「ジェイスの誓い」の背景ストーリー

2020年5月28日

はじめに

さて、前回前々回からお届けしているのはこのコーナー。

 

「MTG初心者にこそ知ってほしい、ゲートウォッチの誓い」シリーズ

 

今回は第三弾!

三番目に誓いを立てた、ジェイスの誓いをご紹介します。

 

予想外の来訪

戦乱のゼンディカーブロックでは、ジェイスは10のギルドがひしめくラヴニカ次元において、すべてのギルドの協調をできるものとする、「ギルドパクトの体現者」となっていました。

つまりまぁ、ラヴニカのめっちゃ偉い人、みたいな。(ざっくり)

漂う厨二感

 

予定は次から次へと押し寄せ、食事を摂るのも忘れる忙しさ。

にもかかわらず、ジェイスはこの日、予定にない訪問を2人から受けるのでした。

 

1人は、以前”協力関係”…いや、それ以上の関係にあった、リリアナ・ヴェス。

リリアナは、過去の裏切りを謝罪するとともに、関係の修復と、自分の影に潜む悪魔を討伐することを願い出ます。

ですが、ジェイスは彼女との苦い思い出から、どうにも心の底から信用ができないのでした。

余談ですが、ここでは少しだけデートっぽい雰囲気を見せるジェイスとリリアナがお楽しみいただけます(?)。

 

「そこのあなた!」 薔薇の籠を持った、小柄で肉付きの良い女性が声をかけた。

「あなた! 恋人さんにお花はいかがですか?」

「彼女はそんなんじゃ――」

「そんな事は言わないものですよ、お客さん!」 目配せとともにその女性は言った。

「ですが女性はいつも一輪の花という贈り物を喜ぶものですよ」

「だから違うって――」

リリアナは彼の脇腹に肘鉄を入れた。

「勿論です」 ジェイスは言った。

彼はその女性に一ジノを手渡し、釣りはとっておくように告げ、その薔薇をリリアナへと仰々しく差し出した。

リリアナはその花をそっと受け取り。じっと見つめた。瞬時にそれは萎れて乾き、黒く枯れた。彼女は漆黒の髪にそれを差し、ジェイスへと微笑んだ。

 

デートのリリアナ

 

そして、そのリリアナとの夕食の席に現れたのが、もう一人の予定にない来訪者。

血と土にまみれた鎧をまとい、お世辞にも夕食の席にはそぐわないと言える風貌の大男は、二人の卓に来るなり告げるのでした。

「ジェイス・ベレレン」 彼は言った。「貴方の助けが必要なんです」

その男はジェイスが聞き及んでいたプレインズウォーカーの描写に一致していた。尋常でない規則正しさをもってラヴニカへと次元を渡って来ては去るという。

 

ギデオンと名乗るその男は、ゼンディカーの海門が陥落したこと、エルドラージ撃退の鍵は面晶体が握っているらしいこと、そしてドラゴンの迷路の謎を解いたジェイスにその助力を願いたいことを説明しました。

エルドラージ解放にかかわりのある人間として、ジェイスは彼の協力に賛同します。

しかし、それは同時にリリアナの願いには応じられないことも意味していました。

一緒にゼンディカーへ来ることを願い出るジェイスの努力も虚しく、彼女は髪に挿していた薔薇を地面へ投げ捨てると、踵を返し彼の元を歩き去ったのでした。

ジェイスは身を屈めてその萎れた花を拾い上げた。ギデオンの重い足音が背後に近づいてきた。

「終わりましたか?」 ギデオンが言った。

ジェイスは彼へと辛辣な言葉を浴びせようと思いながら振り返った。

だが真剣そのもので疲れきったギデオンの表情に、ジェイスは怒りを奮い起こすことができなかった。

何にせよ、リリアナが持ってくるのは悪い知らせ、彼はよく知っていた。

 

「終わりました」 ジェイスは言った。「来て下さい。貴方を手当てしてくれる腕のいい癒し手を知ってます」

「時間が無いのです」 ギデオンは言った。「行かねばなりません」

「俺は朝までこの次元を離れません」 ジェイスは言った。

「引き継ぎをして、資料を持って来ないといけません。それと貴方も! 疲れて死んでしまったらゼンディカーの助けになんてならない。幾らか休む必要があるでしょう」

 

ギデオンはしばしの間自身の姿を見下ろしていた。

「そうですね」 ようやくギデオンは言った。

※おそらくこのあと訪れたであろう癒し手さん

 

ウギンの教示

ゼンディカーへ移動したジェイスが目にしたのは、以前訪れた時よりもはるかに凄絶な光景。

そこかしこにある死体は、部分的に崩壊して消失し、頭や脚や腕があったであろう場所に塵の山を残していました。

面晶体の謎に迫っていた「ジョリー・エン」という仲間と知識を共有したジェイスは、完全なる謎の解明のため、ジョリーと二人で「ウギンの目」へと出発します。

 

