【カルロフ邸殺人事件】第2回 第二の犠牲者【ストーリー】

2024年2月13日

はじめに

「死体が発見されました!」

とばかりに、ゼガーナの死によって始まったカルロフ邸殺人事件。

名探偵プロフトはケイヤと協力し、容疑者であるディミーアのエトラータを逮捕するにいたりました。

さてそんな中、ケイヤに「何か」を伝えようとしていたテイサ。

その内容を話すという、彼女との取り決めていた約束の3日が経とうとしていたのでした。




目次

テイサの手紙

テイサと約束した3日の間、邸宅への宿泊の誘いを断り街へ繰り出していたケイヤ。

巷では、カルロフ邸での殺人事件に関する有ること無いことが囁かれ。

そしてそういった噂の中には、ファイレクシアからの侵攻に対し、期待を裏切ったプレインズウォーカーという存在への不満も混じっていたのでした。

 

とてつもない居心地の悪さを感じる中、探偵社から派遣されたケランによって話しかけられたケイヤ。

少年曰く、探偵社のトップーエズリムが彼女に会いたがっていると。

そして、彼はケイヤに会いたかったがゆえ、この使いっ走りのような役目を引き受けたと語ったのです。

真意を図りかねるケイヤへ、ケランはおずおずと切り出しました。

ケイヤは、プレインズウォーカーなのだろうと。

「僕の父さんもそうなんです。もしかしたら……どこにいるのかご存知なんじゃないかと思いまして」

(中略)

「お父さん――あなたのお父さんは、何ていう人?」

お願い、私の知っている名前を言わせないで――彼女は無言でそう付け加えた。どうか、久遠の闇に少しでも慈悲が残っているなら、その人が死者でありませんように。

「オーコっていいます。フェイの仲間なんです」

それは聞いたことのない名前。

「ごめんなさい、知らないわ」

ケイヤの内には安堵が流れたが、一方のケランの目には失望が見えた。

「そう言ってくれたプレインズウォーカーはケイヤさんで二人目です。僕は――その、探偵社にはどんな情報もあるって思いました。もし父さんがこの次元に寄ったことがあるなら、何かわかるんじゃないかって思ったんです」

(中略)

「ならとにかく探し続けるのよ。いい? もしその人に会ったら、あなたが見つけようとしているって伝えるわ」

ケランは横目で、かすかな笑みを浮かべた。

「ありがとうございます。嬉しいです」

 

そして探偵社の本部へと辿り着いた二人。

ケイヤを残しエズリムの執務室へ至った彼女は、そのアルコンからひとつの提案をされたのでした。

この事件捜査の指揮を執ってほしい。

そのためなら、探偵社の人員は好きに使っていいと。

それは、この街でプレインズウォーカーに対して蔓延っている不満の払拭にも繋がるだろうと。

しかし、ケイヤはこれをすげなく断ります。

そして、扉を開けることすらせず、執務室を去ったのでした。

自室に戻りつつ、彼女が感じていたのは得も言われぬ嫌悪感。

かつては自分のものであった街から、まるで除け者にされたかのような感覚。

ここはもう自分の家ではない、そんな思いにこの次元を去ろうかとすら思ったその時。

彼女の下に現われた急使は手紙とともに、「テイサが今夜、ケイヤに会いたがっている」と告げたのです。

=

パーティーの時にはできなかった話をする時が来ました。こんなにも長くかかってしまい申し訳ありません。何かを書き留めるのは安全ではありません。どうか、すぐに来て下さい。独りでです。

ラヴニカに留まって下さって本当にありがとうございます。ラヴニカのためではなく、私のためにそうしてくれていたのだと理解しています。そして私は、貴女が思うよりもずっとそのことに感謝しています。

色々なことがありましたが、私は今もあなたの友です。

 

テイサ

=

 

