【イクサラン:失われし洞窟】第5回 ヴィトとの決戦・マイコイドの侵略【ストーリー】

2023年12月22日

はじめに

前回は、地下帝国オルテカへ辿り着いた一行の、吸血鬼陣営のお話を紹介しました。

オルテカの民から大逆者扱いを受け幽閉されたはずのヴィトたちは、脱獄の末ついにコウモリの神アクロゾズの封印を解いてしまいました。

その復活により再び闇に堕ちんとする地下帝国。

空から吸血鬼たちが襲い来る中、帝国の外にはキノコの帝王マイコイドの影も…!?

続きをどうぞ!




目次

陰りゆく太陽

一行が謁見したアカル・パカル執政は、彼ら太陽帝国の者たちを自分たちと祖先を一つにするものと認め、協力を約束したのでした。

執政の見守る中、オルテカ帝国の成人の儀でもあるコウモリへの騎乗を試すファートリやインティ。

滑空し着地した二人に対し、遅れて到着したウェイタは緊張の面持ちで報告したのです。

遠方にて、吸血鬼たちが呪いの雲を呼びだしていると。

続いて現われたアニム・パカルは、ふたりの捕虜を連れてきたのでした。

それは疲れ切った様子の吸血鬼と…エルフ。

「逃亡者をふたり発見しました」

アニムは姉へと告げた。

「逃げたんじゃありません」

身を守るようにその若者が言った。

「助けてくれる人を探してたんです」

(中略)

「私はアマリア、彼はケランです」吸血鬼が言った。

「他の吸血鬼は、彼らは……人間の従者たちと女王陛下の特使を殺害し、逃走しました。彼らはアクロゾズを探し求めています」

(中略)

アカル執政は青ざめ、杖を更に強く握りしめた。

(中略)

彼女は太陽を見上げ、目を閉じた。

「もしも吸血鬼どもが同志を発見したなら、遂にあのコウモリの神を牢獄から解放できるだけの力を得る可能性がある。あの神の終わりなき血の渇望の前では、中心核の何者も無事ではいられまい」

 

ほどなくして、吸血鬼たちが空に現われると、太陽は少しずつ陰りを見せたのでした。

まるで、ファイレクシアとの戦争を彷彿とさせる、戦いの始まり。

金切り声を上げる怪物の軍勢。

コウモリに騎乗した太陽帝国とオルテカの軍勢は、それらと激突します。

そしてそれらの戦いは、地上へ血の雨を降らせたのでした。

いつもそうなのだ、ウェイタは暗い気持ちでそう思った。血は空に、石に、川に、海の泡に。

黄金色がひとつ彼女の目を捉えた。細くなった陽光の中のきらめき。山麓の、自分たちがこの新たな大地に入るために通ってきた扉。何者かがそこから飛び出した――また別のコウモリ吸血鬼だろうか? いや、セイレーン? どうもその姿には見覚えがある気がした。

その背後から、緑がかった黒い塊が門をくぐって殺到した。あの地下河川沿いの無人の都市で戦ったような菌類の生物、それも何十体、何百体という数で。

そしてそのすべてが駐留地へ襲いかかろうとしていた。

 

一方、吸血鬼たちの戦いを見ながら、ヴィトは歓喜に震えていたのでした。

大気に漂う血の香り。アクロゾズにより消えゆく都市の光。

人間もコウモリも容赦なく襲いゆく彼の目に、見覚えのある戦士が映ります。

オルテカへの紹介の際にいた、太陽の執事長。インティ。

ヴィトの強襲に、太陽の盾で対抗するインティでしたが。

吸血鬼の無慈悲な一撃は、インティではなく、彼の乗るコウモリの頭蓋を貫いたのでした。

コウモリは身を震わせた後に力を失い、インティを鞍に縛り付けたまま落下しはじめた。

その戦士は乗騎と自身を繋ぐ留め金を外そうと奮闘したが、そのため無防備となった。クラヴィレーニョが背後に回り、巨大な鉤爪でインティの頭部を掴んだ。

「アクロゾズに栄光あれ」ヴィトが言った。

クラヴィレーニョがインティの首を折ると、人とコウモリは共に闇へと落ちていった。

「インティ!」

近くで悲鳴があがった。死した仲間を追いかけ、あの戦場詩人が乗騎を駆った。

ヴィトはそれを追った。あの娘もまた、極上の贄となるだろう。




ファートリとヴィト

地面にひざまずき、ずたずたになった従弟の遺骸を抱くファートリ。

ヴィトはその心臓へ槍を向けつつ彼女の周りを歩き、アクロゾズに彼女を捧げられる喜びを語っていたのでした。

突き出される槍を身をひるがえして避けたファートリは、周囲へと魔力を伸ばし呼びかけます。

その間にも、ヴィトは翼による高さと距離による優位によって、ファートリを追い詰めていったのでした。

相手には届かぬ攻撃と、降り注ぐ敵の攻撃に、悲鳴を上げ始めるファートリの身体。

まだだ。インティの復讐を遂げるまでは。足元の地面が震えた。

「愚かな希望を捨てよ」

忌まわしい影のように、ヴィトはファートリの上空に浮かび上がった。

「アクロゾズは蘇った。神による永遠の支配は必然なのだ」

ヴィトはファートリへと槍を突き落とした。彼女はそれを盾の溝で受け止めてひねり、相手の武器をねじり取った。

「必然なのは死だけよ」

ファートリは言った。

「あなたであっても」

 

