【ストリクスヘイヴン】第5回 血の化身との決闘【ストーリー】
はじめに
リリアナの導きにより、ストリクスヘイヴンの中心にてオリークの首領エクスタスと対峙したウィルとローアン。しかし、そのリリアナは強制転移魔法により、戦いの場から追放されてしまったのでした。
残されたのは双子のみ!
最終決戦の幕が上がる!
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血の戦い
キャンパスにもたらされた混乱を眺めながら、ルーカは学院に強固な防御態勢が揃ったことを感じました。
各学部長は共闘して生徒を守り、ドラゴンたちが空中から敵を焼きつくす。
彼は察します。
「自分の役割は終わった」と。
これはもう自分の戦いではない。
隣にミラを呼び寄せると、ルーカは踵を返して暗闇へと走り去った。
一方、エクスタスと相対したウィルとローアンは、招来された血の化身の力に圧倒されていたのでした。
激闘の中で、床へと投げ出されるウィル。
微動だにしなくなった片割れに、叫び声を上げるローアン。
そして、彼女を冷たい怒りが支配していったのでした。
恐怖や苦痛すらも圧倒する怒りが。
勝てないとしても、こんなことをしてくれた相手に、傷だけでも与えてやる。
宙に浮かぶ交錯へと意識を向けると、目を閉じたローアンはそれへ呼びかけます。
やがて流れ込む、夢見たこともない力。
全能で、自分やウィルを苦しめる者全てを焼き払える力。
その力とともに、なじみの稲妻を呼びだそうとした瞬間。
不意に彼女を苦痛の波が襲ったのでした。
曇った耳に届くのは、エクスタスの嘲りの声。
ただの子どもが、そのような力を使えるはずがない、と。
すぐに虚ろの感覚に襲われ、倒れ込むローアン。
そのそばへ、這いながらも進むウィルが囁いたのでした。
ローアンは咳き込み、目を開けた。「ごめんね」
「僕は大丈夫だ。ローアン、頼むから起きてくれ」
ウィルはにじり寄り、ローアンの片腕を自分の首にかけた。火花が散って彼はびくりとしたが、放しはしなかった。
「一緒に助かるんだ」
「ごめんね。喧嘩のこと。メイジタワーの。虹の端の。本当に、ごめんね」
「僕の方こそ。ごめん」
ウィルはうめき、ローアンを引き上げて立たせ、扉へと向かっていった。
詠唱を行うエクスタスを背に、脱出を図ろうとする二人。
しかしその瞬間、ウィルにとある考えが閃きます。
思い出したのは、メイジタワーでの白熱した試合。
そして、招来された血の化身は、その争奪されているマスコットと同じだ、と。
アレと同じならば、「奪い取れる」と。
ウィルはローアンへと向き直ると、彼女の目をまっすぐに見つめながら、協力を仰いだのでした。
彼女は、片割れの言うことを理解できないながらに、エルドレインでガラクを救った彼の行動を思い出します。
ウィル、私のウィル――物静かで、頭が良くて、気難し屋の片割れ。いつも正しかった。今回も、きっと正しい。
「ローアン?」
鋭く突き刺すような苦痛に顔をしかめながら、ローアンは内なる魔力の最後の火花を引き出した。
「そうね、わかったわ。勉強の成果を教えて」
ウィルはにやりとして、エクスタスと血の化身へと向き直り、両手に赤い光をうねらせた。
戦いの果てに
ウィルが放ったのは、よく使われる氷の魔法とは異なる呪文。
円と化したその赤い光は、血の化身の兜を取り囲みます。
「確かにあれは大きいかもしれない」
ウィルは歯を食いしばり、両手を震わせて呪文を維持した。
「けれど召喚された生物だ。つまりこの呪文があれば、支配できる!」
異変に気づいたエクスタスは、これを退けようと黒い魔法を放ちます。
ウィルとエクスタスの戦い。そして、消耗したウィルはこれに負けようとしている。
そう悟ったローアンは、彼の肩へと手を置いたのでした。
ウィルが正確性を高めたなら、自分は大いなる力を。
そのエネルギーを一滴残らず片割れへと注ぎ込むと、化け物を囲んだ光輪は輝かしい円を成したのです。
「ガキが! 一体どうやって――」
血の化身が巨大な手を伸ばして彼を掴むと、その言葉は途切れた。無残な粉砕音が弾け、エクスタスは黙った。
「やった!」 ウィルが叫んだ。「ローアン、上手くいったよ!」
しかし、その声は上手くローアンに届かぬほどに、彼女は力を使い切っていたのでした。
怒りの咆哮を上げながら、交錯へと引かれてゆく血の化身。
断末魔の叫びを上げた化け物は、最後とばかりに巨大な剣を振るいます。
両目を見開き、ローアンを押しのけるウィル。
床にたたきつけられた剣。
そして、交錯の中へと消えゆく怪物。
その先には、片割れが気絶して力なく横たわっていた。
