ギデオンの灯の覚醒~正義に燃える少年キテオン【ストーリー】
はじめに
今回の副題を見て
「おい作者wギデオンの名前誤字ってんぞww」
と思ったMTG初心者のそこのアナタ!
こんにちは半年前の私!※執筆時点
ギデオンのオリジンは、そもそも名前が「ギデオン・ジュラ」ではない、というところが最大の面白さかもしれません。
それは、今でこそ正義の代名詞のようなギデオンさんが、まだまだガキんちょだったころのお話。
というわけで参りましょう!
「ゲートウォッチの起源をたどる!マジック・オリジン」
ギデオン編!
アクロスの悪童、キテオン・イオラ
ギデオンことキテオン・イオラは、テーロスの都市アクロスを故郷に持つ十三歳の少年です。
彼は自分の住む外国人居住区で、悪人たちを排除するためには法を犯すこともいとわない「キテオンの不正規軍」を率いていたのでした。
そして、その活動のさなか、牢獄に捕らわれるところから物語は始まります。
彼の持ち前の正義感はその場所でも発揮され。
牢獄にて覇権を握っていた男リストス(の使いっ走り)に「貢物」を要求されたとき、それが爆発したのでした。
不正規軍として日ごろから悪漢と戦ってきた彼は、いくつもの反撃を受けながらも、リストスとその配下の者たちを打ちのめします。
程なく衛兵達が囚人の群集を押しのけてやって来たが、キテオンに長い時間は必要なかった。
到着した衛兵達が見たのは、血まみれの顔に血まみれの拳で、リストス配下の最後の一人を拳で打ちのめすキテオンだった。
十三歳の少年は衛兵達が自分へと向かってくるのを見て、床に倒れこんだ。
消耗し、力尽き、だがすっかり満足した様子で。
目覚めたあと、彼は看守の元へ連行されたのでした。
兵士の装備を纏う、この牢獄の管理者ヒクサス。
少しして彼はその指を濃い灰色の髭に走らせ、口を開いた。
「君はここに来てまだ二日も経ってないのか」 彼は深いため息をついた。
「二日で十年分の刑期を追加だ。水仕事で暴力を振るい、囚人七人を医務室送りにし、そして暴動……全て君が原因だ」
キテオンの耳に、それは業績を読み上げられたように届いた。
「ああ、そうだ」 ヒクサスは付け加えた。「更に君は昨日、ここに移送される途中に脱走を企てたと聞いている」
「俺を罰するのか?」
「他に誰がいる?」
キテオンは答えなかった。
ヒクサスはおもむろに鍵束を地面に落とし、同時にキテオンにダガーを渡して告げたのでした。
「君へと自由を提供しよう」と。
自分を殺し、鍵を奪えばそのまま逃走できると。
「あんたを殺す気はない」 そしてキテオンは言った。
彼は腕を脇に下ろし、ダガーはそのまま床で音を立てた。
「君は殺人者ではないからな。君はリストスではない」
「悪かったね、あんたを失望させて」
「いや、それどころか私はこの結果に勇気づけられている。これこそ私が望んでいたものだ。真実だと信じていたものだ。君は盗人として、窃盗の罪で捕えられてここにいる。だが君が盗んだのは食べ物だ、君の友人とその家族を養うために。君は、君が正しいと思う事をしている」
キテオンは両足首の間に下がる鎖へと視線を落とした。
「俺をどうしたいんだよ?」
「囚人のほとんどに私が望むのは、静寂と服従だ。君に望むものは何か? 君には私の提案を受け入れることを望む。キテオン、君を訓練したい」
キテオンはそれに同意していないにも関わらず、翌日から夜明け前に叩き起こされ、運動場に連行させられたのでした。
牢獄の時と同じように、鍵束を足元に放るヒクサス。
キテオンは彼の意図をくみ、ヒクサスへと突撃します。
が、数時間後。
キテオンは自分を縛るエネルギーの鎖を見ながら、不平を叫んでいたのでした。
言葉もなく鍵を回収し、去るヒクサス。
その”たちの悪い”遊技とも思える訓練が、何日も続いたのです。
目を血走らせて、彼は看守へと声を上げた。「できねえよ!」
「それは何故だ? 君の勇気が足りないのか?」
キテオンは顔をそむけた。
