【アモンケット】第1回 ボーラスの拠点【ストーリー】
はじめに
カラデシュでの一件が解決し、ゲートウォッチは次なる敵をニコル・ボーラスへと定め、本拠地アモンケットへと渡ったのでした。
ボーラスとの戦いの経験のあるアジャニを置いて、かのドラゴンを打ち倒す好機は今しかないと信じて。
しかし、その巨龍がいかに恐ろしい存在であるか、彼らはまだ知らなかったのです…。
ストーリー紹介アモンケット編!始まります!
死の大地
アモンケットへの事前の情報を全く仕入れていなかった一行は、プレインズウォークした直後にその洗礼を受けたのでした。
チャンドラ曰く。
ちょっと、アモンケットは荒地と砂と太陽のでっかい落とし穴でしかないって誰が思ってた? 待って、あの太陽、二つあるんだけど。そういうこと、どうりでこんなに暑いわけ。確かに私は暑いのは割と平気。カラデシュでは時々凄く蒸し暑くなるし、レガーサの溶岩孔よりも暑い所なんてどこにもない。でも、んー他の皆はこの乾いた暑さに水っぽいライスプディングみたいに溶けてる。それは可哀想じゃん?
そこは、あたり一面に死がばらまかれた世界。
ニッサ曰く。
これまで、怪物に荒廃させられた世界を見てきた。ゼンディカーでは、あの不自然な、白亜の無が、エルドラージの巨人の足跡に残された。イニストラードでは、堕落した力線は荒々しくて毒をもって、繋がることも支配することも不可能だった。それでも、ここは違うように感じた。(中略)ここアモンケットでは、手の届く全てを死の影が支配している。まるで世界そのものが死の静寂を好んでいるように。
そんな世界は、自然の脅威だけではないのでした。
彼らが目にしたのは、砂漠から襲い来るゾンビ。
さながら地獄のような光景の中、急襲を受けた彼らは戦いに繰り出します。
即座に戦闘態勢に入ったリリアナ。
最初の一体はジェイスを攻撃した。そういう巡り合わせなんでしょうね。その時、私達は立ってチャンドラとニッサを待っていた。次の瞬間、腐った手が砂の中から弾けて、ジェイスの脚を掴んで引きずり込もうとした。ジェイスは腰まで埋まりながら、みっともない叫びを小さく上げた。厚切り肉の反射神経がどうにかジェイスを救った。その大男は振り返ってジェイスの腕を掴み、それ以上引き込まれないように支えた。私は屍術のエネルギーを放って、ジェイスを掴んでいた既に萎びた四肢を塵に変えた。
死は操れる。
そう高をくくっていたリリアナは、サンドワームの不意打ちを受け、その腹の中へと消えていきます。
全力の炎でそのワームを燃やしたチャンドラが見たのは、”変な鎖”を眼前に据え、紫色の光を纏うリリアナ。
そして、彼女が砂の上に伏したのを見たジェイスは思ったのでした。
これはまずい。真面目に、本当に、まずいことになった。
そんなジェイスの背後で、「死んだはずの」ワームが立ち上がります。
アンデッドとなった複数体のワームは、チャンドラとジェイスをその尾の一振りで薙ぎ払うと、一体が意識のないリリアナを、そしてもう一体は奮闘するニッサを襲ったのでした。
判断を迫られたのが、すぐに動くことのできたギデオン。
時が遅くなった。
恐怖が心臓を掴んだ。
不可能な選択に、私の目は泳いだ。
潰すような掌握からニッサを救うか。
忍び寄る死からリリアナを救うか。
どちらにせよ、友の片方は死ぬかもしれない。またも、私の思い上がりによって。
一秒にも満たない僅かな間だったが、私は立ち、動けずにいた。だが選択しないことは両者の死を選ぶに等しい、それはわかっていた。
直後、ギデオンの目の前を通ったのは、光の矢。
その一閃に貫かれたワームは、萎れて灰と化したのでした。
ギデオンが見たのは、長身で、黄金の頭飾りを冠した姿。
私が踏み出すと、彼女は私を見つめ返した。心臓が黄金の炎に満たされるのを感じ、その存在に洗い流されるように私の足取りはふらつき、息ができなかった。
そして、ごく僅かな頷きとともに、彼女は沈黙を破って地平線へと駆け出した。そびえ立つ角の方角をめがけ、そして遠くの巨大な砂丘の背後へと姿を消した。
友が意識なく散らばる中、私は膝をつき、この心もまた身体同様に参っていた。
アモンケットには神々がいる。
この世界で見てきた全て――容赦のない砂嵐、死者の群れ、巨大なサンドワーム、死からの蘇り――だがこれは最も予想だにしない、そして最も奇妙なことだった。
都市へ
神の救いにより一命をとりとめた一行は、さらに先へと歩を進めることを決めます。
向かったのは、半透明の障壁に覆われた都市と思われる場所。
ジェイスの呪文により、開かれる障壁。
“ボーラスの住処"へ侵入した彼らが見たのは、あまりにも意外な光景だったのでした
そこは、「普通の」都市。
人間とそれよりも多くのエイヴンの他に、雄羊頭、ジャッカル頭の、更にはコブラの頭部を持ち脚のない蛇人などなどが、個々に生活を営む街。
