【霊気紛争】第5回 テゼレットとの決着【ストーリー】

2021年4月22日

目次

はじめに

前回、ジェイスとカーリ・ゼヴの活躍により、領事府の旗艦スカイソブリンが落ち、またサヒーリとラシュミによって、次元橋を無効化する「ギラプールの希望」が造られます。

しかし、いざテゼレットの元を強襲せんとしたその時、領事府のドビンは彼らの船へと潜入し、チャンドラの目の前で「ギラプールの希望」の核を破壊してしまったのでした。

直前で作戦の要を失ってしまったギデオンは、今決断を迫られるのです。

 

窮地の作戦

船倉に降りたギデオンが見たもの。

それは、猛り狂うチャンドラと、燃え盛る炎と、死体のように切り開かれた飛行機械。

サヒーリは、「ギラプールの希望」は次元橋を破壊する核たる攪乱機を失ってしまったこと、飛行はできても抜け殻でしたないこと、そしてキランの真意号もその速度と高度を失っていることを告げます。

多くの目がギデオンへ向けられた。彼は息を吸い、この全員を悲しい真実から守る方法を考えようとしては失敗していた。

「これは諦めて、何か他の手段を考えるべきだ」

(中略)

ギデオンは腕を組み、天井を見つめた。世界の全てをこの船に乗せ、全てをこの腕で包めたなら。柔らかな人々を一人残らず、貫き得ない抱擁で守れたなら。彼らはいかに脆いことか、人生は常にそれを突き付けていた。

チャンドラは飛行機械の滑らかな車台に手を滑らせた。

「考えがあるの。すごく、ものすごく悪い考えが」

彼女はギデオンを一瞥し、そして飛行機械のハッチから内部を覗きこんだ。

「何を――?」 ギデオンははっとした。彼女の思考をなぞり、彼は両手を挙げた。

「それはいけない。どういうつもりだ? チャンドラ。絶対に駄目だ」

「うまくいくかもしれない」

チャンドラの声が中に響いた。彼女は再び頭を出した。半ば笑みを浮かべたいつもの小さなチャンドラ、だが震えていた。

「近くから、私が、攪乱機になれる。バラルと戦った時、ニッサが引き止めてくれるまで、完成させようとしてた呪文……」

そこで彼女は言葉を切り、呼吸が鋭く、速くなった。

「小さな私が、大きな爆発を起こす」

ギデオンは首を横に振った、その案を蝋燭の煙のように振り払おうとして。

「いけない。皆は――私は別の手を考えたい、今すぐに」

だが既にチャンドラは虚ろになった『ギラプールの希望』へ上っていた。そして高足蟹のように四肢を縮めて入った。

「出てくるんだ、この馬鹿!」 ギデオンが吼えた。

「絶対に駄目だ。そんなこと――上手くいくかもわからないのに!」 自身の不確かさを、彼は呪った。

 

ギデオンは、作戦とすら言えないチャンドラの提案に抗議を上げ続けますが、チャンドラの決意の表情は変わらないのでした。

ギデオンは思い至ります。

これは当然のことだと。

彼女は故郷に、そして自分のせいで死んでしまった父に、責任を感じているのだから。

ギデオンはしばしの間、今の事態について考えていた。この恐ろしい状況を凍りつかせ、これ以上間違った方向へ進ませないために。彼は船の床に足音をたてて歩き、飛行機械の周りをまわった。中へ頭を入れ、チャンドラと内部空間の詳細をたどり、計算した。そして溜息をつき、何か異なる答えを周囲に探し求めた。

やがて、彼は腰からスーラを外して壁にかけた。そしてチャンドラを見つめた。

「君を一人では行かせない」




リリアナ vs テゼレット

領事府の霊気塔。

リリアナは、テゼレットを殺害すべく歩を進めていたのでした。

彼は、すでに死んでいるべき男。

今テゼレットを殺すことは、四年前にやり残した仕事を終わらせること。

やがてたどり着いた部屋にいたのは、その男と、鮮やかに輝く次元橋。

「ヴェスか」 その声が広大な部屋に響いた。

「あいつの差し金か? 何だ、私の様子を見に来たのか?」

(中略)

