【破滅の刻】第2回 ラザケシュとの戦い【ストーリー】
はじめに
ついにアモンケットに「刻」が訪れます。
楽園への道が約束された門は開かれ、それらが無へと続く道であるとわかった人々は混乱に陥ったのでした。
そして、門を守る悪魔が、その姿を現します。
アモンケットの者たちには聞きなれぬ、「リリアナ」という呼びかけをしながら。
悪魔の呼び声
悪魔の呼びかけの届いたリリアナが抱いていた感情は、恐怖でも興奮でもない、「期待」でした。
最高の後ろ盾がいる中、斃すべき相手が向こうから姿を現した。
悪魔は挑発を続けるが、それに乗ってやる必要はない。
しかし、そんなリリアナが初めて恐怖を感じたのは、自分の手が無意識のうちに動き出した瞬間だったのです。
悪魔の声は響き続けます。
「来たれ、我がもとへ」
その言葉が耳に届くやいなや、リリアナは肩が引かれて表情が緩むのを感じた。皮膚を迷宮のように覆う文様が悪魔の呼び声に応えて輝き、彼女は心の内で悲鳴を上げた。急き立てても許可してもいなかったが、彼女の身体は血の川へと進み出た。
(中略)
脳内にジェイスの叫びが、耳にギデオンの声が響いていた。だが彼女の注目は目の前のラザケシュに定められていた。
主のもとへ。それが彼女の身体が聞く唯一の命令だった。鎖のヴェールは仕舞い込まれたままで、悪魔はすぐそこに、そして仲間達は彼女を進ませる力を止められずにいた。
リリアナは、血の川へと歩みを進め、やがて頭が浸かるまで、その道を歩かされたのでした。
脳内が悲鳴に満ち、呼吸続かぬ中意識も途切れかけ、そうやってリリアナはラザケシュの元へと進まされたのです。
その悪魔は、リリアナの全てを掌握していると見せつけるように、様々な命令を課したのでした。
リリアナの脳内が怒りと屈辱でまみれる中、悪魔は問います。
「さて、老婆よ。ここへ何をしに来たのかね」
感覚が戻り、リリアナの顎がかくんと動いた。彼女はそれを左右に動かした。身体の大部分は今も支配されたままだったが、言葉は再び自分のものになっていた。
この機会を逃しはしなかった。
「お前はあと五分の命よ」 声に決意を宿し、リリアナは言った。
「私がお前を殺す様を見届けなさい」
(中略)
「お前を殺しはしない、だが使い物にならなくすることはできる」
ラザケシュはそう熟考し、腰のナイフを弄んだ。「自らそうさせることもできる」
リリアナは顎を突き出した。「あと四分」
(中略)
切迫し狂乱したジェイスの声が、心に突然弾けた。
『待て、チャンドラ、急ぐな――』
「四分はちょっと長すぎるかしら?」
リリアナははにかむ笑みで声を上げた。
悪魔は顔をしかめた。
リリアナはにやりとした。「そうね……今すぐはどう?」
ラザケシュの頭部のどこか背後から、炎が噴き出して悪魔を包み込んだ。
ラザケシュは悲鳴を上げた。
ラザケシュとの戦い
チャンドラの炎を皮切りに、悪魔と英雄5人の戦闘が始まりました。
ラザケシュがチャンドラを吹き飛ばすと、ニッサの巨大なエレメンタルが悪魔を襲います。
悪魔が再びリリアナを支配下に置こうとすると、不可視の魔法をかけられたギデオンが、その呪縛から解き放ちました。
そして、彼が魔法障壁を形成した瞬間、高熱の業火が周囲を覆います。
リリアナが一歩を踏み出すと、フォローするようにジェイスが彼女へ不可視の呪文をかけたのでした。
『ジェイス、あいつが私を支配するのを邪魔して欲しいの』
ジェイスの声が不満そうに響いた。
『この十分間ずっと頑張ってるんだが?』
それを追求する時間はなかった。
『隠れるのはやめて、あいつの気が散ってる間に集中しなさい!』
