【カルロフ邸殺人事件】第1回 最初の犠牲者【ストーリー】

2024年2月13日

はじめに

皆の衆、ミステリーのお時間ですよ。

というわけで、MTGストーリー初!?の、本格派!?ミステリーが登場だァ!

その名も「カルロフ邸殺人事件」

ファイレクシアの傷跡が残るラヴニカにて、パーティの行われたオルゾフ組のテイサ・カルロフの邸宅を舞台に、様々な事件が巻き起こります。

ラヴニカではおなじみの面々も集まりつつ、新規キャラクターも魅力的な方々が登場するストーリー!

本編10話構成で丁寧に描かれた物語の結末とは!

では、謎に包まれたミステリーの始まり始まり…。




目次

カルロフ邸の饗宴

その日のカルロフ邸。

空ではイゼット団から買い占めた花火が弾け、給仕たちは客人に料理をふるまう。

そしてそんなパーティの様子を、主催者にしてオルゾフ組の新たなリーダー、テイサ・カルロフはバルコニーから見下ろしていたのでした。

その横へ、音もなく現われるケイヤ。

自身の不在中に全てを掌握した者へ不平の視線を向けた彼女に、テイサは笑みで答えたのです。

「今夜は借りを返してもらいますよ、ケイヤさん。どれほど遠くへ旅をしてきたとしても、貴女はオルゾフなのだから、負債は返してもらいます。ラヴニカが貴女を必要としていた時に、貴女はここにいなかったでしょう」

「多元宇宙を守るのじゃなくてここにいたら、今ごろ私たちはここに立っていないわよ!」

ケイヤは鋭く言い返した。

「ラヴニカが嫌いになったから私はここにいなかった、みたいな言い方しないで。私は――」

ケイヤは口ごもった。言葉が喉に詰まり、彼女は足元に視線を落とした。

「――力一杯やってたのよ」

「ええ。そして、今夜は私のために力一杯を発揮するのです」

テイサが言った。

 

テイサの導きに従い、参加者が同心円に並ぶ中庭の中心へと至ったケイヤは、そこでラヴニカの様々な要人と邂逅したのでした。

セレズニア議事会のトルシミール。

ボロス軍のオレリア。

ラクドス教団のジュディス。

アゾリウス評議会のラヴィニアと、彼女と話す無所属のアルコン、エズリム。

 

テイサが挨拶を交わしていくのに付き添っていたケイヤでしたが、時が来ると彼女に導かれ、誰からも見えるバルコニーへと連れられたのです。

ファイレクシア撃退の英雄として、プレインズウォーカー・ケイヤを称えるテイサ。

やや控えめな拍手に迎えられ、彼女は群衆へと手を振りました。

続いて、テイサが「ラヴニカ魔法探偵社」を紹介すると、会場は先ほどよりも騒々しい拍手に包まれ、代表たるエズリムは群衆へと声を轟かせたのです。

ファイレクシアがもたらした混乱を鎮め、秩序を取り戻すために彼らが貢献してきたことを。

先日は第9地区に大混乱をもたらしたグルールの神アンズラグを、物証カプセルへと幽閉することに成功したことを。

その作戦の立役者として紹介された少年は、明らかに戸惑った姿で、聴衆の拍手に迎えられていたのでした。

彼の名は、ケラン。ケイヤも面識のない少年。

ひとしきりの紹介が終わり、パーティへ戻ろうとしたケイヤは、シミック連合のゼガーナとヴァニファールに詰め寄られるケランを見たのです。

「本当に、あなたは皆が話題にしているあのプロフト探偵ではないのね?」

ゼガーナが尋ねた。

「すみません、ちょっと誰のことだか」

ケランは言い、その両目が大きく左右に動いてケイヤをとらえた。

「けれど、今日の主役の英雄さんと話そうと思っていたんでした。失礼します」

彼は返答を待たずにふたりの間を抜け、ケイヤの隣に駆けてきた。ぼんやりとケイヤは彼を見つめた。

「私に何か話があるの?」

「ここから出たいんです。すみません、けど僕には手がかりを探している相手がいるんです。それに貴女の表情でわかります、僕と同じく今なんだか困っているって」

ケイヤは驚き、そして笑った。

「皆があなたを称えるわけだわ。私は立食のテーブルへ行こうと思っていたの。付き添ってくれる?」

ケランは明らかに安堵して彼女の腕をとり、ふたりは一階へと降りた。

 

