エムラクールとの戦いと、その末路【ストーリー】

2021年4月14日

目次

はじめに

こちらイニストラード次元。

自分が幽閉されている間に故郷を荒らされたナヒリが、復讐のためにエムラクールをイニストラードへ召喚。

無事、ソリンに復讐を遂げるが、イニストラード次元の全く関係のない人々はたまったもんじゃない。

次元の危機だ、ヒーローたちよ、応答せよ…!

 

…というわけで。

この状況を見届けたジェイスは、ゲートウォッチの参集を決めました。

今回は、そんなイニストラードにゲートウォッチのメンバーが現われるカッコいい場面から。

(ちなみに、この物語はジェイス視点とリリアナ視点で描かれますが、リリアナ視点のお話はまた次回です。)

 

ゲートウォッチ配備

ジェイスがイニストラードにて遭遇したのは、三体の狼男。

彼はそれらの精神に負荷をかけ、うち二体を弱体化させます。

しかし、残る一体に狙いを定められたジェイスは、幻影のジェイスに目もくれず、その本体へと襲い掛かったのでした。

ジェイスは周囲に逃げ道を探ったが、何も見つからなかった。選択肢が心に走るが、彼はそれを一つまた一つと切り捨てた。半ば実体を持つジェイスの幻影達はその獣に群がろうとした。少しの時間を稼げば、そのうちに……

光の閃きが一つ、そして刃が風を切る音と肉を切り裂く音があった。

怪物はめった切りにされ、情けない声とともに崩れて塊と化した。

ギデオン。

「大丈夫か、ジェイス。ようやく追い付いた」

ジェイスは上着を整えた。

「俺を見失ったのか? それともラヴニカに寄り道して飯か?」

「行ったことのない場所へ君を追いかけるのは容易ではないんだ。ふむ」

ギデオンは丘の向こう、スレイベンを見据えた。何か困難なものを感じ取っていたとしても、彼はそれを態度には出さなかった。

「あの二体より大きいな。それに私達とあれの間は敵だらけだ。作戦はあるのか?」

登場シーンカッコよすぎか?

 

やがて、ジェイスは周りの空気に熱がこもるのを感じました。

チャンドラは両手をこすり合わせた。

「前と同じ作戦で行くの? 燃やす? 思うにあの時はそういう計画じゃなかったけど、上手くいったじゃない。いつも通りよ」

彼女は両手を腰に当て、眼下の混沌とした風景を見下ろした。

※脳筋

 

そして最後は、非常にわずかな空間の揺らぎ。

ニッサが到着した兆候はそれだけだった。

彼女は眉をひそめて膝をつき、掌を地面に当てた。

「ここのマナは暗くてねじれてる。土の中も、木の中も……エムラクールの仕業、だけど……」

「イニストラードに来たのは初めてだよな? ここでは『暗くてねじれてる』ってのは割といつもの事だ」 ジェイスは続けて言った。

 

ジェイスは、以前と同じ作戦を提案します。

しかし、ゼンディカーの時とは違っている状況が、その作戦の遂行を許しません。

一つに、ニッサが使える力線がほとんどないこと。

イニストラードの力線は、ナヒリによってゆがめられ、そのほとんどがエムラクールへと伸びていたのでした。

 

加えて、エムラクールの前には、それに魅せられた狂信者たちが道をふさいでいること。

ゲートウォッチたちは、この大量の人々によって、苦戦を強いられるのでした。

そして、ニッサが倒れ、撤退か、全滅かの選択を迫られそうになったその時。

同じく「多勢」の軍団を使役するリリアナが、ゲートウォッチの側に参戦するのでした。

「リリアナ、俺は……また会えるとは思ってなかった。でも来てくれたのか」

ジェイスはフードを脱ぎ、その両目から輝きが消えた。その下には隈が際立っていた。

「いつもながらお上手ね。そう。あなたは助けられた、私の力でね。今こそどこか安全な所へ逃げていいのよ」

 

ジェイスの精神世界

リリアナに救われたジェイスは、唐突に幻視に襲われます。

そこは、ラヴニカの彼の私室。

そして、その階段を下るたびに、様々なものを目にするのでした。

最初は、長鞭をもつ神的存在に対峙し、(ジェイスにとっては目新しいことに)怒りと恐怖に捕らわれた若きギデオンの姿。

「キテオン・イオラよ、其方のそれは、最上の望みとは? 其方が真に望むものとは?」

「おやめ下さい!」

ギデオンは叫んだ、彼の顔は反抗と苦痛に歪んだ。

「エレボス、差し出して頂くものなど何もありません、何も! 貴方からの贈り物は、全てが毒ではないですか」

その存在、エレボスは、鞭を掲げた。

「定命よ、これは申し出ではない。真を告げよ、其方が真に望むものを。さもなくば其方の友を殺そう、一人ずつ」

テーロスのキテオン少年は、死の神エレボスによって仲間を失った過去がある

 

