【アモンケット】第4回 試練に臨むギデオン【ストーリー】

2021年4月11日

はじめに

アモンケットに来てから、ゲートウォッチはバラバラに行動しています。

ニッサとチャンドラは、壁の記述からこの次元がニコル・ボーラスによって改変されたのだと知りました。

リリアナとジェイスは、この次元に居座る悪魔ラザケシュの存在を察知しています。

そして今回は、残されたギデオンのお話。

 

一門の合流

オケチラに案内された先は、試練前の宴の席。

ギデオンはそこで「ター一門」と名乗る集団に混じり、野望の試練を受けるよう言われたのでした。

 

試練の中で、一門のメンバーを失っていくことは多く、また残ったメンバーが他の一門に合流することも少なくない。

ギデオンに挨拶をしたデジェルはそう説明し、彼を歓待したのでした。

彼はメリス、イミ、ヘプティス、ネイト、デディ…といった他のメンバーの紹介。

そして、自分たちもメンバーを一人欠かしたのだと言います。

それは、サムトという名の女性。

「サムトは死んではいません。堕ちたんです。彼女自身がそう選択しました」

私の混乱は顔に出ていたに違いない。

「造反者になったのです」

デジェルが付け加えた。他の皆はその言葉にひるんだ。

「……そうでしたか」 私は言った、全くわからないという事実を隠そうとしながら。

「これを言うだけでも、まだ心苦しいんです」

陰気な苛立ちとともにデジェルは言い放ち、私達から少し離れた。

「彼女があんな異説に堕ちた理由はわかりません」 メリスがそっと続けた。

「ですが事実です。それゆえに、除名されました。彼女を失って、僕ら一門は目に見えて弱体化しただけでなく――彼女とデジェルは親友でした、評定の儀式よりも前、小さな子供だった頃からです」

私はメリス、イミ、ヘプティスを見た。君達はまだ子供だ。

「デジェルは彼女の除名を最も厳しく受け止めています」

イミが口を開いた。その声は穏やかで宥めるようで、熱に融ける蜂蜜のようだった。

「死んだ方がましだったでしょう――例え不名誉な死であっても。造反者に来世の場はないのですから」

彼女は低い副陽を見た。それは遠くの巨大な双角のすぐ傍に浮かんでいた。

「そして栄光の時はもうすぐです。刻はまもなく訪れます」

 

ギデオンの頭によぎったのは、アモンケットを訪れたときに見た、王神や試練の欺瞞を叫ぶ女性。

自分もその女性を見た、とギデオンは言ったとき、修練者全員が静まったかと思うと、新たな神がその場に姿を現したのでした。

鰐の頭部を持つバントゥ神はター一門の全員の名を呼ぶと、次の試練に挑むのは君たちだ、と高らかに宣言したのです。




野望の試練へ

ピラミッドへ案内され、その入り口が閉まったとき、試練はすでに始まりを迎えていたのでした。

最初は汚水まみれの部屋。

デジェルの命令により、デディが水の中にあった取っ手を回すと、橋が出現します。

と同時に上がるデディの悲鳴。

部屋の奥からあふれ出るさらなる汚水。

助けの手もむなしく、デディの体は焼けてただれていったのでした。

全員が橋を渡り切ったところで、背後で閉じる扉。

残り、十九人。

その壁に触れようとしたが、デジェルが私の手を止めた。

「進みましょう」

彼はそう言った。既に一門の皆は狭い廊下を進んでいた。

私は彼を睨みつけた。「だが彼はまだ生きて――」

「野望に退却は必要ない」 先頭のタウスレトが怒鳴った。

「居残ることはあいつを侮辱するようなものだ」

「デディは栄光ある死を迎えたのです。来世で、彼の犠牲に感謝しましょう」

デジェルは私を押しやって追い越し、すぐに私だけが扉の前に残された。

栄光ある死だと? 私は歯を食いしばった。デディの死に素晴らしいと感じられる所は何もなかった。

私達は押し黙って進んだ。厳めしい表情、陰鬱な雰囲気。彼らはここまで、試練で仲間を失ったことはなかった……私はそれを思い出した。それが今、ここで、最初の数分で……

神々は何を試している? 何故オケチラ様は私をこの試練に?

 

次の部屋の「アムムト」という名の悪魔、そして第三の部屋の刃付き振り子により、仲間は一人また一人と減っていきます。

第四の部屋は、先へと続く扉と、4本の柱が鎮座する部屋。

それら柱の上に立つことにより、扉は開かれ、同時に何か不吉なものをも呼び起こすのだろうとメリスが説明しました。

自分がこの場に残ることを提案したギデオンに、デジェルは激怒します。

「三人のために戦いを引き伸ばして命を投げ出して、可能な限り高みへ上るためにあなたを必要とするであろう皆を見捨てるのですか?」

デジェルは怒りと憤慨を入り混じらせながら私を睨み付けた。

「全員がわかっているんです、試練には代価が必要なことも、自分達の限界と可能性も、兄弟姉妹の強さも弱さも。来世で最良の地位を得るために昇るんです。そして、来たる挑戦のためには間違いなくあなたが必要になるんです」

デジェルは柱へ上ろうとする四人へと振り返った。

「兄弟姉妹よ。来世で会おう」

 

