【カルドハイム】第5回 ニコ・アリスの英雄譚 前編【ストーリー】
はじめに
前回までで、カルドハイムに巣くう悪鬼ティボルトと、それに対抗する英傑ケイヤとタイヴァーの物語をご紹介しました。
ケイヤとタイヴァーは、起こり始めたドゥームスカールに立ち向かうため、領界の扉をくぐります。
さぁ!決戦!!カルドハイム!!!
…の前に。
彼らとは全く別の場所で動いていたもう一人の英雄のお話を。
それが、カルドハイムで新規追加されたプレインズウォーカー…
ニコ・アリス
決戦ではケイヤたちに加わって戦う(盛大な次々回のネタバレ)ニコのカルドハイムでのお話も、飛ばすわけにはいきませんね!
まずは、ニコの出自からご紹介します。
↓ストーリーのまとめはこちら↓
ニコ・アリスのオリジン
ニコ・アリスは、カルドハイムから少し遡ったセットでも舞台となった「テーロス」の出身です。
ニコは、子どものころに神託を受け、偉大な競技者、決して狙いを外さない投槍手になると告げられます。
あ、ちなみにニコ・アリスは性自認が男女どちらでもない、というキャラクターのため、男女の枠では区切れない人なのですが…。
便宜上、この記事では「彼女」という呼称にしますね。
さて、神託の通りに鍛錬を積み、競技に励んでいたニコでしたが、その過程で、定められた運命の通りになっていく自分の人生に疑問を持ちます。
そして、彼女はある日その運命に逆らうことを決意したのでした。
ニコは、勝つことが確実であった競技にあえて敗北します。
その出来事を機に、彼女にとって運命とは逆らうことが可能なものであると悟ったのでした。
しかし!これに激おこな神が!
そう!テーロス還魂記でもエルズペスにぷんぷん丸していた、運命の神クローティスです。
運命の通りにいかぬものを、元の道に戻すことを使命としたこの神は、エルズペスのもとにはケイリクスを派遣したように、ニコのもとへも運命の工作員を派遣してきます。
そして、彼女はその戦いの中で、プレインズウォーカーとして覚醒し、テーロスの神の手の届かない、カルドハイムへと渡ったのでした。
ニコは「英雄」になることを望んでいます。
そして、自身が高名であったテーロスと違い、このカルドハイムでは「英雄」とはまた別の意味であることも理解していたのでした。
自分の故郷とは異なる世界で、その言葉が一体何を指すのか。
彼女の旅は、その意味を求める事から始まります。
扇動する神
カルドハイムへと渡ったニコは、蛇狩りのフィンが率いるカナー氏族へと身を寄せます。
カナー氏族は過去の出来事から、神々や星界に絡む出来事すべてを憎んでおり、それを率いるフィンは、星界の大蛇コーマに一撃を加えることができた唯一の人物とされていたのです。
さて、そんなカナー氏族と、彼らと対立する領界路探したちが集う宴の場。
休戦状態の両陣営が囲う真ん中には、一人の女性が「語り」を行っていたのでした。
聞くもの全てを魅了する物語。
しかし、それに唯一興味を抱かず、猫と戯れていたのがニコ・アリスでした。
語りが終わった女性は、ニコの元へと歩み寄ります。
ニコとともに行動していたキーエルは、彼女はビルギだと教えてくれたのでした。
ビルギは、ニコたちを外へ連れ出し、一つの物語を口にします。
領界路探しを率いている石背のオラフトは、刺されてから何時間も気づかなかったという逸話が由来だと。
ニコは、そんな話は信じられない、と答えます。
しかしその言葉は、近くで話を聞いていた領界路探しの耳に届き、彼らの買い言葉を引き出してしまったのでした。
オラフトを長に据える彼らからすれば「蛇狩りのフィンの逸話のほうが虚構である」と。
それぞれのリーダーへの罵倒が始まり、その状況をビルギが煽る中、一人の拳が振るわれると同時に、乱闘が発生してしまったのです。
その全てから離れて、未だ綺麗な雪の上で、ビルギが焦げた石壁に背を預け、刺青を輝かせながら、笑みとともにニコを見下ろしていた。
ニコは凍り付いた。衝撃だった。ブレタガルド人には異邦人をもてなす多くの掟と物語があり、それらは儀礼的にフリスと呼ばれている。ビルギがこれを引き起こしたのだ、角杯を両側に渡して。船乗りたちに聞こえる距離で、自分へとオラフトの行いへの疑問を抱かせた――けれど何故?
