「ゲートウォッチの誓い」の背景ストーリー 前編

2021年6月19日

目次

はじめに

「MTG初心者にこそ知ってほしい、ゲートウォッチの誓い」シリーズ

前回までで、ゲートウォッチ4人の「誓い」までの背景ストーリーをご紹介しました。

そして今回から最終章!

結成されたゲートウォッチが、ゼンディカーを救うまでのお話です。

 

最後の作戦

ジェイスは考えていました。

エルドラージの巨人は、今や2体となり、戦力も減ってしまった今、面晶体の罠でこれらを捕らえることは不可能。

そして、ゼンディカーを蹂躙した2体が、他の次元に移動することこそが最も避けるべき事態。

ならばどうするか。

ウギンはなぜかそれを嫌がったが、他に方法がない。

 

ウラモグとコジレックを、今ここで殺す。

 

ニッサと協力して編み出した作戦。

それは、力線の力を使い、ゼンディカーへと巨人たちを本体ごと引きずりこむということ。

そして次元そのものに、2体を貪らせる。

当の立案者であり、遂行のシミュレーションを重ねるジェイスは、この作戦をこのように形容します。

「ごちゃごちゃで、死に物狂いの、全体的に不明点と仮定と臨機応変だらけの作戦だ」

 

ゼンディカーを救う、唯一の作戦。

ギデオンは、ジェイスの肩を叩き、声をかけるのでした。

「戦うか、死ぬか。私好みだ」 ギデオンは声を上げた。

「私達には作戦がある。そして力と、その完遂を見届けようという決意がある。さあ、行こう!」

 

以前までは反発していたキオーラは、前向きではないながらも、この作戦に協力します。

「あなたはどうするの?」 そう尋ねたのはキオーラだった。

「俺は調整係だ。皆をどこに配置するか、ニッサがいつ呪文を始めるか、状況が悪くなってきたらどうするべきか」

「ああ、指揮役ってことね」 キオーラは嫌気を隠さず言った。

「違うよ。指揮はギデオンの仕事だ。俺のは管理だよ」

「それはもっと嫌だわ」

 

チャンドラ、ジョリーも配置につくべく、ジェイスの元を去り。

残されたのは、ニッサ。そして自分を信頼の目で見つめ、敬礼する分隊たち。

 

「何か言わなきゃ」 ニッサが囁いた。

『君が言ってくれよ』 ジェイスは彼女へと思考を送った。

『戦いが始まったら、彼らに命令を出すのは私じゃないわよ』

ジェイスはその軍勢を――彼の軍勢を――見渡し、そして彼らがこれから受け取る過酷な現実の重さを推し量った。説明はできる。あの図表を描き、あの論理を説明し、比喩と予測を伝えることはできる。

そのどれも、彼らを戦いへと、死地へと鼓舞することはできない。そうではない――

ああ、その問題を解決する方法は一つ。

『ギデオンならば何と言うだろう?』

ジェイスは微笑んだ。決まってるよな。

「ゼンディカーのために!」

彼はその言葉とともに、拳一つを宙に掲げた。それはギデオンの逞しい拳ではなく、響き渡る戦鬨でもなく、鉄の信念もなく、ジェイスには薄く感じられた。

その何も問題ではなかった。兵士達は武器を高く掲げ、声を合わせて叫んだ。

「ゼンディカーのために!」

 

ジェイスは振り返り、巨人達を見上げた。

友と仲間達がその影の下の谷を目指し、敵の大群の最中へと展開しながら、彼の作戦を行動に移そうとしていた。

 




決戦の海門

ギデオンとチャンドラは、囮部隊として2体の巨人を誘導します。

ギデオンは輝くスーラをその手に掲げ、チャンドラは燃え立つ腕で宙を切りながら。

ふたりの向かう先には、ジェイスと、そして作戦の鍵を握るニッサが待つ、小さな丘。

そしてキオーラは、二人に迫りくるエルドラージドローンたちを、波の力で追いやっていたのでした。

 

