【ニューカペナの街角】第3回 ビビアンとウラブラスク【ストーリー】

はじめに

前回まで、ニューカペナへとやって来たエルズペスの物語をご紹介しました。

そして、彼女が遭遇したもう一人のプレインズウォーカー、ビビアン。

彼女もまた、エルズペスとはまったく違う方向から、ファイレクシアへの対抗策を見出していたのでした…。

 




目次

ビビアンとテゼレット

ビビアンは、文明と自然が調和する世界を探し旅に出ていました。

そして彼女が辿り着いたニューカペナは、それとは全く異なる次元。

直線と不調和でできた、人工物の大都会。

そこで、空に浮くドラゴンの演説を聞いていたビビアン。

「お前はここの者ではないな」

近づいてきた男に、ビビアンの注意が途切れた。分厚いコート、手袋、長靴、つばの広い帽子。

「貴方もね」

ビビアンは値踏みするように見つめた。

(中略)

「今夜は別のプレインズウォーカーを探していたわけではないのだが……それでも探していた相手よりはずっといい」

男は桁の端に立ち、煙と鋼の先を見つめた。

 

男はニューカペナでのビビアンのことを聞き出しつつ、情報を開示します。

この次元に繁栄をもたらしている物質、光素。

自分はある者のためにそれを探しているのだと。

そして、その者には「真の目的」があること。

それらの言葉に興味を示し始めたビビアンへと、男は笑いながら誘います。

「ならばついて来い。ウラブラスクは喜んでお前に会うだろう」

男は再び歩き出し、だがビビアンは動かなかった。

「で、貴方の名前は?」

彼は立ち止まり、そして振り返らずに答えた。

「テゼレットだ。待たせている相手がいる。だから急いだほうがいい」

 

ビビアンにとって、それは聞き覚えのある名前。

“灯争大戦”といわれる戦争で、敵側にいた者の名前。

しかし彼に同行しながら話をするうちに、テゼレットには敵意が全くないことに気づいたのでした。

歩みを進めるうちに辿り着く廃墟。

それは、ニューカペナの進化に埋没した、最初のカペナ。

 

彼は誠実さの証明とばかりに、自身の手の内を披露します。

胸に仕込まれた鈍く光る「次元橋」を。

「あれらを他次元に送り出した後、変化してしまった。腐敗した、とでも言おうか……私以外の者にとっては、極めて不快な旅になる」

「あれら?」

テゼレットは意識を現在に戻した。

「法務官だ」

「誰?」 その肩書は初耳だった。

「新ファイレクシアの指導者どもだ」

ビビアンの首筋の毛が逆立った。

 

彼女でも聞いたことのある巨悪の名前に、警戒と緊張を走らせるビビアン。

そんな彼女へと、テゼレットは薄ら笑いで告げます。

自分はエリシュ・ノーンにはめられたのだと。

そして、ノーンに約束を果たしてもらうまで、それに従わざるをえないのだと。

それらの言葉に、ビビアンは悟ったのでした。

テゼレットは、「両方の側」で動いているのだと。

「全てを説明できる時間がないのが残念だ。いつまでもここにいるわけにはいかないのだ。長いこと姿を消していたら、エリシュ・ノーンに疑われる」

ビビアンは大股で一歩踏み出し、問いただした。

「ウラブラスクについてそれ以上の説明は?」

「知っておくべきことは話そう。お前にとっては脅威でも何でもない。今の状態ならば、素手でも殺せるような相手だ」

テゼレットの瞳が、彼を取り巻く光と同じ色に輝いた。

「私を殺すか、それとも進むか。どちらだ、ビビアン・リード?」

(中略)

「いいでしょう」

ここまで来たのだ。最後まで見てやろう。

 




法務官ウラブラスク

広大な広間に横たわるのは、傷を負った巨体。

その獣ーウラブラスクは、裏切り者を見る目でテゼレットを睨みます。

息も絶え絶えなファイレクシアンへと、彼はため息とともに返答したのでした。

「むしろ真逆だ。新たな仲間を連れてきたのだよ」

「仲間だなんて言ってない」

(中略)

「お前にとって新ファイレクシアは敵だろう?」

そんな言葉では物足りない。

「テゼレット。ファイレクシアンが多元宇宙を手にしたなら大変なことになる、そう考えているのはお前だけじゃない。私も大多数の意見に同意よ」

「ならば我々は同じ側にいるということだ。敵の敵は味方というだろう」

 

