「ゲートウォッチの誓い」の背景ストーリー 後編

2020年5月28日

前編の続きになります。

ギデオンとゼンディカーの指導者

ゲートウォッチを苦しめていたエルドラージたちが焼失してから数日後。

ギデオンは、夜明け前のゼンディカーの大地を走っていました。

これは、彼の始めたばかりの習慣。

一歩、そしてただ次の一歩を踏み出す、そんな動作の中で、ギデオンはゲートウォッチのメンバーに思いをはせるのでした。

海門。ハリマー盆地。全てがそこで起こった。

心の中で、ギデオンはこの風景にエルドラージの破壊で満たされた出来事の連続を並べた。ジェイスはこれをずっと見ていたに違いない――ある程度論理的に進む一連の筋書を予測しながら。

ジェイスは自身の価値を示した。他の者達が離れていっても、彼は残っていた。力線の謎にはふさわしい人物だった。

そして今、自分達二人は誓いで繋がる兄弟だった。

ギデオンは心をゲートウォッチへと向けた。未来像を共有した四人のプレインズウォーカー。

ジェイスに加えて、ほんの数日前には他人であったニッサも、今や自身の世界だけでなくその先へと力を貸そうとしている。

そして、チャンドラがいる。ついに、彼女は来てくれた。来てくれると思った通りに。

 

そこへ、同じように走りながら近づく影が一人。

「今朝は遅いですね?」

それは、かつて宿営地で司令官の座を争ったこともある、タズリの姿。

ギデオンは、タズリとともに、ゼンディカーのこれからについて語らうのでした。

巨人たちが消えても、エルドラージたちは残り続ける。

誰かが指揮を取り、この地を守らなくてはいけない。

そして、彼女にはその決意があると、ギデオンにはわかっていたのでした。

 

「ギデオン、あなたはどうするのですか? 残ったエルドラージを片付けるためにあなたを数に入れても?」

 

タズリから投げかけられた疑問。

ギデオンは、穏やかなまなざしで、答えを返しました。

「仰せの通りに、司令官」 ギデオンは言った。

「ですが、貴方はいずれ……」 タズリの言葉は小さく消えた。

「いずれ」 彼は認めた。

ギデオンはゼンディカーの者ではない。エルドラージに対抗すべくここに来た。

だが他の世界には他の脅威があるのだろう。

そして彼はゲートウォッチとなることを誓った、他の者が行けない場所へ赴き、力になることを。

沈黙の中、二人はまた走り始めた。

「でしたら、それまでは」 少ししてタズリは口を開いた。

 

「貴方がいて下さることを嬉しく思います」

 

今度は彼女が笑みを向け、そしてギデオンを追い抜き去っていった。

 

ゲートウォッチの紅蓮術師

その手は熱を帯び、手にした鍋を、そして中のスープを温めていました。

かつて戦場であったその場所は、今や生活の場となっています。

チャンドラは、こうやって自分の熱の魔法を普通のマナで、普通のことに使うことを、奇妙に、しかし喜ばしく感じるのでした。

やがて自分に近づいていたのは、自分をこの地に招いた一人、ギデオン。

チャンドラは彼の上腕を小突いた。「お疲れさま、ボス?司令官?騎士様?将軍?」

彼は親指を胸当ての紐にかけた。「今はただのギデオンに戻ったよ。そっちは快適か?」

チャンドラは間に合わせの椅子の上、両腕を押して身動きをして、肩をすくめた。「これに座れだなんてさ」

彼はぼんやりと頷いた。「レガーサには戻るのか?」

「この前言った通りよ。手を上げて、私の決意を何もかも」

「わかっている。でも君は戻ってもいいんだ、もしそこに責任があるのなら」

チャンドラは含み笑いをもらした。「許可をくれるの?」

「私が言いたいのはつまり、ここでの、今の役割は終わったということだ。君は自分の役割を果たした。私達が再び必要とされたなら、また集まればいい」

チャンドラは彼の胸を肘で突いた。

 

「ギデオン、私は入ったんだから。私も今やゲートウォッチの一員よ」

 

