【カラデシュ】第5回 安堵の再会【ストーリー】

2021年4月11日

はじめに

前回、アジャニの力によって、牢獄からの脱出を果たしたニッサとチャンドラ(とパースリー夫人)。

解放された彼、彼女らは、テゼレットを討つべく、仲間を連れて戦います…!

来るぞ!アイツらが…!!

 

同胞の参集

ドゥーンドの監獄から脱出した、2人の人間と、1人のエルフと、1人の猫人。

ひとまずの危機を乗り越え街を歩く4人の足は、ある垂れ幕を前に止まります。

『発明家の皆様! 世紀の対決をご覧下さい!』

『テゼレット審判長対改革派の長ピア・ナラー。大展示場にて、究極の発明の才がここに激突する』

描かれているのは、光の線に囲まれて誇らしく立つテゼレットと、尖って醜悪な線に囲まれているピア・ナラー。

テゼレットは自分を誘いこもうとしている。

挑発とわかっていながら、チャンドラはその文字に続く「明日正午」にそこへ向かうことを決めてしまうのでした。

アジャニは頷いた。「けれど私達四人だけでは……」

領事府の制服を着た武装兵が三人、道を横切って彼女らへと向かってきた。中の一人がニッサを指さした。

「あそこだ――いたぞ!」

ニッサは咄嗟に道路の下、生きた植物の根へ呼びかけ、成長させて兵士達の脚をもつれさせようとした。

(中略)

だが兵士達が近づいてくると、それらの姿は揺らいで影がぐらついた。まるで水彩画が水に流れ、その下のカンバスに描かれた別の何かを見せるように彼らの身体が消えた。

歪みが晴れると、よく知った顔が現れた。ジェイス、リリアナ、ギデオン。

ジェイスが口を開いた。

「これはゲートウォッチが介入すべき問題だ」

ニッサは呪文を中断し、手で顔を拭った。

「変装が上手すぎるわよ。あなたたちに重傷を負わせる所だった」

「潜入しようとしただけだ。テゼレットがいるって聞いたが?」

「奴はこの世界に。そしてチャンドラさんのお母さんを捕らえている」アジャニが言った。

「このレオニンは何?」 リリアナが尋ね、アジャニを測るように見上げた。

「ゲートウォッチとは?」 アジャニが尋ね、彼女を見下ろした。

 

そう、この騒ぎが起こる数時間前。

テゼレットと邂逅したリリアナは、ニッサとチャンドラの元を離れ、ラヴニカのジェイスの元へプレインズウォークしていたのでした。

イゼット団のラルから、ヴラスカがラヴニカから離れたことを伝え聞いたジェイスは、その帰り道でリリアナと出会います。

彼女はラルを一瞥し、ジェイスを見つめた、墓のように厳めしく。

「見つけた。カラデシュへ行くわよ」

ラルは腕を組み、値踏みするように精一杯眉を吊り上げた。

ジェイスは歯ぎしりをし、低い声で不平を漏らした。「今は都合が悪いんだけど」

「どうでもいいわよ。こっちの方が優先」

彼女は横柄に肩を引いたが、落ち着かなく動くその足元にジェイスは気が付いた。リリアナの語調、普段の少しだけ残酷な揶揄は強迫的な早口に変わっていた。

「チャンドラは見つかったのか?」

「見つかったのは別の人物よ。テゼレット。生きていたわ、元気に」

ジェイスは唐突に唾液を飲みこめず、むせた。

(中略)

「カラデシュへ来て頂戴、あの筋肉を連れて」

ジェイスが反応するよりも早く、リリアナの姿が揺らぎはじめた。街路の只中で、知らない者の目の前でプレインズウォークするというのは彼女らしくなかった。その姿が消えた時、ジェイスとラルは顔を見合わせた。ジェイスは言葉が見つからなかった。

「ギルドパクト、俺が思うに」 言い訳しようのない状況に、ジェイスは肩をすくめて両手を広げた。

「……行っとけ?」 ジェイスはわずかに俯いた。

ラルはジェイスを軽く一瞥し、鋭くかぶりを振り、そして立ち去った。

ジェイスの脳は可能な限りの説明を並べたが、そのどれも十分とは思えな

かった。代わりに彼は気を取り直し、一つ息を吸い、ギデオンを捕まえるべく裏道を駆け出した。

「行っとけ?」(目キラーン)