「違うわよ。闘技場で見たでしょう。あの子たちと一緒よ」

「当然だろうな。バーンも少しばかり失敗したということか。何と言っていたか。ゲートウォッチ、だったか? 私のこの素晴らしい門を見に来たのか?」

そして含み笑いとともに、金属の手を大袈裟に振って自身を取り巻く輪を示した。

リリアナは左へ寄り、テゼレットを守った鉄屑の構築物から幾らかの距離をとった。それは今や重々しく彼女へと向かってきていた。

「これはラシュミの門だったと思ったけど?」

テゼレットの表情が怒りに歪んだ。

「あの愚か者か? 何を発見したのかもわからない奴が」

リリアナは微笑んだ。激しい気性はこの男の弱点、そしてその自意識を刺激してやることは自制心を失わせる確実な方法だった。

「私はそうは思わないけど」

「何だと、貴様はあの女が久遠の闇を垣間見たとでも? あの発明が世界の橋になると理解したと? そう言いたいのか?あの矮小で愚かな精神を私が導いていなければ、一生ギラプール中に花瓶を運んでいただろうが」

今や彼は距離を縮めつつあった、その大切な創造物とリリアナとを離すように。

リリアナの皮膚に刻まれた線に沿って、紫色の光が走った。

「ああいう女性を侮らない方がいいって思い知りなさいな」

リリアナが放つ屍術のエネルギー。

テゼレットはそれに金属術で応じます。

そして交わされる対話。

その話の中で、テゼレットはボーラスとつながっていることをリリアナは知ります。

あのドラゴンは、常にそうなのだ。

やがて、リリアナはテゼレットを追い詰めたのでした。

強力な呪文の代償に、皮膚から血を流しつつ、彼女はその靴の踵でテゼレットの喉を捕らえていたのです。

彼女は靴の踵をその喉、鎖骨のすぐ上に当てた。

「それで? 何もかもあいつのため? これで何をしようとしているの?」

テゼレットは息を切らして彼女を見上げた。憤怒と恐怖がその青白い顔全体に荒れ狂っていた。

「次元間貿易商社でも作るの? 無限連合を再建するの?」

無論、彼女は熟知していた。ボーラスの計画がそのような小規模なものであったことなどない。ラヴニカにて、あのドラゴンのために働いていた時も知っていた。

テゼレットはかろうじて含み笑いをしてみせた。「自分で聞いてみるがいい」

(中略)

「そうね。じゃあ教えなさいよ。あいつがどこにいるのか」

「あれに逆らうのか? お前は、私が思った通りの馬鹿者なのかもしれないな」

「戦うなんて一言も言ってないわ。居場所を教えなさい」

(中略)

「お前は知っている筈だ。行ったことがあるだろう」

彼女は眉をひそめ、かつて訪れた次元全てを思い返した。「どれよ?」

テゼレットは咳込もうとし、だがそれ以上の呼吸は不可能だった。苦しみながら、彼は音を成そうとした。

「ラ、ラ……」

気短な溜息とともに彼女は足を上げ、別の場所を踏みつけようとその金属の身体を探った。

「ラザケシュ」

 

リリアナに走ったのは、恐怖。

それは、自分を縛る悪魔の四柱の中の一柱。

かつて討ち滅ぼしたコソフェッドやグリセルブランドよりも強力な一柱の名前。

「アモンケット」 彼女ははっきりと口にした。「アモンケットにいるのね」

テゼレットは大きく息をした、明らかな苦痛とともに。それは満足だった。

「テゼレット、これで終わりよ」

彼女はその上に両手を広げ、残っている生命力を吸い尽くす呪文のためにマナを呼び出した。

「あれは何だ?」

彼はリリアナの先を見ていた。飛行機械の襲撃を予測し、彼女は避けた。そうではなく、何かが近づいてきていた――テゼレット製の鳥のような飛行機械よりもずっと大型の何かが、砕けたガラス窓の外から霊気塔へ向かってきていた。

改革派の――希望とやら。どうやらゲートウォッチはとうとう仕事をやり遂げ、領事府の防衛線を突破し、霊気攪乱機を放てるほどに近づけたらしかった。驚くべきこと、だが喜ばしかった。

「任せた方がいいみたいね」

彼女はそう言い、ゾンビにテゼレットを拘束させたまま、頑丈な壁らしきものの背後に隠れた。

だが何かがおかしかった。壁の背後に身を潜めながら、大型飛行機械の先端に炎の赤毛が見えた。チャンドラ? 一体どういうこと――

「また会おう」 テゼレットの言葉、そして――

――そして炎が満ちた。




次元橋の破壊

数多くの傷からギデオンを守ってきた光。

それを以てしても、チャンドラの炎は焼けつくような熱でした。

「チャンドラ」

返答はなかった――聞いていなかったのかしれない、掌に包む太陽だけに集中しているのだ。

「君がいてくれて嬉しい。レガーサを離れてくれて。ゲートウォッチに――何もかもに。私は――」

「ギデオン」 歯を食いしばりながらも彼女は言った。「私……もう」

ギデオンは彼女を引き寄せた。まもなく衝撃が来る。黄金の光は今や二人を包んで――上手くいった! だがその熱は……

「私がいる。大丈夫だ」

「わかってる」 そして片手が腕に触れた。それで十分だった。

 

