「リリアナの誓い」の背景ストーリー

はじめに

前回のお話で、イニストラード次元の終末を感じたリリアナは、この次元の人々を、そして死に瀕したジェイスを救うべく、ゾンビたちの集団を率いエムラクールの元へと向かいます。

ちなみに、前回までのお話は、「異界月」のトレーラーにもなっていますので是非チェックしてください!

想像以上に俊足で襲い掛かるゾンビたちが少し面白いです。

 

今回は、そんなリリアナが打倒エムラクールのために戦い、そしてゲートウォッチになるべく「誓い」を立てるところまで。

まずは、苦戦するゲートウォッチの元に、颯爽登場するリリアナの場面から。




リリアナの救援

エムラクールを倒すべく、ジェイスによって以前同様の作戦を提案され、その実行に向けて動くゲートウォッチのメンバーたち。

しかし、エムラクールの前には、それに変質させられたものや、狂信者たちが立ち塞がり、マナの捻じ曲げられた環境でニッサの力も発揮できず、彼らは全滅の危機に追いやられます。

そこで現われたのが、密集して部隊をなす、死者の軍団でした。

リリアナの精鋭

リリアナは両腕を大きく広げて軍の前方へ浮かび上がり、その指先すぐ上には鎖のヴェールが静止していた。

その身体の文様は光で輝き、血を滴らせていた。

(中略)

優雅に地面へ立つと、リリアナの表情は瞬時に熱狂的な歓喜から上品な笑みへと和らいだ。

文様が消え去り、ヴェールは縮んだように見えた。

「あら、ジェイス。なるべく急いで来たのだけど」

 

ちなみに、このリリアナに対するゲートウォッチの反応は、一様に芳しくありません。

「ここで何を?」

ギデオンは今も戦闘の体勢にあり、彼のスーラは吹き込まれた力を流していた。

「ギデオン、ちょっと落ち着きなさいよ。その気持ち悪いドレスの御婦人が救ってくれたんだから」

チャンドラはリリアナに背を向けるように二人の間に割って入った。

ニッサは身動きをして立ち上がろうとした。

「その……連れてきたもの。忌まわしいもの」

ニッサはヴェールにたじろぎ、そちらに目を向けようとすらしなかった。

リリアナは笑みを広げた。

「それは『ありがとうございますリリアナ様、命を救って頂いて。このご恩は必ずお返し致します』 の変わった言い方ね」

※気持ち悪いドレスの御婦人

 

唐突に現れた、ゾンビの集団を率いる女性。

ゲートウォッチは、その人物を信じてよいのか、判断を迫られます。

そして、その視線は唯一彼女のことを知っているであろう、ジェイスの元へ向けられるのでした。

「あなたが必要なのは、この呪われたものを連れて帰ること」

ニッサはふらつきながら立ち上がり、だが彼女は剣を手にしていた。

「それと一緒には戦えない」

ギデオンは戒めるように片手を挙げた。

「ニッサ、君は海門で吸血鬼や海賊やもっと悪いものと共に戦っただろう。得られる仲間は何であろうと受け入れるべきだ、それが信頼に値するのであれば」

「あら、そこの筋肉には分別があるじゃない!」 リリアナはにこやかに笑った。

※そこの筋肉

「ですが、あなたが信頼に値するかはわかりません。ニッサの本能は滅多に外れることはない。私も彼女に同意したい気分です。お持ちになっているそれも……問題です。それに私はあなたを存じません。ですが彼なら」

ギデオンはジェイスへと向き直った。

「君が決めてくれ。ジェイス、教えて欲しい。彼女は信頼に値するのか?」

ジェイスが返答するよりも早く、リリアナは高笑いを上げた。

「馬鹿げた質問ね! わかっているでしょう。周りを見てごらんなさい、私の合図一つであなたたち全員押し潰されるのよ。今すぐ私を信頼しなさいな、でもここから離れる気がないなら、強制はしないわよ。だから決めなさい、勇敢な英雄さん達。どうしたいの?」

