【サンダー・ジャンクション】第3回 ケランとアクルの決闘【ストーリー】

はじめに

前回、駆ける列車からノーランを連れ出し、その記憶から宝物庫のあるターネイションの手がかりを手にしたオーコ達。

そしてその過程で、ケランは徐々にオーコに対して疑念を感じ始めます。

しかし、彼にはそれを「認めたくない」気持ちがあるようで…。

彼らの作戦の続きを見てみましょう。




目次

ターネイションへの潜入

「盗人の終着地」へ侵入し、ターネイションへの地図を入手したギサとゲラルフ。

オーコは4人のチームでターネイションへ潜入し、アクルの持つ鍵を入手しに行くと宣言します。

かくして選別されたのは、アニー、ヴラスカ…そしてケラン。

息子には衝撃の表情が浮かびますが、彼は父の指名を断れないことを知っていたのでした。

少年は頷いた。

「わかりました。行きます」

オーコは感謝の念を表すふりをしたが、全く驚きはしなかった。ケランは父親に注目して欲しがっている。受け入れてもらいたがっている。どうやら息子を味方につける鍵は、お世辞であるようだ。

説明できる以上の様々な点で、彼は少年の助けを必要としていた。そしてケランは無償で、何の疑問もなく従ってくれている――家族だから、それだけの理由で。血の繋がりがあるというだけの、ほとんど何も知らない相手に。

けれどケランにとってはそれで充分なのだ。一種の忠誠心? オーコはその存在に感謝した。

 

ターネイションへ辿り着いた4人は、アクルの仲間であるツイストに会うため酒場へ入ります。

が、その場の悪漢たちにケランが絡まれると、それはオーコ達も含めた大乱闘へと発展したのでした。

ツイストを追わねばならないと指示するアニーに対し、オーコの元は離れたくないと主張するケラン。

戦いの末、やがてツイストとアクルの側近たちが奥から現れたかと思うと。

彼らは瞬時にケランたちを捕らえ、最下層へと投獄したのでした。

 

しばらくして牢獄へと姿を現すアクル。

彼はオーコの持つアーティファクトを奪い取ると、自分の持つ5つと組み合わせ「鍵」を完成させたのでした。

そして、そのドラゴンが用済みとなった自分たちをどうするのか、ケランには正確に予測ができたのです。

歯を食いしばり、持てる全ての勇気を振り絞り、彼は早口に言葉を発しました。

アクルに決闘を挑む、と。

囚人と決闘する必要はない、そう物憂げに話すアクルに、何やら物思いにふけっていたらしきオーコはすぐさま告げます。

あの悪名高きアクルが、子ども一人を怖がるとは思わなかった、と。

同様に言葉での追撃を図るヴラスカとアニー。

アクルは内から燃え上がり、息をするたびに歯の隙間から煙が噴き出した。他の者たちは押し黙った。

アクルのような悪党にとって、評判は何にも勝る。

そしてオーコの仲間が挑戦を叩きつけたのだ。

長い沈黙の後、アクルはケランへと頭を低くし、剃刀のように鋭い二列の歯を見せた。

「こいつらを留置場に放り込んでおけ」彼は団員たちへと言った。

「決闘は真夜中に開始だ」




月下の決闘

ターネイションの決闘場にて。

地獄拍車団員に挟まれ闘技場に現われるケランと、鎖に繋がれ観客席へ通されるオーコ、ヴラスカ、アニー。

ヴラスカが彼を一瞥してうなずき、アニーが隙を見て逃げるよう叫ぶ中。

着席したオーコは袖についた糸くずを払い、鎧についていた骨が落ちるのに目を奪われていたのでした。

ケランの内を駆けた失望の痛みは、心の底からのものだった。

(中略)

心にあるのは父親のことだけだった。それなのに……

その考えにケランはふらついた。

自分たちが顔を合わせるのはこれが最後かもしれない。

それなのに父は自分を見てすらくれない。

 