立食パーティで目撃したのは、ゴブリンの首領クレンコに支払いを迫るテイサ。

そして、エズリムに対し神を捕らえられたことに激高するグルールの者と、その仲介に入らんとするボロス軍のオレリア。

ここしかないとばかりに、ケイヤは会場を抜け出しバルコニーへと逃げおおせたのでした。

パーティの騒がしさと打って変わり静けさが辺りを包む中、彼女の背後から、テイサが現われます。

いつになく神妙な面持ちで、話すべきことがあると告げるテイサ。

しかしその内容を聞こうとしたその瞬間。

カルロフ邸に響き渡った悲鳴は、その場へとケイヤを奔走させたのでした。

施錠された扉の前で立ち尽くす者たちの元へと、ケイヤとテイサ、そしてエズリムが現われます。

幽霊除けのせいでケイヤすら入れない密室の扉をエズリムの巨体が破ると。

突入した彼女は中の光景に息を呑んだのでした。

部屋の中央に積まれたコートの山の上に、シミック連合のゼガーナが巧妙に配置されていた。少し離れた場所には格闘の痕跡があったが、彼女の死体の周囲には何もなかった。その姿勢は人形のように上品だった。

(中略)

明らかに息をしていないという事実がなければ、落ち着いて自身の写真を撮ってもらっているように見えただろう。

「死んでいます」テイサのその言葉は不必要だったが、ケイヤは黙って頷いた。

目に見える傷や犯罪行為の兆候はなかったが、ふたりはオルゾフだ――目の前に死が現れたならわかる。




名探偵プロフト

シミック連合のヴァニファール到着とともに、テイサから告げられたゼガーナ殺害の事実。

ヴァニファールは衝撃によろめき、オレリアはすぐさま廊下を封鎖し、そしてアゾリウスの魔道士たちはパーティの参加者を一律に真理の円の尋問にかけはじめたのでした。

事件現場はアゾリウスの防御魔法が張られ、それゆえに探偵社のものは不満の表情を浮かべ。

オレリアはその部屋にて法の執行を高らかに宣言していたのです。

前代未聞の殺人事件にカルロフ邸が揺れる中。戸口から聞こえる咳払いがひとつ。

そこには空色のロングコートを羽織り、アゾリウス評議会員から険しい視線を浴びる壮年の男性が立っていたのでした。

「ここで何が起こったのか、幾つか私に見解があるかもしれない」

まるで一杯の茶を頼むかのように、その男性は穏やかに言った。

(中略)

「この人は招待状を持っておりませんでした」

真理の円を唱えていたアゾリウスの魔道士が、不満そうなきつい口調で言った。

「招待者一覧から気付くべきでした」

「で、その名前って?」

ケイヤは苛立ちつつあった。遊んでいる余裕はない。

「これは失礼、名乗っていなかったかな? 私はアルキスト・プロフト。『名探偵プロフト』と呼ぶ者もいるね。この分野ではちょっとした腕で知られているよ」

 

プロフトと名乗ったその男は、手早くゼガーナの遺体を調べ、そしてひとつの事実を指摘します。

ゼガーナの下に敷かれたコートに描かれたギルドの模様を。

そしてその模様の中で一つだけ、ディミーアだけは腕の位置に隠されていることを。

そのギルドは出席していないのだから当然だ、と言うケイヤへ、同じく不参加のゴルガリの印は登場していることで反論するプロフト。

ケイヤはかぶりを振った。

「こんなことをするのはとても大変よ。私がその現場を見なかったのが信じられないくらいに」

「そして君はディミーア家のひとりが出席しているのを見逃した」

ケイヤは驚き、反論しようとした。だがプロフトが見つめてくるその目に批判は全くないと気付くだけだった。

(中略)

