【機械兵団の進軍】第4回 レンと八番【ストーリー】
はじめに
エルズペス、覚醒!!
…というエンディングを迎えた前回。
天使として覚醒した彼女がついに、新ファイレクシアへと降り立ちます。
仲間たちが行動不能になりかける中、駆け付けた希望の光。
その光の中を、英雄たちが駆けますよ!
さて、ではエルズペス以外の目線から、その登場シーンを見てみましょう。
↓ストーリーのまとめはこちら↓
大天使エルズペス
次元渡りを封じる鉱滓に縛り付けられたカーンが、ノーンの笑顔に見たもの。
それは、彼を苦しませてやりたいという願い。
それを裏付けるかのように連れてこられたチャンドラ、レン、コスは、みな一様に傷ついていたのでした。
ノーンの問いかけに、疲弊のあまり答えることもできないカーンへ、振り下ろされるギタクシアスの爪。
目の前をよぎる死に、カーンが深く目を閉じたその時。
黄金の光が弾け。
あたりはそのまばゆさに包まれたのです。
輝く鎧を身に纏う天使が、黄金色の剣を掲げてジン=ギタクシアスの攻撃を受け止めていた。
(中略)
「貴方にこの者を倒すことはできません」
天使が言った。
待て。彼ではない……? この声は……
それに気づいたのはカーンだけではなかった。腕を伸ばせば届くほどの近さで、エリシュ・ノーンは鋭い金切り声をあげた。
「お前は!?」
光が消えると、エルズペス・ティレルがクレーターの中心に立っていた。
その姿に狂乱に陥るノーンは、手当たり次第の物を武器としてエルズペスへ放ちますが。
天使となったエルズペスはそれを意にも介さなかったのでした。
彼女にとって、ノーンとの戦いは意味のないもの。
エルズペスの真の目的は、レンを世界樹へ辿り着かせること。
そしてそのための時間はあまり残されていないことも分かったのです。
ファイレクシアの意志の元、全てを一つに統一せんとするノーンに対し、ギタクシアスとも意見の合わぬものを一つにはできないと反論したエルズペス。
そして彼女は糾弾します。
ノーンが求めているものは、自身への崇拝だけであると。
「ファイレクシアは貴女にとってはどうでも良いのです。ずっとそうだったのです。貴女が気にかけているのは権力だけなのです」
いくつもの刃がエリシュ・ノーンの周りで静止し、沈黙した。それらの後ろで、怒りに充血した輝きが高まっていった。
「其方が……憎い!」
(中略)
彼女は向きを変えて上昇した。だが刃にその動きはできなかった。問題のすべてが一点に集中し、エルズペスはついに一筋の光を放った。
光が消えると、彼女はすでに橋を進んで樹へと向かっていた。多元宇宙の希望は羽毛をまとう彼女の双肩にかかっている。
ジン=ギタクシアスが追ってくる気配はない――だがノーンの叫びが聞こえた。
「逃げるな! まだ終わってはおらぬ!」
彼女はあまりにも長く彷徨っていた。正しい行いをする時が来た。
レンとチャンドラはもうすぐ樹へとたどり着く。エルズペスはそれを確実に成功へと導かねばならない。
レンと八番
あらゆる自然が根絶やしにされた、ドライアドにとっての悪夢のような場所。
レンはそこで自分の命が尽きようとしていることに憎悪を覚えたのでした。
死への恐怖でなく、自分が果たすべき役目を終えられないことへの憎しみを。
チャンドラは荒い息遣いながらも、足を失った彼女を抱えて駆けます。
レンが樹まで辿り着ければ上手くいく。
そう言ったチャンドラの側を触手が貫くと、それは前方にいたメリーラの腹部を貫いたのでした。
「私たちの提案を受ければ良かったのに」
覚えのある声が届いた。ニッサ。
棘の生えた蔦が彼女たちへとまっすぐに放たれた。
(中略)
「コス!」
メリーラが叫んだ。傷を押さえた手から、樹液のように血が溢れ出た。
「コス、壁を作って!」
彼は肩越しに振り返った。レンですら、彼の表情に心配を読み取ることができた。
「いいか、チャンドラ。全速力で駆けろ」
「わかったわ!」
コスは金属の壁を生成しニッサを阻もうとしますが、それらをすり抜けた彼女の触手はチャンドラの足元捕らえます。
宙づりにされたチャンドラの代わりにレンを抱き駆け抜けるミラディン人。
それらがニッサの棘に突き刺されつつも、一つの手から一つの手へ、レンは託され続けていったのでした。
そして侵略樹を目の前にしたレン。
メリーラは気力を振り絞ってレンへ生命力を与えますが、彼女と融合した侵略樹の炎を制するためには、チャンドラの力が必要だったのでした。
そのチャンドラはニッサに捕らえられ、自分は樹の炎に焼かれようとしている。
そんな絶望的なレンの視界を、突如まばゆい閃きが襲います。
光が止むと同時に見たのは、降り立つ天使と、足場に降ろされるチャンドラ。
