【Φ完全なる統一】第3回 怪物と化したルーカ【ストーリー】
はじめに
前回、酒杯を用いた作戦を決行すべく、新ファイレクシア深層へと踏み出した英雄たち。
そこにはジェイス、ケイヤ、ナヒリ、タイヴァー、魁渡、エルズペス、コスが集い。
放浪者は次元に留まれず離脱。
ヴラスカ、ルーカ、ニッサは行方不明となっていたのでした。
今回はそんな行方不明となっていたうちの二人の話。
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怪物と繋がれる者
次元に到着したルーカが感じたのは、陰気な梢に差し込む光、腐肉の悪臭、水浸しの苔を踏み潰す音…。
ここは狩猟迷宮。明らかに自分が到着すべきところから離れた場所。
彼の頭にここからプレインズウォークすることがよぎりますが、それよりも皆と合流することを目指し上へと向かいます。
支配できる生物がいれば、自分の道筋もわかるだろうと。
その道中で、彼は異形の生物と戦うニッサと放浪者に出会ったのでした。
眼前の獣との戦いに夢中で、樹上のもう一体に気づいていない二人。
彼はイコリアで築いた絆を呼び起こすと、樹上のケンタウルスとのつながりを形成します。
身体が半ば機械のそれは、他の生物よりも用意に彼の制御下に置かれたのでした。
戦いを終え、(奇妙にも)すぐさま次元渡りした放浪者を横目に、ニッサへと話しかけたルーカ。
ニッサは彼へとお礼を言いつつ、しかしその目は不信感を持ってルーカの繋がった生物を見ていたのです。
それは、彼がイコリアにて怪物と初めて繋がった時にも向けられた目線。
彼の忌避する、不審と猜疑の目。
「ファイレクシア人と繋がるのはいい考えとは思えないわ」
ニッサは率直に言った。
「殺してしまうべきよ」
「俺は生まれてこのかた怪物と戦ってきた」
ルーカは苛立ち、ニッサから顔をそむけた。
「こいつは操れる」
ニッサは何も言わず、それは彼女の心情を雄弁に語っていた。
「約束する。もし腹が痛くなったりでもしたら、そいつは殺す」
(中略)
「好みじゃないけれど」
「俺は言ったことは守る」
ルーカは苛立って言った。
ニッサは頷いた。
「ここから脱出する一番いい道を見つけましょう」
怪物と繋がった者
上層へ向かうため、大樹を登ってゆく二人。
その過程において、ルーカの怪物は大いに役立ったのでした。
そんな中、彼がニッサに感じていた苛立ちは増し続けます。
このような非常事態に、爽やかな香りを漂わせる彼女に。
仕方ないながらも、ルーカの怪物にしがみつき、足を食い込ませる彼女に。
ケンタウルスを通じて自分の腹に伝わる靴の感覚は、過去に彼を苛めていた連中を思い出させたのでした。
すると、唐突に聞こえた放浪者からの警告。
突如次元に現われた彼女からもたらされた声に警戒を巡らせたルーカは、怪物の飛来を感知します。
ケンタウルスの制御と怪物との戦闘が同時に行えない中、ニッサに迫る異形。
ルーカはファイレクシア人のケンタウルスへと心を伸ばして命じた。
俺を守れ。
それは従ったが、ルーカが意図したようにではなかった。その胴体から筋ばったワイヤーが弾け出て、ルーカの皮膚を貫いて腹の中を悶え動き、背骨に巻き付いた。痛むと思われたが、そうではなかった。守れと言ったのはこういう意味じゃない。繊維の一本一本がひんやりとした痺れを残した。
ルーカはそのケンタウルスと一体化したように感じた――脊柱が包み込まれ、骨が保持された。
怪物との一体化により両腕が自由になった彼は、飛来した異形を打ち払います。
絆を結んだ怪物のおかげで、自分とニッサは救われたのだ。
そうやって歩みを進めるうちに、梢の高所に辿り着き、出口を探さんとするルーカたち。
周りを取り巻く、桃色で悪臭を放つ花々。
そしてその美しさ。
彼は今になって、それらに気づいたのでした。
ふと感じる、皮膚の下の蠢く感覚。
彼はシャツの穴から、ファイレクシアの細根が覗いているのをみとめます。
繋がった怪物が自身に害を及ぼしたら殺すという約束。
しかしルーカは、自分が健康で、強く、自信に満ちていると気づいたのでした。
幾度目かの、怪物たちとの戦闘。
そこで負傷したニッサへ、彼は手を差し伸べたのでした。
「進む力はあるか?」
