【機械兵団の進軍】第1回 チャンドラの苦悩と決意【ストーリー】
はじめに
ついに!新ファイレクシアのストーリー最終章!
前回まででその次元を訪れた英雄たちの半数が完成化され、エルズペスは行方不明となり、酒杯による世界樹の破壊作戦も失敗に終わりました。
そしてついにノーンによる侵略が開始され、各次元にはファイレクシアの軍勢が押し寄せることとなってしまいます。
希望など全く残されていないような展開の中、どのようにストーリーは展開されるのか!
「機械兵団の進軍」のストーリー紹介、始まりますよ!
↓ストーリーのまとめはこちら↓
シェオルドレッドの処罰
完全なる統一の時は近い。
三人の卑小なる者たちを目の前にし、エリシュ・ノーンはそのように思っていたのでした。
ノーンの求めるものを理解し、速やかに去るジェイス。
そして新しく現われる完成化されたルーカ、アジャニ、ナヒリ、そしてアトラクサ。
彼らは供物のように、シェオルドレッドを運んできます。
ナヒリにプレインズウォーカー三人を拘束させると、ノーンは彼らに告げたのでした。
自分たちが見たものを、他の同胞たちへ伝えよと。
その独善的な態度に、シェオルドレッドは毒づきます。
「冗談は大概にせよ。(中略)お前は統一など気にかけてはいない。お前が気にかけるのはお前自身だけだ」
「そうであろうか?」
ノーンは言い返し、玉座の肘かけを叩きつけた。
「(中略)其方は長いこと、我らが神聖なる教義を内から腐敗させようとしてきた――だがそれは過去のこと。我らが未来は輝かしく完璧、其方も束縛から解き放たれる。ファイレクシアに、統一よりも力を切望する者の居場所はもはや存在せぬ。アジャニ――この者を処刑せよ」
シェオルドレッドの苦悶の声も一瞬。
アジャニの斧は彼女の身体を両断し、その首は白磁の床を汚したのでした。
その隙に、3人のプレインズウォーカーが逃走したのをノーンはみとめます。
しかしそれも彼女の計算のうち。
彼らはファイレクシアの福音を広める。
そして、彼女の手の者が各次元を統一してゆく。
ノーンはそれぞれの配下へと命令しました。
ナヒリはゼンディカーへ。
ルーカはイコリアへ。
タミヨウは神河、アジャニはテーロス、アトラクサはニューカペナ…。
そしてニッサはノーンの側で、彼らへの道を示し続けたのです。
ファイレクシアの世界樹ー次元壊しの成長を管理できる彼女は、もはやノーンの副官となっていたのでした。
身振りひとつで彼女は従者たちを呼び出した。
彼らは到着すると、ノーン自身の考えと教えを彼女へと暗唱した。
その金切り声の中、エリシュ・ノーンはしばし悪夢を忘れた――そしてそれとともに忍び寄る、白をまとうあの女性のことも。
チャンドラの苦悩
ドミナリア次元、リリアナの小屋にて。
チャンドラは待っていたのでした。
二週間を待って何の知らせもなければ、全員死んだものとして先へ進む。
レンやビビアンがこの待ち時間を有効活用する中、チャンドラは、そしてリリアナはこの時間が苦痛で仕方なかったのです。
呼吸に集中する。呼吸を制御し、炎を制御すれば、全ては上手くいく。
レンとともに瞑想を試みていた彼女の耳に、仲間たちが到着する音が聞こえました。
深呼吸をし、目を閉じ、隠れ家へと踏み入るチャンドラ。
そこに見えたのは、暗澹たる表情のケイヤ、魁渡、タイヴァーだったのです。
彼らは見てきた全てを伝えます。
ファイレクシアの世界樹が、彼らの次元への侵略を可能にし。
敵の手に落ちたニッサが、それを操っているのだと。
その言葉に、チャンドラは呼吸というものを忘れた。そして何かをまくし立てた。わかっていた。ニッサがこの三人と一緒にいない時点で、察していた。それは……
彼女が何か言おうとするよりも早く、背後で扉が開いた。
「知らせが来たの?」
彼女たちの背後でビビアンが言った。
「待って……ジェイスは?」
「わざと遅れてるんでしょ」
リリアナがそう言い、タイヴァーの胸に巻いた包帯を固定した。
「今に現れるわよ」
ケイヤは目を閉じた。
「いえ、それはないわ」
リリアナは、少なくともその表情に悲嘆を見せなかった。だがその声は鋭く、痛みがあった――チャンドラの胸のそれと同じ痛みが。
「ふざけないで」
三人は続けます。
その二人だけではなくナヒリも完成化し。
エルズペスは多元宇宙のために犠牲となったと。
ストリクスヘイヴンへ危機を伝えに行こうとするリリアナを横目にチャンドラは訴えたのでした。
各次元で応戦するだけではなく、根元から諸悪を絶つべきだと。
しかし、ケイヤが、魁渡が、ビビアンが、そして英雄的行動を信念とするタイヴァーですら、彼女の主張に反対したのです。
「チャンドラ」
リリアナの声は、雪の上の影のように柔らかだった。
「彼女は、あなたに安全な所にいて欲しいって言ってるのよ」
どうしてそんなことを言うの? チャンドラは必死に考えないようにしていた。想像力を押し留めていた。だがリリアナがそれを解き放った。
