【サンダー・ジャンクション】第2回 悪党たちの作戦【ストーリー】

2024年4月17日

はじめに

オーコはサンダー・ジャンクションの宝物庫を目指すため、各次元の悪党たちを結集しチームを結成しました。

そして鍵を探していたオーコは、その過程で彼の息子を名乗るケランと邂逅したのでした。

息子との遭遇に驚きつつも、オーコはケランの「有用性」を感じているようで…?

ストーリーの続きをどうぞ!

 




目次

オーコの次なる計画

オーコは中二階からメンバーたちを見つめます。

会話をする者、それを静観する者、そして喧嘩をしている姉弟…。

そんな中、背後から聞こえる足音。

「初対面がこんな形だとは想像しなかった」と話すケランに、オーコは笑顔で答えたのでした。

予期せぬ出会いに感謝している。君は素晴らしい追加人員になる、と。

父の話に耳を傾けつつ、突如警戒に目を見開くケラン。

その目線の先には、浮遊して現われたアショクがいたのです。

ケランは怒りとともに、オーコへと警告したのでした。

「アショクは危険です。僕の故郷を襲って、沢山の人たちを操って自分の命令に従わせたんですよ。ローアン・ケンリスさんを……その、悪人にしてしまったんです! 信用したら駄目です」

オーコは否定的に鼻を鳴らした。

「君がアショクを信用する必要はない――私を信用してほしい。それはできるかい?」

ケランはわずかに身体を強張らせ、頷き、手すりから手を放した。

オーコは嬉しそうな表情を浮かべた。

「良かった。ケラン、君の母さんは君を立派に育ててくれたようだけど、教えていないこともあるね。君の力について、血筋について。ようやく会えた今、君がどんなものを受け継いでいるのかを教えてあげることができる。とはいえ、皆と話し合うことがあってね」

彼は階段へと進み、途中で立ち止まった。

「来るかい?」

 

オーコのチームメンバーたちは語ります。

手に入れた鍵は作成者も目的もわからない正体不明のもの。

そして、スターリング社のグレイウォーターはそれを強奪せんと動くだろう。

が、自分たちは宝物庫のあるターネイションの場所を把握できていないのだと。

アニーはひとつ情報を伝えました。

古い遺物を研究している、荒野無頼団のノーランという者が力になる可能性があると。

しかし、その人物は現在スターリング社の傭兵に守られ列車の中にいる。

その人物がグレイウォーターに囲われる前に、捕まえて尋問する必要があると。

オーコはケランへと向き直った。

「君はスターリング社に雇われていたんだよね。列車の警備員の交代についてはどれくらい知っている?」

ケランは不安そうに凍り付いた。

「僕、その……法に触れるようなことはしたくありません」

部屋に暗い含み笑いが広がった。

「君の専門的知識が欲しいだけさ」

ビロードのように柔らかな声でオーコは言った。ケランは他の面々からの視線から目をそらし、咳払いをした。

「僕は誰も傷ついて欲しくありません。ラルさんにはもうひどいことをしてしまったし……」

オーコは片手を胸に当てた。

「約束しよう。罪なき人々が傷つかないようにすると」

ギサは残念そうに顔を曇らせたが、他の者たちの表情は変わらなかった。

やがて、ケランは頷いた。

「わかりました。どんなことを知りたいんですか」

 




プロスペリティ行き列車にて

砂漠を駆ける列車の中、スターリング社の傭兵に姿を変えたオーコ。そしてその横に追随するケランと梅澤。

アショクの集団精神感応によってチームメイト全員の声を聞きながら、鍵のかかった扉の前まで辿り着くと、梅澤は折り紙のような装置で開錠の作業に入ったのでした。

精神感応による会話が続く中、唐突に別車両で響く悲鳴。

聞こえるのは、ギサが早まってゾンビを起こした、と嘆くゲラルフの声と、警備兵の襲来を警告するマルコムの声。

 

そして次の瞬間、勢いよく開かれた扉は梅澤を吹き飛ばし、武器を持った兵たちの介入を知らせたのです。

オーコとケランの奮闘により、警備兵を制圧することには成功するも。

梅澤はその傍らで意識を失わんとしていたのでした。

やがて、当初の計画に乗っ取り爆破される橋。

しかし、列車の速度が落ちないことに、ケランは焦りを覚えたのです。

ケランは立ち上がり、拳を握り締めた。

「この列車にはお客さんが沢山乗っています。橋について知らせないと――」

「まず仕事を終わらせる」

オーコは両目を閃かせてケランの言葉を遮った。

「その荒野無頼団を保護してからでも乗客の安全を確保はできる」

「けど――」

オーコはケランの肩に手を置き、力を込めた。

「私ひとりでそれは無理だ。君の助けが必要だ」

ケランは口を開いて唇を動かしたが、言葉は出てこなかった。

「わかりました」やがて彼はそう言った。

これ以上の議論は父親を失望させる、それがひどく心配だった。

 

