【エルドレインの森】第2回 ケランの冒険譚【ストーリー】
はじめに
前回、エルドレインの森のストーリー紹介第一弾として、ウィルとローアンの物語をご紹介しました。
「なんで…ウィルとローアンは和解してはすぐ決別してしまうん…」
という悲しい気持ちになった前回。
ローアンが闇堕ちしてしまった幕切れでしたが、今回は全く別視点のお話…。
エルドレインの森の、”真の主人公”のご登場です!
↓ストーリーのまとめはこちら↓
辺境のケラン
ウィルやローアンのいる王国の外れ。
ファイレクシアすらその侵略の手を伸ばさなかった小さな村にて。
ケランは帰路についていたのでした。
「お前はよその子、混ざり者」。その言葉とともにつけられた傷を顔や身体に残して。
彼を迎えた母と義父は、悲しみの表情とともに何が起こったかを問います。
ケランはうつむきつつも、少しずつそれに答えたのでした。
農地の子に傷つけられたこと。きっと彼らは自分を恐れていること。
「聞かれたんだ。僕の本当の父さんは噂の通り……」
(中略)
「それが本当だったら、そうだとしたら僕は何者なの? 僕は森にいるべきじゃないの?」
「森はあなたが考えているようなものではないのよ」母は言った。
「あなたには想像もつかない危険があるの、私の可愛いケラン。もっと大きくなったら、一緒に向き合えるわ。けれど今は……」
(中略)
「あなたはここにいるべきなのよ。私たちと一緒に、誰が何と言おうとね」
だが母がそう言ったのも、こうして抱擁し合うのも初めてではなかった。
そしてケランは家族を心から愛していたが、ひとたび森に目を向けたなら……
森に目を向けたなら、ケランが感じるのは切望だけだった。
新月の日には、古い柳の下で母に物語を語ってもらうのが、ケランのお決まりだったのです。
その日も、牧羊犬のヘクスとともに、丘へと駆けあがっていったケラン。
そこからは村が一望でき、遠くにアーデンベイル城が見え…。
そしてその時彼が目にしたのは、半透明に揺らめく”入り口”だったのでした。
それは母の物語にもあった、高位のフェアリーと話ができるという、招待。
頭を駆け巡る「お前はよその子」という言葉。
やがて、本当の父が自分の存在に気づいてくれたのではないかという希望が胸にあふれたとき。
彼は犬の吼える声にも構わず、その世界へ一歩踏み出していたのです。
目に映るのは、銀で出来た草と、美しい階段、そしてその頂点に鎮座する玉座。
そこには星々のように美しい人物が座し、ケランを見つめていたのでした。
『答えよ、勇敢なる英雄よ……其方は自らの心に忠実であるか?』
(中略)
『其方は真に父の子であるか? それほどの傷を負いながら報復を行わぬとは?』
ケランの心臓が痛いほどにひとつ高鳴った。
「つまりその、本当なんですか? 僕は半分フェイなんですか? ぼ――僕の父さんを知ってるんですか? 待って、貴方は……?」
(中略)
ああ、この人はフェアリーの王なのだ。他に誰がいるというのだろう? ケランの膝が震えた。あらゆる騎士がそうするように、彼はひざまずこうとした。自分が愚か者のように感じた。
「へ……陛下」
『タリオンである』
タリオンは、ケランへと取引を持ちかけます。
アガサ、ヒルダ、エリエットの三人の魔女が世界を眠りに落としている。
この三人を打倒し呪いを打ち払えば、宝物庫から賜物を与えようと。
戦ったことも、探求をしたこともないケランにとっては、両手に汗がにじむような提案。
しかし、彼は決意します。
本当の父についてもっと知りたい。もっと近づきたい。銀の草の中に、ありえないほど美しい場所に住むその人に。母は一度だけ垣間見て立ち去った――だがケランはもっと見たいと思った。
失敗するならそこまでだ。けれどやり遂げるなら、ついに真実がわかるのだろう。
「やります。行きます」
魔女の家
エッジウォールへと辿り着いたケランは、待ちゆく人に魔女の噂を聞いて回ります。
彼はその街の中で、初めて「忌まわしき眠り」に囚われた騎士を見たのでした。
目を閉じたまま揺らめくように歩くその人を助けようと一歩を踏み出したとき。
赤色の外套を纏った少女が、その手を引いたのでした。
眠りの正体が分からない以上危険な真似はすべきではない。
そして、魔女について聞いて回る行為そのものが、魔女の注意を引いている。
ルビーと名乗った少女はそう警告し、ケランの探求の話を聞くと、自分の兄であるピーターが詳しいと話したのです。
しかし、その兄の姿はしばらく見ていないとも。
