちの義務だよ」

フォーチュンが頭を低く下げ、アニーは鞍にひらりと飛び乗った。彼女は手綱を取り、口蓋に舌を鳴らしてフォーチュンを広大な砂漠へと駆り立てた。




ケランの父

廃れた牧場町の酒場に入ったアニーが目にしたのは、バーカウンターの向こうに立つオーコと、様々な種族の無法者たち。

オーコは片端から紹介をしていきます。

爆発物専門のゴブリン、ブリーチェス。

その相方であるセイレーンのマルコム。

小さいスケルトンはチビボネ。

向かい合って座るのは、屍術師の姉弟ギサとゲラルフ。

ピアノの所にいるのは魔女のエリエット。

暗殺家でありオーコの副官であるヴラスカ。

中二階から幻のように現われるアショク、そして裏口から現われたデーモンのラクドス。

 

アニーの理解を越えるような悪党が集まる中、オーコは計画を説明します。

彼が狙うのは、幻と言われる宝物庫「マーグ・タラナウ」。

アクルはそれを我が物にするべく、宝物庫を取り囲む街…ターネイションを築いたのだと。

そして、アクルはその宝物庫の鍵を求めており、その鍵のひとつをスターリング社の創設者たるベルトラム・グレイウォーターが手に入れたのだと。

アニーは胸の前で腕を組んだ。

「どこから始めるんだい?」

「最初の目的地はスターリング本社です」

オーコが言った。

「チームの仲間が何人か、無関係な事件で投獄されています。ですが都合のいいことに、鍵もまたその場所ある」

 

かくして配達員としてスターリング社へ潜入したオーコ。

彼は途中で警備員へと姿を変えると、社の奥へと進みます。

また、アニーは、魅了の魔法を使いこなすエリエットとともに社の裏手から侵入すると、独房に囚われたケアヴェクと梅澤悟を救出したのでした。

オーコと合流し、梅澤の案内で彼は額縁に隠された金庫から、目的の鍵を入手したのです。

配達員の姿に戻り外を目指すオーコ。

しかしその道中、彼の目に留まったのは、サンダー・ジャンクションの有名人。

ラル・ザレック。

だがオーコの足を止めさせたのはラルではなく、戦いを渇望しているような逞しい武装の護衛でもなかった。

それは乱雑な黒髪と尖った耳をした少年だった。

互いの血管に流れるフェイの魔法……それは簡単に感じ取れた。少年の表情から察するに、彼もまたオーコの魔法に気付いたようだった。

オーコは硬直した。予期せぬフェイの存在に幻飾を維持できず、変身が解けた。瞬時に彼は顔も身体も何ひとつ偽りない、ただのオーコに戻っていた。

 

すぐに警戒を見せるラル。

オーコは即座に反応すると、戦闘態勢に入ったラルの護衛を蹴散らし、巨大な鷲となって飛び立ったのでした。

ラルからの雷撃から逃れ、チビボネとともに着地するオーコ。

しかし空からは、先ほどの少年が姿を現したのです。

突進するオーコに対し、手を挙げる少年。

「僕、戦うつもりはないんです!」

少年は早口で言った。

(中略)

「ずっと探してたんです。ここだけじゃなくて、他の次元でも」

「ほう?」オーコは眉をひそめた。

(中略)

少年の両手は震えていた。

「僕の父さんですよね」

オーコは目を見開いた。少年の言葉を正しく聞き取れたかどうか、確信が持てなかった。

「母さんはアリスっていいます。僕はケランです」

オーコはこれまでの生涯で多くの嘘をついてきた。そして同じほど多くの嘘を聞いてきた――だからこそ、この少年が真実を言っているとわかった。アリスのことはよく覚えている。そしてケラン……

 

すぐに背後から迫りくる足音。

少年に背を向けようとするも遅く、オーコは兵たちに囲まれます。

しかしオーコの予想に反して、「オーコのために」動くケラン。

失望した表情のラルは、彼らを攻撃するべく力を溜めようとしますが、その魔法はオーコの背後の人影に驚くあまり消え去ったのでした。

死んだと思っていたラヴニカの同胞…ヴラスカの姿を見て。

次々と仲間が合流し、撤退を促す中、オーコは居心地の悪そうなケランへと笑顔を浮かべます。

「一緒に来てくれるようだね」

「それは本当にいい考えなのかい?」

両目を毒々しい黄色に輝かせ、ヴラスカが口を挟んだ。

「私らはそいつのことなんて何も知らないのに」

「放っておいたら、この子がスターリング社に返答する羽目になる」

オーコは唇を歪め、再び控え目な笑みを浮かべた。

「それに聞こえなかったかい? この子は私の息子なんだ」

(中略)

彼らは尾根を越えて退散した。オーコは背後にケランの気配を感じた。

(中略)

この少年は逃亡を手助けしてくれた。それも自身の雇い主に逆らってまで。強制されても、騙されもいないというのにケランは忠誠を示してくれた。無償でそうしてくれた。

酒場へと戻りながら、オーコは結論づけた。息子の存在は、とても役に立つかもしれない。




今回はここまで

ケラン君、ついにオーコと対面!

悪党どもが大集合する中、なんと正義側のケラン君はオーコに導かれるままに悪党に手を貸すこととなってしまいました。

ケラン君の行く末やいかに…!?

そして、領界路が開いたのをいいことに、各次元の悪党どもが新旧入り混じって集まっているのも激アツですね!

まだストーリーにはこんな楽しませ方を持たせられるのか、と驚かされます。

サンダー・ジャンクションのお宝を巡り暗躍せんとするオーコ達はこの後どうなっていくのか。

次回もお楽しみに!

 

☆X(Twitter)で更新情報発信中!フォローお願いします!

【関連記事】

【エルドレインの森】第2回 ケランの冒険譚【ストーリー】

【エルドレインの王権】背景ストーリー紹介まとめ

 

*出典*

第1話 復讐の誘い

第2話 脱獄作戦