ニッサがここにいたらと想像するのは、炎を呼び起こすように簡単だった。
(中略)
彼女の言葉が聞こえるようだった。思い描こうとしなくとも。
辛かった。
とても、とても辛かった。
彼らひとりひとりの前で血を流している、けれど誰も手を差し伸べてくれないかのように。
チャンドラの決意
チャンドラは全員へ告げます。
たとえ一人になろうとも、敵地へ赴き、その樹を破壊すると。
そしてその足の赴く先に、リリアナは立ち塞がる最後のものとしていたのでした。
決して本気で止める様子ではなく。
ただ小口に立ち、彼女を見つめる様子で。
「本気なのね」
「そうよ。そしてあんたは本気で逃げ出すつもりなの?」
(中略)
「私がそうするとでも? 逃げるんじゃないのよ。弔いの鐘は聞くだけでわかるの。あなたの小さな冒険が上手くいくといいわね」
「待って」
チャンドラはそう言った。
だがリリアナは待たなかった。彼女はほとんど振り向くこともなく、自ら沼へと歩き出した。
「待っている時間はない、そう言ったのはあなたでしょう」
今日は何ひとつ簡単にはいかない。
(中略)
リリアナは漆黒の煙の中に姿を消した。
チャンドラ・ナラーは歩き出した。
両目から零れた涙は熱く、だが沼地の冷たい空気はそれを凍り付かせるようだった。
その気になれば、その場からでもプレインズウォークできる。
しかし、チャンドラはしばし歩きます。
ここから離れれば、もうしばらく見ることができないかもしれない空。
いつかは戻ってくる。世界樹を倒したら。
きっと大丈夫。
自身に感じる使命感と裏腹に、その恐怖は消せるものではなかったのでした。
大丈夫。心を決めるために、少しだけ時間があればいい。
そして少しだけ、泣く時間が。これから悪の帝国へと突っ込んで行くのだ。そしてそこを、かつて親友と呼んだ人たちが、一緒に打ち倒そうと頼りにした人たちが守っている。
それは叶わなかった――そして今、自分ひとりで向かうのだ。
不意の冷気と葉ずれの音が、誰かが近くにいると告げた。鼻を鳴らし、チャンドラは眉をひそめた。
「どっか行きなさいよ」
「それは望むところではない。皆のところへ戻らねばならないだろうからな」
レンだった。少なくとも、自分を説得しにケイヤが来たのではない。それでも、チャンドラは何と言うべきかがわからなかった。友がそこにいたことに、彼女は泣かないようこらえた――だがそれでも彼女は泣いた。
「手助けをさせて欲しいと思っている」
チャンドラは鼻の頭を拭った。
「あなたが?」
「そうとも。お前が皆と話すのを見ていたが、実に奇妙だった。お前の言葉は完璧に理にかなっていると思った。枝の一本が腐っているなら、それを切り落とさなければ木そのものを見定めることは不可能だ」
理解してくれる相手がいた、その安堵は途方もないものだった。
誰の助けも得られないと自嘲気味に話すチャンドラへ、レンは告げます。
七番が、そして思うにテフェリーがいると。
世界樹は苦しみの咆哮をあげている。
レンの中の炎を受け止められるのは、世界樹だけであろうと。
「お前は七番のような友達を見つけるべきだな」
レンが言った。
「そうすれば決して独りにはならないだろう」
その友達が、たまたま凶悪な敵だらけの次元で行方不明にならない限りは。そうなってしまったら、本当に自分は独りだ。
チャンドラの笑みは悲しさを増すだけだった――だが彼女は笑みを大きくしてそれを隠した。そして七番の幹をひとつ叩いた。
「さ、行きましょ」
そして二人が去ったドミナリアにて。
彼女らが気づかぬ者たちが、その場を見つめていたのでした。
このすべてが彼らにとっては馴染み深く感じた、歌詞が失われて久しい歌のように。何度思い出そうとしても、言葉は逃げ去ってしまう。旋律だけが残っている――来たるものへの嘆き、痛ましい賛歌。
見つめているのはひとりだけではなかった。見ている、だが見えざる者たち。ひとりが尋ねた。
「私たちは何を見ている? 何故私たちはここにいる?」
返答は、戦を告げる角笛のようだった。
『終焉の始まりを目撃するために』
今回はここまで
悲しい…悲しすぎるよチャンドラ…。(´;ω;`)
この記事であらすじが分かったら、是非原文も読んでいただきたいです。
難敵を目の前に、やるべき事は決まっているのに、誰も賛同してくれず、成功の保証も全くない。
そんな彼女の苦しみが現われたストーリーは、本当に胸にクるものがあります。
そして、そんな彼女に味方するレンの頼もしいこと!!
イニストラードからですが、なんなんですかね!彼女のイケメンっぷりは!!
最高かよ!!!
さて、新ファイレクシアへ辿り着いたチャンドラとレンは…。
そして、彼女らを見つめていたのは一体誰なのか…。
次回もお楽しみに!
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