彼女はそれぞれの顔を見た。

憤慨するギデオン。消耗したチャンドラ。怒り狂うニッサ。そして、苦悩するジェイス。

「あら素敵」 そこに肯定的な感情が無いことを知り、リリアナは笑みを浮かべた。

「終末が来るわね」




ヴェールのリリアナvsエムラクール

リリアナの見上げた空。

不意に、エムラクールが「開いた」その時、不可視の力が彼らを襲い、ジェイスやリリアナ以外の者たちは地に伏します。

そして、精神を持たないがゆえに、エムラクールの影響も受けていなかったリリアナのゾンビたちですら、一つの言葉を呻くのです。

「エム……ラ……クーーーール」

絶え間ない頭痛と苦痛の中、怒りだけがリリアナを支えていたのでした。

私のゾンビ。私の! お前のものじゃないのよ!

意識することなく彼女は鎖のヴェールの魔力を深くから引き出し、エムラクールの力を押しやった。

彼女はそのエルドラージの荒廃の接触を感じた、今や死者にすら影響するほどの。

だがその悪意に満ちた接触ですら、鎖のヴェールに後押しされたリリアナの屍術の腕前には及ばなかった。

彼女はゾンビ達が自分の下へと戻ってくるのを感じた。

私はおまえのものじゃない。おまえが私のものなのよ。

彼女はヴェールの魔力を集め、それを自身の多大な魔力と経験で手綱をとった。

それほどの力の苦痛の中では、もはやエムラクールの精神攻撃は感じなかった。

彼女はその巨大なエルドラージへとあらゆる注意を向けた。

まるで彼女の増してゆく力を認識したかのように、その巨人は彼女へと向かってゆっくりと動いていた。

誰もがあなたを怖がっているようね、エムラクール。

彼女は再び笑い声を上げた、力に浸りながら高らかに。

私があなたを倒せるなんて誰も思っていない。見せつけてやりましょう。

 

そこでリリアナは知ったのでした。

自分は今まで、鎖のヴェールを使うにあたっての最後の一歩を踏み出していなかったことに

暴れまわるヴェールの魔力を結集し、形成し、屍術の力として放つ。

その力の奔流に、エムラクールは開花から初めて、押され始めるのでした。

彼女はゲートウォッチがまだ意識を保っており、自分の勝利を目にできることを願った。

力とはこういうものよ、申し訳程度のかわいそうなプレインズウォーカーさん達。

彼女はエムラクールへと更なる爆発を放ち、攻撃を続けた。

 

しかし、リリアナが感じたのは、力に、身体がついてこないという現実。

自分は鎖のヴェールの魔力を支配下に置いたと思った。

が、それは誤りだった。

皮膚が裂け、血管が弾けるのを感じながら、いつしかリリアナは「自分が生き残る」ために魔力を使っていることに気づくのでした。

彼女はここで死につつあった。

他のプレインズウォーカー達を見ると、今も彼らの身体はリリアナのゾンビが与えた広い空間に守られていたが、その輪は縮みつつあった。

ニッサはもはや叫んではおらず、意識なく皆とともに横たわっていた。

ジェイスだけが立ち、青いゆらめきが今も彼らを守っていた……何かから守っていた。

だが彼は動かず、口も開かなかった。

「ジェイス!」 その絶叫に反応はなかった。認識した様子もなかった。

「ジェイス、この役立たず! 何か役に立つ事ができないの!」

エムラクールが圧迫する中、彼女はそう言うのがやっとだった。

一瞬一瞬が瀬戸際だった。

彼女は繰り返し自身に言い聞かせた。

もう一瞬。もう一瞬。もう……




リリアナの誓い

さて、リリアナの意識はここで途絶えるため、次に目覚めたとき、リリアナはジェイス・タミヨウ・ニッサの労苦により、辛くも手にした勝利の中にいたのでした。

月への封印

 

彼女の中に広がっていたのは、自尊心と満足感。

それは、鎖のヴェールを使ったときに常に自分を襲っていた虚無感を上回るものでした。

良い行いをした、その満足感に彼女はしばし満たされていた。

あなたたち誰も、私がいなければ生きていなかったのよ。

この世界を救った代価を私が求めないのは幸運だと思いなさい。

そう、代価を求めてもよかった。

だが今ではないし、イニストラードの誰かに対してでもない。

 