争いの中でニコは自身の魔法を使い、鏡の中に敵を閉じ込めていく中、目の端に戦乙女たちが結集しはじめているのを捕らえます。
それは、この場で誰かが死ぬことを意味する予兆。
戦乙女の一人を鏡の中へと閉じ込めたニコは、両陣営のリーダーのいる船へと急ぎ、彼らに争いの状況を報告したのでした。
「オラフトさん!」
(中略)
「お前か」 オラフトが呟いた。
「ニコ、何故一人でいる? キーエルはどうした?」
フィンが尋ねた。彼はニコと船の甲板、海図のように刻まれた黄金の線との間に踏み入った。
ニコは素早く説明した。
「全員が争っています――武器を持って、流血沙汰になっています。皆をけしかけた女性がいるんです。止めなければ!」
「女性とは?」 フィンが尋ねた。
「ビルギさんです――皆、我を失っています」
(中略)
フィンは滑らかな動きひとつで斧を肩に乗せた。年齢によって力や動きが衰えている様子は全くなかった。
「俺はスコーティを何とかする。お前はこっちだ」
奇妙な盾を取り上げながらも、フィンの両目は戦乙女の破片を見続けていた。
「決定は戻ってからだ」
オラフトは不満そうに同意した。
ニコの行くべき場所
残されたニコに、オラフトは告げます。
領界路が開き続け、ドゥームスカールが近づいていると。
そして、これまでのニコ行く先には、常に破壊がつきまとっていると。
ニコはこの言葉に鼻息を荒くし、言い返します。
もしそのような確信を得ているならば、自分をシュタルンハイムへと送ればいいと。
破壊が近づいていると戦乙女へ警告しに行くと。
自分は次元を渡ってきた。戦乙女とともにシュタルンハイムへ向かうことも可能なはずだと。
オラフトはニコを一瞥した。
「お前はそれを達成できると心から確信している。何がそこまでそうさせている?」
(中略)
ニコは競技会を思い返した。神託を思い返した。そして異なる道を選ぶことをどう感じたかを思い返した。
「私は決して外しません」
「ならば正しい相手を狙うよう気をつけることだ」 オラフトは茶目っ気とともに言った。
「蛇狩りは我に任せろ。別れを言ったなら船に戻ってくるといい。お前が必要とするものを与えよう」
「つまり……あなたは私を殺すつもりで?」
「違う。だが向こう側で何が起こるかについては……お前の責任だ」
争いの起こっていた場所へと戻ると、フィンがその諍いを仲裁していました。
ビルギのことを「悪ガキの神だ」と吐き捨てるように言ったキーエルに、ニコはシュタルンハイムへと旅立つことを告げます。
「オラフトもフィンも、私の落ち度だと言っています」
知り合って二週間になるが、キーエルは常に言うべきことを知っていた。
「それが間違いだと証明するつもりだな」
「はい」 ニコの口の端が曲げられた。
(中略)
キーエルはニコの肩を掴んだ。
「そこに辿り着いて、自分が何者かを伝えて、何かとんでもないことをやれ」
「ええ。扉を蹴破って入って、顔面を殴りつけてやります」
「そうだ!」
キーエルは破顔し、綺麗になった手で杖を取り上げ、高く掲げた。
「あいつらが逃げる隙も与えるなよ! 戦乙女殴りのニコ!」
二人は笑い、そして抱擁し合い、背中を叩き合った。次に何が起ころうとも、ここには常に安心があるのだ。酒と、聞く耳と、拠り所とする固い地面が。
ひとときの争いの終えた地から。
オラフトの助けにより作られた領界路探しの船は、ゆっくりとニコを連れていきます。
世界の境界へと。
定命が生きてシュタルンハイムへ踏み入ったことはない、と告げる戦乙女に、ニコはうなずいて告げました。
「誰かが最初の一人になるんです」と。
振り返り、ニコは片手を挙げてと別れを告げた。領界路探しのヴェドルーンへ。ブレタガルドへ。キーエルへ。
背後で領界路が閉じ、黒い水面の上には深い薄明に代わって夜明け前の眩しい空が広がった。小舟は広大で入り組んだ船着き場に衝突し、それは故郷を歌うような光へと消えた。ニコは船から降り、鎧を正し、目にかかる銀紫色の髪を払うと、運命など誤りであると証明するために踏み出した。
もう一度。
今回はここまで
ニコ・アリスの英雄譚前編をご紹介しました。
カルドハイムのニコの物語は、全編通して「運命に逆らう」がテーマです。
まさに、英雄譚の通りですね。
肝心の英雄譚が、「予顕」されたものを参照する能力なのは、イマイチストーリーにそぐわない気がしますが…。
もしこのあたりの理由がわかる方いらっしゃいましたら、コメント欄で教えてくださいませ。
と!いうわけで!!
後編に続く!!!
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*出典*
MAGIC STORY サイドストーリー第1話:風は何処へ吹いている
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