ついに二体の巨人が正しい位置に着いた時。

ジェイスの作戦が。

不安定で、予測不能なジェイスの作戦が始まったのでした。

その瞬間、全ての模様が正しい位置に現れた。激しい緑色の炎から成る、三分割された象形が直径百フィートに渡って谷の地面に現れた。

何マイルにも及ぶ純粋なマナの曲線がその象形から弾け、巨人を取り巻くように襲いかかり、引き寄せた。

(中略)

巨人達の悲鳴は地殻変動をも起こすほどだった。大地は滑り、波打ち、うねった。

地割れが弾けて地形の破片が辺りに散り、地表は勢いよく持ち上がった。

エルフの呪文は直接巨人に接触しており、これは巨人からの返答だった――世界を壊してやるというような。

“ジェイスが発見したウラモグとコジレックを現実世界に繋ぎとめる力線を、ニッサが辿って現実のものとした"

 

ゼンディカーの力線に、巨人を喰らわせんとするニッサに、2体のエルドラージはその力をもって抵抗します。

それは、久遠の闇にいる”本体”からの呼応。

その時チャンドラが見たのは、ゼンディカーの空がエルドラージの肢と、触手でおおわれる姿。

次元全体が、エルドラージの巨人によって覆いつくされたかのような光景。

 

四方から襲い来るエルドラージの群れを見ながら、チャンドラは焦っていました。

敵が、あまりに強大すぎる。

ニッサは…きっともうもたない。

チャンドラの拳が握りしめられた。自分は最上の餌としての役割を果たした。そして、ずっと決定的な力になる時だった。

「ジェイス! あいつらを倒させてよ! 燃えがらにしてやるわよ!」

『駄目だ!』 ジェイスは強く言った。大声で、そして彼女の脳内に向けても同時に。

『忘れたのか? 巨人かニッサに少しでも傷を与えたら、力線が切れて象形の呪文が壊れる。逃げられるだろうが!』

チャンドラは片手を握りしめ、それは白熱した炎と化した。

「一撃でやればいいんでしょ」

『駄目と言ったんだ』 ジェイスは思考を送った。

『エルドラージを押し戻せ!』

 

そして、この作戦の失敗を感じたのは、キオーラも同じででした。

このままでは、巨人が力尽きる前に、ゼンディカーが枯れ果ててしまう。

自身の故郷の死。それこそが最も避けるべき事態。

巨人たちは、このまま次元に放ってしまえばいい。

そして、いつか戦う時に、また倒せばいい。

しかし、そんなキオーラの意見も、ジェイスは聞き入れようとしないのでした。

この哀れな精神魔道士はわかっていない。自身の誤った考えに固執している、それが自分達全員を死なせることを意味していても。

「私達も一つの世界を破滅させようとしている」 キオーラは言った。

「この世界が壊れようとしている。すぐに私達もそうなる」

「作戦は続行する」 ジェイスは確信とともに言った。

彼女は二叉槍を握りしめ、海へと助力を願った。

「ベレレン、もしあなたが終わらせる気がないのなら、私がそうしてやる」

 

ジェイスは、仲間たちの主張の中で決断を迫られていました。

自分の目の前のエルフは、持てるすべてで巨人たちを封じようとしていた。

チャンドラが、なにより耐えるニッサの姿を見て巨人たちを燃やさんと怒りをあらわにしている。

そして、キオーラはあろうことか、この作戦を終わらせるべく、ニッサに向けて海の力を放とうとしている。

どこから、何を対処するのか。

その決断のすべてを、ジェイスは握っていたのでした。

『チャンドラ、これはできるか?』 ジェイスの焦る声が彼女の心に届いた。

ニッサとエルドラージの天空を交互に見て、チャンドラの拳が小さな太陽のように輝いた。

空を炎で満たしたいと、友を危険にさらす忌まわしき存在へ自身の憤怒を叩きつけたいと、死に物狂いにそう思った。

だがそれほどの、一つの爆発を起こせるかどうかは、自分自身にすら定かでなかった。

『たぶん!』チャンドラは思考を返した。

『断言して欲しい。今すぐだ』

チャンドラはニッサの顔が自分に向けられるのを見た。

緑色に曇ったその目がいかにしてかチャンドラを捉え、そしてこの混乱の中にあっても、ニッサは頷いた。

彼女はいかにしてか可能だとわかっていた。

そしてその時、信頼の絆に、チャンドラもそれが可能だと知った。

 

