【イニストラード:真夜中の狩り】第5回 収穫祭の終わり【ストーリー】
はじめに
イニストラードの昼夜の均衡を正すべく、カティルダ主催の収穫祭が始まりました。
そして、そこへ乱入してくる狼男たち。
アーリンは元同胞として、その首領トヴォラーとの決闘へと向かうのですが。
なにやら、狼男たちとは違う影も近づいているようで…?
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オリヴィア邸にて
扉を叩く音に殺意を覚えたのは、吸血鬼の淑女オリヴィア・ヴォルダーレン。
丹念に時間を費やし剥がした乙女の皮が、自らの顔から動かぬように。
入室してきた召使フォイヤーが彼女へと上げる報告を、目を開けずに聞いていたのでした。
「私に無駄な骨折りをさせないことね。美容の時間を邪魔されるのは我慢ならなくてよ」
(中略)
「我が最も輝かしく強大なる淑女、オリヴィア・ヴォルダーレン様」
彼女の唇が小さな笑みに動いた。その通り。宜しい。
「人間たちに関する知らせをお持ちしました」
オリヴィアの笑みと良い気分は、消えた。
曰く、人間たちは昼と夜の均衡を正そうとしている。
そしてそのために、彼らは祝祭を行おうとしているのだと。
旅人の一団がそれに加担しており、率いているのはアーリン・コード。
そこに加わっている髪の燃え立つ女性が、月銀の鍵のことを聞いていたと。
フォイヤーは吸血鬼へと、さらなる情報収集をするつもりだと言ったのでした。
オリヴィアはため息をつくように、その必要はないと答えます。
「フォイアー、お前が欲しがっていた材料を誰かが手に入れたとしたら、どうします?」
「ふむ。殺すでしょう」
わかっていない男だ。
「そうですわね、それは明白です。ですがいつ殺すのですか?」
「直ちに、です。侮辱を向けられたに等しいのですから」
オリヴィアは声をあげて笑った。
「だからお前は視野が狭いのですよ、かわいらしい子」
狼たちの決闘
狼の姿で決闘となったアーリンとトヴォラー。
爪と牙が乱れ舞い、互いが互いに傷を増やしていく中、トヴォラーはなおもアーリンへと呼びかけていたのでした。
「帰ってこい」と。
やがて彼は、アーリンを押さえつけます。
そして、群れへ帰ると言えば離してやると突きつけたのでした。
アーリンは目を開けた。今や彼女は理解した。トヴォラーは、聞きたい言葉を聞くまで離すつもりはない。
「ただいま」
その短い言葉を発するだけでも多大な努力を要し、だがかろうじて声に出した。
その言葉は嘘ではない。
アーリンを立ち上げ、抱きとめるトヴォラー。
それもまた、彼女の帰る場所。
トヴォラーの気持ちは、アーリンから離れていない。
しかし、彼の獰猛さや残忍さから、アーリンの気持ちはすでに彼から離れていたのでした。
アーリンは彼の胸骨へと、鉤爪を深く突き立てます。
これは不意打ちだ。正当ではないと言う者もいるかもしれない。
だが彼の襲撃を止められるなら、世界においてこれ以上に正当なものはない。
よろめくトヴォラー。そしてゆっくりと事態を理解し。
彼はかすむ両目でアーリンを見ていたのでした。
それは、肉体ではなく、心うちで何かが壊れたのだとわかる表情。
そして敗北を認めたように、彼は狼へと撤退の遠吠えを上げたのです。
アーリンは彼を下ろし、手を引き抜き、上体を起こして座らせた。
痛みに屈む姿を見たなら、他の者たちは彼を生きたまま食らってしまうだろうから。
トヴォラーは再びアーリンを見た。彼女はかぶりを振った。
(中略)
ついて来るか、彼はそう尋ねはしなかった。
儀式の完成へ
満身創痍のアーリンに追いつくエーデリンの白馬。そして馬上から伸ばされるチャンドラの手。
人間の姿へと戻ったアーリンは、終盤へ近づく収穫祭へと戻ります。
詠唱を続ける魔女たち。月銀の鍵を掲げるカティルダ。周囲の人々の目に宿る希望の光…。
そして突然、魔女たちにより呼ばれるアーリンの名前。
イニストラードじゅうの視線を浴びる中、彼女はカティルダの待つ祭壇へと昇ったのです。
「昼のために其方の血を注ぐ気はあるか? 恐怖の内に生きる者を、其方の牙で守る気はあるか?」
彼女は視線を動かした。
(中略)
誰も、その正確な意味を理解しているようには見えなかった。
「そうします」
彼女はそう返答した。自分は理解している、そう確信した。
ふらつく身体で、黄金の鉢へと血を捧げるアーリン。
魔女たちの口はだらりと開き、そこから溢れる銀の流れは鉢へと向かい。
力の抜けていくカティルダの体を、他の魔女が支える…。
しかし唐突に、祭壇は大きな影に覆われたのでした。
同時に漂う、死の香り。
それは人間の目にはとらえられない速度で起こり、だがアーリンには追えた。
赤と金の光線が空から稲妻のように落ち、ありえないその色にカティルダは息をのんだ。その光線の中には、オリヴィア・ヴォルダーレンがいた。
咄嗟に月銀の鍵へと飛びついたアーリン。
しかし、宙へと舞い上がったオリヴィアの腕には、力を失ったカティルダがいたのでした。
冷笑とともに地を見下ろした吸血鬼は、魔女と交換に鍵を要求します。
鍵と、そしてカティルダ。両方がなければ完成しない儀式。
苦渋とともに、アーリンはオリヴィアへと鍵を投げました。
彼女は空いている方の手で鍵を掴み取った。それを見つめ、オリヴィアの顔はますます喜びに輝いた。指先から煙すら上がった。
「カティルダさんを下ろしなさい!」
アーリンは叫んだ。
喜びはしかめ面に代わった。
「間もなく花嫁となる者に向ける言葉遣いではなくてよ」
やがて、上空から「落とされた」のではなく、「投げつけられた」カティルダの身体。
すんでの所でアーリンが飛び込むも、激突する肢体、そして砕けるカティルダの骨。
その視界が晴れた時、吸血鬼は夜闇へと消えていたのでした。
鍵は奪い去られた。
セレスタスは沈黙していた。
イニストラードに夜が降りた。
ここから永遠に続くであろう夜が。
今回はここまで
BAD END!!!
「真夜中の狩り」のストーリーはここで幕を閉じます。
完全に次回作「真紅の契り」へと続く物語ですね…( ;一一)
オリヴィアが月銀の鍵を欲した理由とは…?
そして、彼女は誰の”花嫁”になるのか…!?
あと、トヴォラーは意外と悪い奴ではなかったですね…ひたすらにアーリンと仲良くしたかった(!?)だけであって…。
というわけで、今回のイニストラードはここまで!
また次回、「真紅の契り」のストーリーにてお会いしましょう!
お楽しみに~。
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