【霊気紛争】第1回 ギデオンの正義【ストーリー】

2022年2月21日

はじめに

前回までで、ついにキャストが出揃い、ゲートウォッチ含む改革派 vs テゼレット率いる領事府軍という構成が出来上がりました。

ついに、彼らの「戦い」が幕を開けます。

霊気紛争編!始まりますよ!

 



目次

指揮官の悩み

ギデオンは悩んでいました。

ゼンディカー、そしてイニストラードへエルドラージたちがもたらした脅威を対処することは、ゲートウォッチの使命として疑いのないものだった。

しかし今目の前にある脅威。

リリアナとジェイスは、テゼレットを排除するよう訴えますが。

カラデシュを取り仕切る領事府へ抵抗し、この次元への干渉をすることが、果たして「ゲートウォッチとして正しいことなのか」。

 

元はと言えば、彼はチャンドラのためにこの次元を訪れました。

そして、彼女は領事府を憎み、反抗勢力である改革派へ肩入れをしている。

何が敵で、何が正義で、何が正しいやり方なのか。

ギデオンは組織を正しいほうへ導く、その苦悩のただ中にいたのでした。

 

拠点としているヤヘンニの館の屋上。

街を見下ろすチャンドラは、ギデオンに不満をぶつけていました。

なぜ、領事府への抵抗を画策する母に、同意してくれないのかと。

ギデオンは、自分はチャンドラを守るために来た、という原初の思いを打ち明けます。

「私達は見守ることを誓った。それは、互いを見守るということでもある。互いの背中を守るということだ」

(中略)

ギデオンはかぶりを振った。

「チャンドラ、君自身の復讐心でゲートウォッチの目的を曇らせてはいけないよ」

チャンドラはギデオンへと向き直った。その瞳には怒りが火花を散らしていた。

「ねえ、私の背中を守るって言ったわよね。でも、あんたはゲートウォッチのギデオンとしてここにいるの、それとも私の友達のギデオンとしてここにいるの?」

ギデオンは溜息をついた。

「それは……わからない。どちらの私も同じものだと思っていた」

「私達はただ世界から世界へと渡り歩くだけでなく、世界それぞれの問題に干渉し、自分達の正義や意志を押し付けている。私達は、一歩間違えたなら暴虐の魔道士になってしまう」

チャンドラはいぶかしげな視線をギデオンに向けた。

「それ、私の誓いの引用?」

ギデオンは肩をすくめた。

「君に影響されたのかもな」

チャンドラは笑い、そしてその笑い声は嘲りに変わった。

「法に縛られる不滅の戦士さん、あんたは重く考えすぎよ」

「生きた火の玉くん、君が情け深く親切なのは間違いない。けれどチャンドラ、私達皆、自分達の力以上の存在なんだ」

チャンドラは両手を見下ろし、小さな火花と燃えさしが指先の間に踊った。ギデオンは自身の両手を掲げ、左手は右手首に取り付けられたスーラを辿った。

「私は限界を知り、限界を定めることの大切さを学んできた。さもなくば自分だけでなく、愛する者も、この傲慢さの重荷を背負うことになる」

タミヨウと同じ意見にたどり着いたギデオン




 

リリアナの私怨

ギデオンはリリアナを部屋へ呼び出し、宣言します。

「もう誰も殺さない」と。

ゲートウォッチは、もう殺しを行わないと。

しかし、リリアナはこれを嘲りでもって一蹴したのでした。

イニストラードの怪物は殺せて、なぜカラデシュの悪しきプレインズウォーカーは殺せないのかと。

そしてギデオンは、彼女がなぜにそこまでテゼレットに固執するのか、理解に苦しんでいたのでした。

「貴女が何故そいつを止めたいのかを、殺したいのかを知りたい」

しばし、リリアナは本当に口がきけなくなったように見えた。ギデオンは彼女を見つめ続けた。その瞳の中に何かがひらめくのが見えた、紫の泉の奥、決意が現れた。

「あいつは私の大切なものを傷つけた。私のものを壊した」

その口調は平坦で、だがその下にギデオンは怒りと憎悪の棘を感じた。

「私の邪魔をしないで頂戴。あいつに引導を渡し、この虚飾すべてを終わらせてやるわ」

リリアナは背を向けて階段を滑るように上っていった。一段ごとに靴の踵が鋭い音を鳴らした。

ギデオンは溜息とともに顔を手で覆った。それが真実の全てではないことは確かだった。

とはいえ、彼女から引き出した最大の真実であることもまた確かだった。

 




次なる作戦

それから数日後。

ギデオンたちは、領事府の操縦する突撃車から、街と発明家たちを守っていたのでした。

今や仲間となったサヒーリが、彼に進言します。

テゼレットは、中央霊気塔の私的な作業場に閉じこもっていると。

そこで、受賞した発明家を軟禁し、発明を続けていると。

そして、友のラシュミのため、幾人かを連れて彼女はそこへ乗り込むつもりだと。

「私が行く」 リリアナが進み出て、ジェイスを押しのけると彼とギデオンの間に立った。

「テゼレットがそこにいるのなら、私が行くわ」

(中略)

私は貴女を信頼したい。信頼していいのか?

サヒーリの声が彼の思考を遮った。「今すぐ決めないといけません」

「わかった。リリアナ、行ってくれ」

サヒーリは満足に頷き、そして速接会地区へと足を向けた。リリアナがそのすぐ後を追った。

「リリアナ」 ギデオンは声を上げた。「正しいと思ったことをしてくれ」

ギデオンはリリアナの穏やかな物腰の背後にひらめく、何万もの無言の返答を見つめた。一つが浮かび上がり、広場を横切って届いた。「すべき事をするだけよ」

二人が脇道へと姿を消すのをギデオンは見つめた。

 

やがて作戦が決まったのでした。

サヒーリ、リリアナ、アジャニは発明家たちの救出。

ピアとチャンドラとジェイスは、改革派とともに研究室へ霊気を送り続けている拠点への襲撃。

そのほかは、準備が整うまで領事府軍の攪乱。

 

沈黙の時が終わり、彼らの正義が動き始めたのです。




今回はここまで

おや…?

だめだ…ストーリー展開が何も進んでない…!

でも、このギデオンの苦悩パートは、ただのファンタジー小説ではない、人間らしい苦悩が描かれて良いんですよ!

ただ自分の正義を押し付けるわけでなく、それが次元やそこに住まう人々にとっても正義たり得るか、と熟考するギデオンの姿は、リーダーの鑑!と思わされます。

逆に、自分にとっての正義を次元に押し付けようとするのが、今回の巨悪テゼレットや、その背後のニコル・ボーラスだということですね。

強大な力は、時に他の世界をたやすく変化させる。

その重みを感じているギデオンと、それを利用するだけしているテゼレットの対比。

こういうところがね、深いのですよ、マジックのストーリーは。(しみじみ)

 

というわけで、次回こそストーリーの進展を!笑

お楽しみに~

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*出典*

沈黙の時