彼女に似つかわしくない乱暴な走り書きに眉をひそめつつ、カルロフ邸へ急ぐケイヤ。

辿り着いたその屋敷は奇妙に静まり返り、彼女を出迎える者も、屋敷の主に到着を告げようとするものも見当たらなかったのでした。

この会合にあたり、テイサは人払いをしたに違いない。

そこまでして自分に伝えたかったこととは何だったのだろうか。

そんな想像を巡らせつつ、邸宅を進むケイヤ。

しかし、わずかに空いた居室の扉。

漂うのは、血の香り。

一瞬のひるみを打ち消すかのように部屋へ飛び込んだケイヤは、思わず発せられそうになった叫び声を口を押えて防いだのです。

テイサはそこにおり、訪問者を迎える机の傍らの床に四肢を投げ出していた。彼女はケイヤを待っていた――それだけは明白だった。両目はまだ開いたままで、空ろに天井を見つめていた。

(中略)

テイサは死んだ。床に崩れ落ちそうになるほど膝を震わせながら、ケイヤはよろめきつつ部屋に入り、友人の遺体へと向かった。

オルゾフにとって死は終わりを意味しない。だがテイサは、その死者たちとのあらゆる関わりがあってもなお、ケイヤが知る中で最も活気ある、生きた人物のひとりだった。

そして、それはもう終わった。

またひとり友が死んだ。またひとりが遺体となった。




プロフトとエトラータ

アゾリウスの独房にて。

エトラータとの会話をしながら、探偵プロフトは奇妙な謎に顔をしかめていたのでした。

ディミーアの精鋭でもあるエトラータが、なぜ公然とギルドマスターを殺害し、しかも現場からいつまでも逃走しなかったのか。

曰く、彼女は真理の円の中でも自らが殺していないと自白し、彼女自身に殺人の計画もなければその記憶もないのだ、と。

これはつまり、エトラータは凶器だったかもしれないが、殺人者ではなかった。

それゆえに…事件はまだ解決していないということ。

同時に、プロフトは彼女へと提案します。

汚名を晴らさせてほしい。協力してくれるなら、自分も危険に身をさらそうと。

エトラータは瞬きをし、眉をひそめた。

「できる限りは。約束する」

「ならば来てくれ、やるべきことがある」

(中略)

「君は熟練の暗殺者だ。誰にも見られずにここから出られるだろう」

ゆっくりと、彼女のしかめ面が笑顔になった。

「それで、私はどこへ行けばいいの?」

「私の家だ」プロフトはそう言い、住所を伝えた。「そこで会おう」

エトラータは頷き、独房から踏み出して影の中へと溶け込んだ。

プロフトは振り向き、苛立ちの表情を作った。

「ここに囚人がいると聞いていたんだが」

大股で扉へ向かいながら、彼は大声で言った。

「空の独房しかないぞ」

その後の混乱の中でふたりは退散した。

 

かくして午後の空気の中、通りを歩く探偵と逃亡者。

プロフトはエトラータへ、パーティ直前の足取りを思い出すべく同行したいと告げます。

やがて何の変哲もない扉の前に着いた二人。

背を向けるよう告げられたプロフトが、逃亡者を目の前にあっさりそれに従ったことに、エトラータははかり知れぬ誠意を感じたのでした。

手をかざし規則に従って石を押し込むと、巨大な扉は開かれ、入室後にエトラータが一歩引くと、イゼットの技術によって作られた侵入防止装置は鳴りをひそめたのです。

やがて辿り着いた、エトラータの自室にて。

武器、毒の小瓶、衣装棚が整えられて配置される中。

プロフトは寝台脇の卓にて眉をひそめたのでした。

そこに散っていたのは、黄灰色の粉末。

「こんなの見たこともないんだけど」

「そう思ってね。ナイフは持っているかね?」

(中略)

彼は直接触らないよう慎重に粉末を瓶の中へとできるだけかき集め、しっかりと蓋をした。

プロフトは柄の側を差し出しながら、ナイフをエトラータに返した。

「私ならいかなる目的であっても、そう、殺人のためであっても、実行する前にこれを徹底的に掃除するね。この卓も、寝具類もすべてだ。この物質が何なのかはまだ不明だが、少なくとも私の知っているものではない。現在の状況を鑑みるに、君が覚えていない時間とその間に取った行動に何らかの関係があるものだと考えられるが」