彼は思いやりのある言葉を心がけた。生き延びたものだけが生き続ける。強者は弱者を殺戮する権利がある。それが義務だ。
「プレインズウォークで脱出するべきよ」
ニッサが言った。
「迷宮の中心はもう近いぞ」
ニッサは彼を厳しく睨みつけた。
「脱出しようとしてたんでしょう。表層へ」
ルーカは眉をひそめた。いつ自分の目標が変わったのかを思い出せなかった。そもそも変わったのだろうか?元からこの方角を目指していた気がした。
怪物になった者
ふたたび現われた放浪者は、この次元に留まろうと試みていた間に、この近くにヴォリンクレックスがいたのを見たと告げます。
これは法務官を一体減らす好機だと告げつつ、また次元から離れてしまう放浪者。
本来の目的は仲間との合流だとこれに反対するニッサ。
しかしルーカは、ヴォリンクレックスとの戦闘をすべきだと判断し突き進んだのでした。
やがて、そのヴォリンクレックスが、ファイレクシアンのエルフと戦っている場所に出くわします。
ルーカが一度だけ会ったことのあるそのエルフの名は、グリッサ。
それはまるで踊りを踊るかのように、愉悦のままに戦う二体の姿。
法務官だけではない敵の姿に、ニッサは慎重になるようルーカへと促しました。
「ケイヤが言ってたのよ、とてもひとりではヴォリンクレックスとやり合えなかったって」
「俺たちならできる」
「話聞いてる?」
ニッサは非難を込めて囁いた。
「俺の仲間もいる。ファイレクシアの異形が」
それ以上は何も言わず、ルーカは突入した。ニッサは彼の背後で、チャンドラですら赤面するような罵りを立て続けに叫んだ。それでも彼女はルーカを追った。きっとそうするだろう、仲間をひとりで戦わせる気はないのだろう、ルーカはそう思っていた。
ルーカはグリッサに向かい、ニッサはヴォリンクレックスを相手どった。
ルーカには武器は必要ない。もはや彼には自身の鉤爪がある。
グリッサとの実力は完全に互角。
気づけば、ルーカは心の底から笑い声をあげていることに気づいたのでした。
同じような愉悦で戦うグリッサが、自分を貫こうとしたその時。
「戦いを終わらせたくない」
その心のままに彼がファイレクシアンへと呼びかけると、それらは彼へと流れ込み、触手はその身体へとねじ込まれていったのです。
ファイレクシアが自身と一体となる感覚。
怪物から感じた、溢れんばかりの忠誠心。
気づけば彼はニッサに近づいており、ヴォリンクレックスは彼へと捕縛の命令を飛ばしたのでした。
ニッサに現われる、恐怖の表情。
満足が、ルーカの心を満たします。
ついにこの女は自分を恐れた。認めたのだと。
ニッサは苦々しい、怒りの視線を彼に向けた。
そして背を向けて駆けた。
(中略)
彼はようやく真の彼となった。あるべき姿になった。
「だめよ」
グリッサが言い、ルーカは足を止めて更なる指示を待った。
「ルーカ、あのエルフを見つけなさい。ただし殺さないこと。あの子には使い道があるわ。新ファイレクシアの、来たる戦いでね」
彼の隣で、ヴォリンクレックスが低く轟く笑い声を発した。
自信ある仲間を得た、グリッサのその喜びを自分のように感じ、彼もいつのまにか笑みを浮かべていた。
今回はここまで
ルーカ君さぁ…!!
イコリアではオゾリスに操られるような形で、大切にしていた人間に牙を剥き。
ストリクスヘイヴンでは敵組織に与して、ウィルとローアンの敵に回り。
そして新ファイレクシアではこれかい!?
ずっとイヤな悪役ぅ!
…というわけで、ヒール役をまっとうしてルーカは完成化してしまいました。
そしてなんと、「完全なる統一」のストーリーにて、ニッサが活躍するのはここまで!!
彼女は最終話にて、変わり果てた姿で登場することになります…!(ネタバレ)
か、悲しすぎる…!
こうして、英雄たちの本線の作戦に加われぬ中で完成化してしまうプレインズウォーカーたち…。
次回は、そのメイン作戦に挑む者たちのストーリーへ戻ります。
お楽しみに!
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*出典*
サイドストーリー第3話:憤怒のように激しく、歓喜のように眩しく
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