【タルキール龍紀伝】第4回 生まれ変わった世界【ストーリー】
はじめに
龍の呼び声に導かれ、過去のタルキールへと渡り、ウギンとボーラスの激突の瞬間を目にしたサルカン。
そして、彼はウギンが死ぬ運命を再編したのでした。
役目を終えたサルカンを、時間が浚います。
彼が戻ってきたタルキールやいかに…!
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龍たちのいる世界
サルカンの中を通り過ぎていく、何百何千年という時。
そして足元に固い地面が現われたとき、彼は面晶体の繭の前に立っていたのでした。
頭上から、轟く声が響いた。
サルカンは両眼を空へと向け、高揚感で胸がはち切れそうになった――龍の群れ! 頭上を、龍たちが旋回していた。
「どうだ!」 彼は叫んだ。「見ろ! あれを見ろ!」
彼が抱いた希望は間違っていなかった。それは起こったのだ。上手くいったのだ。ウギンを救った面晶体の欠片は、タルキールの龍たちをも救ったのだ。
涙がサルカンの目から溢れた。熱く、湿っていた。現実。これは現実だ。
歓喜のままに、サルカンは龍の姿をとり、それらの龍の群れへと飛び込みます。
彼はそのはるか上空から、新しくなったタルキールを見下ろしたのでした。
その存在を失っていた龍たちは、空に陸に姿を現し。
そこかしこにあった廃墟や龍の骨は、平原と森になり。
雪原であった場所は、龍の炎によって黒色へと変化していたのです。
そして、他でもない、龍が生まれ出る「龍の嵐」。
彼はこのまま、ずっと生きていたいと思った。
何という世界! 何と言う時代! 何という完全。
だがサルカンの完全な時を突然の、不快な鐘の音が砕いた。
龍たちを狂わす鐘の音の出所を探ると、それはマルドゥの宿営地のような場所の中心から鳴らされていたのでした。
同時に、その鐘の音に合わせて、反対側から奔流のように溢れる龍たち。
そして、それらを率いる歳を経た強大な龍。
サルカンの中で、改変前後の記憶が入り混じり、そして「見覚えのある」その龍の正体に気づきます。
それは、改変前のタルキールで、その頭蓋骨がカンの玉座になり果てた龍であったと。
ああ、世界はこうして変わったのだ!
かつての仲間たち
サルカンは鼓動を高鳴らせながら、宿営地へと降り立ちます。
頭上で激突する龍たちの音に満足すら覚える彼に、警告の声が響きました。
それは、藪から飛び出してきたゴブリン。
サルカンの記憶とは違う装いながら、見知ったゴブリン。
「足首裂き!」
サルカンは露頭の下から駆け出して両腕を広げ、そのため怒れるゴブリンは彼の抱擁へと飛び込む形になった。彼は喜びを抑えきれず、夢中で彼女を揺すった。
「お前もいるんだな! 生きているんだな! 龍と同じように!」
(中略)
「狂人、殺す! 薬瓶砕きを放せ! この!」
「それはお前の名前か! ほう! 名前まで変わったというのか!」
と、そこでサルカンは気づきます。
当のゴブリンの方は、自分のことを全く知らないということに。
やがて、背後からもう一体のオークが姿を現わしました。
忘れもしない、かつてのマルドゥのカン。ズルゴ。
薬瓶砕きは彼のことを、「鐘叩きのズルゴ」と称したのでした。
「鐘叩き?」 サルカンはたじろいだ。「鐘叩きのズルゴ?」
(中略)
「お前はかつて、マルドゥを率いていた」
「いいかげんにしろ!」 ズルゴは怒鳴った。
「それ以上侮辱してみろ」
サルカンの中で、違和感が膨らみ続けます。
彼らの話しぶりから、ズルゴはこの時代のカンでないどころか、カンという言葉自体が禁句になっていること。
そして、その代わりに龍王がこのマルドゥを率いているらしいこと。
なにより、ズルゴはサルカンのことを全く知らないこと。
サルカンは混乱のままに、龍の姿をとって飛び立ちました。
サルカンが成したにも関わらず、彼の存在がなかったような歴史。
彼はその真相を確かめるべく、ある人物の元へと向かうのでした。
ナーセットを探して
ナーセット! 彼はその名を地の果てまで届かせようと吼えた。
この世界、この驚異、この均衡、この完璧さをナーセットは知っている筈だ。彼女はそれを喜んでいる筈だ。そして、この世界を成したのは自分だと伝えよう。
サルカンが辿り着いたのは、ジェスカイの領土。
歴史改変前、カンであったナーセットは、その最上階にいるに違いない。
そう思い立ち入ったサルカンを迎えたのは、全く別人の、剃髪の男性だったのでした。
テイガムと名乗り、師を自称するその男性に、サルカンは当惑しながらもナーセットのことを尋ねます。
ゆるやかな動作で目を開いたテイガムは、静かに語り始めました。
異端者となったナーセットのことを。
そして、彼女は法によって罰せられ、最期を遂げたということを。
取り乱すサルカンを、テイガムはこれ以上はないとばかりに突き放すと、そのまま部屋の外へと追放したのでした。
こんな筈ではなかった。ナーセットが死ぬ筈などなかった。この歴史で。このタルキールで。
(中略)
こんなことはありえなかった。
「違う」 彼は首を激しく振り、髪の毛を引っ張った。
「違う、違う、違う」 彼は走りだした。動かなければならなかった。逃げなければならなかった。これを変えなければならなかった。
「違う!」
やがて龍の姿を取るサルカン。
先ほどまで、完璧に見えていた世界は、彼女がいないことによって不完全に見えたのでした。
そして、新たな目的に彼の瞳は燃えます。
ウギンならば、これを知っているに違いないと。
今回はここまで
次回に続く!!!
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