「でも、どうやってここまで侵入を?」

エトラータは尋ねた。彼女はナイフを柄から受け取り、部屋の反対側に向かって振り投げて壁に刺した。

「とても良い質問だ」

瓶を持ち上げてガラス越しに中身を観察しながら、彼は言った。

「解明に移るとしようか?」




ケイヤの捜査

まだ冷たくなっていないテイサの死体。

その身辺を調べているうちに、ケイヤは一枚の紙片を見つけます。

それはたしかにテイサの筆跡で書かれた、見覚えのある文字。

ただし、それが「ファイレクシアの文字である」ことを除いて…。

彼女が死者の霊魂へ呼びかけるも、テイサが答えることはなかったのでした。

急ぎ探偵社へと向かったケイヤはケランを捕まえると、エズリムに会わせるよう要請したのでした。

ケイヤは前に踏み出してエズリムと対峙した。

「気が変わったわ」彼女はそう言った。

「この件の調査の先頭に立たせて欲しいの」

沈黙が広がった。

「状況は変化していると気付いているな」

やがてエズリムが言った。

「ええ。この捜査員くんが気付かせてくれて」

「では、最初に君に要請した時よりも大幅に困難になるであろうことも理解できよう」

「そうね」

「アゾリウスには――」

「テイサ・カルロフが殺されたの」

エズリムは言葉を切り、衝撃のあまり沈黙した。

 

ケイヤは事の経緯と、自身の潔白さ、そしてこの事件に関わる覚悟を語ります。

テイサがファイレクシアとのつながりがありそうだということだけは伏せて。

エズリムはその決意を確かめつつこれを承諾し、まずはラクドスのジュディスにコンタクトを取るように指示したのでした。

そしてケランに対し、彼女に同行するようにとも。

出口に向かいながら、少年はケイヤへ笑顔を見せます。

「思うに、僕たちは今や相棒同士ってことですよね」

(中略)

「大きなことですよ。大きくて興味深い。僕が探偵社に入ったのは、興味深いことが好きだからです」

(中略)

ケランは唇の端を歪めて笑った。

「ケイヤさんとプロフト探偵のあの暗殺者逮捕は、僕がこの数週間で見た中でも一番面白い出来事でした。殺人は面白くなんてありません。痛ましくて悲しいことです。けれど混み合ったパーティーの中での追跡劇は興奮しました。僕がお役に立てて嬉しいです」

ケイヤは横目でケランを見ながら、その笑顔に自分の笑顔で答えたいという衝動と戦った。この青年には心を高揚させる何かがあった。昨年のあの恐ろしい出来事にも動じていない、汚されていない何かが。

 

静電気の膜で仕切られた大きな部屋へ辿り着いたケイヤは、そこが収容カプセルが並べられた場所だと気づきます。

この証拠品室は侵入ができないのだ、そうケランは語りました。

そして、収容カプセルに閉じ込められたグルールの神が、目下の心配事だ、とも。

と、ケイヤは建物の入り口にて幽霊の気配を感じます。

正面玄関まで駆けたケイヤは、見慣れた死者を目にしたのでした。

アグルス・コス。ボロス軍最高の捜査官と言われたひとり。

探偵社と協力せよと要請を受けたと話す彼は、ケイヤたちへの協力を約束したのです。

「よければ私たちはそろそろ行くわ」ケイヤが言った。

「戻ってきたらまた会えるわよね」

「今のところはここにいる予定だ」

ケイヤとケランは出口へと向かった。

「僕たちはどこへ行くんですか?」

階段を降りながらケランが尋ねた。

(中略)

「ジュディスと話すつもりなら、『地獄騒ぎ』に向かわないといけないわね。」

(中略)

「さあ若者くん、この事件を解決しましょう」




今回はここまで

何かをケイヤに伝えようとしていたテイサが殺害されてしまいました。

主人公に何かを伝えようと手紙をしたためた人のもとへ向かう途中、その人が殺害される…。

なんというミステリーの王道!

ちゃんと王道パターンに沿っているのがなんとも良きですね。

そしてラヴニカにはびこる謎を紐解くため、ケイヤはケランと、プロフトはエトラータとバディを組むことになります。

捜査の物語はまだまだ続きますよ!

次回もお楽しみに!

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