ギデオンは、チャンドラが来てくれた、という感謝の念と、同時に、巨人殲滅にすべてのマナを使い切った彼女の容体を気にしていました。

まだ、思うように動かないその足を。

チャンドラは、こんな心配性なリーダーに、笑顔で言葉を投げます。

「ねえ。私達は皆を助けた。同じことをまたやるだけでしょ」




精神魔導士の向かう先

ジェイスは、ゼンディカーの野営地で、ウギンと対峙していました。

空から現れた精霊龍は、ゼンディカーの事態について、ジェイスに説明を求めます。

その言葉の端に、内なる怒りを潜ませて。

ジェイスは前へと進み出た。

「ウギン、作戦を立てたのは俺です。他の皆は俺を信頼しただけに過ぎません。もし、俺達がやった事に異議があるとしても、責めるべきは俺だけです」

 

歩哨たちの叫びを聞きつけたゲートウォッチの仲間も参集し、ジェイスを守るかのように言い放ちます。

「させるものか」 ギデオンが言った。

「私達全員で倒したの。責任は私達全員にあるわ」 ニッサも加わった。

「実際に巨人を殺したのは私だけどね」 チャンドラはいわくありげに言った。「でも皆が助けてくれた」

ウギンは口を開いた。

「ベレレン、説明せよ」

 

ジェイスは、悪魔による想定外の襲撃を受けたこと、

ウラモグに加えてコジレックまでもが敵対してきたこと、

そしてなにより、巨人たちを他の次元に逃すことだけはできないと思ったことを説明します。

 

説明を聞いたウギンは、ため息をつくように口を開きます。

「プレインズウォーカーよりも危険で、予測不能な力など多元宇宙に存在しないということか」

角の頭でかぶりを振り、ウギンは言った。

 

ウギンが懸念していたこと。

それは、プレインズウォーカーたちよりもはるかに古い生物を二体殺したことによる影響が、全く計り知れないことでした。

ウギンはそれに対する仮説のみもっているが、あくまで仮説でしかないこと。

「何一つ定かではない。我が知る限り、かつてエルドラージの巨人を殺せた者など存在しない。エルドラージとは何か、うち二体が死んだならば何が起こるか、それについての仮説は持っておる。だがその成り行きも、おぬしら全員が死して遥か未来まで生じないであろう。従っておぬしらは、望むならばこれを勝利と受け取って構わなかろう。我としてはあれらの残骸を研究し、未来に備えるとしよう」

ジェイスの友人達は不平の声を発した。

「でしたら、俺も一緒にやらせて下さい」 ジェイスは言った。「エルドラージについての仮説を教えて下さい。一緒に――」

(中略)

「それらの問題をおぬしが追求するのを止める気はない。とはいえ心しておくが良い、ソリン・マルコフとニコル・ボーラスは我よりも遥かに邪魔に対して寛容ではないと」

 

研究のため、巨人の死骸に触らぬよう警告し、ウギンは空へと消えていきました。

「正義と平和のため」、そして「すべての次元の生命のため」、この地に残り復興に尽力するギデオンとニッサ。

まだ足の動かないチャンドラも、しばらくはここにとどまるだろう。

ジェイスは、ギデオンの目をまっすぐに見つめ、自分の役割を口にします。

「俺達は三体目の巨人を追跡する方法も、何処へ行くかを推測する方法もない。でも、ウギンの仲間は残っている。ソリンとナヒリ。俺はイニストラードへ行って、ソリンを見つけるつもりだ。そいつがウギンよりも助けになってくれるかはわからないが、ウギン以下ってことはないだろう」

ギデオンはゆっくりと頷いた。

「君の決定を信じる。いつ出発できる?」

ジェイスの目を見て彼は尋ねた。

 

「今日だ。物資を集めてソリンについての知識を得て、そうしたら出発する」

そして、舞台はイニストラードへ…

 

次の世界を想うエルフ

ニッサは、ゼンディカーの復興のために奔走していました。

ゼンディカー人に物資を配り、ギデオンとともにエルドラージを掃討し、そして皿洗いまで…。

しかし、ふとした瞬間に感じるのは、ポケットの重み。

 

彼女が吸血鬼から預かった、4つの種。

 

 

 

