【タルキール覇王譚】第1回 タルキールのサルカン【ストーリー】

2021年8月18日

はじめに

ここはタルキール。

かつて繫栄していた龍たちは絶滅し、5つの氏族が絶えない争いを続ける次元。

そこに降り立ったのは、ここを故郷とするプレインズウォーカー、サルカン・ヴォル。

ドラゴンへの強い憧れを持つ彼は、とある声に導かれタルキールへとやってきます。

それは、ひとつの「運命」を変えるために…。

 

目次

タルキール前日譚

タルキール覇王譚のお話に入る前に。

まずは、主人公サルカン・ヴォルの、タルキール覇王譚に至るまでの物語をおさらいしましょう。

 

サルカンはタルキールのマルドゥ族に生まれたシャーマンです。

生来、ドラゴンに対して非常に強い憧れを持っており、ドラゴンの絶えたタルキールに対し疑問を持っていたのでした。

そして、プレインズウォーカーとして覚醒後、タルキールに存在しないドラゴンを求め旅をしています。

そんな中、彼が出会った「ドラゴンの究極の姿」。

それが、他ならぬニコル・ボーラスだったのでした。

 

ボーラスへと忠誠を誓ったサルカンは、そのドラゴンの思うがままに利用されます。

そして、任務の一環として、彼はゼンディカーへと渡ると、”ウギンの目”という場所にて意図せぬままにその次元に幽閉された怪異、エルドラージを解放してしまったのでした。

自分はボーラスの駒でしかなかったということをわからされたサルカン。

彼は失意のままに、故郷タルキールへと戻ってきます。

ゼンディカーでの一件以来、自分の中に鳴り響いている「声」を感じながら。

お前はこの地を癒すことができる。お前自身を癒すことができる。

 

そのようにして、当面の目的を失いながら故郷へと舞い戻ったサルカン。

ドラゴンという、彼にとっての憧憬の対象。

そしてその最高たる存在、ニコル・ボーラス。

そのドラゴンは、自分はおろか、多元宇宙の全てを玩具としか見ていなかったのでした。

サルカンは、彼の思うままに駒として使われ、その結果ゼンディカーではエルドラージという強大なる存在を解き放つことに寄与してしまったのです。

彼は、ゼンディカーのウギンの目を来訪してから彼の頭の中で鳴り響き続ける声に導かれ、故郷タルキールへと戻ります。

古の時間を感じさせる、ドラゴンの声。

俺が聞いたドラゴンは何だ? 今聞いているのは誰の声だ? もしかしたら山の予見者は正しかったのかもしれない。世界は覚えている、その人々が忘れてしまったものを。

ある名前を。

ウギン。

幻影よ、俺は今ここにいる。お前は俺に、戻ってくるように言った。俺を拒否した世界へ。俺の主が俺を拒否したように? ここで何が俺を待っている?

 

ー入口を見つけるのだ。




ウギンへの道

不毛の砂丘の中、サルカンは歩いていました。

他人から見れば、狂気に侵されているようにも見える、独り言をつぶやきながら。

そして辿り着いた山の近く。

頂上に建物が見える瀑布の近く。

「何故俺をここに来させた?」

空へと叫んだその声は彼へと返ってきた。――……せ。すませ。いやせ。

「また冗談か? また嘘か? 俺の骨もその龍どもに加われというのか、道半ばで壊れて?」

サルカンは髪をかきむしり、歯を軋ませた。そして杖の根元を坂道に叩きつけ、膝をつき、言葉にならない声で呟いた。

声が、上方から聞こえてきた。「痛ましい旅人よ、平穏を求めているのですか?」

 

サルカンが見上げると、そこには鮮黄色の外衣の女性が泰然として立っていたのでした。

その額には、目のような紋様。

その女性はサルカンの目を覗き込むと、彼の周りにもう一つの存在を感じると言います。

「ナーセットと申します。ここに、悟りの探求者達とともに住まう者です。私の氏族を気高い運命へと導いています」

(中略)

彼女は振り返った。「旅人よ、名を聞かせて下さい。あなたの物語を聞かせて下さい」

 

ウギンの目を離れて以来、久しぶりとなる他人との会話。

彼はゆっくりと、しかし苦悶の中で、ここまでの旅路を語ります。

そして、ナーセットはそれを決して邪魔することなく、時折疑問を呈しながら、耳を傾けていたのでした。

やがて、彼の多元宇宙の旅の話から、ウギンの名前が出たとき、彼女の眼は大きく見開かれるのです。

「精霊龍のその声があなたを私のもとへ導きました。あなたの悩みを終わらせる方法を見つけられるかもしれません。ですが、もしかしたらそれ以上の意味を持つものが。ヴォル殿、この世界は苦痛の只中にあります。あなたも感じていませんか?」