「レン!」息を詰まらせ、かすれ声でチャンドラは叫んだ。
「まだ大丈夫?」
「あ――ああ」
レンは答えた。
(中略)
消えつつある視界の中でも、レンには彼女の呼吸音が聞こえた。
「すごくいい仕事してくれてるじゃん、レン」
いい仕事? 自分の一部は灰と化そうとしているのに。
チャンドラは伝えました。
炎はどうあっても燃えるもの。しかしその形は作ってあげられると。
レンは耳をすませます。
そして聞いたのでした。
侵略樹から、仲間に加わるように訴える声。
その中で消えかけた、ごく小さな緑の囁きを。
外のミラディン人が自分を守るように、レンはこの若木を守る。
自分の歌で、それが完全に成長するまで。
レンは弱弱しい声で歌い続けた。
『伸びろ』、彼女はそう念じた。
『私たち全員のために』
そしてその若木は内気ながら、今やわかっていた――大きな仲間たちに囲まれて――もう大丈夫だと。
レンの歌はかがり火に乗せた一本の乾いた丸太だった。
彼は成長していった。
(中略)
何と堂々とした姿なのだろう。レンの内に喜びが沸き上がった。
(中略)
『やあ、八番』レンはそう言った。
『お前をテフェリーに紹介させてくれ』
失われた地を探して
八番とレンを守る炎は、やがて自分たちを飲み込む。
彼女はそのことを分かっていたのでした。
だからこそ今できることは、八番を成長させること。
レンの歌は数百年分の成長を八番に与え。
その枝は多元宇宙のあらゆる次元へと伸びたのです。
レンはさらにそれを伸ばし続けました。
時が触れることが出来ない場所。
誰も見ようとも思わない場所。
友人の足跡だけが頼りの場所。
そして彼女が見つけた次元にて、テフェリーは女王の側で安らぎとともに立っていたのです。
届くかもわからないレンの呼びかけを、そのザルファーの民は聞き届けたのでした。
「レン、私を見つけてくれたんだな」
ポータルに近づきながらテフェリーは言った。
(中略)
「思い出を語っている時間はなさそうだね?」
彼女の胸の内の何かが強張った。そんなにも明白に伝わるとは? 彼女はかぶりを振った。
「ああ、済まない。その時間はない。お前を……見つけ出すのは……」
「説明しなくていい。私に何ができるかを言ってくれ」
(中略)
「新ファイレクシアに来て欲しい。誰もが応戦しているが、相手は多すぎる上にこちらは少なすぎる。今すぐにでも奴らはこちらを圧倒してしまうだろう。私たちには偉大な英雄が必要だ」
(中略)
「偉大な英雄? 目の前にいる気がするな。私はこの場所を見つけるために何十年もかかったが、君は全く時間をかけずに成し遂げた」
「頼む」レンは声をきしませた。
そのような言葉は全く自分にはふさわしくない気がした。
「テフェリー、時間はない」
彼は理解に頷いた。
レンはテフェリーへと願い出ます。
出来る限りの友達を連れて来てほしいと。
そして同時に、彼女は自身の役割に気づいたのでした。
八番がつないだ次元のもつれを解き、そして新ファイレクシアをその彼方へ放り去る。
相棒とともに長くはもたないだろうが、それでもいい。
テフェリーの呼びかけに応じる何千人もの兵たち。
彼との接触が、レンには誇らしく感じられたのでした。
「テフェリー、お前に会えて本当に良かった。私がどれほど残るかはわからないが、それでもお前のことは覚えていたいと願う」
彼女はそう告げた。
テフェリーの笑みは彼女の痛みを悪化させるだけだった。
「私がどれほど残るかはわからないが、友達のことはずっと覚えているよ。レン。彼女自身よりもその名声が先を行く、噂に名高い英雄をね」
視界の隅が冷たくなり、暗闇が彼女の肢を舐めた。少なくともそれは新ファイレクシアではない。ここで死ぬのであれば幸せだ、一本の肢をザルファーの地にかけて。
レンは目を閉じ、最も上手にできることをした――成長を。
今回はここまで
あーーーー!
カッコいい!なんかもう色々カッコいい!
私毎回叫んでますね!すみません!!
エルズペスによって繋がれたバトンを、レンが引き継ぎました。
そして次元壊しこと「八番」と協力することで、ついに時間の彼方にいたザルファーとテフェリーを見つけたのでした。
イニストラードにてテフェリーとレンが出会い、そして魔法に関するやり取りをしたのはこの伏線だったのね…!
レンをして「多元宇宙にその名が知れ渡っている」と評した英雄テフェリーから、英雄扱いされるレン。
んー、展開カッコよすぎか?
ついにザルファー、そしてテフェリーが参戦です。
役者が揃った新ファイレクシア戦争は、ついに最終章を迎えますよ!
次回もお楽しみに!
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