ニッサはその日、あのエルドラージたちを打ち倒した力線の象形を訪れていました。

その激闘は、もう遠い昔のように感じられる出来事。

ゼンディカー人の小さな捧げものが置かれている、象形の端。

彼女はここに、ゼンディカーの魂を感じるのでした。

象形の線を踏まないよう気を付けながら、彼女は中心点へと向かった。何もない大地、その三角形の頂点に立ち、彼女は袖をまくり上げた。

大地に膝をつくと肩から緊張が抜け、体中が温かい緑色の微光に包まれた。

その時が来た。ニッサは地面を掘り始めた。

 

植物それぞれの大きさを考え、種を植えていくニッサ。

樹は最初に地面を突き破り、弱った旅人を木陰で守るだろう。

そして、枝はエルフの住処になる。

花はたちまち果実となり、ゼンディカーの人々を潤すに違いない。

今、その手に種の包みを持ちながらも、ニッサは新たな森が形を成すのが見えた。

いつの日か、それは自分が夢見た姿になるだろう。

いつの日か、それは広く、高く成長するのだろう。

いつの日か、それは豊かに茂って力に満ちるのだろう。

いつの日か、それは頑丈な茨に守られるのだろう。

だけど、その日まで誰がそれを守ればいいの? 今と、いつかを、誰がゼンディカーを見守ればいいの?

 

「あまり自信はないけど、それのせいで離れられないのね」

チャンドラの声にニッサははっとした。

 

チャンドラは、ニッサの横に腰をおろしました。

ニッサが見たのは、彼女の正直そのものを映すような琥珀の瞳。

彼女の思っていることをすべて映し出し、それを余すことなく伝える瞳。

ニッサは、彼女に対しては素直に話せることに、不思議な心地よさを覚えるのでした。

ニッサは紅蓮術師を見て、説明しようとした。

「世界は本当に壊れそうだったの。今も、上手くいかなそうな事は多いし、危険も多い。次に何が起こって、どんな姿になろうとも、それがどんなものになろうとも、その成長を助けたい」

「きっと、すごいのになるわ」 チャンドラは微笑み、頭の下に両手を置いて柔らかな草に仰向けになった。

「私はそれを見逃したくはない」 ニッサは言った、はっきりとその声を発したことに彼女自身驚いた。

「その時は、私はここにいたい」

「その気持ちはわかるわ」

「それと」 そうしなければならないと思い、ニッサは付け加えた。

「私はただ見ているだけじゃ嫌。守りたい。誰かここにいないといけない。守らないといけない。側にいないといけない。私にはできるし、そうしたい」

 

それは、ニッサの素直な気持ちでした。

自分はここに残って、ゼンディカーの復興を見届けたい。

しかし、気がかりなのはゲートウォッチのメンバーたちでした。

ギデオンとジェイスは、自分の思いを理解してくれるだろうか?

チャンドラはそんな不安に、笑って応えます。

「ギデオンとジェイス? きっと大丈夫よ。あいつら、あなたを逃がしはしないから」

ニッサは息を吐いた――良かった。心配していたのはそれだった。自分達はそれぞれ誓いを立てたのだから。

「あいつらね、私をレガーサから連れ出しはしなかったの。でも結局私はここへ来ることを選んだ」

ニッサはチャンドラを見た。

もしチャンドラがゼンディカーに来てくれなかったらどうなっていたか、想像できなかった。想像したくなかった。

「来てくれて、本当にありがとう」

「私、もう少しで来ない所だったの。私、向こうで生徒が沢山いたのよ、知ってる? 学校の先生だったの。修道院長ね」

ニッサは驚いたように、眉を上げた。

「私がそんな仕事をしてたなんて変でしょ」

「別に変には聞こえないわ」 ニッサは言った。

「初めて会った時からわかってた、あなたは生まれつき何かすごく大きな力と繋がっているって」

チャンドラは微笑んだ。「で、だからこそ私はそこを離れたの」

彼女は肘をついて身体を起こした。

「留まって、紅蓮術師の才能のある生徒に教えることもできた。いい仕事もしてきたのよ。少なくとも彼ら全員は、本当に凄い自己を維持する炎の渦を、どうやって作るかを知ったもの」

ニッサは笑い、そして長いこと笑っていなかったと気が付いた。

チャンドラはこんなにも簡単に微笑ませ、声を上げて笑わせてくれる。

彼女はそれを楽しんだ。

 