次に見たのは、エムラクールに浸食されていく、タミヨウの姿。

肉的な成長がタミヨウの指から弾け、両手を網のような構造で覆った。

その成長は机まで達し、突き刺され、彼女の両手を机に拘束した。

彼女はもはや見ることも手を動かすこともできなかった。

血は両目から滴り続けていた。ぽたり――ぽたり。ぽたり――ぽたり。ぽたり――ぽたり。

両目と両手の機能を失っても、タミヨウはずっと囁き続けていた、とはいえ聞き取れる音は発せられなかった。

こっっっわ

 

次は、どこかの地にいるチャンドラ。

衛兵たちに囲われ、今にも処刑されんとする、今よりも幼いチャンドラ。

チャンドラはすすり泣きを止め、処刑者を見つめた。

その片目から炎の小さな塵がひらめいた。

「それは間違いよ」 彼女は言った。全くもって子供の声ではなかった。

「私にできる事はあるの」

ジェイスが見つめる中、彼女の身体が変化し、成長し、彼の知るチャンドラの姿となった。

「いつだってできる事はある。私は、燃やせる」 炎が彼女の髪と両手から噴き出した。

チャンドラは、故郷で処刑されそうになった時、プレインズウォーカーとして目覚めた

 

そして、ニッサ。

タミヨウと同じように、変異していくエルフ。

近づいてよく見ると、ニッサのそれぞれの指から小さな指が十本ずつ伸びていた。

そして毛が――違う、その小さな指から更に細い指が成長した。

彼はぞっとして、だが彼女の目を見て思わず悲鳴を上げた。

ニッサの眼窩から幾つかの小さな眼球が飛び出し、そこから更に複数の小さな目が。

緑色のエネルギーが目と手から閃き、だがその緑色には暗い、暴力的な紫色が混ざっていた。

 

エムラクールはエムラクールは永遠にエムラクール。

いやこっっっっっっわ

 

そんな幻視たちを抜け、ジェイスがリリアナの幻視を期待した時。

彼は、その階段が終わるのを見たのでした。

階下で見たのは、一体の天使。

エメリア…マーフォークたちに信仰される、エムラクールの姿。

真ん中がエメリア

「座ってもいい?」

女性の声だった。軽かった、ほとんど空気のように。この状況でなければ、歌うような声だとすら言えたかもしれない。こんな状況でなければ。

(中略)

俺は今まさに心から恐怖している、だが興味もある、同時に。なんて奇妙な事だろう。

「私はただの客。座ってもいい?」 彼女は立ったままで待った。

今日は一体どれだけ非現実的なことが起こるんだ? とはいえその問いに現実の答えを求めてはいないのは確かだった。

何が重要なのかを思い出せ――死ぬな。これを見定めろ。エムラクールを倒せ。

彼は呪文のようにそれを自身に言い聞かせ、そしてもう一文を付け加えた。

歓迎しろ。エムラクールに茶を出せ。

彼は微笑み、その笑みが顔に現れた。

「勿論です。どうぞ、座って下さい」

ジェイスは軽やかに石造りの机を示し、エメリアは――いや、俺はこいつが何なのかはわからない、想像するのは止めろ、その天使は机の傍に座った。

 

ジェイスは、自分の正気を保つがごとく、天使に疑問を投げかけます。

あなたはエムラクールなのか。

望みは何なのか。

何のためにここにいるのか。

…なぜ、自分を殺さないのか。

その全てに明確な答えを返さずエメリアは巻物に何かを書き込んでいるのでした。

苛立ちを見せるジェイスに、天使はようやく提案をします。

「チェスはやる?」と。

「もしあなたが勝ったら、これは全部止める。あなたの質問に全部答える」

彼女は巻物を背後に押し込んだ。

ジェイスは罠を予想したが、彼はチェスが本当に上手だった。

「もしあなたが勝ったなら?」

「私はもう勝っているから。ジェイス・ベレレン。遊びましょう」

 

ジェイスが白。先攻。

エメリアとの胡乱なやり取りを重ねながら、彼は有利にチェスを進めて行きます。

そして、彼が白のクィーンを正しい位置に置いた時。

「チェックメイトです」

彼は微笑みながら宣言したのでした。

「そうね」 彼女は両手をフードに触れ、それを下ろした。

(中略)

