【イクサラン】第7回 世界の向こう側【ストーリー】

2021年4月22日

目次

はじめに

前回、ヴラスカとジェイスは魔学コンパスを吸血鬼のヴォーナによって奪われます。

そして、同じくコンパスを追っていたファートリは、女海賊ではなくその吸血鬼を追うことになるのでした。

今回は、そんなファートリ視点の物語。

 

ファートリの戦い

騎乗した恐竜に匂いをたどらせながら、ファートリと案内役のマーフォーク・ティシャーナは、吸血鬼を追います。

そして、何時間もの時間をかけ、とうとうその女吸血鬼を追い詰めたのでした。

恐竜が噛みつき、彼女を振り回すと、ポケットからは例のコンパスがこぼれ落ちます。

そしてそのまま吸血鬼を追い払うと、そのアイテムを手中に収めたのでした。

魔学コンパス

ファートリは顔に笑みを浮かべてティシャーナの隣に急いだ。

「急ぎましょう、吸血鬼が追い付いてくる前に! コンパスを手に入れました!」

マーフォークは笑みを返した。その歯は小さなナイフのようで、綺麗に並んでいた。

「お見事です!」

ティシャーナはコンパスを手にとり、手の中で回して調べた。

(中略)

「旅の終着点が近づいています」

この時ファートリは興奮から目を丸くした。「本当ですか?」

(中略)

「この先を、半日ほどです」

 

そんな会話のさなか、突然ファートリは巨大な布にくるまれ、恐竜から叩き落とされたのです。

遠くで聞こえる恐竜の咆哮。

そして、聞き覚えのある声によって布が解かれると、ファートリは驚愕に目を見開いたのでした。

自分の目の前にあったのは、石像と化した鉤爪竜。

「コンパスを返してもらうよ」

女性の髪となっている触手と蔓が満足と喜びにうねった。彼女はファートリの足元に落ちたコンパスを拾い上げた。

「どうやって追い付いたの!?」 ファートリは吐き捨てた。

緑の肌の女性が舌打ちをしてかぶりを振った。

「お前が追っていた吸血鬼はまっすぐコンパスに従ってたんだよ。この地域を横切るのは得策でないっていうのにね。空の目と地面のテレパスがあれば、近道を見つけるのは簡単さ」

その背後のセイレーンが得意そうに羽根を繕い、青色をまとった男がとても丁寧に、笑みとともに頭を下げた。

 

ファートリが恐竜を召喚すると、海賊たちは散り散りに逃げます。

そして、自分のパートナーだったティシャーナはというと、「クメーナを止める」と言い放ち、彼女自身も密林へと消えたのでした。

悪態をつきながら海賊を追おうとするファートリ。

しかし、その足を野太い声が止めさせたのでした。

「止まれ、そこのプレインズウォーカー!」

アングラスが木のように堂々と、短角獣のような巨体で立っていた。

(中略)

全ては、以前この海賊が攻撃してきたことで始まったのだ。全ては、この怪物が見せたものから始まったのだ。ファートリは顔をしかめ、海賊らが逃走した方角へ走った。

アングラスが追いかけてきた。

「待て! お前と話がしたいんだよ!」

「お前の声など聞きたくない!」 ファートリは後方へ叫んだ。

(中略)

「止まれってんだよ!」

その男は前進して膝をつき、冷えて黒い鎖を地面に置いた。

ファートリの心臓が高鳴っていた。かつてないほど怯えていた。この殺人鬼は何を楽しんでいる?

