【コラム】機械兵団の進軍のストーリーが賛否両論な件

2023年4月21日

はじめに

新ファイレクシアを巡る物語、完!!

…となった「機械兵団の進軍」のストーリー。

執筆時の2023年4月現在において、メインストーリーが全て公開され、日本では翻訳の関係で遅れているサイドストーリーを残すのみとなりました。

が!

この機械兵団の進軍のストーリー、なかなか賛否両論だそうで!?

 

大団円だった!という意見もあれば、つまらない、消化不良といった声も…。

まぁ私こんなストーリーまとめのブログをやっているくらいですので、公開済みのストーリーはかなり読み込んだ方ですが。

正直「好評も悪評もどちらもわかるなぁ」という感想です。

でも、ストーリーって読んでない方も多いじゃないですか!

聞きかじっている情報だけでなんとなく把握している人もきっと多いじゃないですか!

…というわけで、今回の機械兵団の進軍のストーリーについて、何が良くて、何が批判されたのか。

なるべく中立的な目で紹介してみたいと思います。

もちろん、言うてもイチ個人の意見ですゆえ、この記事に対する意見もコメント欄やTwitterのリプ欄にどうぞ!




目次

良かった点

メインキャラの見せ場がアツかった

さすが新ファイレクシア最終章の物語!

メインとなったキャラクターの見せ場があり、それらがどれも激アツ展開!

まず真っ先に挙げられるのは、今回ボックス絵も飾っていたエルズペスの天使化でしょうか。

前回の「完全なる統一」にて、多元宇宙を守るために爆発寸前の酒杯を抱えてプレインズウォークしたエルズペス。

そんな彼女は、機械兵団のストーリーにて不思議な世界で目を醒ますことになります。

そこへ現われた見知らぬ女性から、介入する次元をひとつ選ぶように告げられます。

故郷のニューカペナ、愛する人のいるテーロスなどを見たのち、彼女は最終的に新ファイレクシアを選択し、奮闘する英雄たちのために戦うことを決意します。

そして、ギタクシアスにより処刑されかかる英雄たちを目の前にし、案内をしていた女性ーセラの祝福を受け、天使として覚醒をしたのでした。

ためらっている時間はない。多元宇宙は崩壊の瀬戸際にある。

これまでずっと、彼女は眠っていた。今こそ目覚める時、本来あるべき姿になる時。

ジン=ギタクシアスが爪を振り上げる。

エルズペスの剣がそれを受け止めた。

 

いーやカッコよ!!!

この4行だけでカッコよさが伝わるって何!?

また、これはエルズペス視点の話ですが。

新ファイレクシアにて絶望的な状況を見ていたカーン視点のシーンもあります。

まさにギタクシアスの爪が振り下ろされるその瞬間のシーン。

彼は目を閉じ――そして黄金の閃光が瞼を照らした。

(中略)

輝く鎧を身に纏う天使が、黄金色の剣を掲げてジン=ギタクシアスの攻撃を受け止めていた。彼女は怒れる神が槍を放つように高みから急降下して現れ、着地の際に金属の地面がクレーターと化した。その衝撃は、ジン=ギタクシアスの軍勢を何十体と奈落へと転げ落とした。聖歌隊の繊細な身体は、これほどの衝撃を受ける想定はされていない。それらも同じく暗闇へ落下し、カーンを捕縛していた鉱滓の塊は地面へ投げ出された。

それでも、カーンは見続けた。

「貴方にこの者を倒すことはできません」

天使が言った。

待て。彼ではない……? この声は……

それに気づいたのはカーンだけではなかった。腕を伸ばせば届くほどの近さで、エリシュ・ノーンは鋭い金切り声をあげた。

「お前は!?」

光が消えると、エルズペス・ティレルがクレーターの中心に立っていた。そしてそれは、カーンが一度も見たことがない彼女の姿だった。

輝く黄金の翼。その穏やかな顔に、過去の幾多の傷はもはや見られなかった。

 

神の槍のようにヒーロー着地し!

敵側の「お前は!?」のセリフののち!

消えゆく光の中心に立つ天使エルズペス!?

カッコよすぎィ!!!!

…という感じです。ここだけでも紹介が長くなってしまいましたね。

なんにせよ、エルズペスのシーンひとつとってもこれだけの激アツ展開が描かれていたわけです。

私も公開されたその日にストーリーを追っていましたが、数々の激アツ展開にニヨニヨしながら読んでしまいました。

他にも、レンがザルファーを発見し、テフェリーと再会するシーンなども素晴らしいです。

ここで紹介すると長くなりますので、詳しくは公式の記事か、ブログの記事を読んでみてくださいね!

