【機械兵団の進軍】第5回 新ファイレクシアでの決着【ストーリー】
はじめに
前回、レンはついにファイレクシアの世界樹ー次元壊しと繋がり、相棒となった”八番”を急激に成長させることで、時空の果てに消えていたザルファーを見つけたのでした。
そして、テフェリーを呼び寄せることに成功したレン。
彼女の助力により、長年をかけファイレクシアの復讐に燃えていたザルファーの兵士たちが参戦します。
ついにファイレクシア戦争完結編!
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天使の進軍
ニューカペナにて。
最年少の天使ジアーダは、塔の上から姉たちに指示を飛ばしていたのでした。
この次元を襲ったのは、同じ天使でありながらファイレクシアンとなったアトラクサ。
次元の天使たちの参戦によってもたらされる乱戦。
その陰で、先祖たちの作品を分解していく土建組。
それらは、アトラクサにとっては取るに足らぬものとして映っていたのでした。
だが結局、それが彼女を破滅させた。
ひとつの爆発、そして衝撃波が街を揺らした。メッツィオの構造奥深くにいた彼女は、それが傾きはじめていると気付いた時には手遅れだった。
最終的に彼女を殺したのは天使の盾ではなく、デーモンの策謀でもなく、街そのものだった。頑丈な支柱と吊り下げ構造から切り離され、ニューカペナ、そのきらめくガラスと鋼の塔が彼女の真上に倒れた。
高所から、天使たちは数世紀に渡る定命の作品が地へと崩れる様を見つめた。
ニューカペナに現われたポータルは、何度も違う次元の姿を映し出します。
そのたびに、ジアーダはその次元へと天使の軍勢を差し向けたのでした。
天使たちが常に成してきたこと。それは守ること。
そしてテーロス次元では、その軍勢とケイヤの尽力により、堕落したヘリオッドを討滅したのです。
やがてポータルは再び新ファイレクシアを映し出し。
ジアーダはそこに、ついにエルズペスの姿を見たのでした。
『嬉しい、本当に会いたかった』彼女はそう呼びかけた。
(中略)
エルズペスがこんなにも眩しく輝く姿を見て、ジアーダの心が温かくなった。
『素晴らしい働きをして下さいましたね』
『ありがとうございます』
エルズペスが返答した。彼女は翼をもつ刃蛇に剣を突き立て、それを真二つに裂いた。
『ですが、やるべきことはまだあります』
『それを伝えたかったのです。私たちの同胞が助けに参ります』
その蛇は地面に落ちたが、エルズペスは飛び続けていた。銅の蔓が彼女の利き腕に巻き付いたが、エルズペスは勢いのある手刀でそれを切断した。
『どのような助力であろうと、大歓迎です』
法務官たちの最期
新ファイレクシア次元にて、コスは困惑していたのでした。
どこからともなく、突然現われた加勢。
そしてテフェリーはコスのそんな様子に気づいたのです。
「待て、どこから来たんだ? 何が起こっている?」
テフェリーは彼へと微笑みかけた。誇りが彼の胸にうねった。
「ザルファーからです。レンが私たちを見つけてくれました。皆さんを助けに来ました」
そこかしこで天井が崩れはじめ、地面が震えた。テフェリーは気にしなかった。
「ふたつの次元がその場所を入れ替わろうとしています――新ファイレクシアは奈落へ放り出され、ザルファーは……ようやく故郷へ帰ります。ザルファーは皆さん方を歓迎するでしょう、皆さんがザルファーにそうさせて下さるなら」
コスは集まった軍勢を見つめた。その表情を読むのは困難だった――決意、安堵、悲しみ、すべてが鉄のようなその面持ちに刻まれていた。
「ならばファイレクシアに、決して俺たちを忘れないようにしてやろう。ミラディン人よ、証を残せ!」
ミラディン人たちは喜びとともに突撃に加わり。
テフェリーの登場に、チャンドラは声を上げて喜んだのでした。
そこへ乱入する法務官、ヴォリンクレックス。
しかし、復讐に燃え鍛錬を積み続けたザルファーの兵士は、その首すらも一撃で斬り落としたのです。
辺りに響く、次元そのものが裂け壊れゆく音。
エリシュ・ノーンですら、その鎧は砕け、弱々しい腱を露わにしていたのでした。
「我らの行いは……私が築いたものは永遠となる!」
彼女は叫び声をあげた。
「ファイレクシアは決して死なぬ。其方らは必然の結末を遅らせているに過ぎぬ。何故それが理解できぬ? 何故其方らの運命を受け入れぬ?」
(中略)
彼女は胸にできた傷の塊に爪を立て、そして今一度軍勢を注視して別の叫び声をあげた。
「何故誰も私を守らぬ? 私こそがファイレクシアであるというのに!」