しかし、その道中で彼らは目にしたのでした。

圧倒的な威圧感を誇るエルドラージタイタン、ウラモグの姿を。

 

誰かが、海門のギデオンの元に、ウラモグの接近を知らせなくてはいけない。

ジョリーが海門に戻り、自分はウギンの目へ向かうと提案するジェイスは、危険すぎると反発するジョリーに精神魔法をかけると、自らリスキーな選択肢を選びます。

魔法が解けたジョリーの目の前には、人っ子一人いない荒野。

事態を理解した彼女は地面の石を蹴ると、海門へ走りだすのでした。

「ジェイス……あんちくしょう」

彼女は溜息をつき、かぶりを振った。

 

ウギンの目へたどり着いたジェイスは、そこで「精霊龍ウギン」と邂逅します。

 

ウギンの抽象的な話しぶりにいらだちを覚えながらも、ジェイスは在りし日の完全なる面晶体の姿、そしてそこにウラモグを閉じ込める作戦を教示されるのでした。

「ウギン、俺にできることを教えて下さい。ウギン、どうやれば力になれるかを教えて下さい」

目が脈動した。ジェイスの意識が薄れ始めた。

そして消えた。ウギンの幻影も、ジェイスのそれも、全てが一度に消えた。部屋とドラゴンだけが残っていた。

「真にそれを望むか?」

「そのために俺は来たんです。俺はエルドラージの解放に加担しました。奴らを止める役割を持てるなら、やります」

「面晶体のネットワークは傷を負っておる。ウラモグを面晶体の輪で囲み、封じねばならぬ。おぬしの友人らはエルドラージの巨人を殺すのでなはなく、閉じ込める力にはなれるのかね?」

「そう思います」 ジェイスは言った

 

確かなる作戦とともに、ジェイスはギデオンの元へ帰還します。

海門を取り戻したギデオンたちは、まさにジョリーからのウラモグ到来の知らせを受け、次なる作戦を練っている途中なのでした。

そして、その作戦指示のさなか、部屋にノックの音が響きます。

「司令官、あなたが探していたであろうものが見つかったと思います」

イービは背後を手招きし、そしてギデオンは扉の向こうに何か青いものが動くのを垣間見た――見覚えのある青色……

 

「ジェイス!」 ギデオンはようやく息をすることができた。

 

精神魔道士が敷居をまたいだ。「俺が予測した通りにやってるみたいだな」

ギデオンは距離を縮め、小柄なその男を抱きしめると肩を叩いた。

 

ジェイスは、その場にいたニッサの力を借り、ウギンに教わった通りに面晶体を配置することを実行します。

絶対に失敗が許されない作戦。

ジェイスは、脳内で何度もシミュレーションを行います。

テレパスで指示を飛ばしながらも、想定の通りに配置を完了したジェイスとニッサ。

しかし、完璧だったはずの配列に、機能し始める兆しが現れないのです。

コー達が綱を所定の場所に締めると、ニッサは面晶体を完璧な列へと突く呪文を与えた。

そして……

 

ジェイスは息をのんだ。

 

光が。何故、光らない?

 

輪は想定されたようには光らなかった。

そして巨人はその束縛の内に入ってはいなかった。

ギデオンはウラモグが振るった触手一本を屈んで避けた。「まだなのか?」

「何故光らない?」 ムンダが声を上げた。

ジェイスは瞬きをして今も掌の上に浮かぶ縮小模型を見た。そして幻影の扉を開閉した。輪は輝いた。彼は幻影と現実の輪を見比べた。

 

何故光らない?

足元がぐらついた。

 

何を見逃した?

 

彼の危機を救ったのは、ゼンディカー次元とのつながりにより、連結のずれを見抜いたニッサでした。

彼女は、ジェイスと精神を共有し、一つの面晶体が正しい位置から傾いていることを指摘します。

ニッサの見ている世界を垣間見、いかに自分が小さい世界を見ていたのかに気づかされながらも、彼女がその面晶体を正しい位置に誘ったとき。

 

青い光がひらめき、面晶体の罠が起動したのでした。

 

歓声に沸く一団。

しかし、その後悪魔のプレインズウォーカー、オブ・ニクシリスによってあえなく面晶体の連結は解かれるのでした。

悪魔に追い詰められ、捕縛されるニッサ。

ジェイスも精神魔法や自分の分身を召喚しながら対抗しますが、ニクシリスによってとらえられ、地面に叩きつけられたのでした。




 

ジェイスの誓い

ニクシリスの手によって捕縛されたジェイス、ギデオン、ニッサ。

そこに現れたのは、一度はゼンディカーへの旅の誘いを断ったチャンドラでした。

捕まった3人の中で、唯一意識のあったジェイスは、苦悶の中チャンドラへと指示を飛ばします。

 

『チャンドラ。あいつ……あいつの、エル……ドラージの、ドローン』

こだまする声が言った。それは頭痛のように響いた。

『や……れ、あの、ドローンを』

 

ジェイス。ジェイスは――意識がある!