【機械兵団の進軍】第4回 レンと八番【ストーリー】




心理描写が丁寧だった

メインキャラクターは見せ場を設けられていただけでなく、その心理描写も繊細に描かれました。

単純に英雄側の活躍!勝利!といったストーリーではなかったぶん、こういったところが丁寧に描かれていたのは、感情移入しやすく非常に良きものでしたね。

 

物語冒頭、新ファイレクシアでの英雄たちの敗北、そして何よりニッサの完成化の知らせを受け取ったチャンドラは、何が何でも新ファイレクシアを滅ぼさなくてはいけないと仲間へ主張します。

が、彼女以外の仲間たちはもう手遅れだと考え、各次元を守る方が優先されると返答したのでした。

そんな仲間から離れ、泣きながらも一人、新ファイレクシアへと向かうことを決意するチャンドラのシーン。

新ファイレクシアへ向かうのは正しいこと。

けれど彼女は恐れていた。

大丈夫。心を決めるために、少しだけ時間があればいい。

そして少しだけ、泣く時間が。これから悪の帝国へと突っ込んで行くのだ。

そしてそこを、かつて親友と呼んだ人たちが、一緒に打ち倒そうと頼りにした人たちが守っている。それは叶わなかった――そして今、自分ひとりで向かうのだ。

不意の冷気と葉ずれの音が、誰かが近くにいると告げた。鼻を鳴らし、チャンドラは眉をひそめた。

「どっか行きなさいよ」

「それは望むところではない。皆のところへ戻らねばならないだろうからな」

レンだった。少なくとも、自分を説得しにケイヤが来たのではない。それでも、チャンドラは何と言うべきかがわからなかった。

友がそこにいたことに、彼女は泣かないようこらえた――だがそれでも彼女は泣いた。

「手助けをさせて欲しいと思っている」

チャンドラは鼻の頭を拭った。

「あなたが?」

「そうとも。お前が皆と話すのを見ていたが、実に奇妙だった。お前の言葉は完璧に理にかなっていると思った。枝の一本が腐っているなら、それを切り落とさなければ木そのものを見定めることは不可能だ」

理解してくれる相手がいた、その安堵は途方もないものだった。

一瞬前までは、まるで怒りが自分自身から湯気となって上がっているようだった――けれど今は違った。まるでそれは地面へと溶けて消えたようだった。

 

美しい…!描写が美しい…!

まるで仲間から見放されたような寂寞感。

そして、そんな中でも唯一手を差し伸べてくれたレンがもたらす安堵。

「そうだよなぁ…つれぇよなぁ…!( ;∀;)」ってなります。

あとレンがイケメンすぎ。

 

もう一つ、心理描写が丁寧だった例として挙げられるのは、全ての戦いが終わった後のコスのシーン。

メリーラはコスたちに、自分の残りわずかな命、そしてカーンの灯を捧げることにより、ニッサとアジャニを元に戻せるのではないかと提案します。

そして、その行いにコスは葛藤を覚えるのでした。

アジャニは救済に値するのか、コスはそれについて議論する気はなかった。

ファイレクシアは触れたものを歪めてしまうのだ。けれど自らの行いに向き合う時間を持てるなら、アジャニはやり直せるかもしれない――その考えはコスの心に苦々しさを滲ませた。

ミラディン人の多くにその機会は与えられない。そして完成化された同胞の身体を取り戻すために戦った者はいなかった――死体があるだけだった。何故アジャニとニッサには人生をやり直す機会が与えられるのだろう、同胞の多くには与えられなかったというのに?