彼のクイーンの隣のポーンが一つ、もがいて姿を変えはじめた。手と小さな石の剣がそのポーンに現れ、振り向いてクイーンを刺した。クイーンは悲鳴を上げ、血がその脇腹から溢れ出した。そして地面に崩れ、血を流しながら震えていた。死んでいた。ジェイスの他の駒も変化し、変異し、盤は大混乱と化した。それらは互いを無慈悲に攻撃し、殺し合い、やがて残った駒数体が旋回して盤の逆側を向いた。今や全てが武器を持ち、その武器は血を滴らせ、そしてゆっくりと、今やジェイス自身を体現する王へと進軍を始めた。

ジェイスはその混乱を唖然として見つめた。

「わ……これは……こんなのはおかしい! いかさまだ! そんな事をするな! 俺の駒だ!」

天使の顔が融けはじめた、彼女の姿から肉の塊がぬかるみ――翼、剣、裾、そして全てが――紫色の煙へと消えはじめた。だが声は残っていた。

 

「ジェイス・ベレレン、これは全部私の駒。ずっとここにあったもの。もう遊びたくないだけ」

脱出

 

エムラクールの襲撃に変わりゆく部屋を脱したジェイスは、最後の人物に出会います。

それは、自分自身。

幻視のジェイスは、タミヨウと話せ、と進言し、同時にリリアナが死にかけていると忠告したのでした。

唐突に、現実に引き戻されたジェイス。

そこには、多量の血を流して倒れるリリアナと、天に咲くエムラクールの姿があったのでした。




月への封印

幻視での助言通り、タミヨウと脳内での会話をするジェイス。

『ジェイスさん。アヴァシンの言葉を覚えていますか』

タミヨウの声、それは陽光差す海岸の軽やかな微風のようだった。

残響が脳内に鳴った。狂った天使が創造主へと向けた、最後の言葉。

『破壊し得ぬものは縛られるべし』

『ジェイスさん、それが答えです。私達がやるべき事です。エムラクールを倒すことはできません。束縛するのです』

タミヨウの声には力があり、そして澄んでいた。

 

ゼンディカーで、自分たちがやろうとしていた作戦。

あの時は倒すことを選んだゲートウォッチでしたが、今回選択の余地はありません。

タミヨウが進言したのは、古来より怪物を封印してきたもの。

そして、ソリンの作り上げた獄庫の元となったもの。

イニストラードの、銀の月への封印でした。

月への封印

『準備できました』 タミヨウが答えた。彼女は巻物を読み始めた。

ジェイスはゼンディカーでウギンとその面晶体の操作から集めた知識を元に、タミヨウの呪文をエムラクールへと繋げることに集中した。

(中略)

だがその呪文には魔力が必要だった。魔力の流れが、奔流が。

ニッサは背を伸ばして立ち、その両目を鮮やかな緑色に輝かせながらイニストラードに残されたマナの汚染された断片を、ジェイスが使える姿へと織り上げていた。

ジェイスは彼女が力線を吸収するのを感じた、そのエネルギーの最後の一片までも。

だが足りなかった。足りそうになかった。ニッサは腕の力を失い、地面によろめいた。

 

呪文が失敗しつつあった。

 

ジェイスは呪文を保とうとする中、タミヨウとの精神的接続を失った。

彼の心の中、タミヨウがいた場所にはただ雲だけが、彼には貫けない暗い灰色の霧だけがあった。

タミヨウはまた別の巻物を取り出した。鉄の輪で閉じられた長い巻物、そして二つめの呪文を読み始めた。

魔力がジェイスへと流れ込んだ。彼はマナの、更なる魔法の、更なるエネルギーの大河の中にいた。

凄まじかった。彼はその魔法を受け取り、形を変え、忙しく印の各先端にそれを取り付けてエムラクールへの導管とした。

そしてジェイスは全力で呪文を放った。

月から光が弾けた。

冷たい、銀色の光線がエムラクールを上空から打った。

光はその生物を浸し、包み……そしてエムラクールは、引かれた。光へと。月へと。

物理的にありえない歪みが現れた。ジェイスの目の前でエムラクールの姿が月の光を通り、引かれて、引かれて、そして……

……弾けた。

エムラクールは折れ、崩れた。ガラスを散りばめた薄紙のように砕け、エムラクールの大きさではありえない、不可能な様で無へと縮まった。

そして光は点滅して消えた。エムラクールは消えた。彼らは勝利したのだ。

 