闘技場にて

「決闘」が催される当日。

ピア・ナラーは闘技場の舞台裏にいたのでした。

彼女が願っていたことは一つ。

闘技場の観客席に、娘のチャンドラがいないこと。

テゼレットは自分を見せしめにしたいのではない。

自分は寄せ餌に使われているのだから。

今やピアには歓声すら聞こえなかった――心が急いていた。出入り口の向こうの観客席を見つめた。観衆の中に改革派の姿は見つからず、チャンドラもおらず、知る者の姿はなかった。改革派の仲間を完全に閉め出すべく、テゼレットの部下が入場者を厳しく確認し通したに違いなかった――あるいはもしかしたら自分は全くもって寄せ餌などではないのかもしれない。唯一の希望は、可能な限り楽しませること、観衆の支持を得ること――独房と手かせの外に留まるために、最善を尽くすこと。

 

司会者の入場アナウンスと同時に、バラルによって背中を押され、闘技場へと足を踏み出したピア。

彼女と、対戦相手となるテゼレットの横には、布で覆われた輸送容器。

そして、試合開始のアナウンスとともに、より優秀な発明家を決める戦いが幕を開けたのでした。

ピアは輸送容器から覆いを取り去り、素早く中身を評価した。歯車と金属板の一揃い。吹きガラスが数片。基本的な霊気燃料管。幾つかの初歩的な器具。多くの事はできない、観衆を興奮させるほどには。

(中略)

彼女は供給品の容器に両手を突っ込み、金属部品に触れると、発明本能が活気付いた。

(中略)

霊気線を風切り羽の集合体に叩きつけると、飛行機械が生命を得た。「おおおお!!!」 群集の声が聞こえた。彼女はそれを羽ばたかせてテゼレットへと向かわせた、次の設計を進める間に敵を妨害できることを願って。

テゼレットは既に銀色の芋虫のようなものを作り上げていた。立ち上がると彼の背よりも高く、鋭い鋏と脚の下部構造を見せていた。

観衆は熱狂的に拍手をした。

一体どうやってこの部品からあんなものを? いかさまじゃない訳があるの? 飛行機械はテゼレットの周囲を旋回し、その針で彼の頭部に切りかかった。彼は無造作にそれを払いのけ、芋虫をピアへと向かわせた。

 

テゼレットから差し向けられた芋虫を破壊し、その部品を検めるピア。

そこには、自分の手元にはない部品、そして見たことすらない金属などが混じっているのでした。

その後も彼女は過激な新設計を続けますが、テゼレットはより強いものを、より速い速度で返してきます。

やがて部品が少なくなった時、テゼレットは小隊ともいえる小型機械を引き連れ、ピアの元へ来たのでした。

「お前の負けだ、ピア・ナラー」 ピアだけに聞こえる程の声でテゼレットは言った。

「そして今、お前の娘が罪の審判を受けたこの場所で、相応しい正義をもたらしてやろう」

彼は腕を掲げ、そして輝く自動人形の軍勢が一斉に向かってきた。

(中略)

こいつは観衆を楽しませているだけじゃない。私を殺そうとしている。

テゼレットが腕を振り下ろし、金属の創造物が飛びかかってきた。転がって避けるか、それとも避けられない攻撃を逸らすことができれば……

その自動人形が歪み、熱く輝く傷から煙を上げながら横へよろめいて砕けた。観衆は息をのみ、その源へと目を向けた。

彼らの中、怒れる形相の、炎の髪をした若い娘から炎の稲妻が伸びていた。

 



劇的な逆転

ジェイスが彼女にかけていた、不可視の呪文が解けていく中。

チャンドラは怒りそのまま、紅蓮術を手に立っていたのでした。

それを見とめた母は、必死の形相で娘に叫びます。

「チャンドラ、すぐにここを出なさい。これは罠よ!」

「そうね、知ってる」 チャンドラはそう答え、新たな炎の呪文のためにマナを集めた。「そして私はお母さんを助け出すために来たの」

「それこそあいつの思う壺なの! 子供は私を置いて逃げなさい。今すぐに」

「私はもう子供じゃないし、もうお母さんを失いたくないのよ!」

「お前が小娘の方のナラーか?」 テゼレットは左右非対称の両手を合わせた。

「母親がたった今負けた対決に加わるか? 実に感動的だ」

チャンドラは観客が皆、席から身を乗り出すのが見えた。彼らは家族劇に魅了されていた。「テゼレット、あんたに対抗するものを作るつもりはないけど、あんたを負かしてやるわ」

(中略)