ヒクサスは続けた。
「君の強さが足りないのか? それとも素早さか?」
看守はキテオンに迫るように立ち、見下ろしていた。少年は涙と屈辱に満ちた目で睨み返した。
「俺じゃない! それはあんただ! あんたは俺に近づかせてもくれない」 キテオンは言った。
その時、ヒクサスは彼の傍、泥にひざまずいた。
「さあ、理解する時が来た」
ヒクサスは説明します。
これが神聖術の、一般に「法魔術」と呼ばれるものだと。
「法は人によって創造されるもの。そして法は変化しうるが、法とは特定の行動を受けて創造されるものだ。ある者が盗みを行えば、法は更なる窃盗を防ぐべく制定される。神聖術の実践はここから始まる」
「あらゆる行動に、それに逆らう反応がある」 ヒクサスは続けた。
「神聖術の達人は、いかなる展開からも勝機を見い出すことができるのだよ。そして、それを自身の優位に変えることができる。どのような競技においても、勝利というものは状況を支配した者の手へと収まるものだ」
ヒクサスは彼を正式な弟子として迎え入れました。
キテオンは、彼から神聖術を、そして戦闘技術を教わり、同時に囚人としての活動の中で肉体を鍛えていったのです。
それから4年経ったとき。
アクロスに、唐突な襲撃のしらせが届きました。
彼は跳び起きると背を伸ばして窓の外を見た。ハーピー達が川上から接近してきていた。
(中略)
「都市が攻撃されている」 ヒクサスが言った。
「ハーピーが」
「今までにない数だ」
かんぬきが音を立て、扉が勢いよく開かれた。
(中略)
「自由になりたいか?」 ヒクサスはそう言って袋をキテオンの足元に向けて投げた。
キテオンは片方の眉を吊り上げた。彼は屈んで袋へと手を伸ばし、手元へと引き寄せると掴んでいたのは鞘に入ったアクロスの剣の柄だった。袋の中には歩兵の装備が揃っていた。胸当て、すね当て、そして円盾。
キテオンは不敵に笑った。
太陽神の降臨
キテオンはハーピーの大群と、サイクロプスの軍団に、不正規軍を結集し対抗します。
彼は、城門を閉め、背水の陣でこの怪物たちを撃退するという、大胆不敵な行動によってこれらを仕留めたのでした。
※ちなみに、「ニクスへの旅」でこの戦術が再度使用されたことが示唆されています
彼がさらなる怪物の襲撃がないか、あたりを偵察していた時。
一人の男が、黄金の衣服をまとい、黄金の冠を冠し、黄金の槍を持つ男が、キテオンの前に立ちはだかったのでした。
「アクロスのキテオン・イオラよ」 その男性の声はあらゆる方向から響いてくるようだった。
「お前の務めはまだ終わってはいない」
「その通りだよ、あんたが道を塞いでるんだから」
既にキテオンの皮膚の表面には白いエネルギーが波打っていた。
「あんたは誰だ?」
その男性は槍先を地面へと下げると、光が揺れ動いて彫像の姿を露わにした。キテオンはその男性の、大理石製の複製を認めた。
「ヘリオッド」 キテオンがはっきりと声に出せたのはその名だけだった。
「太陽の神」 ヘリオッドの声が轟いた。
ヘリオッドはキテオンに告げます。
お前は怪物からアクロスを守ったと。
そして今、死の神エレボスが遣わす巨人がそのアクロスに迫っていると。
太陽の神は手を伸ばし、キテオンの肩に置いた。
「お前は都市を攻撃され、戦士としての価値を示した。だが次は我が勇者となるべく自身の価値を示す時だ」
神は日の差す空へと手を伸ばし、そして光がその拳の周囲に凝集した。それは長く伸び、神自身の武器を模した槍の形を成した。
「この槍をもって、その巨人を倒すのだ。我がお前に課すのはそれだ。これはお前の試練だ」
キテオンは息を飲んだ。その槍と、神が与えた務めの両方に。
キテオンはエレボスの巨人と対峙し、またもこれを破ります。
不正規軍を連れた彼は、仲間の力で巨人のバランスを崩させると、その武器が巨人自身へと命中するよう、神聖術を放ちます。
怒りとともに巨人が膝をついたその一瞬で、キテオンは柱から槍をかざし、その胸に深々と刺し込んだのでした。
