【エルドレインの王権】第4回 グレートヘンジを抜けるとそこは…
はじめに
さて、前回までで、王家の双子はケンリスの行方探しの旅に出発し、ヴァントレスの魔法の鏡により僻境にて大鹿を探せという示唆を受けます。
今回は、僻強へ向かう双子と、そこで遭遇する悲しき事件について。
ギャレンブリグ城とグレートヘンジ
不可解な幻視を手がかりにする双子には、僻境へ向かう必要がありました。
それゆえに、次に向かうはギャレンブリグの王国、そしてその国の持つ"門"グレートヘンジです。
一行の訪問を、ギャレンブリグの王ヨルヴォは温かい笑みで歓迎しました。
挨拶も早々に、ローアンが切り出します。
「インドレロンが幻視をくれました。父を探すための手がかりです。象牙のオベリスクの間から太陽が昇ってくる時に現れる大鹿を探しています。そのために、門を通って僻境に入りたいんです」
「力を貸すのはよいだろう。だが僻境でただ一体の特別な獣を、いかにして探すつもりだ?」
エローウェンが受け答えます。
「状況は一刻を争います。手がかりはその幻視だけです。双子の説明に合致するオベリスクの場所を私は知っていますが、その二本の間に太陽が昇るのは、冬至の日だけです。従って、その鹿は明日の朝にそこに現れるのでしょう。間に合うようにたどり着くには、門を使うしかありません」
王は眉をひそめ、しばし双子を心配そうに見つめました。
「よろしい。インドレロンの知識は確かだ。夜明けにヘンジの門で待つように。だがそれ以前に入ってはならない。今は、私とともに饗宴に参列するがよいぞ」
ロークスワインのアヤーラ女王
光と喜びに満ちた饗宴。
ヨルヴォ王の隣には、ロークスワインのアヤーラ女王がいました。
その美徳の象徴である秘宝、永遠の大釜を失ったロークスワイン城は宙に浮いており、その君主アヤーラは、冬の3日間をギャレンブリグで過ごすことを通例としていたのでした。
ウィルはこの道中でのエローウェンの説明を思い出します。
「女王とヨルヴォ王は真冬の三日間を饗宴で祝う、けど女王は冬至の夜の宴には絶対に姿を見せないんだとか。噂では僻境に属してた頃を悼んで閉じこもるとか、一年のうちその日だけ眠るとか…」
長命にして美しきエルフである彼女は、非常に謎めいた存在です。
アヤーラは、祝辞として杯を掲げましたが、祝宴の間は一言も話しませんでした。
その沈黙にウィルは気味悪さを感じましたが、女王に敵意はないように思えます。
むしろ何かが気がかりであるように、謎めいた視線は誰かを探しているように見えました。
僻境への道
夜明け前。グレートヘンジの門の前で、双子ともう四人は待っていました。
ヨルヴォ王が言います。
「頼まれた通りに石を動かしておいた。時間はない。急ぐがよかろう」
「この門は今日の夕暮れまで開いている。一年と一日後、夜明けから夕暮れまで再び開く。その後は――お前たちは永遠に失われたとみなされるであろう」
その脅威に皆が躊躇いながらも、タイタスの一喝により一行は僻境への門をくぐったのでした。
門を抜けた先は、ウィルが幻視で見た森の中。
ぐずぐずしている暇はありません。
そこは僻境の中心を取り囲む川岸であり、2本の橋がかかっていました。
「僻境では黒曜石の橋は絶対に渡っちゃ駄目だよ」
何も知らない子どもを見るように、エローウェンが忠告しました。
「どうしてですか?」
エローウェンが答えを出そうとしたその時。
遮るように、空を甲高い笛の音が切り裂きました。
それは、敵の合図。
タイタスの馬の先。
いたのは、僻境の中心で死んだ王国騎士の成れの果てでした。
「翡翠の橋へ! リッチの騎士は流水を渡れないんだ!」
エローウェンの叫びと同時に、一行は橋へと駆けます。
「行け! 俺が最後尾を守る!」
タイタスは川岸で止まり、仲間を先に行かせます。
リッチの騎士からは、安全に逃げられる距離でした。
しかし
全員が橋までたどり着いたその時、タイタスの苦悶の声が聞こえました。
まるで、自分たちに聞こえない何かの音に耳を塞ぐように。
彼の頭上、夜明けの空に浮かび上がったのは、不気味なる影でした。
黒いフード
黒いローブ
黒い鎌
ウィルは冷たい恐怖に動きを止めてしまいました。
彼は知っています。
この影、"死霊"はすでに破滅が決まった者の前にのみ現れるのだと。
死の霧が晴れると同時にウィルが見たのは、タイタスと、彼の馬が地面に崩れ落ちる姿でした。
今回はここまで!
今回は、僻境へ向かう双子と、その仲間との悲しき別れについて。
エルドレインのストーリーは、一つ一つが長い割に、なかなか割愛できないのが難しいところです…!(泣)
このへんでやっと折返し地点ですが、皆様よかったら最後までお付き合いくださいませm(_ _)m
次回もお楽しみに!
*出典*
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