ジン=ギタクシアスは巨大機械とともに、ノーンに迫ります。
お前のエゴは、新ファイレクシアにとっての腫瘍だと。
アジャニがノーンの守護に入りますが、それも軍勢の力に押しやられていきました。
その隙に、そのレオニンは呪文によって凍りづけられ、戦いの外へと持ち出されたのです。
そしてテフェリーがギタクシアスに迫り、その戦争機械を止めた数秒の間。
ザルファー人の戦斧は、青の法務官の息の根を止めたのでした。
テフェリーが振り返ると、数名を残して撤退した仲間とともに、不安定になったポータルが見えます。
そして同時に見える、灰のようになったレンの姿も。
彼の心にひとつの思いが大声をあげた――彼女がいなければ、これは何ひとつ成し得なかった。何かしてやれることがあるはずだ。
そして彼女を見つめると、そこにあった。灰の中に、ドングリがひとつ隠れていた。
レンがザルファーを見つけ出してくれた。ドングリはその地で、きっと力強く成長するだろう。
そのドングリを灰から注意深く拾い上げると、背後からコスの叫びが届いた。
「俺があんただったら、もう立ち去っているところだ」
テフェリーはそのドングリをポケットに入れ、振り返った。彼はかぶりを振った。
「私はかつて、故郷の次元の安全を確保する前に逃げ出した。二度とそんなことはしない」
カーンの贖罪
激高したニッサが英雄たちを止めようとするも、エルズペスの一撃によって気絶させられ。
それを抱きとめたチャンドラ、そしてコスたちもが撤退していく中。
カーンだけが、テフェリーへ告げていたのです。
時間が欲しい。自分自身の力でここから去りたいと。
テフェリーにそれを拒むことは到底できなかった。彼が見つめる中、カーンは自身の新たな身体を一層また一層と作り上げていった。
地平線を見ると、ノーンは自らの軍勢をほぼ抜けてきていた。他の新ファイレクシア人たちに両脚を奪われ、彼女はもはや誇らしく立ってはいなかった。
(中略)
カーンはノーンの姿を見つめた。
「終わらせなければいけないことがあります。行ってください。すぐに追いつくと皆に伝えてください」
カーンが感じたのは、重み。
それはすなわち、多元宇宙の重み。
かつて、ファイレクシアの根城になる前の次元、アージェンタムを創ってしまった失敗の過去。
その過ちからは逃れることができない。
できることは、その過ちと向き合うこと。
彼の視線の先で、ノーンは哀れにも小さな姿となっていたのでした。
遠い昔、カーンは生者を決して傷つけないと誓った。戦争の恐怖を見てきた彼は、その一部になることを拒んだ。
(中略)
可能な限り、彼は他の解決策を見つけ出そうとしてきた。
これほどまでに有害な悪に、他の解決策はない。
多くの命を救うためには、完全に滅さなくてはならない。
その認識の何と重いことか。
彼の魔法は、ノーンの身体を引きちぎります。
暴力。それは自らが最も嫌う行為。
しかしカーンは、その屍を記憶に焼き付けたのでした。
これは、彼が責任を取るための、最も小さい方法。
それが終わると――エリシュ・ノーンが白い足場の単なる赤い染みと化すと――カーンはポータルへと向かった。
テフェリーが力を抜き、時が再び動きだした。殺戮の様子を見て、彼の表情が心配に陰った。
「行きましょう」
カーンは言った。
それは彼にもうひとつ加わった重み。背負うべき重み。
けれど、それはもっと軽やかな未来へ向かう最初の一歩。
ザルファーは彼を温かく迎えた。
今回はここまで
ファイレクシア戦争!完!!
まとめをしてしまうと、ずいぶんあっけなく法務官たちが死んでしまったように感じられますが。
実際にあっけないんですよ!!笑
ノーンの独裁は相当目に余る感じだったので、内輪の反乱でやられそうなだな~とは思ってましたが。
なんとヴォリンクレックスもギタクシアスも、ザルファーのモブにとどめを刺されてしまった!
ノーンはほぼギタクシアスに斃されたようなモンですね。
ちなみに、灯争大戦のボーラスも最終的に仲間だったリリアナ(の遣わした永遠神)によってとどめを刺されたようなモンなので、今回のノーンのように巨悪は身内によって斃されがちというアレ。
とはいえ、最終的には全ての元凶となってしまったカーンがケジメをつける形となり、キレいな幕引きだったのではないでしょうか。
最終話となる次回は、ザルファーへ戻った英雄たちのお話。
お楽しみに!
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