【イクサラン】第6回 共闘する二人【ストーリー】

2021年4月11日

はじめに

前回、イクサランの不滅の太陽争奪戦において、その主人公となる者たちの紹介をしました。

ここから、彼らの秘宝を巡る戦いは激化していくわけですが…

今回は、ヴラスカとジェイス視点のお話から。

 

秘宝を目指して

難破した「喧嘩腰」号から振り落とされたジェイスは、なんとか覚えていた泳法で岸までたどり着きます。

そして、ヴラスカとともに状況を整理する間もなく、同じく座礁した船から現われた吸血鬼たちに襲われたのでした。

二人を守るように立ちはだかる、「短パン」を始めとした船員たち。

彼らは不滅の太陽を二人に託し、自分たちはここで戦うと宣言するのでした。

ヴラスカは彼らに場を託すと、小舟へと駆けたのです。

「ベレレン! 一緒に来な!」

 

ジェイスの魔法で船を隠すと、二人は密林へと漕ぎだします。

そして、その道中ヴラスカは意味ありげな表情を浮かべていたのでした。

その表情だけでは意図が読み切れなかった。そこにある躊躇に、気分が悪そうに見えたほどだった。

「どうしたんですか?」

彼女は深呼吸をした。

「私ら二人とも、ここから来たんじゃないんだ」

彼女は口を滑らせたように言った。

ジェイスはきょとんとした。

「ですよね。俺達はラヴニカって所から――」

彼女は顔をしかめた。話すのは不本意でなく、だがそれを黙っているのは更に居心地が悪いような様子だった。

「ラヴニカはこの次元にはないんだ」

ジェイスは精一杯眉をつり上げた。「この……次元?」

 

ヴラスカは話し始めます。

自分たちは「プレインズウォーカー」という、次元を渡れる者たちだと。

そして、イクサランにある何らかの魔法的力から解放されれば、自分たちはここから出られるはずなのだと。

 

聞き終えたジェイスは、自分が話せていなかったコンパスの謎も伝えます。

コンパスは何らかの魔力に反応しているということ。

そして、自分たちの目指す場所がその魔力の中心であろうことを。

魔学コンパス

「それは……凄いな」

ヴラスカはそう言って、魔学コンパスへ瞬きをした。そして表情を緩め、笑い声を上げた。

「私らがプレインズウォークに使うのと同じ魔法に守られてるってことか! だからコンパスはそっちへ向くのか! お前がそれを解明するなんて!」

ジェイスは照れくささを上手な困惑で誤魔化した。ヴラスカは続けた。

「コンパスが示すものを見つけられなかったら、私をここに送り込んだ奴に始末されるだろうって確信してたんだ。けどこれで何とかなりそうだ。お前のおかげだよ!」

「俺達それぞれに、それぞれの才能があるんですよ」 ジェイスは謙遜して答えた。

ヴラスカは歯を見せて笑った。

「お前のは凄いよ!」

彼女の言葉がそこで途切れた。その表情の何かが変化した。和らいだ。

「ジェイス、プレインズウォークのことを黙っていて悪かったよ。最初にお前を見つけた時、信頼していいかわからなかったんだ。もう隠し事は無しだ」

彼女がオールを漕ぐと、波が船腹を優しく叩いた。

「孤高街に寄ったあの夜、お前が言ってくれた事への礼を言ってなかったな。あんなふうに私の話を聞いてくれたのはお前が初めてだった。ありがとう」

ジェイスは微笑んだ。「貴重なお話でした。教えてくれてありがとうございます」

そしてヴラスカが返した優しい笑みに、ジェイスは止まった。無防備な、心からの笑み。目と目が合った。

彼女は漕ぐのを止めていた。

 

つかの間流れる、沈黙の時間。

ジェイスの頭には、次元のこと、プレインズウォーカーのこと、そしてヴラスカのことが巡り…

彼は生物の反応を察知したのでした。

人間、吸血鬼、マーフォーク……と、ミノタウルス?




始まる戦い

ようやく陸へと上がった二人。

ジェイスの冗談に、ヴラスカが笑う。

少し前までありえなかった平穏を楽しむ道中、彼らを暗闇が襲います。

呪文をすり抜けて来たのは、一人の吸血鬼。

彼女はヴラスカと格闘し、ジェイスを倒れ伏すと、彼の持っていたコンパスを持って逃走したのでした。

ヴラスカは悪態をつきながらよろめき立ち上がると、片手で目を覆いながら苦痛に息を鳴らした。彼女は自身の魔力を散らし、不満にうめいた。

そして一本の木を蹴った。

ジェイスは目を閉じ、集中した。

「追跡できます」

彼は目を開けて顔を上げ、乗組員への目印とした巨大な馬の幻影をまたも宙に放った。

ヴラスカはまだ息巻いていた。

「あの忌々しい吸血鬼、私が別の船長を石にしたって学んだに違いない。乗組員を生かしておくべきじゃなかった」

ジェイスは溜息をついた。「客観的に、ヴラスカさんは間違っていませんでしたよ」

ヴラスカは再び木を蹴った。

「あの女性を見つけてコンパスを取り戻す。それから気が済むまで木を蹴って下さい」

ジェイスは決意とともに言った。

ゴルゴンは深い溜息をつき、少し考え、頷いた。彼女は額にわずかな皺を寄せてジェイスを見た。

「本当にあいつを追えるのか?」

「断言できます」

ジェイスは目を閉じ、集中した。

 