そして、彼女の思考はゲートウォッチへと向かいます。

ゾンビは素晴らしい下僕である。

しかし、それらでも倒せない敵は、確かに存在した。

ゲートウォッチたちは、他の人たちに何も責務を負わないにも関わらず、互いのために戦い、互いのために死ぬことを厭わない。

以前、自分はジェイスの感情を利用しようとしていた。

だがここにあるのは、ジェイスとその限界よりも遥かに大きな好機だった。

仲間。友であり仲間。

この日は新たな発見があった。

友の力という新たな発見が。

正しく扱うなら、友は優秀なゾンビのようなもの。

助けてくれるし命を救ってくれる、何故なら彼らがそうしたいと思っているから。

そうしなければならないから、ではなく。

こんなにも強い友と一緒に、何ができるだろう?何を征服できるだろう、何を手に入れられるだろう?

それを思ってリリアナは微笑んだ。

彼らは自分の直接の命令には従わないだろうが、何か問題があるだろうか?

彼女から見て子供なのはジェイスだけではない。

全員が子供だった。

 

ギデオンが、ふらふらとタミヨウに近づき、そして彼がゲートウォッチについて語っているのを、リリアナは遠目に見ていたのでした。

彼が、ゲートウォッチへの加入を提案するのも。

タミヨウが、謝りながらかぶりを振るのも。

やがて、ジェイスはギデオンを呼び止め、小声で何かを話し始めます。

リリアナは、自分に広がる笑みを、わずかでも表に出さないように努めていたのでした。

やがてその色男が近づいてきた。

そして善いことをしようという善い言葉があったが、リリアナは注意を引くであろう誓いを考えることに集中していた。

適切な誓いとはどういうものが良いか、彼女は様々な方向から考えていた。

誠実すぎる、感傷的すぎる誓いは疑念を生じさせる――次の一歩を困難にしてしまう疑念が。

だが冷淡すぎる、正直すぎる誓いはその疑念を確信へと変えてしまうだろう。

必要なのは上品さと、ほんの僅かの皮肉と、だが澄んでまっすぐな心で誓うこと。

ギデオンが誓いを求めてきた時、彼女の準備は万端だった。

 

「一人よりも力を合わせたほうが強力になれるのはわかっているわ。それで私が力を得て、鎖のヴェールに頼らなくて済むなら、私もゲートウォッチになるわ。これでいい?」

 

彼女はそれを僅かな、ほんの僅かな笑みとともに言った。

それでも、そこにある喜びは正真正銘のものだった。

最高の嘘は常に、切り抜けるために十分な真実を含んでいるもの。

彼女は今やゲートウォッチの一員となった。

その心に、約束と野心に満ちた未来が広がった。

リリアナの誓い

 

今回はここまで!

ギデオンの誓い 「正義と平和のため」

ニッサの誓い  「すべての次元の生命のため」

ジェイスの誓い 「多元宇宙の繁栄のため」

チャンドラの誓い「人々が自由に生きるため」

リリアナの誓い「自分の野心のため」 ←new!!

 

と、いうわけで。

ゼンディカー崩壊の危機から、世界を守るために誓いを立てた初期メンバーの4人に比べて、非常に斜め上の理由で誓いを立てたリリアナ。

世界のためではなく、あくまで「自分のために」ゲートウォッチに参入した彼女ですが、この動機が後にもたらす影響とは…。

 

今回で、「イニストラードを覆う影」「異界月」のメインストーリー紹介は終わりです!

次回から、5人となったゲートウォッチが「チャンドラの故郷」を訪れる、カラデシュ編に続きます。

その前に、ゲートウォッチが5人そろったことですし、次回からは皆様の「灯の覚醒」ーー“オリジン”の話をご紹介したいと思います。

 

次回もお楽しみに!!

 

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*出典*

約束されし終末

Posted by オクハラデン