地獄拍車団員の合図により始まる決闘。

仲間が捕らわれている以上、逃げる選択肢を取れないケランに対し、アクルは圧倒的な力で彼を追い詰めます。

そしてドラゴンは、強大な魔力を集中させると、それを発すべく飲み込み始めたのでした。

辺りを見回すも、逃げ場所がないことを知るケラン。

彼の脳裏に、あらゆる思考が巡ります。

まだ父のことを全て知れたわけでもないのに、ここで終われない。

その思いが迸った瞬間、彼の中に眠っていた力が、まるで目覚める時を待っていたかのように両目にみなぎったのでした。

彼の眼光に射られた瞬間、集中力を失い現実味のない平穏へ誘われるアクル。

その好機に、ケランは金色の蔓をドラゴンの首に巻きつけ力の限り引きます。

窒息寸前でも瞳を濁らせ脱力したままのアクルに、ケランは一握りの罪悪感を覚えました。

そしてその躊躇は、彼の魔法を霧散させるに至ったのです。

我に返り、怒りとともにケランを叩きつけたドラゴン。

その爪が止めを刺さんと降りかかった時。

雷の一撃はアクルの首筋を貫き、彼を驚きとともに後ずらせたのでした。

傭兵の中心にたたずむのは、ラル・ザレック。

突入してきたスターリング社、そして地獄拍車団を交えた乱闘の幕開けです。

そしてその混乱の中、ケランは信じられないものを見たのでした。

オーコの足元で組みあがる、バラバラになっていたチビボネ。

その骸骨の胸部から取り出される鍵によって解放されゆく仲間たち。

それはつまり、オーコには逃亡の計画があったということ。

彼らの逃亡に、自分の決闘は必要なかったのだ。

オーコに要求され、落ちていたアクルのメダリオンを放ったケランは、戦いの爆発に巻き込まれると、倒れた先で地獄拍車団の一撃を受けます。

ケランは地面にどさりと倒れ込み、体が震えた。世界が暗くなっていった。視界がトンネルのように狭まっていった。炎の向こうから、父が奇妙な諦めの目で見つめていた。

ケランは父に期待を向けた――助けてくれることを。だがオーコは踵を返し、息子を置き去りにしていった。

二度目の打撃が後頭部に命中し、すべての光とともにケランの意識もまた途切れた。




失意のケラン

痛みとともに目が覚めたのは、馬車の中。

鉄格子のはまった窓から見れば、外にはスターリング社の警備兵たちが並んでいたのでした。

ケランの心に去来する痛み。

父は自分を捨てたのだ。

そして、自分は父の代わりにスターリング社によって処罰される。

彼は目をきつく閉じ、胆汁のように苦い痛みと戦った。

自分は世間知らずだった。オーコは父親などではなかった――ひとりの他人だった。自分たちの繋がりは、あまりにも長い間抱き続けていた子供時代の幻想に過ぎなかった。

沢山の人々から、オーコの本質についての警告を受けていた。信用してはいけないと言われていた。そして、自分の目でそれを見た。

ケランは両手を顔に押し付けた。声をあげたかった。叫びたかった。

 

突如聞こえる雷鳴。

震える馬車の床に手をついてこらえるケランに対し、勢いよく開かれる馬車の扉。

窓の外で警備兵たちが意識を失う中、戸枠の近くにはラル・ザレックが立っていたのでした。

彼は告げます。

逃がす代わりに、宝物を奪うことに力を貸せと。

父親という存在に翻弄されるケランに同情しつつも、悪党に宝物を渡し、多元宇宙に危険を及ばせるわけにはいかないと。

彼はラルと目を合わせた。

「どうするつもりなんですか?」

「鍵を取り戻して、宝物庫の中の宝を見つけて、誰にも発見できないような別の次元に封じ込める」

ラルはそこで言葉を切り、ケランの表情が変化する様を見つめ、片手を差し出した。

「返事が聞きたい。来てくれるか?」

もしもラルと手を組んだなら、オーコとは敵対することになるだろう。仲間全員と敵対することになるだろう。

けれど彼らに対して負うものは何もない。もう何もない。

ケランはラルが差し伸べた手をとり、断固たる決意とともに言った。

「一緒に行きます」




今回はここまで

ケラン君…(´;ω;) カワイソス

オーコがあまりに下衆野郎すぎて、その被害にあっているケラン君が本当に可愛そうです。

そして、救いに来てくれたラルがエラくカッコよく見えますね。

ちなみに、原文にはケランを見捨てた後、アニー目線でのオーコチームのシーンも描かれています。

そしてそこで彼は、自分にはスターリング社の乱入も含めた逃亡と、鍵強奪の計画があったことを明かします。

それが仲間にすら共有されていなかったことを訝しむアニーとヴラスカでしたが、そんな中気になるのは以下のシーン。

アニーの瞳の中に嵐が吹き荒れた。

「何て図々しくて無謀な奴だ、私ら全員を危険にさらして――スターリング社は、あんたを助けたって理由でケランを処刑するだろうね」

オーコが何も言わない様を見て、アニーは腕を組んだ。

「少なくとも、息子を見捨てたことを悔やむくらいの良識はあってもいいだろうよ」

オーコはひるみ、髪に手を這わせた。

「マルコムが宝物庫の入り口近くで待っています。別のことをしている時間はありません。今すぐ動くか、機会を失うかのどちらかです」

 

この「ひるむ」がアニーの剣幕に気圧されたか、それとも…?

ケランとの初回遭遇時に掛けていた変身魔法が解けていたなど、わずかにオーコに「情」のようなものを感じなくもない描写がチラホラ…。

これは一体…!?

というわけで、そんな伏線は特に回収されないのですが!(ネタバレ)

次回メインストーリー完結編!お楽しみに!

 

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*出典*

第4話 ターネイション発見

第5話 月下の決闘