しかし、ジェイスの心に去来したのは、別の二人の意識。

そして、それらはすぐに自分たちの目の前へと姿を現われたのでした。

エレメンタルを率いるマーフォーク。

そして、恐竜に騎乗する鎧の女性。

ジェイスはそれらの心を垣間見、彼女らがコンパスの存在を知っていることを理解します。

ヴラスカは唇を歪めた。「お前たちは何者だい?」

ジェイスは立ち上がり、脚に絡んでいた蔓は退いた。彼はヴラスカの隣に立ち、相手を見つめた。

エレメンタルが攻撃しようと身構え、マーフォークはその脇に安心させるように手を置いた。

「私はティシャーナ、川守りの長老にしてオラーズカを守る者です。海賊よ、我らが同胞の一人があなたがたについての実り多い噂を聞いていました」

ジェイスは無言で自身を呪った。孤高街の酒場にいたあのマーフォークがずっと盗み聞きしていたのだ。

マーフォークの隣の騎士は肩を正した。

「太陽帝国のファートリといいます。戦場詩人であり、侵入者を打ち負かすべくここにいます」

 

コンパスを要求する二人に、ジェイスは告げます。

たった今、それは吸血鬼に奪われたのだと。

マーフォークは未知の力で、それが嘘でないことを察知すると、二人は密林の中へと消えていったのでした。

二人が去るや否や、ヴラスカはジェイスへ顔を向けた。

「あの吸血鬼を追えるか?」

ジェイスは頷き、素早く吸血鬼の精神を聞いた。

彼は微笑んだ。

「それ以上のものを追えますよ」

ヴラスカは頷き、二人は深い森へ入った。ジェイスは駆けながら、乗組員らへ向けて今一度合図を送った――そして幻影の荷馬はその下の主と同じ道を駆けた。




今回はここまで

いやはや、まさに争奪戦。

密林のステージと相まって、どうしても某ディズニー海賊映画第二作目の「鍵」争奪戦が頭に思い浮かんでしまう…。(わかる人にしかわからない)

あの映画のあのシーン…

上述でジェイスが悔やんでいる通り、コンパスの話はヴラスカが彼に酒場で話してしまったところから漏れています。

ヴラスカさんのセキュリティ意識…。

 

なお、本編ではご紹介できていませんが、小舟で移動する中、ジェイスとヴラスカは一度睡眠を取ります。

そして、そのシーンの中で、ヴラスカは彼への”想い”を再認識するのでした。

例によって尊いため、以下に抜粋しておきます。

彼女は黄金色の片目を開け、ジェイスを見つめた。多元宇宙で二番目に危険なテレパス。

私が歌うくらい簡単に、こいつは私の心を壊してしまえるのか。

それでも……そんな事はしないのだろう。決して。以前はそんな力を用いたと知っていても……そのジェイスは今のジェイスではない。

その瞬間、ヴラスカは理解した。記憶があろうとなかろうと、この男は信頼できると――そしてこの男もまた信頼を返してくれると。彼女は満たされるために他の誰かを必要としたことはなく、自分が何者なのかを疑ったこともなかった。この男にその気がないなら、別に構わない――読み終えていない歴史書が家にあるのだ。けれどもしその気があるなら、自分が動揺している時に茶を淹れてくれるだろうか。聞いて欲しい時に耳を傾けてくれるだろうか。自分の勝利を喜んでくれるだろうか。そのどれも悪い見通しではなかった。この全てが終わったら、デートに誘おうか。長いことそんな機会もなかった。けれど今のところ、何もかもが満足だった。良い友人が隣にいて、単純でまっすぐな競争をしている――それこそ、必要としていたものだった。

この男の記憶を奪った奴を石にしてやりたくてたまらなかった。

 

いやぁ…。

それ、アナタにこの仕事を依頼した人なんですよおおおぉぉぉぉぉぉぉお!!!!

何たる皮肉!何たる名展開!

ボーラスへのヘイト値は最高値を更新!

「全部!我の!せえええぇぇぇぃ!!」

ということで、次回はこの争奪戦をファートリサイドから!

あの愛らしいアングラスさんも来るよ!!!

お楽しみに!!

 

【関連記事】

ジェイスとヴラスカの因縁

 

*出典*

MAGIC STORY 争奪戦 その1

MAGIC STORY 争奪戦 その2

Posted by オクハラデン