納得するのは難しい。ザルファー人はとても良くしてくれている、その事実の前ではなおさらだった。

 

「なるほど…!そうなるよな…!」と唸らされる描写です。

単純に「仲間が戻った!ハッピー!」とならないのが深いところですよね。

コスはあまりにも新ファイレクシアで過ごした時間が長く、同時に失ったものが大きいため、戦いの結末が安易なハッピーエンドでないことを理解しています。

そしてこの物語の後半にて、彼は新ファイレクシア時代の盟友であったメリーラを失い、悲嘆に暮れます。

上で説明した処置が終わり、カーンの無事が確認されたシーン。

コスはそうではなかった。彼はメリーラの隣にひざまずき、彼女の身体を膝に引き上げた。だが彼女もテフェリーと同じく、力を使い切った直後に倒れ込んでいた。コスの表情はありありと心配が浮かんでいたが、やがて悲しみに彼は目を閉じた。

「メリーラは死んだ」

ケイヤが彼の肩に手を置いた。

コスの頬を涙が伝った。だが彼はそれを隠そうとはせず、また自らの苦悩を隠そうともしなかった。コスを駆り立てる苦悩がどのようなものか、テフェリーははっきりとわかっていた。

メリーラの死というだけではない。全員のそれを同時に感じているのだ――すべての友、仲間……彼が苦楽を共にしてきたほぼ全員が、失われたのだ。

 

泣ける…( ;∀;)

現実の時間軸においても十数年ものあいだ表舞台に現われず、ずっと新ファイレクシアで戦ってきたコスだからこそ表現できる、非常に美しいシーン描写でした。

こういった名シーンが生まれたのは、今回の機械兵団のストーリーの非常に良いところだったと思います。




残念だった点

魅力的なキャラに対し和数が足りなかった

さて、ここからはさっきまでとは逆に、残念だった点のご紹介。

とはいえ残念だった点の8割はこれになるのではないでしょうか!?

先ほど、メインとなったキャラクターの見せ場がアツかった、とご説明しましたが。

逆に言うと、メインになれなかった人気キャラクターたちは、相当出番を削られてしまいました。

 

機械兵団の先行プレビューにて公開された、”二つ名を冠していない”法務官たち。

各地で悪行を働いていそうなその姿に

「これは各法務官たちを一体ずつ、何とかして倒す展開か!?」

「そして最後にはエリシュ・ノーンを倒すんだよな!」

「というかその場合、英雄側に肩入れしているウラブラスクはどうなるの!?」

と、色々と妄想が捗ったように思います。

では、現実を見てみましょう。

【シェオルドレッド】

物語冒頭、裏切り者の見せしめとして、アジャニに斬首される。

【ウラブラスク】

幕間の誰も知らぬ間にノーンに捕まっており、四肢切断。

【ヴォリンクレックス】

最終決戦に颯爽登場するも、日本語記事でわずか20行の間にザルファーのモブ兵によって斬首。

【ジン=ギタクシアス】

ノーンに反旗を翻し追い詰めるも、その内部分裂の隙をつかれ、これもザルファーのモブ兵によって討伐。

…ノーンをいったん後に語るとしても、まぁあまりにあっけなさすぎますね。

法務官のファンにとっては、「こんなあっけなく絶命させるなよ!」となってしまったことでしょう。

シェオルドレッドは団結のドミナリア、ヴォリンクレックスはカルドハイムで無敗のラスボスとして君臨していたぶん、あっさり死にすぎて拍子抜け感が否めませんし。

ウラブラスクは法務官たちが一枚岩でないことを示すキーマンであったがゆえに、これもまたあっという間にやられてしまったな…と思われても無理はありません。

 

さて。

このような話は、法務官だけには留まらないものです。

今回の悪役には、もう一組目玉の者たちがいました。

そうですね。

完成化プレインズウォーカーです。

これもまた、因縁ある仲間たちが多い分、完成化PW vs その完成化前を知るPWという、涙なしには語れない展開を期待していた方も多かったのではないでしょうか。

しかし実態はというと。

機械兵団の進軍メインストーリーの冒頭にて、彼らはノーンの命により、各ゆかりの次元を侵略することとなります。

つまり、しょっぱなからメインストリームより外れてしまったのですね。

もちろん、ゆかりの次元でゆかりの者たちを巻き込みながら戦う。これもまたひとつのドラマだったわけですが。

新ファイレクシアに乗り込んできた英雄たちを、かつての仲間だった完成化PWが迎え撃つ!

あわよくば、かつては交わらなかった二人が完成化したことで見たことない連携を!

…みたいな展開を期待していた方は、ガッカリされたのだろうなと推察します。

結局、メインストリームでの大きな見せ場は、完成化したニッサとその無二の友人チャンドラのものくらいになってしまいました。

ここは、上記に挙げたように心理描写も繊細で面白かったのですけどね。

サイドストーリーは次元につき1記事なので、「ストーリー1本分でせっかく完成化したPWが処理されてしまうのか…」と残念に思われるのも、無理なかろうことです。




ご都合と感じられる展開があった

さて、これまでの話は新ファイレクシアでの戦いのお話。

レンの犠牲により、次元の彼方へと放り出された新ファイレクシアと、カーンによって止めをさされたエリシュ・ノーン。

とはいえ、各次元へは取り返しのつかないレベルでの侵略が発生し。

多元宇宙のあらゆる次元は、そこからどうやって立ち直るのか、立ち直れるのか…!?