龍たちの死により、退廃したタルキール。

過去はすでに失われた、と肩を落とすサルカンに対し、ナーセットはこれを否定します。

ウギンは何かを残しているかもしれない。

そして、サルカンによって、何かを起こせるかもしれない、と。

彼女の表情にあったのは、興奮と熱望。

脳裏をよぎるのは、古の書物にあった言葉。

『過去に目を向け、ウギンへの扉を開けよ』

「声は、扉について言っていた。俺はそれを探し求めていた、だが案内してくれる者はいなかった」

「ここに一人いますよ」 ナーセットが言った。彼女はサルカンの肩に優しく手を置いた。

「ウギンが倒れた場所を知る者は多くありません。ですがそれは賢眼の年報に記されていました。年報の守り手として、私はその内なる伝承を読みました。あなたを、精霊龍の墓へとお連れしましょう」




ナーセットの導き

サルカンは野営の残り火の向こうにいるナーセットを見た。彼女は小さな茶のポットへと頭を傾けていた。香りが立ち上り、彼は親密さを感じた。他者とのそのような何かを、思い出せる限り彼は知らなかった。彼女は顔を上げて、率直に微笑んだ。

「贅沢品ですが、私はいつも茶葉を少し持ち歩いているんです。ご一緒にいかがですか?」

野営をする中で茶をすするサルカンを横目に、ナーセットは語り始めます。

ウギンの骨が横たわる場所、そこはきずなと呼ばれていること。

現実が移ろう場所で、定まることがなく、中に入れたものもいないということ。

そして、サルカンのような世界を渡る者のみが、これに耐えられるのではないかという仮説。

 

やがて、二人はその場所へと辿り着きます。

巨大な龍の骨がその場には横たわり、そしてそれは奇妙な青色に発光していたのでした。

ナーセットは彼の隣にやって来た。

「旅人よ、心を平静に保つのです。あなたは自身の進む道を見つけました。見るのです、精霊龍があなたにそれを示しています」

 

と、その時。

雄たけびを上げ、二人に迫る影。

「裏切り者め、お前は俺が殺す!」

マルドゥ族のカン、ズルゴ。

目に見えぬ速さで身をひるがえしたナーセットは、この攻撃を止めます。

そして、なだめるように掲げた拳は、オークの手を粉砕したのでした。

「お行きなさい」 ナーセットは息を切らし、切迫した声で言った。

「ここからでも、『きずな』の力を感じます。かつてない程に強くなっているようです。私があなたの行く道を守りましょう」

「俺の戦いを任せるわけには!」

ナーセットの両眼がひらめいた。

「行くのです。今がその時です。ウギンがあなたへと、その石にどのような運命を込めたのだとしても、今がそれに対面する時です」

 

苦悶と恥辱を感じつつ、サルカンはきずなへと向かいます。

その内へと引き込まれる力。

彼が振り返ると、ナーセットは戦いの中で微笑みさえ返したのでした。

しかしその瞬間、予期せぬ動きで振るわれた剣は、彼女の身体を切り裂きます。

まるで瞑想するかのように立ち尽くした後、花のように崩れるナーセット。

彼女はサルカンへと顔を向けた。叫び声が届いた。「行きなさい!」

サルカンの世界が深紅に変貌した。

(中略)

「ズルゴ! 怪物め! 復讐の時を待っていろ!」 サルカンは絶叫した。

(中略)

サルカンは振り返り、ズルゴからナーセットの倒れた身体までを眺めて、そしてまた扉へと向かった。

そうだ。

一つ、激怒と解放が半分ずつの咆哮を轟かせ、サルカンは燃えさかるアーチへと駆けた。




今回はここまで

ナーセットのめちゃくちゃ丁寧な言葉遣い、イイよね…。

響く声に、半ば狂気に陥るサルカンと、泰然自若と構えるナーセットは非常に美しい組み合わせです。

さて、きずなへの旅の中で、ナーセットは凶刃に倒れます。

ウギンを目指した旅で、サルカンは「運命再編」ができるのか…!?

次回もお楽しみに!

 

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*出典*

サルカンの狂気

「きずな」への旅

 

Posted by オクハラデン