『断言するわ』 チャンドラはジェイスへ思考を返した。

 

ニッサに向けて放ったキオーラの呪文を、ジェイスが打ち消したその好機。

チャンドラは身体中の怒りを呪文に乗せ、巨人たちへ放ったのでした。

 

しかし、それでも足りません。

チャンドラは察します。

自分の怒りを以てしても、この巨人を焼き払うことは不可能だと。

じきにニッサの力も終わる。

自分の憤怒も尽きる。

そして、世界が死ぬのだと。

誰もが、ここで死ぬのだと。

 

そして彼女が目の端に捕らえたのは、鎧の男が自分に向かって駆ける姿でした。

ギデオンが岩場から飛び降り、降ってきた地塊をその身体で防ぐ様子を彼女はわずかに認識した。瓦礫が砕けて降り注いだ。

彼女はただ力の限りの炎を放つことだけに集中していた、巨人を燃やすには程遠かったにしても――

 

チャンドラは、肩に柔らかな手が置かれるのを感じた。

 

そして、世界全てのマナが自身へと流れ込むのを。

力線。ニッサはゼンディカーに満ち溢れる憤怒を集め、そして今、ニッサの接触によってその憤怒がチャンドラへと流れ込んでいた。

チャンドラは今やその焦点、ゼンディカーから巨人へと繋がる連結点だった。彼女はわかっていた、ニッサのようにそれを制御はできないと。だから、別のことを試した。

 

叫びを上げた。

そしてその叫びの中、彼女はゼンディカーの憤怒を一滴残らず、自身から呪文へと、炎へと注ぎ込んだ。

 

流れる燃料へと火花が落ちたかのように力線そのものが発火した。炎がチャンドラからマナの流れへと伝わり、空へと枝分かれし、力線の道を辿り、巨人を包んだ。

叫び続けていたのはチャンドラか、それとも彼女以外の全てか。

破滅的な橙色の咆哮と共に世界がひらめき、そして眩しい白色と化した。

両脚が力を失い、チャンドラは崩れ落ちた。

雷鳴、地獄のような熱風、そして空の酷い騒音が欠片へとちぎれた。

 

チャンドラは意識を失いながら思った、それは世界が死ぬ音に違いないと。

 

戦乱の終わり

キオーラが見たのは、灰の降り注ぐ景色。

立ち込める煙。地殻から上がる蒸気。

そして…静寂。

キオーラは、わずかな生存者を起こしていきました。

その中には、四肢を広げ倒れこむチャンドラの姿も。

彼女が見上げた空にある巨人の姿は、残像であることがわかったのでした。

そして、その煙の隙間から、青空が見えることも。

キオーラは他の生存者達がゆっくりと、全てが終わったと実感するのを見ていた。

歓声もなく、演説もなかった。安堵や喜びの帳が彼らに下りることもなかった。

肩を掴む手。

交わされる、疑問の視線。

否定、もしくは頷き。

包帯が取り出され、癒しの手が傷に触れられた。即席の捜索隊が組まれた。陥没穴や海水の溜まった塹壕の周囲に救助隊が集まった。はぐれたエルドラージが数体発見され、即座に退治された。

キオーラは二叉槍を背負った。そして仲間達の不安そうな、汚れた顔を見渡し、反対の地平線へと向き直った。

 

彼女は海門の残骸を背に、足を踏み出した――左、そして右。左、そして右。

そのままずっと、立ち止まることなく。

 

後編へ続く)
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*出典*

読み物:戦乱のゼンディカー

読み物:ゲートウォッチの誓い

Posted by オクハラデン