【ストリクスヘイヴン】第2回 王家の双子、魔法学院に入学する【ストーリー】
はじめに
前回は、自分を救ったギデオンを蘇らせるため、ストリクスヘイヴンに教授として赴任したオニキスことリリアナ先生のストーリーをご紹介しました。
そして、死者蘇生の手がかりをなかなかつかめずにいるも、別の脅威が学院に迫っていることを感じ、それらに対抗することを考え始めたのでした。
彼女の目線の先にいたのは、金髪の姉弟…。
ストリクスヘイヴン主人公の双子の物語をご紹介しますよ!
↓ストーリーのまとめはこちら↓
カズミナの誘い
戦闘競技で栄える次元、ケイレム。
自室にいるケンリスは、出発に向けて持っていく本を思い悩んでいたのでした。
「溶鉄の予言」か。
「癒し手のタダスの答弁」か。
しばらく帰ってこれるかもわからないこの状況下で、持って行けるのは一冊。
そこへ、仰々しい足取りで入ってきたのは、片割れのローアン。
「まだ準備できてないの?」
「もうちょっと……ほんの一分だけ待ってくれ」
彼はそう返答した。溶鉄の予言。溶鉄の予言に決めよう。
(中略)
「ウィル、もう二週間になるんだけど。出発しなきゃ」
「ストリクスヘイヴンは千年前から存在してるっていうよ。もう数分くらい待ってくれるさ」
彼は本の山を再び一瞥した。タダスの答弁を持っていかないなんてありえない。
「もう何時間かは」
ローアンはうめいた。「カズミナさんはきっと今も待ってるわよ」
数日前。
カズミナという女性からもたらされた招待状により、ストリクスヘイヴンという場所の有用性は双子に説かれ、ガラクもそれを認めたのでした。
そして、今日はその地へ向かう日。
二者択一の迷路から抜け出せないウィルをよそに、半ば強引に開かれた光の中へと消えてゆくローアン。
片割れの移動により、抗えない引力で引っ張られゆくウィル。
彼が最後の最後に「癒し手のタダスの答弁」の本をつかんだその瞬間、彼も無の中へ放り投げられ。
気づけば、彼らは木々に囲まれた空き地にいたのでした。
「ようこそ、ウィルくん。ローアンちゃん」
差し込む陽光がその女性を照らし、赤毛を眩しく輝かせた。カズミナは小さく笑みを浮かべ、ウィルへと頷いてみせた。
「ちゃんと来られてよかった。それも丁度いい時に。もうすぐ新学期が始まるのよ」
魔法学院へ至る松明を辿りながら、カズミナは説明します。
学院は広大で、様々な者が、それこそプレインズウォーカーのようなものがいるかもしれないこと。
双子の求める知識は、学院の大図書棟に収められているであろうこと。
カズミナ自身ここの出身ではないが、長くここで教鞭を取っていたこと。
しばらくの沈黙の中歩き続け、やがて見えたのは、双子の故郷にあった城よりも大きい建物だったのでした。
カズミナが沈黙を破った。
「ようこそ、ストリクスヘイヴンへ」
双子の諍い
それからしばらく経ち。
この学院の生活に、双子が慣れてきたころ。
ウィルは少しずつ、片割れとの意識の違いを感じていたのでした。
それは、入学当初から徐々にあらわになってきます。
「学ぶために。強くなるために。ストリクスヘイヴンの知識と知恵を役立てるために」
ウィルは両手の力を抜いた。
「それをエルドレインへ持ち帰って、王国の人々の力になるんだろ」
ローアンはかぶりを振っただけだった。
「あなたはそのために来たのかもしれないけど、ウィル、私はあなたじゃない。双子であっても、私は私の人生を歩むのよ」
「そうだろうね」 ウィルは溜息をついた。
「止めるつもりはないさ」
決して簡単でない試験と宿題に追われ、頭を悩ませるウィル。
そんな彼には、ただただ仲間を作って戯れているようにしか見えないローアン。
二人の意識の違いは、やがてその溝を大きくしていったのでした。
衝突のたびに、怒りにかられたローアンは文字通り「火花」を散らし、ウィルはそれを力の暴走と捉え咎めます。