キテオンは倒れた巨人から降りた。試練は終わった、彼はそう思った。ヘリオッドの務めは果たされた。アクロスは守られた。
彼は槍を引き抜き、不正規軍へと振り向いた。そこに彼らはいた、外国人居住区の小僧の群れが。
共に、彼らは居住区の犯罪王の締め付けを破り、アクロスを蹂躙する怪物から守り、神のために働く巨人を倒した、別の神のために。彼らは仲間であり、家族であり、太陽神の試練を受ける意義だった。
一人でも、彼は強く熟達している。だが不正規軍と共にいれば、神々の諍いですら物の数でもない。
街を守り、神から与えられた使命を達成したキテオンは、勝利に酔っていました。
それが、「悲劇的な傲慢」であるとも気づかずに。
キテオンが視界の端に捉えたのは、巨人を遣わした張本人。
「ヘリオッドの勇者」である自分は、当然この死の神を倒すことも使命であろうと。
そう思ったキテオンの手からは、その神へ向けた槍が放たれていたのでした。
しかし、エレボスが無感情に鞭を振るった直後。
跳ね返った槍は、キテオンの視界を白く染めたのです。
彼の周囲にゆっくりと色が戻ってきた。槍が当たったと思われる場所を見下ろした。傷はない、だが赤い斑点に気が付いた。彼はそれを拭おうと手を動かし、そして手の甲にもまた赤が跳ねているのを見た――両手が。だがそれは彼自身の血ではなく……
そんな。
彼は周囲を見た。
彼の目が四体の倒れ伏した身体を通過した。
そんな。
地面が持ち上がり、キテオンは体勢を保とうともがいた。彼は恐怖に口を開いたまま斃れた不正規軍の間によろめいた。彼の思考は、自身の手で放たれた槍へと戻った。
白い光が彼から放たれ続け、周囲の風景が揺らぎ始め、曲がり、伸びた。
そこから、緩やかな平原が現れた。
そして薄明りの空は冴えわたる青色になった。
もはや何もわからなかった。まるで世界の全てが終わりを迎えたかのようだった。
目を血走らせ、苦悶に顔を歪め、キテオンは鮮やかな太陽が輝く空へと視線を向けた。彼は目を閉じ、どうすることもできずその場にひざまずいた。
ギデオンの誕生
自分が「移動」し、地に膝を折ってからどれくらいの時間が経ったのか。
キテオンは、自分を見つめている視線を感じました。
そこには、鎧を纏ったライオンと、同様の装備に剣を携えた女性。
乾いた喉で、キテオンは口から言葉を絞り出した。
「ここは? あんたは?」
「私はムーキル、巡礼の道の騎士長だ。君はここ、バントのヴァレロン国で迷ったようだ。体調がすぐれないようだな」 その騎士が喋る中、キテオンは彼女が一人でないことに気付いた。片手ほどの騎士がその隊長の背後に並んでいた。
「放浪者よ、名前はなんと言う?」
「キテオン」 彼は息を詰まらせて言った。
「ギデオン?」 ムーキルは確認しようとした。
彼はその間違いを正すよりも先に気づいたのでした。
ここは自分の故郷ではない。
自分はテーロスを離れたのだと。
そして、最後に自分が見た光景。
キテオンの不正規軍は死んだのだと。
彼が持ってきたものは、その苦痛だった。
彼の試練は始まったばかりだった。
今回はここまで
なんと他人の聞き間違いで現在の名前になったギデオンさん。
キテオン?誰?となっていたところからのつながり方が美しいですよね~。
彼はこの時の傲慢による仲間の死を引きずりながらも、ゲートウォッチではメンバーを率いて戦います。
このギャップがいいんですよね!若かりし頃は向こう見ずで失敗も多い、みたいな!
マジック・オリジンは今のキャラとはまた違うゲートウォッチの一面が見れるのが、最高にイカしてるところです。
※ちなみにアモンケット来訪時、神には彼の本当の名前が知られています。
さて、マジック・オリジン編も残すところあと二人!
次回は、誰よりも故郷に思い入れの強い、ニッサのオリジンをご紹介します。
お楽しみに!
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