ウィルは生きている、潰されても真二つに切り裂かれてもいない――だがその喜びは、不意の衝撃に揺れて立ち消えた。
彼の右脚、その膝から下は失われていた。
すぐさま、広間は崩壊を始めます。
ローアンが片割れへと手を伸ばした瞬間に、崩落する床。
しかし、それを優しい光が包んだのでした。
魔法の源は、入り口に駆けつけたナサーリ学部長とリセッテ学部長。
教授たちの協力で二人が広間を出た瞬間、背後でそれは完全に崩れ、塵があたりを覆ったのです。
「やったよ」 ウィルが呟いた。
「ロー、やったよ」 その瞼が震えて閉じた。顔からはひどく血の気が失われていた。
「動かないで」 リセッテがウィルへと屈みこんだ。「ショックを受けているから」
「ウィルは助かりますか?」
(中略)
「彼はきっと助かる」 ナサーリがローアンの肩に手を置いた。
「これだけいろいろなことがあったのだ。不幸中の幸いといったところだな」
学院の復興
それから5週間が経ち。
キャンパスに鳴り響く鐘の音を聞きながら、物事はほぼ平常に戻ったとウィルは感じたのでした。
杖を持つ彼の膝下から伸びるのは、氷と鋼の格子細工。
リセッテ学部長が提供してくれる生きた木の義足を断り、彼は自らこの足を選んだのでした。
彼の具合を気遣うローアンの言葉に、ウィルは肩をすくめて答えます。
幻肢痛などには悩まされながらも、もう慣れてきたと。
それを聞いていたローアンもまた、ひどく痩せたような、顔色も悪くなった様子だったのでした。
しかし、去り際に向けた片割れへの笑みは、心からのものだとわかったのです。
「あなたのこと、大好きよ。わかってる?」
「ああ。僕も大好きだよ」
***
カズミナの梟は宙を舞い、ストリクスヘイヴンを見下ろしていたのでした。
あの事件の痕跡を、もうほとんど残していない学院を。
過去にこの場所はもっと酷い出来事に耐えてきた。
この先も耐えていくのだろう、と。
彼女は、ルーカを追う鳥へと意識を向けます。
その眷者はミラとオリークの残党数人とともにさまよっていた。食料と隠れ場所を探しながら、何かを企んでいるのは間違いなかった。
だがあの男を監視する価値はもうない。今、カズミナが注目しているのはローアンの方だった――あるいは双子の両方か。
***
エクスタスにより大陸の果てへと飛ばされたリリアナは、何日もかけて学院へと戻ったのでした。
そして、一連の出来事に、教授陣はリリアナの警告を聞くべきであったことを認めます。
同時に、無期限で大学に残らないか、とも。
彼女はこれを、一つの但し書きとともに承諾したのでした。
授業開始の前、鏡を見つめる彼女にとって、今は信じられないような状況。
目の前にあるのは、生徒、そして試験。
もう悪魔も、大いなる策略も、死もない。
リリアナは調査日誌を閉じ、壁の本棚に置いた。今の私を、あの男は誇らしく思うのかしらね。その考えに、不本意ながら彼女は微笑んだ。
ようやく講義室までやって来ると、中に入る前にリリアナは一瞬だけ立ち止まり、集中した。その姿を見て生徒たちは席へ急ぎ、紙のこすれ音や怠惰なお喋りは静まり、視線が集まった。
リリアナは教壇に立った。
「生徒の皆さん、屍術入門へようこそ」 教室にその声が響き渡った。
「リリアナ・ヴェス教授です、よろしく」
今回はここまで
ウィル…(´;ω;`)
まさかの戦闘中に片足を失うという…。なんてこったい…。
ローアンも力の代償にダメージを受けていますし、せっかく双子の絆を再確認したのに…と泣きそうになりますね。
とはいえ、大きな戦いを経験した彼らは、プレインズウォーカーとしてさらなる成長を遂げるのでしょう!
公式ストーリーでは、「家に帰る」ことも少し示唆されています。
今の姿をケンリス王が見たら、一体どんな反応を…?笑
あと、メイジタワーの件がまさかの伏線になってるって…だれがわかんねんw
そして、リリアナはついに自分を偽ることを止め、教授として、戦いのない、死のない人生を新しく始めることになります!
今の私を、あの男は誇らしく思うのかしらね。
その考えに、不本意ながら彼女は微笑んだ。
ここ泣けるやん?
ギデオンも天国で微笑んでるよ…きっと…(´;ω;`)
というわけで、大いなる傷跡と、示唆される明るい未来と、そして少しの謎を残しながら終わったストリクスヘイヴンの物語、いかがでしたでしょうか!?
新旧プレインズウォーカーの「これから」が描かれて、非常に素敵なストーリーでしたね!
次回もお楽しみに~
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