【機械兵団の進軍】第8回 ヴラスカの侵攻【ストーリー】

2023年5月4日

はじめに

機械兵団の進軍について、サイドストーリーの最後の最後まで綴られなかった、ラヴニカへと向かったヴラスカの物語!

そのストーリーは、ファイレクシアに侵されゆくヴラスカと、それに抵抗する彼女の内情を、前者を赤字、後者を黒字で描き完全一人称の語りで進めるという斬新な手法で描かれました。

最初いきなり赤字になってわたしゃビックリしちまったよ…。

とはいえ、その異形さも含めてこのストーリーの良さ!

あらすじが分かったら原文も読んで欲しいと思いつつ、ご紹介していきましょう。

あ、もちろん本編のヴラスカのストーリーを知っておいた方がいいので、まずはぜひそちらから!

 

↓ストーリーのまとめはこちら↓

【機械兵団の進軍】背景ストーリーまとめ




目次

完成化したヴラスカ

闘技場にてヴラスカを襲ったのは、ファイレクシアに侵食されることの痛み。

喉が変質し、声はかすれ、脚は生ける鉄へと変わり果てた。

そしてその侵略に抗うかのように、ヴラスカは自身を逃がしたのでした。

心の奥底。かつても自分を隠した場所。

まるで夢の中へと消える感覚が彼女を包みます。

外で、よく知る顔と口づけを交わす自分の身体。

そして、望んでもいない行動を取る肉体と、その恐怖から逃れるために更に深く潜る自分自身。

 

気づけば彼女は侵略樹を渡り、最も見知った次元ラヴニカへと降り立っていたのでした。

アゾリウス評議会の建物を見つけ、その破壊を目論見、笑みを浮かべるヴラスカ。

彼女は侵略樹へと、そこへ降り立つよう命じたのです。

私はその建物に入りたいと思った、けれど何故かはよくわからない。それは私が閉じ込められていた牢獄で、脱獄しようとして成功した牢獄。そして私自身の心の奥底から、その忌まわしい記憶が噴水のように弾け出た。

心臓が早鐘を打った。恐怖の記憶と……いや、不可解だった。この身体は何故こんなにも取り乱す? 狼狽とは肉の存在だけが陥る、弱い状態。きっと答えはその建物の中にあるのだろう。私は自分が乗った枝を導き、軍勢を連れて……

 

蘇る記憶。

17歳、目隠し、拘束、アゾリウスの刑務官、斃れ行く同胞、一人残った自分…。

ファイレクシアのヴラスカにとっての弱さ、邪念。

侵略し、全ては一つになっていく誇らしさの陰で、よぎる思い出や逡巡。

導かれるように入った小屋にて、ヴラスカが手にしたのは一つの金属体だったのでした。

そこはかつてのヴラスカの自室、そしてそれはイクサランを旅した際に使用した魔学コンパス。

手の中のものへ感じるのは、美しさと重要性、そしてそんなものは無益であるという思い。

絶え間ない頭痛。

 

それをポケットへとしまい込むと同時に鳴り響く爆発音で、彼女は外へと誘い出されます。

そして、ヴラスカは空から舞い降りたイゼット団のラルと対峙したのでした。

石化するラルの配下を尻目に、目を合わせぬよう突撃する彼と、迎え撃つヴラスカ。

そしてラルの手に握られていた見知らぬ装置は彼女の胸へと埋め込まれると、そのボタンが押されたのです。

白く染まる視界。

装置がまるでファイレクシアの油に反応するかのようにヴラスカの身体を崩す攻撃。

苦悶の悲鳴と、自身を見限るように去っていく配下の者たち。

ラルの言葉はわずかに聞き取れるだけだった。謝っているような。その男はまだ私を見ることはできず、そして私の視界が闇に包まれる中、ラルは歩き去っていった。

夢は消えた。頭痛が弾けた。辺りのすべてが崩れ落ちた。

(中略)

私もここまでなのだろう。何百人もを完成させ、ラヴニカを焼いた。輝かしくていい気分だ。さあ、目を閉じて死を待とう。決して独りでは死ぬことはない、ファイレクシアはそう約束してくれた。

時間は意味を失った。雨が降り、そして止んだ。




ヴラスカの夢

ファイレクシアが決して触れることのない心の片隅。

そこでヴラスカは目覚めます。

そして、死の寸前の瞬間。

暗く不安な虚空の中で、彼女は一つの映像を見たのでした。

とある声が私を促した。

「目を開けてくれますか?」

ブリキ通りのカフェを満たす朝の光は明るく心地よかった。それはカーテン越しに差し込み、昨晩の雨に濡れた路面をきらめかせていた。

目の前にジェイスがいた。

(中略)

