【アモンケット】第7回 最後の試練【ストーリー】

2021年4月11日

はじめに

前回、友人そして神へとこの世界の真実を語ったサムト。

その結果、神の命により彼女は捕縛されてしまったのでした。

そして彼女がよそ者に助けられることにより、アモンケットのストーリー最終章が幕を開けます。

 

救いの手

サムトが収監されたのは、自分の息も顔に当たる狭い石棺の中。

内側から魔法がかかり、脱出のできない牢獄。

同じように並べられた石棺からは、こうなった者の末路を説くものもいます。

最後の神の試練で、修練者が戦うものこそ、ここに並べられた造反者なのだと。

 

自分が闘技場に連れていかれるなら、そのときに生き延びてデジェルを説得する。

この後の作戦に思いを巡らせる彼女の思考を遮ったのは、外から聞こえてきた声でした。

「ニッサがあの人を探した時、ここに――」

「あの手は――」

「前にはなかったわ。中に人がいるってことよ。せえの――」

焼け付く熱と光の筋が注がれて石棺が割れた。牢獄は両側に開き、サムトは眩しさに瞬きをした。目の前には見知らぬ人物が二人立っていた。赤毛の女性と、長身の屈強な男性。

最後の試練へ自分を連れていくであろう者達ではなかった。おかしかった。救助なんてされる筈がないのに!

 

サムトに名を名乗った見知らぬ者たちは、「刻」の欺瞞を説いていた彼女を探しに来ていたと説明し、情報交換をしたのでした。

サムトは長い年月の中で自分が学んだことを。

ジェイスは、王神とはよそから来たボーラスというドラゴンだということを。

ニッサは、もともといたはずの八柱の神のうち、三柱は行方不明、その他の神の記憶もボーラスによって改竄されていたことを。

ギデオンは、試練で死者を量産するべく殺し合いを行う修練者たちのことを。

そしてリリアナは、この世界に自分の契約した悪魔がいることを。

その言葉に会話は静まった。サムトにその女性の言葉の意味はわからなかったが、他の者らは憤怒とともに押し黙った。

「で、それを言わなかったってこと?」 チャンドラは激昂した。

ニッサは目をすっと狭めた。

「一緒にボーラスと戦うんじゃなかったの、それとも、それがあなたの本当の目的?」

ギデオンは一団の注目を青ずくめの男へと向けた。

「ジェイス、君は知っていたのか?」

その男は気まずそうに身動きをした。

「……これは俺達の優先事項としては二番目だ。リリアナが契約から解放されれば、全力で戦えるようになる――」

(中略)

「そうよ。何故なら、私なしでボーラスを倒せやしないもの!」

「黙って!」 サムトが割って入った。全員が苛立ったまま、彼女を見つめた。彼女は声を落ち着かせ、この侵入者達それぞれと目を合わせた。サムトは言った。

「一つだけはっきりさせておくけど、言い争ってる時間はないのよ。激情の試練へ行って、ある人を救わないといけない。ナクタムンの民を集める力がある人を。王神は帰ってきてないし、到着するまでそいつに何ができるかはわからない。皆、私を手伝って。友達を助けるのを。だって誰も他の計画はないでしょ。いい?」

恥じ入ったように、五人はそれぞれ頷いた。

「ん」

ギデオンが進み出た。「約束しよう、君の友人は助けると」

簡単に約束をしてくれる、サムトはそう思ったが、同意に頷いた。

そして凍り付いた。

目にするよりも早く、それらを感じた。

神々を。

五柱全てを。

一列になって彼らはやって来た。ハゾレト神を先頭に、もう四柱をすぐ背後に。王神の帰還が迫る今、その四柱は見物に来たに違いない。

サムトは動けず、黙らせられるのを感じた。他の者らも同じ呪文を被っていた。

「造反者らよ、時が来た」 ハゾレト神が言った。その声は鋼のように硬かった。

「来るがよい。そして最後の試練にて残る修練者と対峙せよ」

靄が一同を圧倒し、全てが暗転した。




野望の試練

造反者らは支配のカルトーシュを首から下げて目覚めた。巨大な闘技場の中央、死者のように動かず立っていた。双陽がぎらつき、首の付け根に汗が滲んでいた。

サムト、チャンドラ、ジェイス、ギデオン、ニッサ、リリアナは輪になり、それぞれ外を向いて立たされていた。闘技場の隅には巨大な演壇があり、上には激情の神ハゾレトが立っていた。その両脇をアモンケットのもう四柱が挟んでいた。

(中略)

ハゾレト神が闘技場の隅でその槍を掲げ、口を開いた。

その声は鐘のように闘技場に響き渡った。

「修練者らよ。其方らの前に立つのは異端の者、王神と其方らの人生を否定した忌むべき魂。其方らの役目はこの最後の試練において、全員を殺すことにあり」

 

