【イニストラード:真夜中の狩り】第1回 レンと七番【ストーリー】

2023年3月9日

はじめに

執筆時点、2021年9月7日。

最新セット、”イニストラード:真夜中の狩り”のカードプレビューが始まり、ストーリーの公開も順次始まりだしたころ。

普段なら、全てのストーリーが揃った上で紹介記事を書くのですが…

 

最近公開されたレンのストーリーが良すぎた!!!

 

これはもはやいち早く紹介したい!

悪役顔で損してる(※個人的な見解です)レンの正しき姿を是非知ってほしい!

というわけで、公開から間を開けない超特急のストーリー紹介!行くぞ!!

 

↓ストーリーのまとめはこちら↓

【イニストラード:真夜中の狩り】背景ストーリーまとめ

 




目次

レンと六番

イニストラードに降りたったのは、プレインズウォーカーのレン。

そして、彼女の相棒であるツリーフォーク「六番」。

鬱蒼としたケッシグの森の中で、彼女らが踏み出したのは、お互いにとって「最後となる一緒の一歩」。

レンは六番へと”別れの場所”を問いながら、その苦しみに耐えていたのでした。

何故だろうか、今回は四番と別れた時よりも更に辛かった。

(中略)

この別れがこんなにも辛いのは、六番がまだ動けるからかもしれない。まだ一緒にいられるからかもしれない。けれど、そうはしないと決めていた。

 

やがて、六番から指示された場所で止まったレンは、根を埋めると、少しずつその体を引き剥がします。

それは、彼女にとって我が家から身体を引き離すような感覚。

そのようにして完全に六番と離れた時、そのツリーフォークは美しく逞しいイニストラードの樫となったのでした。

先ほどまでと違い、返答も返らないその大木へと額を寄せると、レンは口を開きます。

「いつか」彼女は約束した。

「いつか、とても長い時が経ったら、七番が弱って八番が必要になったら、ここに戻ってくる。またこの森を歩いて、あなたを見つける。大切な友達。あなたのドングリはゆっくり育って、逞しくて強い若木になっているだろう。その子たちに提案しよう、かつてあなたに提案したように。そしてもし一本でも受け入れてくれたなら、私はこれ以上ない幸せ者だ」

 

大きな未練、そして寂しさを残しながらも、レンは次なる相棒を求め、森を歩き始めます。

頼りになるのは、木々の歌。

小さくも儚い、新たな歌い手を求めて、彼女は疲労し痛んだ足を森の奥へと進めたのでした。




テフェリーと白い魔女

噂には聞いていたイニストラードという次元を、テフェリーは初めて訪れます。

彼が身を寄せていた宿屋に飛び込んできたのは、森の中に「白い魔女」が現われたという知らせ。

テフェリーはその歓待の礼として、この脅威に対抗する助力を申し出たのでした。

 

彼は随伴した聖戦士たちと離れて散策するうち、影の中に何者かの存在を認めます。

また、それとは別に聞こえる、弱々しい女性の話し声も。

テフェリーがその声の元へと向かうと、そこにはまさに「白い魔女」と言える女性が大木に身を寄せていたのでした。

両手を広げ、敵意がないことを示しながら近づくテフェリー。

彼の接近に気づいた魔女は、警戒の表情とともに彼を睨みつけたのです。

「邪魔をしてしまい申し訳ありません。だが具合が宜しくないようですね。何か私が力を貸せることはありますか?」

「下がっていろ、魔道士」

彼女の声は折れた枝のように鋭く、だがやはり弱弱しかった。まるで心臓の半分が切り取られたかのように。

「自分の身は守れる」

 

テフェリーは彼女を傷つける意図はないことを示すと、魔女は少しずつ自身の目的を語ります。

「木を探しに来た」と。

普通のドライアドと違い、自分は木を移ろう必要があり、今も歌を辿って相棒を見つけているのだと。

彼女の口ぶりから、次元を渡ってきたのだと察しつつ、事情を聞くテフェリー。

そんな彼の意識に、聖戦士でない敵の気配が迫りました。

憔悴のレンとともにその場を離れると、テフェリーは闇へと魔法を放ちます。

実体化されたそれはすぐさま彼らを襲い、テフェリーは時間魔法でその怪物を消滅させたのでした。

 

守る過程で転んだ魔女へと手を伸ばすと、怪物の消滅と目下の安全伝えるテフェリー。

しかし彼女は、感謝とは別の感情で彼を見上げていたのです。

立ち上がりながら、彼女は苦々しく言った。

「自分の行いを見てみろ、魔道士」

テフェリーは肩越しに振り返った。道は消えていた。いや、置き換わっていた。

(中略)

「……おお」 テフェリーは弱弱しい声を出した。

「そうだな。おお」そして、声に更なる怒りを込めて彼女は続けた。

「私を呼んでいた木は失われてしまった。もうその歌は聞こえない。何てことをしてくれたんだ!」

 

