【団結のドミナリア】第6回 リリアナの帰郷【ストーリー】

2023年3月8日

はじめに

前回までで、団結のドミナリアのメインストーリーをご紹介しました。

今回からはサイドストーリー編!

まずは今回パッケージにもなっており、衝撃の強カード再録でも話題になったリリアナのストーリーをば!

この物語、結構解説ナシだとナンノコッチャなものでもあったため、最後に少しだけストーリー解説も載せております。

では参りましょう!

 

↓ストーリーのまとめはこちら↓

【団結のドミナリア】背景ストーリーまとめ




目次

鴉の男の誘い

ストリクスヘイヴンのリリアナ教授は、いらだっていました。

若き知性に助けを差し伸べる昼の時間とは異なり。

どうにも眠ることのできない夜に。

ずっと昔はもっとたやすく眠れていたと思いつつ、その回想の過程で、自分が眠れぬ夜を過ごすのも当然と思わされていたのです。

快適な暮らしを謳歌する資格はない。

孤独な夜を過ごしながら仲間の死を償うのが当然であると。

 

すると、彼女は聞き慣れた声が自分を呼ぶのを聞きとめました。

振り返った先にいたのは、黄金の目を持つ、見慣れた男。

最初の出会いから今まで、その口から発する甘言でリリアナを惑わせ続けてきた男。

自分が生み出した幻想なのか、実在する人物なのかも判然としない「鴉の男」。

「やっと私に飽きてくれたのだと思っていたのだけれど。愚かな遊技は終わったのではなくて? (中略)お前は必要ないの。私のことは放っておいて頂戴」

「そしてどうするのかね? 教師生活と出来の悪い小論文にかまける人生を過ごすのかね? 害獣と無益なものばかりを相手にするのかね?」

その笑い声は苦々しく響いた。

「いずれ飽きるとわかっているはずだ。君は目新しさを必要としている。力を必要としている。私とともに帰ろうではないか、そうすれば君のあらゆる願いは遂に叶うのだ」

彼女は笑い声をのみこんだ。

「そうは思わないわね。正直に、とっても正直に言うけれど」

鴉の男は余裕のある態度を崩さず、自分たちが出会った場所へとリリアナを誘います。

そして鴉の大群とともに消える男。

同時に悪夢から目覚めるリリアナ。

男も、鳥も、羽もない部屋の中。

しかし割れたティーカップからこぼれた液体は、まだその温かさを残していたのでした。

 

それから数か月の間に、男の訪問は頻繁になり。

彼女の疲労が限界を迎え始めたころ。

ドミナリアの歴史を調べていたリリアナの元へ、その男は再び現われたのでした。

「もっと遡らねばならないな。リリー、私を故郷へ連れ帰ろうというのなら、もっと深い所を探さねばならないだろうな」

彼女は手にしていた本を勢いよく閉じた。

「つまりお前は実在する、そう言っているのね」

「以前にもそう伝えたのだがね。繰り返してもいいだろう、それが星の巡りならば。私のもとへ帰って来いと言っている。私たちの再会のために、知識や古の名を鎧として欲しているなら、それらを見つけるためにできる限り手を貸そう」

 

リリアナは自分のところへ戻ってくる。

そう予言めいた言葉を残して去った男。

鴉が羽ばたき、やがて本を一冊床に落とします。

その名も「テリシア史」。

眉をひそめつつ、座してその本を読み始めるリリアナ。

それから数時間後。

彼女は理解し、一つの名前とともに立ち上がります。

それは、男が自分の想像の産物ではない、実在する人物であるという何よりの証拠。

そしてその人物の殺害は、この多元宇宙から悪を一つ消し去れるということ。

「いいでしょう、このろくでなし。帰ってあげる」

灯が目覚めて闇が彼女を包み込み、光を通さない黒雲へと凝集した。数秒してそれが晴れた時、リリアナ・ヴェスの姿は消えていた。




故郷にて

その男が誘う、その男と初めて会った場所。

それはドミナリア次元、ヴェス家の地所。

生家の廃墟へと向かったリリアナ。

オーク樹の巨木に身を預け、目を閉じ、そして次に目を開けた瞬間。

生家は蘇り、光は眩しくそれを照らしていたのでした。

そしてまたも目の前に立ちはだかる鴉の男。

これは夢。

「来てあげたわよ、それに私は眠ってる。お前はこの方が好みよね、意識がなければお前を刺し殺す可能性は低いのだから」

リリアナは声をかけた。

「私に何を望むの?」

「私を見つけてほしかった。そしてどうやらそうしてくれたようだ。君は私が思う通りに成長してくれた。待ちわびたよ」

「私の何を待ちわびたの、リム=ドゥール?」

彼女は力の限り重々しくその名を発し、相手の反応を見つめた。

だが残念なことに、彼は笑っただけだった。

「その名を聞くのは久しぶりだな、夢の中であろうとなかろうと」

ここへと誘った目的を問い詰めるリリアナ。

鴉の男は、黄金色の瞳に影をたたえて言います。

リリアナを自分の、いやドミナリアの武器とするために呼んだのだと。

“あれ”はいずれ全てを破壊する、と。

「君が生まれた次元のために戦うのだ。私を救い、この次元を……君自身を救うのだ」

リム=ドゥールは何かを言いかけて止め、目を見開いた。その様子はまるで何かを恐れるような。

「君自身を救うのだ」

彼はそう繰り返し、そして指を鳴らすと黒い翼の鳥の群れへと弾けた。

 