ラザケシュの両目が焦点を失った。
『今だ、早く動け』 ジェイスの心の声は張りつめきっていた。
「行くわよ、ギデオン!」 リリアナは命令するように言った。
ラザケシュは炎に包まれながらも、ニッサの遣うエレメンタルと格闘していたのでした。
4人の連携により、悪魔は瀕死のところまで追い詰められていきます。
リリアナはドレスから鎖のヴェールを取り出した。
『それは要らないだろ』 ジェイスの声が届いた。『君を傷つけるだけだ――』
リリアナはジェイスの介入に顔をしかめた。
だが、そう……彼の言う通りだった。
このためには必要なかった。
(中略)
「ラザケシュ」
悪魔は火傷に覆われ、岸辺に押さえつけられていた。その顔は燃え、焼けただれ、歪み、憤怒にしかめられていた。
リリアナは顔を高く上げ、ラザケシュを見下ろした。悪魔が自分の存在を感じられるように願いながら。
「お前を殺す様を見ていなさい」
リリアナが手を伸ばすと、血の川からは数多の水棲生物の死骸が、彼女の支配のもとで悪魔を襲います。
そして、ニッサのエレメンタルに捕らえられたラザケシュは、その歯に、爪に、牙に裂かれていったのでした。
最後の気力で川へと逃げる悪魔に、リリアナは幾体もの鰐の死骸を遣わし、その肉体を貪ります。
リリアナは無意識のうちに、その生きたまま肉を食らう感覚に、声を上げて笑っていたのでした。
そして、ジェイスが嘆願するようにそれを止めるまで、その捕食は続いたのです。
「やったわ、ジェイス」
リリアナは再び笑った。
「あいつを食らってやったの」
ジェイスは、あからさまに、返答しなかった。
集まった仲間に、リリアナは笑みを浮かべて感謝を伝えます。
自分を縛るものを斃す助力をしてくれたことに。
そして、自分の立てた計画通りに動いてくれたことに。
ギデオンは悪魔の事実を黙っていたことに、少しの苛立ちを見せますが、チャンドラは仲間内のいさかいを制するように次なる敵の存在を思い起こさせたのでした。
来たる巨悪、ニコル・ボーラスについて。
静寂の中、ギデオンが率先して声を上げた。
「戦力を結集し、かつ温存する必要がある。できるならば、ニコル・ボーラスの到来に備えて待ち伏せをしたい。逆に不意打ちをしてやろう」
ギデオンは辛辣にリリアナを見つめた。
リリアナは目をそむけた。悪魔を倒した方法を恥じてはいなかった。それでも皆が自分を見つめる様子に冷たさがあるのは否定できなかった。
ギデオンは苦々しい表情を我慢しきれていなかった。チャンドラは重圧に口を固く閉じていた。ニッサはあからさまに顔をしかめていた。ジェイスは誰よりも、よそよそしく見えた。
「有利な場所を見つけて、ニコル・ボーラスの到来を待とう」
ギデオンの言葉に全員が踵を返し、ナクタムンへと続く門の境をまたいだ。
今回はここまで
ゼンディカー、イニストラード、カラデシュの戦いを通じて、ゲートウォッチの戦い方が定まってきたように感じるラザケシュ戦。
この時点でのゲートウォッチの戦い方は、ゼンディカー時点の「皆が得意なことを生かして勝つ!」がずっと引き継がれています。
これでボーラスとの戦いに本腰を入れられるようになった、と話すリリアナですが、彼女の秘密主義に懐疑的なギデオンをはじめとして、チームとして強固かと言われると疑問が残る体制です。
さて、悪魔が斃れたアモンケットで、次なる敵として、ボーラスの隠した神々が立ち上がります!
次回!神vs神の戦いをお楽しみに!
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