【霊気紛争】第3回 チャンドラとバラル【ストーリー】

2021年4月11日

はじめに

前回、領事府の作戦決定により、チャンドラの誘い出しと、ギデオン守る拠点への襲撃が行われているカラデシュ。

今回は、そんな彼らの戦いの模様をお届けします。

 

決死のギデオン

ギデオンは判断を迫られていました。

突然の機械巨人たちの襲撃。

自分がいるのは街路の底。それらへ、集中するように挟撃されている。

必要なのは高所からの視点でしたが、それらは自分だけでは得られないもの。

まずは、自分にできることに集中すること…

すると、巨大な昆虫がギデオンの肩に止まったのでした。

「やあ!」 機械を通した女性の声が伝わってきた。「君が『厚切り肉』くん、かな?」

「ええと……」

「『白猫』はそれは君の暗号名じゃないって言ってたけど、『夜の女王』様がどうしてもって言い張ってさー」

彼はその金属の昆虫の先を見た。遥か下方で、黒い肌のエルフが街路から手を振っていた。手を唇の前に挙げ、二機の金属蝶が手首に止まっていた。彼女はそれを指さし、唇を動かしていた。

「『ぴくぴく君』に話してくれる?」 彼の蝶がその声を響かせ、音を立てた。

「もしもし?」

彼女へと手を振りながら、ギデオンは恐る恐る呼びかけた。金属の昆虫が触覚を震わせた。

「もしもし、こんにちは! あたしは『シャドウブレイド』。ブレードじゃなくてブレイドね。お世話になってるよー」

ギデオンは巨大な機械人形の腰に掴まっていたが、このやり取りはすぐさま、この日起こった最も奇妙な事に位置づけられた。

「『外套くん』が今いないんで、あたしが伝達を請け負ってるわけ」

「リリアナは何処です?」 彼は蝶へと尋ねた。

「『夜の女王』」 シャドウブレイドの声が言った、断固として。

(中略)

「好奇心から聞くんですが、リリ……『夜の女王』が私達全員の暗号名を?」

「うん。すごく役に立ってくれたよ」

「それは……良いことです」

ブラックユーモアがお好きな「夜の女王」

 

機械巨人たちが押し寄せる中、歩兵の自分ができること。

ギデオンは覚悟を決めると、機械の歯車部分へと飛び込み、スーラでその核の部分を破壊したのでした。

さしもの難攻不落ギデオンも死を意識した一撃。

激突した壁に寄りかかる彼の顔を覗き込んだのは、一人のエルフの女性。

「凄い仕事だったよ、厚切り肉くん」

シャドウブレイドは笑いかけ、むき出しで傷だらけの肩を叩いた。

「今の、もう何回くらいできる?」

ギデオンは通りの先にもう三体残る機械巨人を、そして船で満ちた空を見た。

「手が回りません」

リリアナが素早く現れ、ゆっくりと彼を上から下まで見て、物憂げに片手を腰に当てた。

「……服はどうしたの」




チャンドラvsバラル

チャンドラはバラルの挑発に乗ってしまいました。

そして、苦戦していたのです。

戦いに長けたバラルにとって、怒りに任せたチャンドラの攻撃は、あまりにたやすいものだったのでした。

「お前の炎を消す程度、造作もない」ー不許可

やがてその戦いのさなか、チャンドラを守るために乱入してきたパースリー夫人は、バラルの命令により凶弾に倒れます。

白く弾ける二又の光が拠点を突いた。

パースリーさんはつまずきながら柵から離れた。アジャニは怒りを叫びながら斧を振るった飛行機械から走った稲妻は斧の刃に弾かれた。一発。二発。

「その顔だ」 バラルは笑った。その息は安物の肉と砂糖を入れ過ぎたチャイの、何週間もの独りだけの食事の匂いだった。腕が引っ張られた。

「絶望だ。化け物と、お前を闘技場で見た時と同じものだ。お前の首に刃を当てた時のな」

三本目の稲妻が世界を砕いた。

パースリーさんは引きつってよろめいた。煙色の編み髪が散った。

笑い声。「お前が殺していない者はまだ残っているか?」

 

怒り狂うチャンドラに対して、彼女を諭しながら共に戦っていたのがニッサでした。

彼女は自分の「剣」でバラルと争いつつ、地面や蔦を使ってチャンドラをフォローしていたのです。

 

そしてそれは、マナの消耗と負った傷により動けなくなったチャンドラと、ニッサの攻撃によって倒されたバラル、という形で決着を迎えます。

すぐさま現れた飛行機械から、ドビンは告げたのでした。

「バラル遵法長」 乾いた声だった。

「十二年前の貴方からの報告では、ナラー嬢と両親は放火事故で死亡したとありました。彼女が起こした不埒な騒ぎで、と。本日の貴方の言質によれば――私が一字一句違わず正確に記録してあります――貴方自身がキラン・ナラーの生命を奪い、ピア・ナラーを審理もせず投獄し、そして彼らの娘を公開処刑にかけようとした……あたかも闘技場での催しのように」