と、読者が頭を抱えながら読んでいたメインストーリーの最終話。

サヒーリは、目を醒まさないニッサとアジャニを前に、自分の推論を語ります。

ファイレクシアの油はノーンに服従させるための信号のようなものであり、新ファイレクシアが消滅した今、その油は不活性状態にあるのだと。

 

…ん?

 

そしてその仮説を裏付けるように、メリーラの命とカーンのPWの灯を犠牲にしつつではあるものの、ニッサとアジャニは元の姿に戻り、物語はハッピーエンドで幕を閉じることとなります。

 

…んんん?

 

とまぁ、これは「ご都合展開じゃん!」と言われても仕方ないかもしれません。

“完全なる統一”の物語で、「こんなんどうやって収集つけるんや…」というのが読者の感想としてあったぶん、「こんなアッサリ解決するんかーい!」となったことは容易に想像できます。

あと、完成化したものが戻ってしまうのも、人によっては拒否反応が出るかもしれませんね。

せっかく華々しい悪落ちと散り際チャンスだったのに…と。

なんと次のセットのボックス絵では、ニッサもしれっと戻ってきてますしね…ナンデヤネン。




ノーンがヒステリーだった

まぁこれは上二つに比べればオマケみたいなモンだと思っていますが。

今回のストーリーにおけるエリシュ・ノーンの顛末をあえて簡単に箇条書きにすると。

・「我こそファイレクシア」の精神を貫きすぎた結果、味方だったギタクシアスにすら裏切られる。

・エルズペスアレルギーがひどすぎて、彼女が天使化し復活したことに対し狂乱する。

・最終的にはその裏切りと狂乱により、結果的にノーンは自滅にも見える最期を迎える。

…というわけですね。

大天使エルズペスの降臨にヒステリーを起こしたノーンが手当たり次第に武器として彼女へ投げつけるシーンで、ついでのようにヴォリンクレックスの角が折られ投げつけられていたのは、ストーリー好きの中で大いに話題になりました。

とはいえ、ですね。

一応これは今までも伏線が張られていたことではあります。

ニューカペナの連載時に突然差し込まれたアショクvsノーンのストーリーにて、ノーンはアショクの悪夢によってこのエルズペスアレルギーを植え付けられてしまった、という伏線があったり。

完全なる統一の時点で、すでにシェオルドレッドには見限られ、裏切りを受けていたり。

ノーンはこの独裁性によって滅ぶのだろうなーということは仄めかされていたように思います。

灯争大戦のボーラスも、慢心によって身を滅ぼしたような側面があるため、このへんは納得はしやすいです。

が、あまりストーリーを読んでいない方々からすると、上のような情報だけをかじって、「新ファイレクシア最終章のラスボスがこんな顛末…」という印象を抱かれることはあったのではないかと推察します。

【ニューカペナの街角】第6回 エリシュ・ノーンの悪夢【ストーリー】




総評

総じて

・ストーリーをちゃんと読むと、面白い部分がたくさんある

・しかし、明確に残念な部分が散見された

・新ファイレクシア最終章ということで期待値が高かった分、落胆ポイントも鮮明に見えた

といったところかなと思います。

簡単にまとめると、今回の機械兵団のストーリーの評価はこんな感じかな、と思いますが。

なにより筆者が本記事で言いたいのは!

SNSの情報で聞きかじった情報だけで評価を下すのではなく、評価をするのであればちょっとでもストーリーを読もう!

…ということです。

 

批判的なものばかりを見て、勝手にマイナス評価を下してしまうのはもったいないですよ、と。

原文を読むのがツラければ、このサイトにまとめ記事が載ってますよ、と!

そういうわけですね。

前回の完全なる統一も含め、この新ファイレクシア最終章でストーリーに興味を持たれた方も多いかとは思いますので!

その意気で!ぜひ興味のあるストーリーも読んでみましょう!

とまぁ少し脱線をしましたが。

MTGストーリーはイイゾ!面白いゾ!!

 

ということで今回はここまで。

次回もお楽しみに!

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