必要なことだけを伝え、兄によろしくとその場を去ろうとするルビー。
「待ってよ! 僕と一緒に来てくれるなら、自分で伝えられるだろ」
彼女は足を止めた。そして振り返った時、興味深そうな顔がそこにあった。
「兄さんを探してくれるの、あなたが?」
「探そうと思う」ケランは言った。
(中略)
ルビーはしばし眉をひそめ、そして頷いた。彼女の肩から緊張が抜けた。
「いいでしょう。誰かがあなたを見守っている方がいいだろうし、私はきっとその適任だわ」
僻境の森にて、魔女を探す二人。
その探索のさなか、ケランは一本の矢によって強襲されます。
ルビーの咄嗟の判断により茂みへ逃げ込んだ二人が見たのは、狼の鎧をまとう男。
ほうほうの体で逃げおおせた二人が見たのは、魔女の小屋でした。
二人が窓から覗くと、見えたのは大釜の前で鼻歌を歌う魔女と、拘束された女性の騎士だったのです。
「臨機応変に行く」。ルビーも呆れるような作戦で駆けだしたケランは、まだ見ぬ父に祈りを捧げると、静かに素早く小屋へと侵入したのでした。
女性騎士をどう料理しようかと上機嫌な魔女と、それに悪態をつく彼女。
「焼けて死になさい」
騎士が言い放った。彼女はケランを一瞥し、指示するように頷きかけた。
(中略)
「それはあんまりよくないね。この火はお前を料理するために必要なんだからね。わかるかい、これはひとつの芸術なんだ。適当に何か放り込んだって、美味いものにはならないんだよ」
大釜に放り込まれた物が何なのかはわからなかったが、ケランは吐きたくなった。だが彼はこらえた。やるべきことがあるのだ――そして今こそその時だ。農場で飼っている雄羊のように、彼は頭を低くして突進した。
ケランは叫んだ。
「料理されるのはお前だ!」
体当たりをした瞬間、魔女がわめく声が上がった。そして大釜へと落ちると悲鳴が。
拘束されていた女性を解放すると同時に、部屋に飛び込み、狼の騎士の襲来を警告するルビー。
女性騎士がきっと守ってくれる。
そう信じていたケランでしたが、消耗し座り込んだその姿に、彼の期待は打ち砕かれたのです。
狼の騎士が敷居で足を止め。
彼はルビーへと向き直り…。
「ルビー」狼の騎士が声を轟かせた。
「ようやく見つけた」
ルビーは目を大きく見開いた。彼女は隠れ場所から立ち上がるとフードを脱いだ。
狼の騎士も兜を外した。その下から白髪交じりの木こりの顔が現れた。濃い髭に乱れた髪、だがその目は優しく笑顔は温かかった。彼は両腕を広げた。
「ルビー、俺だ」
「ピーター兄さん!」
魔女の呪いから解放され、正気に戻ったピーターの力を借り、魔女の大釜とともにタリオンの宮廷を訪れた一行。
王は姿を見せず、新たな指示を飛ばしました。
次に見つけ出すべきは、氷の魔女ヒルダ。
一本の豆の木を登り、ヴァントレス城から奪われた鏡に、その隠された居場所を尋ねるのだと。
ケランに探求を命じたのがフェイの王であることに驚いた兄妹。
彼は改めて二人の助力を請いますが、回復するまでは戦力になれないと踏んだピーターは、謝罪とともにこれを断ります。
ルビーはケランからピーターを、そして再びケランを見た。彼女は溜息をついた。
「あなたは兄さんを探すのを手伝ってくれた。だから私も手伝うわ。けれど今は少し休みましょ。騎士さんの傷の手当をして、これからやるべきことを決めないと」
ケランの指が震えていた。
「けど……嫌じゃないのか? 俺がフェイと協力してること」
ルビーの呆れた顔は、驚いたことにケランへと大きな安堵をくれた。
「何言ってるの? あなた、私が思ったより勇敢だったってことでしょ」
今回はここまで
というわけで「エルドレインの森」の"主人公"、ケラン君の物語でした。
彼は道中で相棒となるルビーと出会い、二人となった英雄たちは探求の旅へと繰り出すのです。
ちなみに、ケラン君はルビーよりも身長が低いらしいよ!
なんか…ええよね!!
どう見てもルビーは赤ずきんモチーフの少女のため、「狼の」騎士が追ってくるのですね、原作再現~。
赤ずきんとともに、ヘンゼルとグレーテルのような魔女を倒したケラン君は、次に豆の木を登り、「鏡よ鏡…」をしに行くことになります。
童話てんこ盛りな展開が続く!次回もお楽しみに!
☆X(Twitter)で更新情報発信中!フォローお願いします!
【関連記事】
*出典*
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません