【イクサラン:失われし洞窟】第6回 オルテカの戦い、その後【ストーリー】
はじめに
アクロゾズの復活と帝王マイコイドの侵略により、混乱に陥るオルテカ帝国。
幾人かの犠牲を出しつつ、ファートリはヴィトを討滅し、マルコムとブリーチェスは帝王マイコイドの討伐に成功しました。
しかし、コウモリの神アクロゾズは、未だにオルテカの太陽を奪わんと暗躍しています。
新イクサランのストーリー、最終回ですよ!
アマリアの葛藤
アクロゾズ神殿へと向かったアマリアとケラン。
千の月の軍勢は容赦なく道中の者たちを切り捨て、ケランたちもそれらを援護したのです。
ケランは二本の剣をハサミのように用いて相手の首を落とした。
アマリアは青ざめて目をそらした。
「驚きました、そんなに上手に戦えるなんて」彼女はそう呟いた。
「こいつらはそんなにしぶとくないですから。巨大なガチョウに絡まれたことはありますか?」
「ガチョウって何ですか?」
「こっちを恨んでる恐竜、みたいなものかな」
神殿にて彼らが見たのは、怒り狂った神が破壊したような柱や鎖の散らばる光景。
そこで仲間が捕らえた吸血鬼は、アマリアを裏切り者と罵り睨みつけたのです。
お前は神の呼び声を聞きながら逃げ出したのだ、と。
よろめきながら神殿を出たアマリアの身体は、どうしようもなく震えていたのでした。
誰かが腕に触れ、アマリアはびくりとした。顔を上げるとケランが、その黒い瞳で優しく見つめていた。
「ごめんなさい」アマリアは小声で言った。
「私の神は遠くにいるけれど優しい、ずっとそう信じて育ってきたのです。神に仕え、神の恩寵を伝えていく、その神聖なる使命を私たちに課したのだと。ですがわかりました、神は……神は……」
「予想と違った、ですか?」
アマリアは頷いた。
「嘘の人生を送ってきたような、そんな気分です」
「ここにいる他の誰よりも、僕はわかるかもしれません」
ケランは悲しげな笑みを向けた。
今まで生きてきた信念を打ち砕かれたアマリア。
そんな彼女に、ケランは少し考え込むと提案したのでした。
神様がしたことが嫌なら、別の神様を探すのはどうか、と。
あの賢いクイントならば、きっとそういったものも知っているはずだと。
他の次元。他の神々。他の吸血鬼も? それはアマリアの想像を超えるものと言ってよかった。けれど、自分が生きる世界の内側に別の世界がそっくり入っているなどという事実も予想したことはなかった。
(中略)
「ケランさんの神々について教えてくれますか?」
「僕がいた所にはいないかな」ケランは答えた。
「けどフェイについては教えてあげられますよ。神様の次に良いものだと思います」
ふたりは共に来た道を戻った。廃墟から離れ、輝きを増しつつある夜明けへと。
戦いを終えて
戦いから一週間ののち。
太陽は輝きを取り戻し、川守りは地底海へ、吸血鬼たちは地表へと戻っていたのでした。
やがて、太陽帝国から到着した第二の使節団は、アカル執政らへ迎えられると、それらによって行われる演説は小綺麗な言葉を紡いだのです。
そんな中、ファートリは機嫌の悪さを必死に隠していたのでした。
アクロゾズ討伐のために全面戦争をすべきだと言う、皇帝の代言者カパロクティ。
薄暮の軍団すべてに宣戦布告せず、小規模に戦うべきだと反論するファートリ。
やがて男が死したインティについて口にした瞬間。
卓に手を叩きつけながら、ファートリは立ち上がったのです。
「インティの名前を口にしないで頂けますか。例えあなたがあの太陽に呪われた吸血鬼より長生きしたとしても、あの子よりも素晴らしい存在になるなんて、夢に思うことすらできないでしょうから。そう、あなたも吸血鬼と同じです。血を渇望しています」
(中略)
退出する直前、彼女は立ち止まってカパロクティを睨みつけた。その暗い両目には敵意が燃え上がっていた。
宴の席を離れ、ファートリの後を追うウェイタ。
湖の近くでしばしの沈黙を共有した彼女は、ファートリへと語り始めます。
自分は昔、戦場詩人になりたかったのだと。
ファートリは弱々しく微笑みつつも、自分が大義を抱けない戦いには詩を詠むことはできないと告げたのでした。
やがてインティの剣をウェイタへと託すファートリ。
「これから、どうされるのですか?」
ウェイタはそう呼びかけた。
ファートリは微笑んだ。
「オテペクから手紙を受け取ったの。陛下の姉君から。言葉は注意深く選ばれていたけれど、熱が冷めないうちに次の戦争の火をつけたいと思っていないのは私ひとりではないのだと思うわ」
(中略)
ウェイタは震えた。
まもなく、内紛に突入するのは薄暮の軍団だけではなくなるのかもしれない。
アマリアの旅立ち
ケランが案内した島にて。
アマリアは、宙に浮かぶ奇妙な光の渦を見つめていたのでした。
これが領界路。ケランは彼女に伝えます。
どこへ通じているかもわからぬ、世界の架け橋。
アマリアがケランを見ると、彼は見つめ返していた。
「どうしました?」彼女は尋ねた。
「本当に、僕と一緒に行くんですか?」彼は小声で尋ね返した。
「ここはアマリアさんの世界です。家族も、友達もいて、ずっと大切にしてきた色々なものも。本当にそれを置いていくんですか?」
アマリアが目を背けていた問題。
ケランに保護はもはや必要ない。しかし彼女は新たな探検のために、新たなことを学ぶために家を出たのでした。
そして、アクロゾズがもたらすかもしれない同胞による争いを見たくないという気持ちも。
「覚悟はできています」
アマリアはきっぱりと言った。自身の意志の固さが本物であると感じられ、嬉しく思えた。
「ケランさんが良ければ、いつでも」
ケランは彼女の手をとった。心地良いほど温かな手。親指から伝わってくる脈拍が、かすかに速まったと彼女は感じた。
「念のために言いますけれど。どこに繋がっているかはわかりませんよ。ここよりもいい場所とは限りませんからね」
「ここよりも悪い場所、例えば?」
ケランは肩をすくめ、えくぼの笑みを彼女に向けた。
「巨大なガチョウがいるとか?」
アマリアは声をあげて笑った。この数週間で一番心が軽く思えた。それ以上の言葉はなかった。ふたりは領界路に飛び込み、そしてすべてが変化した。
マイコイドの雌伏
ひとつの心は全、全の心はひとつ。
吸血鬼が胞子嚢を剣で突く。
胞子の雲はその吸血鬼を襲い。
まもなくそれは木々の背後から見る者になる。
ひとつの新たな身体が船の――船というのは便利なものだ――甲板に立ち、次第に近づく孤高街を見つめていた。この個体は暗いレンズに覆われた両目以外、元の形状をほぼ残している。隠れ、もくろみ、広まるのが良い。
十分な時間をかけたなら、すべてが屈服するだろう。すべてが加わるだろう。支配されるだろう。新たな太陽の光が、既に地表に広まりつつあるカビと傘を温めていた。
すべての茎が燃やされようとも、さらなる数が伸びる。発展は必然。ただ時と忍耐が、そして更なる身体があればよい。
アクロゾズの雌伏
その船倉に漂うは、絶望。
生贄は虚ろな目でその時を待ち。
信者たちはその美酒に酔いつつ、アクロゾズへ捧げる喜びに震えていたのでした。
船はまもなく、トレゾンへ到着する。
神は一人の吸血鬼を渇望していたのです。
反逆者、ヴォーナ・デ・イエード。
ひとたびトレゾンを手にしたならチミルのもとへ戻り、今度こそ消し去るのだ。
アクロゾズが不吉な一つ目を開くと船は軋み、揺れ、船倉は赤い光に包まれた。生贄たちは悲鳴をあげ、恐怖にうめき、太鼓が叩き鳴らされるように血管がその身体に脈打った。それが止んだ時には惜しいと思うほどに、アクロゾズにとっては実に甘美な音楽だった。
今回はここまで
ハイ、イクサラン名物不穏エンディングです。
マイコイドも死に絶えていなければ、アクロゾズも討伐されませんでした。
何も解決していない中、トレゾン攻略に踏み出そうとする太陽帝国に、ファートリは反旗を翻しそうだし…
どうなってしまうのー!イクサラーーーン!!
そんな中、ケラン君は再び次の次元へ向かいます。
しかも、今回お世話になったアマリアと一緒に!
彼はこの後も毎ストーリー出てくることになるのでしょうかね?
領界路編の主人公となって、すべてのストーリーに出てきそうな感じもありますが果たして…?
色んな事が伏線として残っていそうですが、とりあえずイクサランのストーリーはここまで!
また次回、お会いしましょーう!
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