夢から醒め、辺りの異変を探るリリアナ。

そして異質さを感じ向かった彼女を迎えたのは、一人のコーでした。

その目は黒い液体を流し、背中からチューブのようなものが伸びた。

“それ”の領土へと踏み入れたリリアナは、異形の生物に囲まれます。

彼女にも聞き覚えのある「ファイレクシア」と名乗った、その名も”コー追われのエラス”。

 

リリアナはそれらに背を向けて駆けつつも、追いかけてくる異形の生物を「沼の死」たちで迎え撃ちます。

それは、さながらアンデッドの洪水。

彼女が祖先の眠る場所までやってきたとき。

残りはコー追われのエラスと、ファイレクシアの兵士が5体。

リリアナがファイレクシアの軍団に手をとられるうちに、コー追われのエラスは背から槍を抜いたのでした。

コー追われのエラスは投擲し、投げ槍が飛んだ。死に浸された、侵食された地面からリリアナは強く引いた――忌まわしい汚れと自然の死を、力の限り素早く、自分自身の力だけで。鎖のヴェールも、悪魔との契約もない。ただリリアナと、手にした死者の骨と、この大地だけ。

そしてそれらの遥か底に、国をも転覆させる力を持つ屍術師の器が、屍術師自身よりも強大な者が所持していた器が、リリアナをその道具となるよう仕立てていた器があった――ひとつの指輪が。蓄えられた力を探し求める彼女の魔法がそれを掴み、本能の限りに精一杯引き寄せた。そこに真の、確固たる意図などはなかった。

頭上で一羽の鴉が声を上げた。一瞬、リリアナは見た。

 

指輪は、無限の力を囁きます。

リム=ドゥールが意図したように、器になればよいと。

そうすれば、溢れんばかりの力は手に入り。

同時に生徒を愛し、またギデオンを悼んでいたリリアナとは別れを告げることになると。

この囁きを振り払い、それを囲む力だけを掴むリリアナ。

その黒い霧はファイレクシアの軍勢を一掃し、放たれた槍の軌道を変更したのでした。

これこそが真の闇、足跡を残すことなく生者の世界を駆け抜けることを許された死。

(中略)

ファイレクシア人たちは再び身動きをし、痙攣したように立ち上がった。振り返ってエラスを見つめるその瞳は、もはやきらめく漆黒の穴としか言いようがなかった。霧が晴れるにつれ、それらは彼女へと歩き出した。リリアナは両手を掲げ、刺青を輝かせ、手に入れた軍勢をかつての指揮官へと向かわせた。

コー追われのエラスは一歩後ずさった。

「邪道に堕ちるとは! ひとたびファイレクシアに加わった者は、ファイレクシアであり続けるというのに!」

 

背を向け、自分の命を守るように逃走するコー追われのエラス。

リリアナはファイレクシアたちの掌握を緩めず、思案します。

彼女が地の中に存在を感じた指輪。

放置はできないが、掘り出すことも叶わないもの。

彼女はそれを誰の手にも触れぬよう更に地下深くへと押し込むと。

ファイレクシアを解放したリリアナは、久遠の闇へと足を踏み入れたのでした。

遅かれ早かれ戻ってくることになるのだろう。この地を清め、埋めたものを守るために。自分に敵対した死者がそれを発見しないことを願うだけだった。だが今は、アルケヴィオスとセッジムーアが待っている。傷を清め、力を再び満たすために。

影の中、黄金の瞳の男が彼女の出発を見つめていた。その操り紐を今一度引くことを喜びながら。紆余曲折はあったが、今もリリアナは彼のものだった。最終的に、リリアナは彼を守ったのだから。

そしていつの日か、彼女は帰郷するのだろうから。




今回はここまで

よくわかる解説うううぅぅぅぅぅ!!!

その昔、ドミナリアが氷河期であった時代。

テリシア大陸(リリアナの拾った本にあった名前)の魔道士であったリム=ドゥールは、偶然入った洞窟の中で魔術師メアシルの死骸と指輪を発見したことで、二人の記憶や人格が融合、屍術師として覚醒しました。

以降、ドミナリアでの二国の争いを煽りジョダーに阻止されたりとか、テヴェシュ・ザットとともにシャンダラー次元へ乗り込んだりとか、一回死んでのち復活しリム=ドゥール戦争を引き起こしたり、などなど…。

まぁそんなことをやり、エキスパンションで言うと「アイスエイジ」あたりに名をはせていたリム=ドゥールさんなのですが。

このたび、マジックオリジンからずーっとリリアナにまとわりついていた「鴉の男」がリム=ドゥールその人であることが判明!

もうお察しのことかと思いますが、リリアナが最後に力を借りた指輪こそ、リム=ドゥールが狂わされた「メアシルの指輪」だということになるでしょう。

古の魔術師と強力なアイテム。

そしてなにより、それを使用するとリリアナはファイレクシアを掌握することすら可能であることが明かされました。

これは…重要な伏線かもしれませんね?

今回リリアナはこのストーリーにしか登場せず、結局ドミナリアの英雄たちと顔を合わせることはありませんでした。

伏線回収をしつつ、伏線を張ったストーリーが、今後どのように影響してくるのか、楽しみです!

それでは今回はここまで。

次回もお楽しみに!

 

☆Twitterで更新情報発信中!フォローお願いします!


【関連記事】

リリアナの灯の覚醒~兄を想うドミナリアの癒し手【ストーリー】

【ストリクスヘイヴン】第1回 魔法学院のリリアナ教授【ストーリー】

*出典*

サイドストーリー:彼女の帰郷