ハゾレトが手を掲げた時、激憤の印がそれぞれの頭上に現れ、戦いが幕を開けたのでした。

その印によって、理性が失せ戦いへの欲求が増幅する中、サムトはデジェルを救う思いのみを抱いて戦います。

サムトが、デジェルの攻撃をかわすと同時に背中合わせに立った瞬間、デジェルはその共闘の意志を悟ったのでした。

彼はハゾレトに願い出ます。

サムトは自分たちの道を離れてしまった。

サムトを赦してほしいと。

そして…自分に「栄光の死」をもたらしてほしいと。

ハゾレト神は僅かに頭を動かし、同意を示した。

「永遠の中に地位を欲するか、デジェルよ?」

涙がデジェルの頬を伝った。栄光の死こそ彼がずっと求めていたものだった、欲していたものだった。彼は頷いた。その地位が手に入る。自分の死に、何らかの意味ができる。

 

ハゾレトはサムトにも栄光の死を望むかを尋ねますが、彼女はこれを拒否します。

そして、心の内で静かに決意していたのでした。

デジェルに赦されないとしても、彼を死から救うと。

ハゾレト神は槍を掲げ、サムトは意志を固めた。

デジェルは生きなければ。生きなければ。もう戻れない。意味のない死で再び友を失うわけにはいかなかった。サムトは踵に力を込め、姿勢を緩め、速度上昇の呪文を込め、ハゾレト神の槍が構えられると差し迫った介入の瞬間を待った。

神は放ち、サムトは跳んだ。

一瞬の出来事だった。

サムトは跳ね、横からデジェルへと体当たりをして彼を地面に倒した。同時に、大きな金属音とともに背後で黄金色の爆発があった。

サムトも地面に倒れて、その音が背後、ギデオンから発せられたのだと知った。彼は自分達とハゾレト神の槍との間に立ち、滑らかな黄金色の魔法が彼と死とを隔てていた。

この人は約束を守ってくれた、サムトはごく僅かに笑みを浮かべて思った。

ギデオンの介入




試練の終わり、刻の始まり

この介入に、誰よりもまずデジェルが激怒したのでした。

自分が勝ち取ったはずの栄光を、見知らぬ異人と、他でもない友人に剥奪された。

その事実に、デジェルは一人膝をついてむせび泣くのでした。

サムトは慟哭するデジェルの肩に両手を置いた。

彼女は身体を寄せ、そして静かで小さな声で、囁いた。

「やる事は沢山あるし、助けられる人々が沢山いる。あんたの訓練はそのため。このためじゃない」

デジェルは返答できなかった。ただ泣くことしかできなかった。

サムトは囁き続けた。

「デジェル、一緒に年を重ねましょう。そしていつか、今からずっと未来に、皆長生きして、寿命を全うして、そしてやっと、来世へ歩いていくの、手をとり合って。あんたが望んだように行けなかったことはごめんなさい、でもここにいてくれて嬉しい」

彼女は感謝の意にデジェルの額へと口付けた。

 

その時。

大きな爆発音が、世界全体に響き渡ったのでした。

同時に雲ほども大きな影が、空を横切ったのです。

副陽からもたらされる影が、世界を覆っていました。

「始まった。刻は始まった!」

ハゾレト神はサムト、デジェル、ギデオンをまたいで過ぎた。その両目は地平線の構造物のどちらの側も輝かせて過ぎていく光を追っていた。

「立って、デジェル。行かないと」 サムトはデジェルを引いて立たせた。

「デジェル、走らないと。今から数時間のうちに、できるだけ多くの人を救わないと」

(中略)

副陽は決して沈むことはなく、だが今それは街全体に影を投げかけ、何もかもが薄闇の中にあった。何もかもが冷たかった。デジェルはこれまで、寒気を感じたことはなかった。

「サムト、川へ行かないといけない。来世への門が開いて刻が始まる。かの御方が帰還される。王神よ、私に慈悲を!」 デジェルは闘技場の出口へ、その外の敬虔な市民の群れへと駆けだした。

リリアナ、ジェイス、チャンドラ、ニッサも続いた。

(中略)

ギデオンは震え、腕の血が足元の石に滴るのを見つめた。

彼方の巨大な碑、角の背後を太陽が過ぎるのを見つめながら、難攻不落の男はただ寒気と空ろな恐怖だけを感じていた。




今回はここまで

死者と共存する風習、若くして訓練に勤しむ生者、そしてサムトという造反者の存在や、神とその試練に挑む修練者たち…。

アモンケットという次元の世界観、そしてその異質さを強調する「アモンケット」の物語は、ここでいったん終了となります。

そしてついに次回から、その答え合わせとなるストーリーが始まりますよ!

王神ボーラスの帰還、ラザケシュの降臨、消えた三柱の神の復活、そして斃されゆくアモンケットの神々…。

「破滅の刻」編!次回から始まりますのでぜひお楽しみに!!

 

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*出典*

MAGIC STORY アモンケット_裁き

 

 

Posted by オクハラデン