【カルドハイム】第6回 ニコ・アリスの英雄譚 後編【ストーリー】
はじめに
前回のお話で、シュタルンハイムへと向かうことを決めたニコ・アリス。
前のエピソードでもあった通り、シュタルンハイムはいわば「死者の国」です。
カルドハイムで死んだ者のうち、勇敢に、栄誉ある死を遂げた者はシュタルンハイムへと連れていかれます。
ちなみに、そうでない者(自然死、事故死、臆病に死んだ者…など)は、イストフェルへと連れていかれます。
そして、この「連れていく」担当が戦乙女ですね。
戦乙女は、常に白の番人と、黒の死神という二人で行動をしています。
ニコは特別に、「生きながらにして」このシュタルンハイムへ踏み入れたのでした。
今回はその続きから。
↓ストーリーのまとめはこちら↓
戦乙女たち
船着き場を進み、階段を登り、扉を開く。
カナー氏族は、シュタルンハイムを「楽園」と形容していましたが、ニコにはそれがすぐにわかったのでした。
いや、楽園というよりもはるかに素晴らしいもの。
シュタルンハイムは「我が家」だと、そう感じられたのです。
大広間で開催される、終わりのない宴を抜けて。
ニコが静かな広間へ出ると、その光景に唖然とします。
出た場所は、世界樹のふもと。そしてその枝には、猛禽類の群れのように戦乙女が止まっていたのでした。
ニコは彼女らへと世界の危機を訴えかけるも、戦乙女たちは相手にならないとばかりにあしらいます。
ニコは歯ぎしりをした。クローティスと、あの工作員と、運命を檻のように用いて人々を操作する神託者と何ら変わりなかった。ニコは競技会で宣言を行うための、訓練された声で戦乙女たちへと告げた。
「私は皆さんの誰も耳にしたことのない地、テーロスから来ました。ニコ・アリスといいます。そして意味のない死を止めさせるために皆さんの一人を捕え、ここへ至る手段を見つけました。ブレタガルドの二氏族が力を合わせて、皆さんに警告を伝えるために――星界の大蛇が迫っています。それは皆さんの聖堂を壊し、死者たちは消え、湖は飲み尽くされるといいます。ここには饗宴の食べ残し以外何も残らないでしょう!」
白金の髪と白い肌の戦乙女が、顎を掌の上に乗せた。世界樹の枝の間にうねる黒雲の中、その姿は鋭く、けれど慰めをくれた。
「可笑しい上に不可能です。ヴァルクマーの湖とその上に浮かぶ全ては私たちの血であり骨。気付かないなどということはありえません」
そこへニコがプレタガルドで鏡へと閉じ込めた黒の戦乙女、アーヴタイルが現われます。
そして、そのパートナーの白の戦乙女リトヴァが領界の異変を告げました。
ニコが全員を説得しようとする中、白の戦乙女は空を見て凍り付きます。
「我らが全ての母……!」
空には領界の姿がいくつも映り、重力が相対して炎の湖が上方へと流れ、まるで空間そのものが形どるように。
そして現われた巨大なる蛇は、金切声で空を揺らしたのでした。
ニコは両手で耳を覆い、だがその手も恐怖に感覚を失った。
「コーマ」 アーヴタイルが息を吐いた。「星界の大蛇」
コーマとの戦い
「このようなことは、ありえません!」 リトヴァが低く呟いた。
「何者かが放ったに――送り込んだに違いない。だが何が我々を攻撃しようというのか? 何故だ?」 アーヴタイルは口ごもった。
リトヴァは息をのんだ。「た――戦わねばなりません。放っておけば、民に害が及びます」
「逃げなければ」とアーヴタイル。
(中略)
「不安定な世界の間に逃げ道はありません。私たちの家を――私たちの血を――戦わずして見捨てはしません!」 リトヴァが叫んだ。
ニコは戦乙女へと提言します。
逃げることも戦うこともできないなら、怪物を元居た場所へ帰すしかないと。
