【エルドレインの森】第4回 双子の戦いの果て【ストーリー】
はじめに
第1回にて、ローアンとウィルの物語を。
第2回、第3回にて、ケランの物語をご紹介してきたエルドレインの森。
そして最終回となる今回で、二つの道は交錯します…!
エルドレインの森、最終決戦!参りましょう。
↓ストーリーのまとめはこちら↓
ローアンとウィルの決戦
タリオンから告げられた事実に塞ぎつつ、ケランが辿り着いたのはアーデンベイル城。
門にて構える衛兵を越えるため、トロヤンから渡された蛙化の薬を再び飲み干し、城へ着地した二人は、紫色の煙がうねる廊下を歩きだします。
そして二人がホールの中で見たのは、演説台に立つローアンの姿でした。
嬉しさが身体を圧倒すると同時に、部屋から飛び出てその名を呼んだケラン。
ローアンと同じく、自分たちも魔女を倒しに来たのだと。
だがローアン・ケンリスは全く笑わず、それどころか助力に感謝すら告げなかった。彼女は演説台に両手をかけ、その指先が稲妻をまとった。
「あなたたちはここを離れた方がいいわ」冷たく平坦な声。
(中略)
「あなたたちは来るべきじゃなかった」
ローアンの声に、ケランの首筋の毛が逆立った。舌が口の中に貼りつき、今一度彼は目の前のページを見た。赤茶色のインク。真実がぎざぎざの手書き文字で記されていた。
『23回目 昔ながらの方法以外では、まだ誰も眠らせることはできていない』
読んだ内容を理解する時間はなかった。ケランがローアンへと顔を上げると、彼女は弾ける光に身を包んでいた。
ケランの視界が白く染まった。
ケランが牢で目覚めたのち、ルビーは状況報告をします。
ローアンが彼に夢の魔法をかけようとした時、騎士団が到着したのだと。
王家の娘が敵になったことに衝撃を受けつつ、戦いの場に向かうことを決意するケラン。
かくして、城へと至った騎士団。
ローアンに対峙するのは、イモデーン、そして彼女の片割れのウィル。
白馬に騎乗する双子の姿は、ローアンにとってまるで醜悪な自分の一面を見せつけられるような気分だったのでした。
悪いことに彼は眉をひそめ、なお悪いことに不信と心痛に満ちた声で呼びかけた。
「ローアン? 一体何をしているんだ?」
息が詰まった。ウィルにそのような目を向けられ、言葉には表せない痛みがあった。
(中略)
「王国を救う方法を学んでいるのよ」
「何を言っているんだ。魔女と協力して? 王国に呪いを? 君はそんなことをする人物じゃない」
ウィルはそう言った。軍馬の上で目に涙を浮かべるのが、覇王にふさわしい姿だとでも思っているのだろうか。
「帰ってきてくれ」
理解して欲しかった。自分は決して元通りにはならない、そう片割れには理解して欲しかった。痛いほどに。
けれど理解しないのだろう。
他にどうすれば良いかわからず、ローアンは騎士たちへと突撃した。
双子の戦いとともに、玉座のエリエットを強襲すべく参戦するケランとルビー、そして眠り人たちを操るべく現われたアショク。
ローアンは騎士団の攻撃に耐えながら、エリエットが全ての者を眠らせるのを待っていたのでした。
目の端に映る、ケランの攻撃を受け流すアショク。
半分以上が眠りに落ちてゆく騎士団たち。
ウィルを壁まで追い詰め、ローアンは確信の一撃を放とうとしますが。
彼はこれを笑みで返したのでした。
振り返ったローアンが見たのは、自分を通り過ぎて放たれた氷の矢に突かれるアショク。
灯を持っていたアショクはその場を離れますが、同時に彼女は、脱獄した少女にエリエットが捕らわれているのを見たのです。
『逃げなさい』エリエットはローアンへと告げた。
『時は来たなら、また会えるわ』
ローアンはエリエットに向かって歩いた。
『でも、もう誰も失うわけにはいかないの』
『誰も失わないわよ。彼らが私を殺すことはないでしょう。とっても甘いから。今は時を待つのよ』
(中略)
ローアン・ケンリスは深呼吸をした。ストリクスヘイヴンの時のように、力を自らに通した。光が押し寄せた。
「ローアン!」ウィルが叫んだ。
(中略)
ローアンは自らから放出されるエネルギーをより合わせた――そして外ではなく、下へと狙いをつけてすべてを放った。
巨人が倒れるよりも大きな轟音が響いた。
ローアンは宙へと舞い上がった。
父の真実
戦いが終わり、ウィルは少年と少女へ、いつでも宮廷へ来てくれと声をかけます。
しかし時折その目は、ローアンの消え去った地平を見つめていたのでした。
ケランは話し合いの最中、静かにその場を去ると、フェイの宮殿へと入り、やがて故郷へと戻ったのです。
