【コンスピラシー:王位争奪】第2回 マルチェッサ女王の戴冠【ストーリー】

はじめに

前回の記事で、フィオーラ次元におけるケイヤの「仕事」のエピソードをご紹介しました。

しかし!彼女はもっと大きな「仕事」を抱えていた!

今回はそのストーリーをご紹介するとともに、このフィオーラ次元における陰謀の一端をご紹介します。

 

目次

王の謀り

 

フィオーラ次元の高層都市パリアノ。王の私的な正餐室にて。

十人以上が座れるであろう長机に座していたのは、他ならぬこの高層都市を作り上げた親友同士の二人。

一人は、現国王のブレイゴ。

そしてもう一人は、探検家として生きるエルフ、セルヴァラ。

二人はかつてこの地での未来像を共有し、完璧なまでの協同で汚職や恐怖を排し、このパリアノを作り上げたのでした。

それから70年。

セルヴァラは都市設立の時と変わりなく。

逆に不治の病に冒されたブレイゴは、カストーディの行う治療を受け続けた結果、変わり果てた衰弱しきった姿で。

 

やがて、苦しみの混じった咳とともに、ブレイゴは決断を告げます。

もう治療は受けないと。

このままでは行き過ぎてしまうと。

そして、彼は友人たるセルヴァラに頼むのでした。

自然に死ぬことのできない自分を死に導けるのは、セルヴァラだけだと。

彼のその言葉を聞いてすぐに、彼女は彼のためにやるべき事を知った。

「ブレイゴ。あなたは善き王だった。立派な人間だった」

彼女は立ち上がり、彼のその白濁した青い瞳をじっと見つめて、ナイフを抜いた。

「あなたを許します」

彼女は刃を王の心臓へと突き刺した。ほとんど何の抵抗もなかった。乾燥穀物の袋にナイフを刺したようだった。老齢の身体は直ちに崩れはじめ、そして彼が塵と帰す時、その二言を呟いた。

「いや、いい」

 

すぐに王室を後にしたセルヴァラ。

入れ替わるように、部屋へと入ってくるカストーディたち。

彼らが今後のことを語らっているとき。

ふと部屋の気温が下がり、光が明滅し。

そして、「その存在」は部屋へと現われたのでした。

霧のような身体が人の形を成し、幻の鎧を身にまとった、王の姿が。

「お前達はこのような事などできぬ。何が起こったかを宣言するがよい。カストーディの偉大なる技は完成した。お前達の王は立ち上がった、その心はかつてよりも強く、肉体という檻から解き放たれて。今日この日を祝祭とする」

霊魂の声は深く確固たるものだった。

 

カストーディたちに走る狼狽。

しかし、すぐに彼らは跪くと、忠誠の声を上げたのでした。

「我が王、万歳!」

「ブレイゴ王、万歳!」

「永遠王ブレイゴ陛下、万歳!」




暗殺者への依頼

それからしばらく経って。

フィオーラ次元のケイヤは、とある貴族の依頼で屋敷へと「仕事」に向かおうとしていた夕方。

彼女は、宿屋の女主人から、一通の手紙を受け取ったのでした。

何も書かれていない、ただ印章のみが付された手紙。

それは、漆黒の黒薔薇。

心臓が高鳴った。時が来たのだ――とても大きな仕事の時が、昨年以来準備してきた仕事の。次の大きな支払の出所が何かはわかっていた、そして……きっと上手くやれるだろう。

彼女は銅貨を投げて女主人に感謝を告げ、弾む足取りで扉を出た。




幽霊王暗殺

アドリアナ・ヴァローレは、王ブレイゴに仕える護衛隊長でした。

彼女は王が幽霊となった時も同じように尽くしていましたが、より冷酷になった彼の変貌ぶりに、少なからず違和感を感じていたのです。

そんな彼女は、召使の女性たちの間で、聞きなれぬ言葉を聞きます。

「女王陛下」と。

 