そのために、天使たちが集団になって飛び、それを追わせるのだと。
本来ニコはここに警告をしに来ただけであり、死ぬかもしれない場面へと飛び込むつもりなどなかったのでした。
しかし、ここは死者にとって、そしていずれ生を終える者たちにとって、失くしてはいけない場所だともわかっていたのです。
恐怖を押し殺しながら、ニコはリトヴァに連れられ、数多くの戦乙女たちとともに空へと飛び立ったのでした。
コーマは餌に食いつき、光と雷を追って飛ぶと、顎を開いて最後尾の戦乙女を噛みちぎろうとした。戦乙女たちは四方八方へと散り、最も遅れた戦乙女にコーマの歯が迫った瞬間、ニコは鏡を投げた。その戦乙女は無数のガラスの欠片へと砕け散ったように見え、だが本物の身体は投擲された破片の中に捕われたまま、無事にコーマから逃れた。大蛇の顎は雲を噛み砕いただけだった。
罠が解けると、その戦乙女は空中の落とし戸から落下するように、ガラスから出現した。そして羽ばたき、体勢を整えるとコーマを迂回して仲間に合流した。
「上手くいきました!」 ニコの遥か右でリトヴァが叫んだ。
リトヴァとともに飛翔しながら、大蛇に捉えられそうになった戦乙女を鏡に閉じ込め、その狙いから外させる。
両手は重くなり、肺は燃え上がるように熱くなりながらも、ニコはこの大蛇が現われた領界路を探し続けます。
やがて、風うねる中でもはっきりと見えた世界。
それはまるで、世界の終わりのような戦争の光景。
危険で、確信もない。それでもニコは選んだ。
「あれです!」 ニコは叫び、左の拳を掲げた。「急いで!」
アーヴタイルが角笛を慣らした。戦乙女の最後の一団が結集し、戦いへと咆哮し、光に燃え、大蛇を引き付けた。
船着き場と黒い血の水面。閉じかける世界の穴。
ニコは錨のようにコーマの頭部へと鏡を突き刺し、その穴へと誘います。
船着き場を破砕し、酸の血を蒸発させながら、大蛇は穴へと滑り込んでいったのでした。
最後の魔法の一滴まで使い果たしたニコは、壊れゆく船着き場を這って進みますが、板の地面はその重さに耐えきれず崩れ去ります。
腕一本で身体を支えたニコは、やがてそれすらもできなくなり、板から手が離れ…。
アーヴタイルの手がニコの手首を掴んだ。
彼の翼が放つ光は蛍のそれのように柔らかく、茶色の瞳は見慣れない輝きを帯びていた。
「死神さん、監視はもういいんですか」 ニコはそう呟いた。
アーヴタイルはオラフトがそうしたようにニコを見た。疑念と希望が何もかも絡み合いながら、希望の方が少し勝っていた。
「お前の運命はまだ決まっていない」 彼はそう答えた。
息苦しい笑い声がニコの唇から発せられた。
「運命なんて、お前はそうなるんだって誰かが言ったことに過ぎませんよ」
戦いの只中へと落ちて行きながら、ニコは戦乙女の隣で弁明した。
今回はここまで
カッコいいっすよねぇ…ニコ・アリスの物語。
何がカッコいいって能力がカッコいい。
シュタルンハイムという地において戦乙女と共闘し、彼女らを守るための手段として、鏡に閉じ込める自身の能力を使います。
敵の拘束だけでなく、味方の保護にも使えるスキル…さすが「英雄」!!
さて、いつぞやのネタバレ通り、領界路を通ったニコと戦乙女たちは、ケイヤとタイヴァーの向かったドゥームスカールへと飛び込むことになります。
次回こそ!決戦カルドハイム!
集う英雄たちによる、次元をかけた戦いをお楽しみに!
☆Twitterで更新情報発信中!フォローお願いします!
Follow @okhrden_mtg
【関連記事】
*出典*
Discussion
New Comments
No comments yet. Be the first one!