【機械兵団の進軍】第7回 タミヨウの最期【ストーリー】
はじめに
前回までで、機械兵団の進軍におけるメインストーリーをご紹介しました。
メインの物語では、チャンドラとレンによる新ファイレクシア破滅作戦が繰り広げられ。
エルズペスの天使化やテフェリーの帰還など、様々な見せ場を作りながらグッドエンディングまで進んだわけですが。
ここから始まりますは、膨大なサイドストーリー…!
完成化したPWたちは、各人ゆかりの次元へと侵略を開始することとなり、チャンドラやコスなどの新ファイレクシアで戦った者たち以外は、これらに対する防衛戦を繰り広げることとなります。
本ブログでも、その奮闘の一部を要約してご紹介!
ということで、初回となる今回は「神河次元」から!
↓ストーリーのまとめはこちら↓
崩壊する都和市
タミヨウが読み上げるのは、物語。
ネオンが照らす都和市の上空にて、タミヨウは巻物を封印していた鉄の輪を解きます。
彼女が目を走らせた物語は、この地を守る神々の力を跳ね除け、その都市を堕落させていったのでした。
油を垂れ流し裂ける母聖樹。
その様子を、ケイヤと魁渡は遠くから見つめていたのでした。
「何て……ひどい」ケイヤが言った。
「ええ」魁渡が頷いた。
「更に悪いのは、あれはタミヨウさんの仕業だってことです。巻物を開いています。見えますか」
魁渡は指をさした。街の空高く、母聖樹の垂れ下がった枝の近くにタミヨウが浮いていた。
「今もその巻物を読み続けています。誰もそれを止めさせなかったら、事態は悪くなるだけです」
何てこと――今や自分たちは、友の命を奪うことを話し合っている。ケイヤにとって暗殺は慣れたものだが、これは少し訳が違う。よりによってタミヨウを。
(中略)
「放浪者はどこにいるの?」
ケイヤにそのつもりはなかったが、魁渡は痛い所を突かれたようだった。彼は唇の端を歪めた。
「きっと来ます」
魁渡はそう言った。
母聖樹の根元へ辿り着いた彼らを、タミヨウは見向きもしなかったのでした。
すると、魁渡はおびえた声に話しかけられます。
彼の目の前にいたのは、小さな鼠人の子ども。
手製の装備を纏うその者に、魁渡は早く逃げるように伝えたのでした。
「あそこにいるの、母さんなんだ」
「ナシ?」魁渡は尋ねた。
案の定、鼠の少年は頷いた。
(中略)
「別人みたいに見えるけど、それでもあの人なんだ。きっと、自分が誰なのかを忘れちゃってるんだよ――思うに、僕が話しかければ……」
(中略)
「大変なことになってるって聞いて、僕はここまではるばる来たんだ。英雄はそうするものだって母さんが言ってた。母さんに僕の姿が見える所まで連れてって。そうすれば、きっと聞いてもらえると思うんだ。どんな姿になっても、ずっと僕を愛してくれる。約束してくれたんだよ」
魁渡の胸が痛んだ。
ナシを連れて行きたくはない。
そう思いつつも、魁渡にはその気持ちが痛いほど分かったのでした。
彼はベルトから反発装置を取り出すと、その鼠人へと手渡します。
母聖樹を登り、母に会わせるために。
タミヨウの中の何かは、きっと彼を覚えていることを信じて。
タミヨウの最期
高所にふらつくナシを支えつつ、魁渡はタミヨウの元まで辿り着きます。
鼠人の子どもが枝の先端へと近づく中。
魁渡は早鐘のように打つ心臓の鼓動を聞きながら、彼のすぐ後ろを追いかけたのでした。
「母さん?」
タミヨウの首がぐるりと回転した。ふたりを見つめた瞳は、魁渡が知る優しくも探求心に満ちた瞳ではなかった。
(中略)
「僕だよ、ナシだよ。覚えてるよね?」彼はそう呼びかけた。
「こ、こんなこと、やりたくてやってるんじゃないよね。僕、母さんのやってることはおかしいって思う。けどわかるよ、誰かにそうさせられたんでしょ。ただ、お、思い出して。ほら、いなくなった王子様の物語みたいに」
ナシはひどく震え、もはや喋ることすら困難だった。
「ナシ。ここで何をしているの……?」
魁渡は手を伸ばし、小さな鼠の少年を落ち着かせようとした。
そしてその瞬間、タミヨウの身体のあちこちが首と同じように回転し、その表情がひどく不快な様子にねじれた。