その瞬間空を裂いた叫び声。

ファートリの相棒たる恐竜が空から襲い掛かると、その爪はヴィトの身体に大きな傷を残したのでした。

彼女が取り上げたのは、ヴィトの持っていた槍。

怒りと悲嘆のままに突き出されたその槍は、吸血鬼の心臓を貫き、地面へと達したのです。

目を見開き、無意味にも槍を抜き取ろうと足掻くヴィト。

「アクロゾズよ」彼は囁いた。

「何故私を見捨てたのですか」

ヴィトは横向きに倒れ、黒い大地にその血が溜まっていった。ファートリが黙って見つめる中、怪物のような両目から赤い光が消えた。

太陽帝国の危険な敵がひとり取り除かれた。それでもファートリは無意味だと感じた。この吸血鬼が死んでも、インティが蘇るわけではない。

(中略)

彼女は自身の乗騎にまたがり、家族や敵の死体を後にした。そしてインティへと約束した――中心核からすべての吸血鬼を滅するまで戻らないと。




マイコイドとの戦い

クイントたちに加わったセイレーンのマルコムは、帝王マイコイドの軍勢が長閑な地に広がりゆく光景に、罪悪感を覚えていたのでした。

そして彼らの他にも、吸血鬼のアマリア、エルフのケラン、そしてオルテカ帝国の幽霊たちが、アカル執政の元に集っていたのです。

執政の一喝により、菌類の軍団へと立ち向かう一行。

アマリアが血と灰を地図へと塗りつけると、それは広がりゆく菌類の居場所をも記したのでした。

そしてオルテカの庭師の指示によりアマリアが地図に一閃すると、キノコの軍団の前に大きな地割れが発生したのです。

ケランはふらつくアマリアの肘を掴んで支えた。

「すごい技ですよ」

アマリアの頬が浅黒くなった――赤面しているのか? 吸血鬼は赤面なんてしない。この若者は大した奴だということだ。

 

それでも地割れへ身投げをし、橋を作らんとするキノコたちへ、オルテカの軍勢はそれぞれの方法で応戦したのでした。

呼び出された霊たちは、キノコたちへ滑り込むとその身を逆に感染させ。

庭師たちが放った光輪は菌類を灰へと変えていったのです。

そして、マルコムの横で大砲を取り出したのは彼の相棒ブリーチェス。

彼はそれをマイコイドに向けますが、恐竜の衝撃によりあやうく大砲を落としかけたのでした。

「気をつけて狙え!」マルコムは叫んだ。

「早くあの帝王マイコイドを攻撃しろ!」

「ジョウズにトべ!」

ブリーチェスが言い返した。彼はそれを尻尾から足へ、手へと渡し、筒の中央付近をしっかりと持った。

マルコムが声をかけた。

「撃つ前に合図――」

フーーーーッ!

筒の末端から煙と火花がほとばしった。

(中略)

火球の進路にあるものはすべて潰されていった。帝王マイコイドがそれを目撃した直後、火球はタイタンの一体に真正面から命中した。帝王マイコイドは網から落下し、炎をまき散らしながら燃え盛る火球の下敷きになった。

(中略)

ブリーチェスが尻尾で帽子を直し、嬉しそうに息をついた。

「ダイバクハツ!」

全然爆発じゃなかっただろ。マルコムはそう思ったが、この瞬間を台無しにしたいとは思わなかった。




今回はここまで

インティ、死す!

前回のイクサランの物語からずっと名前の出ていたキャラクターのため、これはなかなかにショックな出来事でしたね。

当ブログの紹介記事では省いてしまってましたが、ゴブリンのブリーチェスはここまでの道中、敵が現われるたびに「ダイバクハツ!」と言い、マルコムに窘められ続けていました。

最後には、彼の大爆発がマイコイド討滅に役だった、という伏線回収でございました。

さて、残るはコウモリの神のみ!

エンディングを含めたラストのストーリーは次回!

お楽しみに!

 

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↓インティはこちらにも出てました

【イクサラン】第4回 ファートリとアングラス【ストーリー】

 

*出典*

メインストーリー第5話

メインストーリー第6話