「誰?」

プロフトは微笑んだ。

(中略)

「真理の円は招待者一覧に従って唱えられ、確認された」プロフトは唐突に言った。

「一覧に載っていない者が慎重に円を回避すれば、その者はたやすく尋問を逃れることができる。絶対的な真実のもとで尋問されたくない正当な理由のある人物であれば――例えばディミーアの密偵かつ知られた暗殺者であれば――門の封鎖が解除されるまで私たちの捜査の隙を突き続けるのは簡単だろう。正直に言って私が唯一理解できないのは、なぜ問題の人物が封鎖で閉じ込められるほど敷地内に長く留まっていたのかということだ。あの女性のような熟練者が」

 

一階への階段を下りながら、ケイヤへと語るプロフト。

容疑者はディミーアではなく、別のギルド員として紛れ込んでいることを、彼は示唆したのでした。

その新たな視線で群衆を見つめた時、ケイヤの目にも止まった違和感のある人物が一人。

セレズニアの色の美しいドレスを身にまといながらも、そのギルド印が施されていない女性が。

「エトラータさん」

プロフトはその女性へと一歩踏み出しながら言った。

「申し訳ありませんが、お話ししたいことがあります。今すぐ一緒に来て頂けますか」

その女性ははっとしたように辺りを見て、息の音を立てて唇を歪め、その印象的な吸血鬼の牙を露わにした。そして同時にその物腰が一変した――退屈した社交界の淑女から、追い詰められた捕食者へと。

 

プロフトを押しやり、駆けだすエトラータ。

追いかけるケイヤを振り切り、生垣の迷路の中へと彼女が逃げ込もうとするも。

その瞬間、二人の目の前で世界は反転し、パーティから路地へと姿を変え。

突然の世界の変化はエトラータを当惑させ、その隙をついたケイヤは彼女を捕縛できたのでした。

これまで見てきたものをなんでも再現できる魔法だ、と語る疲労したプロフトが現われると、エトラータはアゾリウスによって連行されていったのです。

 

そのひと騒動を機に、ほぼお開きとなるパーティ。

テイサはこの領地から人を出さないことも出来ましたが、それはしなかったのでした。

中庭にて思案にふけるケイヤ。

自分はこの領地どころか、この次元すらも旅立つことができる。

肩身の狭い思いをするくらいなら、ここから離れてしまえばいいのだ。

しかしそんなケイヤへ、現われたテイサは疲労をその顔に滲ませながらも、明確に感謝を伝えたのです。

ここに留まってくれていることへの謝辞を。

「バルコニーにいた時、私に伝えたいことがあるって言ってたわよね」

ケイヤはそう言った。

「教えてくれる? 今言える?」

テイサはため息をついた。

「この件が広まるまで、そしてその波紋に私たち全員が押し流されないことを見届けるまで、ラヴニカに滞在して頂けますか。お呼びします。お伝えしたいというのは本当です、ただ……今はその時ではありません」

ケイヤは慎重に相手を見つめた。嘘偽りない様子だった。テイサは生まれながらの政治家だが、政治家でも弱みを見せる時はある。

「三日」やがてケイヤは言った。

「三日経って連絡がなかったら、私から訪ねるから」

テイサは答えた。

「取引成立です」




今回はここまで

シミック連合の首席議長ゼガーナが、第一犠牲者となって幕を開けたカルロフ邸殺人事件。

そして、あっけなく容疑者が逮捕されてしまいました。

そのままストーリーは終わりを迎える…わけはなく!?

次なる犠牲者が、こののちのストーリーで生まれてしまうので…!?

それはそうとして、ケイヤとテイサは、なんだかんだ盟友感があり、良き関係のように思われます。

ケイヤの口約束に対し、「取引成立です」と答えるオルゾフの長…オシャレでええよね。

というわけで!名探偵もストーリーに登場する中、この事件はどのように動いていくのか!

次回もお楽しみに!

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*出典*

第1話 過去の幽霊

第2話 成れの果ての怪物

第3話 後悔の影