タミヨウから放たれる金属片を、魁渡は瞬時の判断で跳ね除けます。
狂ったような声で告げられるのは、「自分たちの側」へ加わるよう諭す誘いの言葉。
恐れることはない、新ファイレクシアの中では全てはひとつだと。
変わり果てたタミヨウの姿を目の当たりにし、ナシを逃がす魁渡。
降下してきたタミヨウは、巻物と金属で彼へと攻撃を加えます。
そして彼女は魁渡の突進を躱すと、巻物で彼を宙づりに拘束したのでした。
巻物を切れば落ちる。それはすなわち死と隣り合わせの選択肢。
タミヨウより彼にももたらされる、完成化の誘い。
「俺はこの人生が気に入っているんでね」
魁渡は巻物を切った。
彼は落下した。だが衝撃は来なかった。そうではなく、何か冷たく柔らかなものが下にあるのを感じた。何か……よく知っているものが。
「三回までですよ。貴方は頼ってばかりですね」
その声。目を開かずとも、その笑みはわかった――陛下。
(中略)
「これでおあいこね」
ケイヤの声が聞こえ、ここにいるのは自分だけではないと魁渡は気付いた。彼女は魁渡のすぐ隣で、共に香醍に乗っていた。
「とりあえず」魁渡は言った。
「陛下は来てくれるって俺、言いましたよね」
香醍は樹へと舞い戻り、タミヨウは放浪者と対峙します。
空民からの攻撃を一刀で切り伏せつつ前進する放浪者。
それに合わせるように後ずさったタミヨウは、やがてナシの元へと辿り着きます。
魁渡の叫びに、鉄輪の巻物を解放するタミヨウ。
放浪者の呼びかけに、香醍が応じます。
皇を取り囲むように踊る文字。
流れ込む香醍の力。
タミヨウの口が詠唱を始め。
白光のひらめき。
剣が鞘から抜かれる音。
かすかな風の音。
その一閃で、タミヨウは斃れたのでした。
タミヨウの残したもの
「母さんじゃなかった」
そう繰り返すナシを、魁渡は強く抱きしめます。
その疑問に対する答えはない。
どんな言葉も、彼の傷を癒すには至らない。
そんな悲嘆の平穏を、ナシを呼ぶ声が打ち破ったのでした。
それは、かつての温かく優しい、母の声。
「ナシ、ごめんなさい」
魁渡はナシをかばうように立った。彼らの目の前に奇妙なものがあった――文字が密集して浮遊し、ひとりの女性の輪郭を成していた。
(中略)
その姿はひとりひとりに向き直り、そして頷いた。
「私はタミヨウの残滓――彼女の、終わりのない物語です。彼女の記憶と考えて差し支えありません。何年も前に、彼女は自らの死を見越して私を作り出し、とある巻物に封じ、そして必要とされる時まで鉄の輪で閉じたのです」
タミヨウの記憶は――彼女の物語は――言葉を切った。
「私は、その日が決して来なければ良いと願っておりました」
その姿を疑ってかかる魁渡を、放浪者は制します。
タミヨウの破片は、自分たちを傷つけるものではなかった。
彼女は、自分ができる唯一の方法で懇願していたのだと。
肩越しに振り返った魁渡の目には、終わりなき物語に包まれるナシの姿が映ったのでした。
これはひとつの物語。
むかしむかし。ものすごい悪がありました。その悪は、多元宇宙の次元をぜんぶ飲み込もうとしました。何も感じない、何も気にしないその悪は、出会った相手の心もその悪と同じものにしました。
それに立ち向かう者がいました。
白をまとう守り手です。
今回はここまで
うをーーーー!つれぇ!!
ナシの気持ちを思うとつれぇ!
タミヨウは最後の最後で完成化されていない一面を見せました。
そして、イニストラードからずっと謎だった「鉄の輪の巻物」の秘密が明らかに!
このストーリー序盤でも開いているので、単純に強い物語の中に、自身の遺言のようなものも混ぜていた感じでしょうか。
憎い演出しおるでホンマ…!
あと、放浪者の一撃の描写カッコ良すぎね。
思わず原文からそのまま引っ張っちゃった。
というわけで、サイドストーリー神河編でした!
次回はまた別の次元をご紹介。
お楽しみに!
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