「お前は俺と同じなんだよ」

「何も同じではない!」 ファートリは反抗的に、声を張り上げた。

「違う、馬鹿。そうじゃねえ」 苛立ちで厳しい目をしつつアングラスは返答した。

「お前を傷つける気はねえ、プレインズウォーカー仲間だ」

そして立ち上がり、彼女を見下ろした。

ファートリは詰問しようとしたが、アングラスは冷静かつ決然として言った。

「この次元に俺達を閉じ込める何かが、あの都に隠されている。それを見つければ、助け合って違う世界へ逃げられるはずだ」

混乱の中に、疑問の小さなきらめきが弾けた。

アングラスは続けた。

「……そのためにやる事は一つ。俺達の手からオラーズカを奪おうとする奴を皆殺しにする」

ファートリの希望は消え、不快な感情が胃袋を満たした。

わけがわからなすぎる。人殺しの怪物が私の友になりたがっているなんて。




「門」のその先

それから半日ほど経った頃。

ファートリとアングラスは、黄金の都の入口へとたどり着いたのでした。

そして、その過程でアングラスはファートリの目的を伝え聞きます。

太陽帝国の地位のために秘宝を見つけるという彼女の言葉を、雄牛頭の男は嘲りとともに一蹴したのでした。

「地位は自由をくれない」と。

「俺らは何よりも自由を重んじる。プレインズウォーカーはそのためには殺しだってする。全員がそれを理解している」 真剣な表情だった。

「お前はたかがうろ覚えの物語に自分を縛り付けてるだけだ」

「たかが物語と言いました?」 彼女は声を荒げた。

「私の何がわかるのですか、私がずっと何のために生きてきたのか! 私はずっと、相応しい言葉を見つけることに身を捧げてきたのです。私達全員の思いを伝え、太陽帝国の歴史を真実と誇りで守ることです」

その言葉にミノタウルスは含み笑いをした。

(中略)

「お前らはどっちの歴史が強いかを決めるために殺し合ってる。上に立つのは誰かを決めるために言い合いをしてる、けれど誰も本当の意味では自由じゃねえ。小娘よ、お前が正しいって誰が言えるんだ?」

ファートリは葛藤を覚えた。

 

やがて、アングラスはファートリに、自分の真似をするよう促します。

それは、かつて彼と出会ったときに味わったことの追体験。

アングラスを前方にして、無へと踏み出すような感覚。

彼の目の前には門があり、その先を覗くように指し示したのでした。

ファートリがその先で見たのは、かつてない寒さと、白い破片の舞う世界。

そして、彼女がさらにその先へと踏み出そうとした瞬間、強引に引き戻す感覚とともに、彼女は密林へと戻ってきたのです。

ファートリは震える息を吐き出した。「あの場所は何?」

「カルドハイムだ」 アングラスは力強く言った。

「こことは違う次元。今なら俺の言ってることはわかるか?」

ファートリはかぶりを振った。アングラスは鼻を鳴らした。

「自分が捕われてることを自覚して初めて、自由が始まるもんだ」

 

ファートリの案内で、二人は密林の奥へと進むのでした。

ふと、彼女はアングラスに尋ねます。

ここを離れられたら、まず何処へ行きたいのか、と。

「娘らの所へ」それが彼の簡潔な返答だった。

ファートリは彼の脆さに触れた気がした。

「最後に会われてからどのくらいになるのですか?」

「十四年だ」

アングラスは低い声で言い、一瞬ファートリは心を動かされた。同情を口にしようとしたが、それは続いたアングラスの言葉に遮られた。

「あいつら、お前の皇帝の血を大喜びで飲んじまうだろうよ、馬鹿野郎」




今回はここまで

さぁいらっしゃいました強面毒舌牛頭ながら家族を想うというギャップ萌えを搭載したアングラスさんですよ!

思考が一つの次元に囚われている(いや基本皆そうなんですけど)ファートリに、気づきを与える存在として言葉を投げかけるのも印象的ですよね~。

 

ちなみに、例によってファートリは「雪」というものを見たことがないため、寒さとともに「白い破片」が舞っていると表現しているのも深いところです!

アモンケットの物語で「夜」を理解できなかったサムトが、星を「光の斑点」と理解したのと似たような、上手な表現ですよね!

 

さて、次回はヴラスカとジェイスの旅の続き!

彼らの物語はついに起承転結の「転」に差し掛かります!

お楽しみに!
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*出典*

MAGIC STORY 争奪戦 その1

MAGIC STORY 太陽の向こう側

 

Posted by オクハラデン