歌っていた木でなくては相棒とできない。

そして、もう残された時間は少ない。

そう嘆く魔女に、テフェリーはまた助力を申し出ます。

よじれた迷宮を抜け出し、彼女の相棒を再度見つけ出す手伝いを。

さらに、彼は初めて自分の名前を口にしたのでした。

「名前を教えて頂けますか。私はテフェリーといいます。貴女は?」

彼女ははっと背筋を伸ばし、その表情の警戒心が少しだけ薄れた。

「レンと呼ばれている。魔道士、お前の名は聞いたことがある。お前の伝説はお前自身よりも遠くまで旅しているぞ」

(中略)

「良い伝説だといいのですが。私は無辜の者を傷つけるような人物ではないと貴女が信じてくれるような」

「世界を渡り歩く者に、無辜の者などいない。それでも、お前の物語のほとんどは……悪いものではない。お前は親切な人物だと多くの者が言っている。ひとまず、お前を信用しよう」




レンと七番

午後の大半を使って森を歩いたことで、テフェリーは元の道に戻ることが非常に困難であることに気づきます。

一度も方向転換していないのに、「同じ場所に戻ってきている」とはレンの言。

かつて、自分がザルファーに対して行ってしまったことを彷彿とさせる「失敗の呪文」。

「貴女も、失敗した呪文というのを見たことはあるでしょう」

「ああ。私の時は、手の中で溶けて消えるまで取り上げていた……」

テフェリーの顔を見上げると、レンの言葉が途切れた。

「どうした?」

「取り上げるとは、正確に、どのように?」

 

レンはテフェリーへと、自分の魔法観を語ります。

魔術師から発せられた魔法は、永遠にその者の名残であると。

それは、木が吸い上げる水が、雲の一部であるように。

そして彼はレンの助力により、魔法を”掴める”ようにすると、彼はそのまま自身の魔法の綻びを探すこととなったのでした。

やがてテフェリーが目にした、レンの力なしでは絶対に見つけられなかった綻び。

それを掴み、元の形へと戻したとき。

顔を上げた彼が見たのは、前の姿へと戻った道だったのです。

「お前のすぐれた行いは伝説となる。お前は歌にうたわれる価値のある者だ」

「全てがそうではありませんよ」 かつての過ちに、成功は色あせていた。

「私の元々の故郷、ザルファーは……私はそれを失ったのです」

「失った?」

「ええ。大陸ひとつを、これとよく似た魔法によって。そして私はその行いをずっと元に戻せていません」そして彼は表情を明るくした。

「ですがもし、貴女の新しい木を見つけたなら――」

「再び会うことがあるのなら」

 

と、レンの目線は背後の一点へと定められます。

そこにあったのは、テフェリーには他と変わらぬように見える若木。

レンはそれへと近づくと、口笛を吹き、耳を澄ませ…。

そして、木の中に飛び込むように消えたのでした。

 

やがて、木から飛び出すレンの頭部。

先ほどとは全く違う喜びの声で、彼女はテフェリーへと感謝を伝えたのです。

彼女と、そして「七番」からの感謝を。

「私からも感謝します。私自身のもつれを解く手助けをして頂いたのですから」

「ならば良い出会いだったということだ、魔道士。何を探してここに来たのかはわからないが、お前の無事を願おう。いつか将来、お前に力を貸そう。だが今は、七番にイニストラードの外の土を踏ませると約束した。そして私は約束を守らねばならない」

(中略)

彼女はテフェリーへと手を振り、自身を取り囲む幹に背を預けると目を閉じた。

 

やがて、木々がよけるように彼女たちの姿を隠し。

それらが元に戻った時、そのドライアドとツリーフォークは姿を消していたのでした。

テフェリーは宙へと微笑みを向けると、村へと戻る一歩を踏み出します。

危険には対処した、聖戦士たちにはそう伝えればいい。そしてそれは嘘ではない。自分が求めていたものではないかもしれないが、求めたものではない教訓と、新たな友を得た。それはただ無事でいるよりも良いものだ。特に、自らの伝説よりも遠くへ行ける者にとっては。




今回はここまで

これはいい話だ…(恍惚)

交わるはずのなかった者たちによって起こった化学反応が、それぞれに新たな発見と知識をもたらす。

んー…!こういう展開すき。

その顔から、悪役を疑われていたレン(失礼)でしたが、めっちゃイイ奴じゃあないですか!

このストーリーにて、いったんイニストラードからは退場してしまいましたが、このブロックのストーリー内でもう一度会えることを切に願いたいものです。

また、ずっとテフェリーの心残りとしてあるザルファーの件も、希望の光が見え始めた!

これはまだまだストーリーの展開は止まりませんね!

 

では、今回はこのあたりで。

次回もお楽しみに!

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*出典*

サイドストーリー第1話:もつれたもの