眩しく白い光、焼け付く熱気の爆発、崩れる石、そして立ち込める塵。

リリアナは瓦礫の中から悪態をつきながら立ち上がります。

自分がこの爆発で生きているということは、テゼレットも生きている。

彼はここから逃走したと。

馬鹿なチャンドラの姿もなかった。自ら命を絶った、そう彼女は思った。それは計画にはないことだった。

「何て無駄なことを」 彼女はむしろ自分に向けて言った。

「私がいないと、何もきちんとできないの?」

(中略)

カラデシュに来たのも、チャンドラが有用かどうかを探るためだった。死んでしまったなら、使いようはあまりない――そう、とても限られた使い道しかない。

自分が死ぬことなく残りの悪魔を片付けようとするなら、自由になるためには、ゾンビより強いものが必要だった。力のある者たちを、そして見つけたと思っていた。だが事態は遥かに複雑になってしまった。

咳の音が聞こえた、そして門の瓦礫の上、塵と煙が渦巻く中に、炎の赤毛と銅のゴーグルが垣間見えた。生きている。

リリアナは歩調を上げ、一度だけ足首をひねりながらもその苦痛を無視し、そしてようやくチャンドラの所へ辿り着いた。

「チャンドラ!」 叱るように彼女は叫んだ。「一体どういうつもりでこんな――」

チャンドラは隣のギデオンが立ち上がるのを助けた。長身のその男は彼女の髪からねじれた金線の塊を摘み上げた。二人とも――そう、その周囲に崩れ落ちた建物と同じような具合だった。自分も大差ない見た目だろうとリリアナは想像した。

「半……身……肉、」 リリアナの言葉は途切れた。

チャンドラはギデオンの視線を避け、そしてリリアナの姿を見て微笑んだ。ギデオンもその視線を追った。

「リリアナ!」 彼は進み出て片手を挙げ、その肉の重みを彼女の肩に乗せようとして明らかに考え直した。そして、ぎこちない手つきでもみあげを掻いた。

「君は……そうだ、あの男は見つかったのか?」

リリアナは顔をしかめた。「この下に埋まってるか、ご主人様の所へ逃げ帰ったかね」

沈黙の中、プレインズウォーカー三人は長いこと周囲の瓦礫を見つめていた。

「ジェイスはどこ?」 そしてリリアナが口を開いた。「話し合うことがあるの。本気で」




今回はここまで

長く続いたカラデシュの物語も終盤ですね~。

ギデオンとチャンドラの決死の作戦により、次元橋は破壊されますが、テゼレットはこの時その核となる部分を持ち去っており、結果的にはボーラスにこの技術が渡ることとなります。

やがてそれは灯争大戦にて悪用されることとなるわけですが…それはまた今度。

 

ちなみに、カラデシュの物語冒頭から、ギデオンは自分の「相手の肩を叩く癖」を気にしています。

上のリリアナとのやり取りで、ギデオンの手が宙に浮いてしまっているのもそういうわけですね。

以下、物語冒頭でリリアナが立ち聞きしたニッサとギデオンのやり取り。

背後で、中庭の煉瓦にギデオンの声が響いた。

「ニッサ、行く前にちょっといいか。私がよくやる、肩に手を置くあれだが、君は嫌だったか?」

リリアナは扉の前で立ち止まり、耳を澄ました。あのエルフが返答したとしても、その言葉は聞こえなかった。

「悪かった、気付かなくて。これからは止めるよ」

リリアナは彼の表情を想像できなかったが、その口調はあの茶色い瞳で濃い髭の男らしい正直さを滴らせていた。彼女の唇が苛立ちに歪んだ。

「ありがとう」 その声は葉が風に鳴る囁き程度だった。

「もし何か不快なことがあったら、言ってくれ。いいか? 特にそれが私の事ならば」

 

こういうちょっとばかし不器用なところも、ギデオンの愛せるところですね!

 

さて、次回はカラデシュ編最終話!

この次元で大活躍だった「猫さんの誓い」の物語、そして美しすぎる幕切れへ…!

お楽しみに!
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*出典*

闇の手先

 

 

Posted by オクハラデン