 

『ほ、ほ、ほの』 彼女の心の中、ジェイスの言葉は不明瞭だった。『ほの、炎、で』

 

ジェイスは――何とか、意識を保っている!

 

『でき、ない……』 チャンドラは鈍い思考で返答した。

 

『馬鹿言うな……』 ジェイスは彼女の脳内に言葉を成そうともがいた。チャンドラもまた、それを吸収するのは同じほどに困難だった。

 

『馬鹿言うな、できる……くせに。起きろよ』

 

そしてチャンドラは悪魔の攻撃による苦悶の中、ジェイスの指示を実行し、3人を解放しました。

4人となったプレインズウォーカーたちは、その持てる力を結集し、ニクシリスを撃退すると、捕らわれた場所から脱するのでした。

 

脱した先、そこで目にしたのは、荒廃したゼンディカー。

ひざを折るニッサ。

そのニッサに、かける言葉を失うギデオン。

そんな中、築き上げた作戦が完全に瓦解したのを認識したジェイスは、この次元から離れることを提案します。

 

「俺達の力を必要としてる世界は、ゼンディカーだけじゃない」

 

そして、その言葉をきっかけに、ギデオンは皆がこの次元を救うため、誰も去っていないことを悟り、誓いを立てます。

ギデオンは突然、驚くべき事実に気が付いた。ここにいる誰も、立ち去っていない。誰一人として。ジェイスは明らかにそれを望んでいたというのに。

だが、他の皆を置いて去るなどという事はしないと。

「君は去れただろう」 彼はジェイスへと言った。

「私達を納得させようとするのではなく、去れたはずだった。チャンドラ、君もだ。君をここに縛り付けるものは何もない。私達全員、ここを離れることは可能だった」

「私は誓おう。海門のため、ゼンディカーとそのあらゆる人々のため、正義と平和のため、私はゲートウォッチとなる。そして新たな危険が多元宇宙を脅かした時には、私はそこに向かおう、君達三人とともに」

 

ギデオンの誓いに、賛同するようにうなずくジェイス。

続いて誓いを立てたニッサに続き、ジェイスは一歩踏み出します。

 

ジェイスはチャンドラを見ながら、一歩進み出た。

「ギデオンの言う通りだ。俺達四人には特別な力がある。俺達にだけ与えられた機会が、責任とすら言ってもいいものがある――こんな脅威と戦うためにその力を振るうんだ。エルドラージ、確かに、だけど一つの次元に留まらない脅威はまだ他にも存在する。プレインズウォーカーはどんな危険からも逃げられる、なんて言われていることは知っている。けれど俺達は逃げずに戦える者でもあるんだ」

 

「きちんと言って」その顔に浮かべた憤怒をかすかな微笑みで解き、ニッサは言った。

「何を?」

「誓いみたいに、きちんと言って」

 

ジェイスは彼女へと笑みを返した。「いいとも。俺は……」

彼は額に皺を寄せ、そしてその唇から笑みが消えた。

「私は想像を絶する脅威を見てきた。エルドラージが脅かしているのはゼンディカーだけではない。もし私達がここを見捨てたなら、エルドラージを放り出したなら、あれらは次元から次元へと食らいながら進み、やがてはラヴニカまでも不毛の地と化すだろう。今この時にも、エムラクールは次に貪る次元を探し、久遠の闇を彷徨っているのかもしれない」

 

ジェイスは決意とともに頷いた。

 

「そうはさせない。多元宇宙の繁栄のため、私はゲートウォッチとなる」

 

今回はここまで

この上に書いてある、先に誓いを立てたニッサが微笑みながら「誓いみたいに、きちんと言って」って言うのめっっっちゃすき。

ここまで読んでいただいた方にはもうお分かりかと思いますが、メンバーはみんな誓いを立てる「目的」が違います。

 

「正義と平和のため」に誓いを立てるギデオン。

「すべての次元の生命のため」に誓いを立てるニッサ。

「多元宇宙の繁栄のため」に誓いを立てるジェイス。

 

さて、最後は少し変わったルートから、このゼンディカーを救うための誓いを立てるチャンドラのお話です。

 

お楽しみに!!

 

 

*出典*

読み物:戦乱のゼンディカー

読み物:ゲートウォッチの誓い

Posted by オクハラデン