遭遇したエイヴンの思考を覗いたジェイスは、そこにボーラスの影がないと告げます。
混乱にさいなまれる一同。
彼らはテムメトという青年に導かれながら、街を歩くことになります。
別世界から来た彼らには、違和感があるところも多々ありました。
労働者としてミイラが労働に励んでいること。
労働を死者に任せた生者たちは、試練とやらに備え、誰もが訓練に勤しんでいること。
そして…神が街を歩んでいること。
ギデオンが目にしたのは、テーロスの神々よりも小さい、猫顔の神。
その神は、あろうことか街中で膝をつき、子どもたちの足に触れていたのでした。
彼女がギデオンを見た。反射的に、喜々と、彼はその視線を受け入れ、神は彼を、知った。片膝をついたまま、神は一本の指を伸ばしてギデオンの胸に触れた。
「其方は我がもとに、キテオン・イオラ」
そして貫く凝視に掴まれたまま、彼は光り輝く熱に魂を燃やされるように感じた。
(中略)
ギデオンは彼女を取り囲む人々と一斉に地面に伏せた――恐怖や義務ではなく、心にうねる愛がそうさせた。
ギデオンの頭はふらふらしていた。自分達はドラゴンを倒すためにやって来たというのに、そうではなく神に出会った。ジェイスとリリアナとアジャニは、ニコル・ボーラスを最凶の悪のように表現していた。そしてここはそのドラゴンの本拠地であり、創造したらしき世界。だが彼らが言うような邪悪な存在だとしたら、ボーラスが彼女を創造できるわけがない。
造反者の叫び
テムメトは彼らが休息するための二部屋を提供すると、去っていきます。
すぐにリリアナが片方の部屋に入り、無言で扉を閉め、ジェイスが抗議の声を上げる中、ギデオンはぼんやりした頭で都市の景観を眺めていたのでした。
二つの太陽、都市と外界を隔てる魔法の防壁ヘクマ、地平線の巨大な角のモニュメント。
「ギデオンってば」 部屋から出てきたチャンドラが彼の隣に立った。
笑顔を浮かべ、彼はチャンドラの肩に片手を置いた。二人は並んで都市の風景を眺めた。
彼女は少し離れ、歯を見せて笑いながら彼を見上げた。
「ね――さっき、何て呼ばれてたの?」
「キテオン。キテオン・イオラ」 その名は、自分でもしっくりこない感じがした。
「私の……名前だ。テーロスでの。ずっと昔のことだ」
「キテオン。ギデオン。そんなに違わないけど」
「ああ。バントの人々が聞き間違えたか、正しく発音できなかったかでそのままだ。今はギデオンが私の名だよ」
「ふーん。ま、私にとってあんたの名前はギデオンだから」
ギデオンは笑ってかぶりを振り、そして都市へと視線を戻した。
唐突に、ギデオン達は街路の叫び声に目を引かれます。
その源は、叫ぶ一人の女性と、それを追いかける兵士の一団。
「何もかもが嘘なのよ!」彼女は走りながら叫んでいた。
「試練とは欺瞞なの! 神々も、刻も、欺瞞なのよ! 自由になりなさい!」
(中略)
追跡者の一人がようやくその女性の足へと湾曲した杖を引っかけ、彼女は地面に転がった。瞬時に兵士らが彼女に群がり、両腕を確保して立ち上がらせた。
「わかる時が来るわ!」彼女は叫んだ。
「帰還はただ破壊と破滅しかもたらさない!」
そしてミノタウルスの手が彼女の口を塞ぎ、叫びは止まった。
いつの間にか現われたテムメトは、彼らに弁解します。
不幸な事故であったと。
彼女の一門は本日バントゥ神の試練に赴く筈だったが、蓋世の英雄に値しないと自ら証明した、と。
テムメトが去るのを見届けたギデオンは思いました。
整理すべきことが山ほどある、と。
チャンドラは寝台の一つへとうつぶせに飛びこんだ。
「休むのはいい考えね」 ニッサはそう言って別の寝台に腰かけた。
「そうだな。明日の朝に、色々と整理して始めよう」 ギデオンが答えた。
「仰せのままに、将軍閣下」
リリアナはそう言うと急ぎ扉から出て隣の部屋へ入っていった。
「で、何でリリアナが一人で一部屋を占拠してるのか、それが不満なのは俺だけか?」
ジェイスの言葉にギデオンは肩をすくめ、三番目の寝台を彼に譲ると部屋の隅に腰を下ろした。
今回はここまで
リリアナに一部屋ぶんどられ、拗ねるジェイス坊やカワユイ。
外の砂漠地帯に潜む脅威と、その存在にも関わらず平然と暮らす生者たち。
ミイラは労働に勤しみ、生者は訓練に勤しむ。
全ては神のもたらす試練のために。
そして、欺瞞を説く一人の女性は、兵団により鎮圧されていく…。
ざっっっとご紹介しましたが、出だしだけでもなんとも不気味なこの世界観が伝わりますでしょうか…!?
「アモンケット」のストーリーは、この違和感と不気味さの中でずっと進行していきます。
そして、続く「破滅の刻」にて、その不気味さの正体がわかり…!?となるわけですね。
ぜひこのゾワゾワする感覚を楽しんでいただきたいと思います。
では次回もお楽しみに!
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