「ローアン、僕たちは力をきちんと使う方法を学ぶためにここにいるんだ。暴走させるためじゃない! それに、決して遊ぶためにここにいるんじゃない。僕たちはケンリスの一族なんだ! ここでも、何かしら意味のあることだ」
やがて同部屋なのに口もきかなくなった双子の確執は、とある日のメイジタワーの会場にて爆発します。
その日は、プリズマリとシルバークイルの戦い。
姿を自在に変える墨獣を操り、マスコットを強奪し、戦いを有利に運ぶシルバークイル。
その試合終了間際。
プリズマリの選手が片手を突き出すと、シルバークイルの墨獣に赤い光輪が現われ、それは主たるシルバークイルの選手へと牙を向いたのでした。
ウィルとともに観戦していたクイントリウスは、前代未聞の術を見たように興奮します。
召喚された生物だけに機能する操りの術だと。
ウィルは、観客席の大熱狂の中、通路の先にローアンの姿を認めたのでした。
ローアンの呼びだしで、外へと出たウィル。
彼は、ローアンの近況を糾弾します。
自分の力すら制御できていない現実を。
ただ学内で暴れまわっているだけの彼女の姿勢を。
そこには少なからず内包されていたのは、数週間、自分を遠ざけていた彼女への怒り。
気づけばローアンは彼へと火花を走らせ。
ウィルの放った霜は、ローアンの足を、そして拳を凍てつかせていたのでした。
「やめなさい!」
一瞬にして、群衆は静まった。
(中略)
目を狭めながら見上げると、オニキス教授と視線が合った。
「皆さん、座席に戻って大丈夫です」 威厳のある声で教授は言った。
「ですが、あなたたち二人は一緒に来なさい」
教授の警告
「先程は何が起こっていたのですか?」
「何でもありません」 ローアンは何気ない声色を装った。
「ただの、双子の間の憂さ晴らしです」
「私が見る限り、稲妻を浴びせるというのは喧嘩の度を過ぎていますね」
教授は厳しい目でローアンを見つめた。
「血を分けた者同士の争いというのは非常に辛いものです。そしてそれを煽るのは非常に愚かという他ありません」
オニキス教授は椅子に腰を下ろすと、二人へと警告します。
この場所、そしてここにいる者たちへと危害へ加えようとする者たちがいること。
だからこそ、身内で争っている場合ではないこと。
オリーク、という存在の名を口にすると、それらの力を侮ってはいけないと言いました。
ストリクスヘイヴンだけが、この次元唯一の力ではない、とも。
「この次元」。その言い回しに、ウィルは彼女の素性を察しますが、明らかにそれを見過ごしたローアン含めた二人に向けて、教授は伝えたのでした。
二人はこの件に、何をするのか、と。
部屋を後にしたウィルは、ローアンへと話しかけます。
ここを守るための方法を。
「少なくともここには大図書棟がある。そこの知識には――使えるものがあるはずだ。僕はもう無力でいたくはない」
(中略)
ローアンは肩越しにウィルを振り返った。
「あなたは好きなだけ古本を掘り返していればいいわ。私は自分なりに来たるものに備えるから」
彼女は踵を返して立ち去り、ウィルは溜息をついた。僕は僕自身で、か。
今回はここまで
さすが兄を傷つけたうえ、悪者に利用されたリリアナ教授。言うことの重みが違う。
エルドレインの物語でも、双子ながら方向性の違いを見せていたウィルとローアンでしたが、ストリクスヘイヴンではその違いが顕著ですね。
ちなみに、物語冒頭で二つの本どちらを持って行くかで悩んでいたウィルは、入学直後に生徒同士の戦いに巻き込まれ、シルバークイルの呪文により本を台無しにされる、という憂き目にあいます。
血気さかんなローアンを諫めていた彼は、この瞬間に彼女に同意するという…こだわりの強いウィルさんカワユス。
さてさて、物語の最後でリリアナ教授の言う通り、ストリクスヘイヴンには大いなる影が迫っていたのでした…
というわけで、次回は悪者サイド(?)のお話。
お楽しみに!
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