ギデオンが扉をくぐった時、残された四人はたどり着いたアムムトと戦うのを見たのでした。

残り、十二人。




神の試練

ピラミッドの頂点近く。

玉座に座るバントゥ神の眼前にたどり着いた時、一門は九人にまで減っていたのでした。

そこは、澄んだ池の中に、一本の橋と毒蛇が待ち構える光景。

デジェルが口を開いた。

「偉大なるバントゥ様、私達は貴女の試練を未だ完遂していないのでしょうか? 貴女様の好意を得るためには、更に何をすれば宜しいのですか?」

巨大な爬虫類の顔がその二重の瞼を瞬かせ、秤を指し示した。

「通過するには、代価を払うべし」

「代価とは?」 私は尋ねた。

長い象牙色の牙が見えた。「心臓を一つ」

「私達全員のですか? それは――」とデジェル。

「一人に一つ」

私は息をのんだ、一門の皆はそれぞれ互いを見つめた。幾つもの手が武器へと伸びた。

「バントゥ様、そのような……私達は既に多くの者を失ってきました。貴女様へ力を示すために」 私は言った。

力強い目が狭められた。

「刻は迫り、其方らの数は多い。代価を払うか、ここで斃れるかだ」

 

「数が多い」

その言葉に違和感を覚えるギデオンをよそに、ネイトは一人の修練者を短剣で引き裂くと、その心臓を持って天秤へと駆けます。

しかし、それをカマトがそれを妨害し、あろうことか二人が争っている間に、天秤へ心臓を叩きつけたのはバセタだったのでした。

バントゥ神に跪き、カルトーシュを授かるバセタ。

沈黙の中で、それぞれの争いが始まります。

同じ一門で剣を交え、どちらか一方が斃れる。

そして、ここまでメンバーを導いてきたデジェルが対峙していたのは、メリスでした。

「殺せないよ」 メリスは言い、笑った。

「兄弟だから。できたとしても……」

デジェルは辺りを見た。

「皆から君を守ることはできない」

メリスは悲しく微笑んだ。

「答えは一つだね」

デジェルは手から刃を落とし、メリスへと歩き、少年を抱きしめた。

「痛みがないようにするさ」

メリスは抱擁を返した。

「楽園で僕を探して」

勝者が明らかとなり、他の戦いも静まった。すぐに、全員の目が二人に向けられた。デジェルは抱擁を解き、目を合わせて微笑んだ。

そして彼はメリスを水へと突き落とした。

瞬時に、毒蛇の黒い姿がメリスに群がった。メリスは水面へともがいたが、デジェルが駆けて彼を水に沈めた。

「よせ!」 私は叫び、駆け出した。

手を血に染めた修練者二人が私の両腕を掴んで止めようとした。二人を引きずったままデジェルへ向かい――だが四肢から力が吸い取られるのを感じた。顔を上げると、私の目はバントゥ神の底のない凝視をとらえた。その細い瞳孔が私に定められていた。

「見よ、キテオン・イオラ。今は其方が判断する時ではない。学ぶのだ」

 

戦いに決着がつき、それぞれが心臓を天秤に捧げ、バントゥ神へ頭を垂れたとき。

ギデオンは耐え難い怒りにより、神に吼えたのでした。

「これが私に見せたかったものですか? 無辜の者を殺せという命令を? 何のための死ですか? どんな信念と神性の紛い物が、こんな狂気を呼ぶのですか!」

高くそびえ立つ神はその突き出た鼻で私を見下ろした。私は一門の皆が投げかける恐怖と怒りの視線を無視した。

「其方は代価を払っておらぬ」

(中略)

「どうして誰も疑わない? この終わりのない死が必要なのか? 王神への約束は真なのか? 約束したような者ではなかったなら? あるいは――」

「異説はもう沢山です!」

コペシュを抜き、デジェルが私の言葉を遮った。他の修練者らはにじり寄り、だが再びバントゥ神の声が私達を止めた。

「何と純朴なことか」

神に指を差され、私は肺から息が逃げるのを感じた。神の言葉が私を貫き、私は喘いだ。

「其方はただ自身の正義感を満たすものだけを求めている。其方の野心は結局のところ、過去の過ちを擁護することに徹している」

神は鼻を鳴らした。

「浅はかで身勝手よ」

 

バントゥ神はギデオンに、静かに退出の命令を下します。

気が付くと歩き出した体は、低い門をくぐり、外へと出ていたのでした。

全てがわからなくなっていた。

引きずる足音が私の注意を引いた。選定された者の波が私と同じくバントゥ神の神殿から出てきた。彼らは白い布にくるまれた多数の死者を運んでいた。ゆっくりと、認識が私の中に浮かび上がってきた。

選定された者とは、戦いで斃れた修練者の骸なのだ。失った四肢。沈黙の服従。身に着けていたカルトーシュ片。

不死とは賜物なのか、隷属の定めなのか?

神々は善き存在なのか、それともニコル・ボーラスの邪な手足なのか? 試練の悪意はこの世界の暗き歪みなのだろうか? それとも全てが不死となるこの次元では、死は本当に最高の召命だというのだろうか?

頭上で、赤い太陽はボーラスの到来と帰還への免れえぬ歩みを刻んでいた。

王神の帰還。その題目は私の心にこだました。




今回はここまで

ギデオンは、アモンケット次元の人々と同じように試練を体験することにより、この次元の異常さに改めて気づかされます。

そして、ニッサの発見により、「この次元は元々こうでなかった」という事実を知っている我々読者は、ここで「おのれボーラス許すまじ…!」となるわけですね 笑

筆者の個人的見解として、アモンケットのストーリーの裏メッセージは「常識を疑え」だと思っています。

洗脳の恐怖ってこういうもののことを言うんだろうなぁ…と戦慄する物語。

 

次回は、その常識の欺瞞に気づいた、とある少女の過去話。

お楽しみに!

 

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*出典*

MAGIC STORY アモンケット_鉄面皮

Posted by オクハラデン