そして、チャンドラは続けるのでした。

自分が修道院から離れたのは、自分がいなくてもきっと大丈夫だとわかったから。

逆に、自分にしかできない、他のことがあると信じていたから。

だから自分はここに来たのだと。

ニッサは、あの時片手を上げ、誓いを立てたギデオンの姿を思い出しました。

『私達は誓わねばならない……多元宇宙を脅かすあらゆる脅威へと共に立ち向かうために。私達にしかできない事だ。これは私達の力が、灯が担うべき使命だ』

 

「一緒なら、私たちはできる」

チャンドラはまるで心が読めるかのように、ニッサに告げるのでした。

チャンドラ、ジェイス、ギデオンと共に過ごすのは楽しく、浮かれるほどで、そして面白おかしい時すらあった。

もしこの三人のプレインズウォーカーと別れたなら、ゼンディカーから離れると同じほどに苦しいだろうと実感し、そして驚いた。

世界の魂以外のものとこんなにも深い繋がりを感じたことは長いことなかった。

だが今、もう三つの繋がりを感じていることを否定するものはなかった。

新しい、だが力強い繋がり。

大切にしたいと思う魂がもう三つ、そしてその先の、自分達四人が共に守るべきの何万もの。

 

ニッサは、自分の心の変化に、驚きながらも、それを認めるのでした。

きっと、ゼンディカーには、自分がいなくても成長していける。

そして、成長を見届ける者たちもいる。

彼女は、タズリ、ムンダ、セーブル、そしてキオーラを、かつての同盟者たちの顔を思ったのでした。

彼女は絹の包みの上層を開き、四つの小さな種を露わにした。

一つまた一つ、彼女はそれらを掘った穴へと横たえた。

そうしながら、彼女は夢を囁きかけた、いつの日かそれらが成長する森の。

彼女は語りかけた、それらがやって来た世界を、かつてのゼンディカーの姿を、何が起こったかを。

そして世界を救いに来てくれたあの紅蓮術師を、テレパスを、恐れ知らずの指揮官を。

この世界を、種が安全に育つ地にしてくれた者達を。

最後の一息とともに、ニッサは掌を地面に押し付け、大地に触れた。

もう一つやる事があった。ゼンディカーの魂へと触れた。

彼女はそれに語りかけた、種を頼むと。

だがそれが応えるよりも早く、彼女を引き込むよりも早く、取り囲んで抱き寄せるよりも早く、彼女は手と、魂を放した。

 

「また会いましょう。約束するわ」

 

彼女はそう言って立ち上がり、知る世界から離れ、待っている世界へと向かっていった。

 

今回はここまで

ゲートウォッチの誓いの物語

完!!!

 

いや、かっこよすぎるでしょ最後の絵。

世界を救った勇者感ハンパないっしょ。

ゲートウォッチといえば、「ゲートウォッチ招致」のイラストが有名ですが、私はこの「ゼンディカーの復興者」の絵を推したいですね!

戦乱のゼンディカーの話の中で、バラバラだった四人が結集し、お互いにお互いの良いところを認め合い、自分に足りない部分を必要とし、やがて勝てるはずのなかった巨悪を討ち倒す。

いやほんと

アベンジャーズかな!?!?

mtgのストーリー好きな人がもっともっと増えれば、映画化できるんじゃないかなァ!?!?

というくらい、濃い内容のお話です。

 

さて、「戦乱のゼンディカー」→「ゲートウォッチの誓い」のメインストーリー終了につき、次はイニストラード次元ですね。

今回対処されなかった最後にして最強のエルドラージ「エムラクール」は、なぜイニストラードに来訪するのか。

狂気にさいなまれた大天使アヴァシンと、生みの親のプレインズウォーカーソリンとの絆の「結末」。

そして、このブロックで未登場ながら、誰よりもゼンディカーに深くかかわったナヒリのストーリー。

こちらも、知れば知るほど感動できるお話がたくさんあります!!!

その前に、上述のようなオタク話を私が語るだけの回を設けたりしようかな~なんて妄想もしています。

 

次回もぜひお楽しみに!!!!

 

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*出典*

読み物:ゲートウォッチの誓い

Posted by オクハラデン