打ち解けて人なつこい、寛いだ笑顔。その目尻には、何年も前に初めて会った時に比べて少し皺が寄っていた。いつものように、ジェイスはまっすぐに、怖れることなく私の瞳を覗き込んだ。

こんなふうに過ごせたらよかったのに。

 

「何を思い出せますか?」

そんなジェイスの問いに、ヴラスカは狼狽します。

これまで、まるで人生を遠巻きに見ていたような感覚。

自分は変質し、ジェイスを裏切り、故郷を侵し、自身への裏切り行為を何百回と繰り返した。

「死に値しない者は決して殺さない」という誓いを破り続けることを。

自分は死んで当然だ、ヴラスカはやがてそう結論づけたのでした。

その言葉を悲しむ表情とともに、ジェイスはヴラスカに”入ってよいか”と聞きます。

躊躇いつつも、ジェイスを受け入れるヴラスカ。

秘密の場所へ行こう、そう彼は告げました。

侵略を率いたヴラスカは、ヴラスカではない。

ヴラスカであり続けた部分は、ジェイスが何年も前に作り上げた心の片隅にいたのだと。

頬をまた涙が伝うのを感じた。

「お前には卑劣なことをしたよ。すまなかった」

「約束通りに行けなくて、すみませんでした。どれも、こんなはずじゃなかったんです」

「何もかも、こんなはずじゃなかった」私は頷いた。

「全部取り戻せたらいいのにって思うよ。全部正しくやれたら」

ジェイスは私を見ていた。まるで何か、とても重要なことを私が言っているかのように。まるでジェイスの心の中にある機械部品が、私の言葉で正しい場所にはまったかのように。

「ジェイス。私が死ぬ前に、ひとつ欲しいものがあるんだ」

「何なりと」

「やり直したい」

ジェイスは微笑んだ。

「俺もです」

私はジェイスに口付けをした。

 

失くした時間を埋め合わせるように抱き合う二人へ、ジェイスは周りの風景を変容させていきます。

そしてその映像は、ヴラスカに歓喜と情熱をもたらしたのでした。

やがて二人が疲れ始めたころ。

ジェイスはゆっくりと身体を起こしたのでした。

私は微笑みかけ、ジェイスの片方の瞳には茶色の斑点があると初めて気付いた。彼はどこか申し訳なさそうだった。

「身構えて下さい。これは痛みますから」

ジェイスは私の顔を両手で包み、額をつけて構えるとこれから大変な力を使うのだというように深呼吸をした。

「貴女は俺のものです」

その言葉の意味に確信が持てず、私は微笑んだ。

「いつだって私はお前のものだよ」

(中略)

額に口付けをされ、私は抱擁で返した。ジェイスは私と目を合わせ、再び額をつけ、私のやり方ではっきりと答えた。

「俺も愛しています、船長」

そして心と視界がとてつもなく眩しい白色に弾け、私は息をのんだ。




消えた英雄

とにかく家に帰って眠りたい。

雨にずぶ濡れになったラルの唯一の思いはそれでした。

侵略は二日前に終われど、両手は魔法に疲弊し、両肩は未だに恐怖に緊張している。

いくら復旧作業に精を出そうとも、彼には自分の睨みつける女性の顔が忘れられなかったのです。

皆を一番傷つける方法で変質させていった、その女性の顔を。

背後から瓦礫を登ってくる足音がした。信頼できる高官のひとり。その顔には申し訳なさがあった。

「どうした?」

俺は尋ねた。

「血液電衝スイッチは機能した。何を見つけた?」

その高官は唇を震わせた。今から報告する内容は俺を驚かせるとわかっているのだ。俺は必然の時へと身構え、そして高官が告げた。

「閣下、その者の死体は影も形もありませんでした」




今回はここまで

おええぇぇぇぇ!?

どうなってしまったのぉぉぉぉぉぉぉぉお!?!?!?

 

ジェイスの謎の力?により、ヴラスカに何かが起こり、そしてその死体がラヴニカから消えた…。

 

謎おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!

ジェイスの瞳にあった茶色の斑点ってなんだったんですかね…?読解力なさすぎてわからん…。

ヴラスカが一人称で語り、しかもファイレクシアに侵されている時にも正気に戻る瞬間などがあり、色々曖昧なままで話が進んでいる分、物語の真相が全く見えませんね。

後日談でこのあたりが(ジェイスの行方も含めて)語られることを期待しましょう…!

では、次回もお楽しみに!

 

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*出典*

サイドストーリー・ラヴニカ編 ひとつにして同一