最後尾の車両にて、目的のノーランを確保した一行。

アニーとフォーチュン号が列車のすぐ横を疾走すると、オーコはノーランへ飛び移るよう命令します。

そして、彼らは梅澤をも脱出させたのでした。

仲間たちの脱出劇を横目で見つつ、恐怖の表情で跡形もなくなった橋を見るケラン。

しかし、オーコは窓枠に足をかけ、今にも飛び出さんとしていたのでした。

「どこに行くんですか」

ケランは睨みつけながら尋ねた。

「まだ人が乗っているんですよ!」

「彼らを救う時間はない」

気にすらしていないように、オーコは肩をすくめて言った。

「今すぐ跳ばなければ、私たちも列車と一緒に落ちてしまうよ」

「けど言ったじゃないですか――」

オーコはケランが言い終えるのを待たなかった。彼は跳び、どこかぎこちなく砂の上を転がった。

 

選択の余地はない。

そう思い飛び降りたケランは、着地すると同時に金色の蔓を呼びだすと、最後尾の車両を掴みます。

身体に襲い掛かる列車の勢い、引きずられんとする身体。

しかしながら列車に乗っている人を死なせるわけにはいかない。

マルコムは空から兵たちの襲来を警告し、オーコは彼にここを離れるよう叫びますが。

ケランは崖から落ちようとする列車を決して放そうとはしなかったのでした。

オーコは一歩後ずさった。そしてまた一歩。同情がその顔に一瞬だけ浮かび、すぐにそれは諦めへと変わった。最後に一瞥すると、彼はケランに背を向けて駆け出した。

ケランは魔法の蔓をしっかりと握り続けた。顔から汗が噴き出していた。傷心のすぐ隣で、焼け付くような熱が身体を引き裂いていた。

父は自分を見捨てていったのだ。

 




ケランの疑念

アニーの咄嗟の誘導により、ケランの力の瀬戸際にて乗客の避難に成功し、フォーチュン号とともに脱走に成功した、その数時間後。

野営地にて、梅澤はゲラルフによる縫合を受け。

夢うつつの表情のノーランは、アショクによって記憶を引き出されていたのでした。

そしてそれを不安とともに眺めるケランのもとへ、オーコは隣に腰かけると、何も心配ないと説きます。

アショクの魔法も、さっきまでの作戦も。

彼は微笑むとケランの肩に手を置いた。

「全員があの列車から脱出することができた。私が乗客を置き去りにしたと思っているかもしれない。けれど君ならやれるとわかっていた。君は私の息子であり、私は君を信頼しているのだから」

オーコが手を放しても、ケランの緊張は消えなかった。父親を信じたかった。認めて欲しかった。けれどあの列車の中で見たオーコの表情を覚えていた。父は自分を信じていなかった。自分を見捨てるつもりでいたのだ。

もしかしたら、それもただの誤解かもしれない――ケランの心は希望を求めて揺れ動いた。オーコは自分の父親なのだ。乗客を見捨てようとしたとしても、自分を見捨てることはしなかっただろう。

 

やがて、記憶を探りあてたアショクはオーコに伝えます。

自分たちが手に入れたのは、六つ存在する鍵のうちの一つ。

そして残りの五つは、アクルの首元にメダリオンの形で飾られているのだと。

加えて、ターネイションへの地図は「盗人の終着地」にあるとも。

すぐに酒場へと出立せんとする一行と、それを見て思わず口から言葉が飛びだすケラン。

ノーランはいったいどうするのか、と。

再び一行の中に広がる忍び笑い。

水も物資もない中ここには残せないと主張するケランの言葉を、オーコは眉をひそめつつ否定しますが、アショクはケランに同意し、そしてアニーはその者をオアシスへ連れていくことを約束したのでした。

明らかな不満顔のオーコから離れ、二人きりになると同時に、彼女への感謝を伝えたケラン。

彼はその流れの中で、オーコと契約した理由を聞いたのです。

悪い奴の中でもましなほうだった、と語るアニー。

過去、アクルと地獄拍車団相手に盗みを働くという間違いを犯した結果、仲間を多く喪った。

アクルのような「最悪の類の無法者」の手に宝物庫の中身が渡った時のことは、考えたくもないのだと。

ケランは遠くの焚火を振り返り、父がヴラスカやアショクとの会話に没頭している様を見つめた。

最悪の類の無法者……

彼の目はしばしオーコに釘付けとなり、やがてアニーがそれに気づいた。

アニーは静かに言った。

「家族ってのは難しい。血の繋がりがあろうとなかろうとね。誰かの心を知るのは必ずしも簡単なことじゃない。私の経験ではどうかって?」

彼女は肩をすくめた。

「時間は助けになってくれる。けれど決して直観を馬鹿にしてはいけないよ」

きまりの悪さに、ケランは顔をそむけた。

アニーはフォーチュンの手綱を握り締めた。

「一日分の物語としては十分だろ。さ、あの荒野無頼団を連れてきて、送って行ってやろうじゃないか」

 




今回はここまで

オーコ君さぁ…。

わかりやすく息子の気持ちを利用しコトを上手く進めようとします。

なんというか安心するレベルの悪党。

逆に、決して傷つくべきでない人たちが傷つくことを望まないケランの姿も眩しくて良いですね。

さて、そんな悪党集団でやや異彩を放つアニーは、ケランに警告をしますが…?

次回もお楽しみに!

 

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*出典*

第3話 プロスペリティ行き列車にて

第4話 ターネイション発見