最初に出迎えてくれたのは、犬のヘクス。次にその鳴き声に気づいた義父、そして母。
家に招き入れ、彼のために作った豪奢なコートを贈った母は、やがて話し始めたのでした。
それは、母がまだ少女であったころのこと。
それは、ケランの本当の父のこと。
修業時代に母は、花畑に横たわる彼と出会ったのだと。
彼は隣に座ってくれと言い、話をしてくれたら望むものをあげると言ったのだと。
「その人の名前はオーコ、エルドレインにやって来たばかりだって。私が知っているどの王国の生まれでもないんですって。だからこの場所についてもっと知りたい、それも可愛い女の子から教えてもらえるならもっといい、なんて」
コートの裏地に刺繍された、青い筋のある肌の男性。それが改めてケランの注意をひいた。オーコ。本当の父さん。
母はまるで夢を見ているように話します。
数年の間、母はオーコと何度も花畑で会い、たくさんの彼の話を聞き、そして同じくらいエルドレインの話をしたのだと。
やがて彼は、フェイが絶対の権威を持つ、彼のいた「別の世界」の玉座を約束してくれたのだと。
しかし、母は彼と交流を深めるほど、街から魔女の扱いを受けていったのでした。
同時に、オーコはそれに深く怒り、やがて彼女を苦しめたこの場を全て壊してやりたいと思うまでになったのだと。
そして三年前、彼はこの世界に現われた。
が、母は自分の中の少女と母の葛藤の末、ケランを選んだのだと。
その夜、ケランは眠れませんでした。
変身のできる父は、すでに自分に会いにきてくれたのだろうか。
だとしたら、なぜ自分に話しかけてくれなかったのだろうか。
自分は、まだそれにふさわしくないというのだろうか。
頭に巡る疑問を消し去るべく、犬とともに歩き始めた彼が見たのは、森の中で光る入り口のようなもの。
フェイの国への門とは似ても似つかず、その向こう側はエルドレインとは全く異なる世界。
ケランははっとした。トロヤンは別の世界について語ってくれた。母も、実の父が教えてくれたことを言って聞かせてくれた。
これが、その別の世界へ辿り着く手段だとしたら? これがひとつの試験だとしたら? 父はエルドレインではないどこかにいる。この向こうにいるのだとしたら? どうしてずっと会ってくれなかったのか、尋ねることができるかもしれない。そこで会えるかもしれない。
ケランは足を踏み出した。
ちょっと見てくるだけだ。そして来た道を覚えておく。それで大丈夫だろう? 本当に故郷から旅立つのではなく、少しどこかへ出かけるだけ。市場へ行くのと何ら変わりない。
故郷から旅立つわけじゃない。すぐに戻ってくる。
ケランはヘクスを撫で、その入り口へと踏み込んだ。
魔女と夢魔道士
『起きて下さいな。まだすべてが失われたわけではありません。貴女のために戻ってきましたよ』
牢獄にてエリエットが久方ぶりに聞いたのは、アショクの声。
なぜこんなにも時間がかかったのかと問う彼女に、「準備をする必要があった」とアショクは答えたのでした。
ローアンの行く末を聞くも、彼女はまだ準備ができていないと唇をとがらせるアショク。
そしてその魔術師は、エリエットを誘うのでした。
遥か遠い場所にて多くを学び、女王の地位にふさわしい者になるのだと。
アショクは手枷の上に手を伸ばした。
「遠くへ行くことになりますよ、エリエット。とても遠くへ」
「牢獄から遠くへ? 素敵な人、それはいいことだわ」
アショクは笑わなかった。アショクは決して笑わない。
牢獄を暗闇が覆った。石の床に手枷が落ちた。朝になって衛兵が中を探しても、そこに魔女はいないのだろう。
今回はここまで
なんとも「伏線を張りました!」と言わんばかりのエルドレインの森のストーリーでした。
ローアンはウィルとの戦いの末、敗走し行方不明。
ケランは領界路と思われる道を発見し、他次元へ旅立ったものと思われます。
そして眠りの魔女は悪夢の魔道士と手を組みどこかへ消え去っていきました。
そして何より!
ケラン君の父!オーコ!!
「王権」にて色んな意味で話題をかっさらった男が、今回のストーリーも最後にかっさらっていった!!
未来セットである「サンダー・ジャンクションの無法者」では、オーコらしきシルエットの男がキーアートに描かれましたが、ケラン君はここにどのように関わるのか…!キニナル!
ではまた次回セットでお会いしましょう!
☆X(Twitter)で更新情報発信中!フォローお願いします!
【関連記事】
*出典*
Discussion
New Comments
No comments yet. Be the first one!