領事府の兵が急ぎ、チャンドラを包囲して逮捕しようとした。だがテゼレットは片手を挙げて彼らを制した。そして兵士の一人へ素早く指示し、追い払うと改めてチャンドラに向き直った。自動機械達が無意識の操縦で彼に倣った。

「戦おうではないか、小娘」 テゼレットは宣言した、今や観客へと向かって。彼の自動機械達が一歩進み出た。

「到底、公平な戦いではないがな」

チャンドラは火球を二つに分割し、両の掌が燃え上がった。

「公平な戦いなんて誰が言った?」

その背後で幻影の群れが溶け、一人また一人と、プレインズウォーカー達が姿を現した。

 

すぐに動いたのはアジャニとギデオン。

彼らがピアを保護すると同時に、チャンドラは自らを解放し、テゼレットの周りの機械を燃やし、溶かしていきます。

この作戦の目的は、テゼレットの思考からその背後にいる黒幕を暴くこと。

しかし、ジェイスは自分の精神魔法が彼に通用しないことがわかります。

ジェイスの思考には警告の声色があった。

『チャンドラ、あいつはあらかじめ精神魔法を防いでいた。つまりこの事に備えていたってことだ。俺達が来るってことを。まずった……』

チャンドラの拳が閉じ、炎を眩しく焼け付く小さな点にまで握った。歯を食いしばり、そして震えた。『私はここで……』

リリアナの思考が入ってきた。はっきりと、鋭く。『殺すのよ』

巨大な影が闘技場の上を通過した。チャンドラが見上げると、飛行船スカイソブリンが空を遮っていた。

(中略)

大きく笑みを広げ、テゼレットは闘技場全体へと高らかに告げた。

「これにて発明博覧会を閉会致します、皆様、この世界の素晴らしき発明家に、心から御礼を申し上げます――ありがとう」

彼は丁寧に小さく頭を下げ、そして線条細工の鋼の柱に乗って宙へ去っていった。

 

パンハモニコンが奏でる頌歌。

そして派手に炸裂する祝賀の花火。

事態についていけない観客たちが完全に沈黙する中、それらの音だけが奇妙に響いていたのでした。

「終わった」 彼女の隣でニッサが静かに言った。心から誰かにそう言って欲しかったとチャンドラは気付き、驚いた。

「続きはまた。今は、終わった」

チャンドラは彼女へと頷き、感謝と安堵の溢れる波に浸った。拳に圧縮された点の炎は無へと散って忘れ去られた。

十一歳の時、チャンドラはこの闘技場を見渡していた。観客席を探し、母親の顔が見られるかもしれないという細い希望にすがって。そんなことはしなくてもよかった。今この時、彼女は再び闘技場におり、そして母はすぐそこに立っていた。

母は両腕を広げていた。チャンドラは駆け、その中へ飛び込んだ。

煙る火山平原をケラル砦から見つめながら、千度も夢見てきた瞬間にチャンドラは浸った。もし一度だけでもお母さんに会えたなら――どんな感じだろう? 今もお母さんは少しだけ溶接材料と薔薇の花弁の匂いがするの? 何を言ってくれるだろう? どれだけ愛しているか、どれだけ感謝しているか、どれだけ帰りたかったか、また一緒にいられてどれほど安心したか、どんな素晴らしい言葉を尽くして伝えられるだろうか?

彼女は口を開き、そして視界が霞み、溢れ出たのは僅かな言葉だけだった。

「お母さん……ごめんなさい」

母は何か心地良い言葉を彼女の髪へ囁き、引き寄せ、強く抱きしめた。

「長い年月も世界の隔たりも、抱き合う二人にとって障害にはならなかった。」ー安堵の再会

 



今回はここまで

よがっだねぇチャンドラ…!(号泣)

 

…となる場面です皆さま。

「安堵の再会」に至るまで、母と娘には結構な苦難があり、ようやくの再会!というところがこの場面になるわけですね。

上にも触れられている通り、かつては自分が処刑されかけ、そして灯の覚醒を迎えた闘技場が、今回は母との再会の場所となる、というところがミソです。思い出は塗り替えられるもの。

そして、「これはゲートウォッチが介入すべき問題だ」と言いながら助けに来るジェイスや、彼の不可視魔法が解除され、一人ずつ闘技場に姿を現わすゲートウォッチなどなど、カッコよすぎな。

 

さて、今回の黒幕のテゼレットはいったん退散してしまい、彼に正義の鉄槌が下るのはもう少し後になってしまいました。

次回は、彼の真の目的を知るための前段のお話を…。

 

お楽しみに!

 

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*出典*

かの闘技場にて

 

Posted by オクハラデン