【ニューカペナの街角】第4回 クレッシェンドの悲劇【ストーリー】
はじめに
ニューカペナの地にて、エルズペスとビビアンはそれぞれの思惑でもって出会いました。
そこに「敵対するもの」を加えたプレインズウォーカーたちは、祝祭クレッシェンドの場で衝突することとなります。
まずは、ニューカペナの者たちがこぞって探し求めている「源」の話から。
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「源」の正体
ついに開かれた、祝祭”クレッシェンド”。
舞台座へと潜入したエルズペスは、給仕係としてこの祭りに参加していたのでした。
随員のように彼女を挟む、この仕事を紹介したキットとジニーの二人。
ジニーは彼女へと、ジアーダを少しの間見ておくように言います。
エルズペスはしばらくこの三人と行動を共にしていましたが。
ジアーダの発する居心地の悪さにより、彼女とジニーの関係を図りかねていたのでした。
彼女へとケーキを差し出したエルズペスに、ジアーダは自身の不安を打ち明けます。
「すごく大切な上演があるんです。ジニーさんや舞台座、全員にとって」
「どんな上演なんです?」
エルズペスは何気なさを装って問いかけた。無害な質問、それ以上のものはない。
ジアーダは横目で一瞥した。
「すぐにわかります」
「ごめんね!」 ジニーが戻ってきてジアーダの手を掴んだ。
「この次元を変えてしまう準備はいい?」
だがジアーダが返答する隙を与えず、ジニーはその手を引いて去っていった。
懸念がエルズペスの内に渦巻いた。
何かがおかしい。全身でそれを感じていた。
壇上に上がるジアーダ。背後に立つジニー。そして中心には巨大な空き瓶。
ジニーがショーの開幕を宣言するとともに、ジアーダは空き瓶へと踏み出し。
そして決意とともに彼女が瓶に触れた時。
眩い光とともに、空き瓶は光素で満たされていたのでした。
「我々は無から光素を作り出したのです。(中略)光素はもはや尽きることなく、先細る資源を溜め込むことももうありません」
彼女は強調するために言葉を切った。人々の高揚が伝わってきた。そしてジニーはジアーダを示した。
「皆さん、こちらが『源』です!」
群衆から歓声が弾けた。
迫る影
その少し前。
貴顕廊では、その長ザンダーがクレッシェンド前の束の間の平和を楽しんでいたのでした。
それは、何かいつもと違う様子で。
それは、部下アンヘロにすら伝わる異質さで。
ザンダーはアンヘロへと依頼します。
クレッシェンドへは自分でなくアンヘロが向かうようにと。
自分は、ここに留まるべきなのだと。
「ザンダー様、何に悩んでおられるのですか?」
アンヘロはザンダーの肘に軽く手を触れた。深い懸念が伝わってくるようだった。
「今夜の閣下は本来の閣下ではないように思えます」
「心配のしすぎだ」
ザンダーはアンヘロの手を軽く叩いた。
「私の名代としてクレッシェンドに向かうのが、君にとっての最高の務めだ。私の不在によって舞台座にわずかでも疑念を持たれてしまうのは宜しくない」
「何にせよ疑念は持たれるでしょう。私は貴顕廊の長ではありません」
「だが近いうちにそうなる」
「はい?」
「行け。その件については新年を迎えた後に話し合おう」
彼がアンヘロを後継にすると明言したことはなく。
しかし、彼には準備の時間はない。
ザンダーはためらう彼へと、クレッシェンドへの参加を命令します。
そして、アンヘロは忠実にそれを受け取ると、他の者の知らぬ勝手口から退出したのでした。
そしてしばしの時間、ザンダーは待ち。
動きが、彼の黙想を終わらせた。
ザンダーは振り返り、広間の先に立つ生ける影へと対峙した。薄闇に向けて彼は尋ねた。
「遂に私を殺しに来たのかね、『敵対するもの』よ」
影からザンダーへと襲い掛かったのは、元々彼の腹心であった者たち。
自ら造り上げた博物館の構造を利用し、一人ずつそれらを始末するザンダー。
しかし、技術はあれど、その老いは彼に体力を残さなかったのでした。
階段を駆け、扉をくぐり、彼が飛び出したのはバルコニー。
そこから見えるのは、彼がこよなく愛する風景。
その感慨を遮るように背後で鳴る、力強い羽ばたきの音。
「本気で逃げられると思ったか?」
その声は純粋な憎悪を低く響かせていた。
「それもバルコニーとは!」
彼は高笑いを上げた肺一杯に空気を吸い込み、強調するように翼を大きく広げて。
「まさか」 ザンダーは振り返り、対峙した。
ザンダーは予告なく「敵対する者」へ飛び掛かりますが、その剣は素手で弾かれます。
悪魔の、喜びに歪んだ表情。
それはザンダーの目にも止まらぬ速さで指を指すと。
魔法の発砲音が高街に響いた。
だがよろめくザンダーが最後に耳にしたのは、信頼するその剣が、悪名の道具が、手から最後に滑り落ちて床に跳ね返る音だった。
足が空をとらえ、彼はその下の雲の中へと落ちていった。
戦乱のニューカペナ
祝祭クレッシェンドにおいても、混乱が弾けていたのでした。
「敵対するもの」は全ての一家へと侵入しており。
叫ぶジニーの視線の先で、舞台座の長ジェトミアは刺客たちに追い詰められていたのです。
ジアーダとともに取り残されるエルズペス。
彼女はジアーダに逃げるかと問い、彼女の肯定の返事とともに混沌へと駆けだします。
そして、彼女らが追手に迫られたとき。
その危機を救ったのは、緑色の炎をまとう矢と、それに伴って現われた狼の精霊でした。
「次に会う時、は意外と早かったわね」
「ビビアンさん」
エルズペスはほっと溜息をつき、ジアーダを見つめた。
「仲間です。信頼して大丈夫です」
それは願いでもあった。
ビビアンはわずかに驚いた表情を見せ、だがエルズペスの言葉を否定はしなかった。
「伝えたいことがあるわ、この前の件で。とはいえまずはどこか安全なところへ行かないとね」
三人が逃げ込んだのは、エルズペスが任務で使用した倉庫の中。
ジアーダを休めるべく一夜を明かした彼女らは、侵入者の強襲とともに朝を迎えます。
舞台座の用心棒たちとともに、唯一の入り口に立つジニー。
矢をつがえようとしたビビアンの弓ははたき落とされ、エルズペスはジニーによってナイフを突きつけられたのでした。
「ジニーさん、裏切り者の扱いはジェトミアさんが決めることですよね」
意を決したようにジアーダが口を開いた。ジニーの表情に痛みと困惑が走った。
エルズペスはジアーダを一瞥した。この娘は私を守るために?
(中略)
「私はここにいますよ」 ジアーダは弱弱しい笑みを見せた。
「そうね」
ジニーは怒りを吐き出し、頭を冷やした。だが再びエルズペスを見る目には変わらない憤怒が燃えていた。
「拘束しなさい。ジェトミアのところへ連れて行きます」
今回はここまで
ザンダーさんは、散り際を含めて非常に美しく描かれたキャラクターのため、ニューカペナのストーリーではサブキャラ人気が高めですね!
まとめでは伝わらない魅力もあるので、是非原文も読んでみて下さい。
そして、「源」として利用されてきたジアーダとともに逃げるエルズペス(とビビアン)。
拘束された彼女の行方はまた次回最終回にて!
お楽しみに!
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