封印の真実

辛くも、エムラクールの危機から次元を救ったジェイス。

疲労困憊の中、一つ確かめなくてはいけない事実を胸に、タミヨウへと話しかけます。

封印の呪文の中、精神的接続が切れたのはどうしてなのかと。

そして、使わないと宣言していた鉄輪の巻物を使ったのはなぜかと。

タミヨウはそこに座り、泣きだした。涙がその両目から滴り落ちた、一滴また一滴。ぽたり――ぽたり、石の瓦礫に弾けた。

彼女の言葉は動揺し、詰まっていた。

「ニッサさんが倒れました。呪文は崩壊の危険にありました。私はどうしたらいいか、どう助けたらいいかわかりませんでした」

ジェイスは驚いた。

「つまりニッサは自分であの力を出したんですか? 凄い。あなただと思っていました、二番目の巻物で」

タミヨウは彼を見た、その目には悲しみと嘲りの両方があった。

「違います。あなたはわかっていらっしゃらない。あれは私でした。二本目の巻物で。そこから魔力が来ました」

「でも凄いですよ! あなたが俺達を救ってくれたんです! イニストラードを、その……全部を! あの力は、鉄の巻物だったからですか? 開こうとしなかった巻物の」

「止めて下さい、ジェイスさん! 聞いて下さい、ただ聞いて下さい。あれは私ではありません。あれが……彼女が……私を乗っ取りました。お判りですか? 私ではなかったんです! 私はあの場にいて、私の身体のまま、彼女がやって来て、私は無力に乗っ取られました。私の目、私の目、私の声……何もかもが奪われました。私のものではありませんでした」

彼女の叫びは完全なすすり泣きへと変わった。

ある声を思い出した、彼のチェスの駒が互いを刺し、殺し合う間の彼女の声。

 

『ジェイス・ベレレン、これは全部私の駒。ずっとここにあったもの。もう遊びたくないだけ』

 

さらにタミヨウは告げるのでした。

使った二本目の巻物は、開くべきものではなかったということ。

そして、そこにあったのとは「別の呪文を」彼女は唱えていたのだと。

ジェイスは唐突に、チェスを行う前のエメリアを思い出しました。

「巻物に、何かを書いている」エメリアの姿を。

ジェイスは震えだした。

「変わってしまったのです。一体どのように? 一体何故そのような事が?」

タミヨウの声は半ば狂乱していた。

「あの怪物が私の身体を奪って巻物を読んだ、この次元の全てに破壊をもたらす巻物……そうではなく彼女自身をここに束縛する呪文に力を与えた。ジェイスさん、どうしてこのようなことが? 何故起こったのでしょう? 私達は何をしたのでしょう?」

「わ……わかりません」 ジェイスは彼女にそれ以上言えることはなかった。自身に対しても。

タミヨウは深い溜息をついた。

(中略)

そして月を見上げた。

「私達は本当に勝利したのでしょうか?」 タミヨウの声にはもはや怖れはなく、だが悲哀があった。

ジェイスは返答できなかった。

やがて彼女は立ち上がり、暗い空へと去っていった。

別れの言葉はなかった。

 

今回はここまで

不!気!味!

というわけで。

終始不気味で不可解なストーリー展開をする異界月の物語ですが、クライマックスが最も不気味です。

最強にして最悪のエルドラージ、エムラクールの手のひら(触手?)の上で、全てが動いていたことをうかがわせる、超絶後味の悪いエンディング。

ストーリーでは、ジェイスがこの衝撃の事実を知ってしまい、一時の忘却を求めて眠りにつくところで締めくくられます。

そして、それ以来この次元がフィーチャーされていることはありません。

どこぞでイニストラード次元の復活の可能性が大いにある、ともされていたため、その時にこの謎が明らかになるのでしょうか…!?

ウラモグ、コジレックは破滅を迎えてしまいましたが、エムラクール大いに復活の可能性がありますね…おそろしや…。

 

勝手な考察ですが、幻視のタミヨウが目から血を流す場面と、現実のタミヨウが目から涙を流す場面の描写が似ていますよね…

そして、チャンドラとギデオンの幻視は、実際の彼らの過去です。

ということは…?ニッサさん…?

 

ま、身勝手な妄想は置いておいて。

次回は、イニストラード次元のもう一人の主人公リリアナの物語。

彼女も、ここでようやくゲートウォッチへの参入を決めますが、その「誓い」の動機とは…!?

 

次回もお楽しみに!
 

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*出典*

スレイベンの戦い

約束されし終末

 

Posted by オクハラデン