胸を走る予感じみた痛み。目をそらす召使。そして目に入る新しい旗。棘のある薔薇の刺繍…。

大晩餐室に飛び込んだ彼女が見たのは、浅黒い肌の女性が、不可思議にも"幽霊の"ブレイゴ王にダガーを突き立ている光景。

アドリアナの攻撃すら透過した暗殺者の負わせた傷は、王の体を壊死させ、その傷が広がる数秒ののち、彼は静かにこの世から姿を消したのでした。

憎しみとともに、アドリアナは暗殺者へと突撃しますが、その一撃もまた不可思議な半透明の姿で透過されたのです。

暗殺者は微笑んだ。

「私は標的一人分の金しか受け取っていないの。あなたを殺す気はない」

アドリアナの怒りが荒い息を熱くした。

「堂々と戦いなさい、卑怯者!」

(中略)

「この空の鎧を守るためにずっと酷い努力をしてきたのでしょう」

暗殺者は悪賢い物憂げさとともに言った。

「その御方は、我らが王――」

「私が刺す前から、この男は空の鎧だった。それより前は圧政者だった」

暗殺者は続けた。

「圧政者が死ねば、自由を手にする機会が生まれる」

アドリアナは罪悪感の奇妙な波に打たれた。返すべき言葉が見つからなかった。

 

軽い会釈とともに、床へと消えてゆく暗殺者。

アドリアナはその消えゆく姿を、混乱のまま見ていることしかできなかったのでした。

守るべき、殺されるはずのないものが殺された。

いや、そもそも自分は、どんな目的で仕えていたのか。




マルチェッサ女王の戴冠

王暗殺の翌日。

カストーディはマルチェッサ一世女王を戴冠させたのでした。

そして彼女は同時に、自分たち護衛兵以外の城の人間はこの出来事を予期しており、準備してきたのだと知ります。

そしてとてつもない陰謀と大金が、この企ての裏にあることを悟ったのでした。

そして私は何も知らなかった。あんなに長く、不注意な王の肩越しに見つめていながら、何も知らなかった。

だがアドリアナはふと考えた。

もし知っていたとして、私は止めたのだろうか? ブレイゴは冷酷な王だった。二度目の死は当然の報いだ。

(中略)

かつて起こったことはこれからも起こりうる。王が戴冠し、殺害され、取って代わられる。女王が戴冠し、殺害され、取って代わられる。

(中略)

それは終わることなく続く機関。

私達全員が、この憎むべき機械の燃料となっている。

 

やがてこの機関に失望した人たちの不安は都市へと浸透します。

そしてアドリアナはこの人々へと耳を澄まし、何が必要なのかを聞き続けていたのでした。

答えは、ひとつの役割。

暗殺者から身を隠す君主ではなく、フィオーラの大局を理解する指導者。

彼女は、辺境の家の扉を叩きます。

かつての王殺しの汚名により投獄されたが、何らかの事情で脱獄を果たしたパリアノ創始の主。

セルヴァラの家を。

そのまなざしから、家の中へと導かれた護衛隊長は、彼女へと勇気をふり絞って提案したのでした。

「パリアノの君主制は安定していません。あれは終わることのない暴力と殺人の機構です」

アドリアナは言った。エルフの家の内密さに、その声は安定し確信があった。

セルヴァラは頷いた。重々しく断言する小さな動き。

「もし私達市民が自由を得て生きようと願うなら、その機構は止めねばなりません。貴女は人々によく尊敬されていて、私達の都市を一つにできる存在です」

(中略)

彼女は滅多にない笑みを唇に許し、これまでの人生でも最も重要な質問を尋ねた。

「パリアノ共和国の建国に力を貸して頂けますか?」




今回はここまで

「コンスピラシー:王位争奪」のストーリーを、非常に完結にまとめてみました!

ホントは、セルヴァラの投獄→脱獄もちゃんとストーリーとしてあるのですけどね…。長くなってしまうので…。

フィオーラ次元も、結構濃密なストーリーの上、なかなかに濃いキャラクターによって描かれている物語です。

しかも、ストーリー最後には再度の「王位争奪」がほのめかされて終わっています。

どう考えても続くやんこれ!いつ見られるの!!!

 

…ということで、いずれ明かされる(かもしれない)ストーリーが非常に気になる次元の一つですね…笑

ちなみに、上述のような権力争いに対し、ひたすらに情報集めをしつつ、高みの見物(?)を決め込んでいるのが、統率者戦で使えない伝説のアドバイザーで有名なレオヴォルドさんです。

あなたも次回以降のストーリーでは絡んできそうね…笑

 

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では、今回はこのあたりで!

次回もお楽しみに。

 

*出典*

裏切り

圧政者たち