ファイレクシアの法務官が、ファイレクシアへと対抗する。

その異様な構図に疑問を呈したビビアンへ、ウラブラスクは語ります。

エリシュ・ノーンは全てを支配し、ジン=ギタクシアスもヴォリンクレックスもそれに従っている。

しかし、自分は誰にも仕えない。

ノーンの支配に対し、革命を起こすのだと。

そしてその方法が知りたくば、自分たちに協力しろと。

その法務官はプレインズウォーカーへと依頼します、

信用を勝ち取るために、研究対象となる光素を自分たちの元へと持って来ることを。

ウラブラスクが嘘を言っていないとすれば、少しの光素があれば更に知ることができる……

「じゃあ、交渉成立ね」

街へ戻る長い道程を登るため、ビビアンは踵を返した。

「モウヒトツ」 ウラブラスクの言葉に彼女は足を止めた。

「光素ヲ、手ニ入レルツイデニ、探シテモライタイ人物ガ、イル。私自身デ探セバ、ヨイノダガ、コノ次元ヲ自由ニ、動ケバ、疑念ヲ向ケラレル」

「探すって誰を?」

「エルズペス。オ前タチノ同類、プレインズウォーカーダ。テゼレットガ上デ見カケタガ、既知ノ間柄ユエニ、近ヅク危険ハ冒サナカッタトイウ」

「エルズペス」 ビビアンは口に出し、その名前を記憶した。

「その人の何を求めているの?」

「ノーンハ、ソノ女ヲ怖レテイル。私ガ知ルノハソレガ全テダ」

 




プレインズウォーカー、エルズペス

情報屋と接触したビビアンは、光素とエルズペスに関しての情報を得ます。

前者は、舞台座一家が「源」と言われる光素の入手源を持っていること。

後者は、ニューカペナの街で    肉体労働に勤しんでいること。

そして、ビビアンは早々にエルズペスへと接触できたのでした。

プレインズウォーカーとしては珍しく、現地の貴顕廊一家に与し、仕事を行っている彼女。

ビビアンは光素の受け渡しが行われると言われた場所へと先回りし、それを持つエルズペスの手首を掴みます。

下手な嘘で自身の行いを説明するエルズペスは、自分なりの理由で以って動いていると口にするのでした。

「脅威が迫りつつあって、その情報を手に入れようとしているんです」

「それは間違いないし、どうやら動機は同じのようね」

エルズペスはウラブラスクの存在を全く知らないと見え、それはビビアンにとっては驚きだった。

とはいえテゼレットに遭遇しなければ自分も知ることはなかったのだが。

加えてウラブラスクは言っていた、テゼレットは「既知の間柄」ゆえにエルズペスを避けていると。

「そうそう、私はビビアン」

「エルズペス、です」

その名前はずっと前から知っていた、そう伝えるのは我慢した。

 

エルズペスを監視する貴顕廊の刺客の存在を察知し、時間がないことを悟るビビアン。

彼女はエルズペスを自分の元に来るよう誘いますが、それは即座に断られます。

彼女は自分なりに、この次元が過去に脅威を克服した歴史を知りたいのだと。

そして、わずかなやり取りでビビアンは、彼女が信用たり得ることを知ったのでした。

同時に、彼女に自分を信頼してもらうことが必要なことも。

 

ウラブラスクの元へ帰ったビビアンは、エルズペスと接触したこと、そしてこちらに引き込むのは難しいことを伝えます。

そして、今後催される祝祭”クレッシェンド”に、エルズペスが現われるであろうことも。

「クレッシェンドに罠をしかけるのは『敵対するもの』だけではないということよ」

ビビアンはきっぱりと言った。

「気ヲツケロ。テゼレットが言ウニ、ソノ男モプレインズウォーカーダ」

ビビアンもその疑念を抱いていた。

「何者かはわかるの?」

「デーモンダ」 そっけない返答だった。

 

その正体に見当をつけつつ、ビビアンは法務官へ告げます。

全てが終わり、エルズペスをここに連れてきたならば話し合おうと。

ウラブラスクがどのようにゲートウォッチに協力するのか。

そして、英雄たちがどのようにウラブラスクの革命に協力するのかを。

「新ファイレクシアニ戻ル際、私ノ身体ハ破壊サレル。ココデノ回復ハ何週間モ要シテイル。復路モソウナルダロウ。ダガ機ガ熟シタナラ、行ク」

「わかったわ」

ビビアンは洞窟から退出し、矢羽根に指を走らせつつ考えた。新ファイレクシアの容赦ない拡大を封じ込めることが本当にできるのだろうか。それを見通すのは、ほとんど不可能に思えた。

けれどまずは、エルズペスを。そしてクレッシェンドはその最高の狩り場となるだろう……ビビアンが獲物を逃したことはないのだ。

 




今回はここまで

さすがのウラブラスク。法務官の異分子。

今回のストーリーにて、法務官も一枚岩でないことが明らかになり、また一歩打倒ファイレクシアへのカードが揃いました。

そして、どうやらテゼレットも、ファイレクシアのために動いているのは不本意なようで…?

前回の神河の物語にて、「完成」されファイレクシアへ心酔したタミヨウが、テゼレットの内心に何か隠し事をしていることを察する描写がありますが。

彼も完全なファイレクシア側ではなかったということですね~。

盛 り 上 が っ て ま い り ま し た !

ということで、次回ニューカペナの祝祭、はじまる!

お楽しみに!

 

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*出典*

メインストーリー第1話:安住の地へ

サイドストーリー:自由の側