「ナラー一家は霊気窃盗だった。あの娘は鋳造所を破壊した」

「それらの罪は正当に裁かれるべきでした。しかしながら死に値するような重大犯罪とは言えません」

「馬鹿を言うな、バーン、あの娘は紅蓮術師だ!」

「彼女はいち市民です」

「化け物だ!」 彼は吼え、そしてその言葉に息を切らした。

「魔道士は全て、化け物だ」 呟きは空へ向けられた。

バーンは溜息をついて指を組み、上腕を膝に置いた。その表情は重々しく、酷い嫌気を感じさせるような哀れみで汚れていた。

「遵法長ディレン・バラル。貴方を一件の殺人及び……あるいは未だ発覚していないものが複数件存在する可能性もありますが……一件の殺人未遂、一件の超法規的拘禁、繰り返しますがこちらも余罪が明らかになるでしょう、そして隠蔽を含む複数件の公文書改竄により告訴します」

(中略)

「奴等は逃走した」 バラルの声はかすれていた。

「あのエルフと紅蓮術師は。奴等に止めを刺せ」

バーンは首を傾げた。

「それは不適当です。我々の任務は成功に終わりました。霊気拠点は奪還しました。残った分隊は移動し、反撃に備えるべきでしょう。逮捕されて私と共に来ますか、それとも貴方をここに置いて行くのであれば、あの低木と一対一で戦うことになりますが」

空気が尽きた。ここまでか。彼は横たわったまま、そびえ立つ雲を見つめた。

「忘れんぞ、バーン」

「大変結構なことです。同じ事を繰り返して言いたくはありませんので」




母と娘

ギデオンは膝をついて背中を彼女へと向けた。「乗れるか」

「そんな事しなくていい」

その声は聞いたこともない程に弱々しく、低く、生気に欠けていた。

「任せろ、チャンドラ。知っての通り私の肩は広い。乗っていけ」

喜んでそうしたがっている、彼は自分の声がそう伝わることを願った。

 

ギデオンが彼女を連れたのは、パースリー夫人のもと。

横たわる彼女に、アジャニは銀色に輝くオーラの力を流していたのでした。

アジャニは立ち上がってその椅子を示した。

「座ってくれ。おばあちゃんが君のことを心配していた」

ギデオンは椅子の前で片膝をつき、チャンドラを椅子へと下ろした。彼女はパースリー夫人の両手へ、自身の震えるそれを恐る恐る近づけた。

「パースリーさんは……?」

「おばあちゃんは良くなる、そのうちに。私がいる限り殺させはしない」

アジャニは言葉を切ってチャンドラを見つめた。

「チャンドラ、君の過ちではないよ」

彼女は顔をそむけ、離れた壁を見た。

「わ……わかってるわよ」

「自分のせいだと思い詰めることはない。そのために君にそう言いたかった」

 

しかし、チャンドラは自責の念を止めることができないのでした。

自分のせいで…いつも自分のせいで誰かが傷つく。

そして、自分はそれに対してなにも背負えてないと。

まくしたてるチャンドラに、ギデオンは静かに告げます。

「お母さんと話すんだ」と。

「チャンドラ」 母の声。楽器の弦のように高く張りつめて。

「お母さん、私――」

母は飛びつくように激しくチャンドラを抱きしめ、後ずさらせた。

「あなたをまた失うなんてできない」

その声は低く震えていた。チャンドラは泣くような、小さな声を漏らした。

彼女は身体を引いてチャンドラの目を見つめ、日焼けした頬を煤けた手で包み、額をつけた。古い悲嘆が刻まれた顔に、涙の跡があった。

「聞いてる? できないの。そんな事になったら、私が壊れてしまうから。愛してるわ」

チャンドラの目に涙が溢れた。

「お母さんが泣くなら、私だって泣いちゃうよ」

彼女は鼻をすすり、唇の端が歪んだ。

ギデオンは背後で扉を閉め、熱く痛む目を手の付け根で拭い、アジャニを一瞥した。

「夫人の具合はどうなんですか?」

彼はレオニンの感情を上手く読めたことはなかったが、アジャニは微笑んだように見えた。

「これを聞けば、どんな魔法よりも効くさ」

「ですが意識が無いのでは」

否定するように、アジャニは尾を横に振った。

「真に大切な物事は眠っていてもわかるものだよ」




今回はここまで

やだー、アジャニさんイケメン!

ゲートウォッチに参戦する白に関わるプレインズウォーカーは、優しく面倒見がいいのがイイですね。

チャンドラとバラルの戦闘シーンは本当はもっとあるのだけど、なかなか長い上にチャンドラ苛めがハンパないので大幅省略。

気になる方は以下の出典から公式記事へ~。

 

ちなみに、上の部分でギデオンに背負われたチャンドラは、ギデオンも様々な傷を背負っていることに気づきます。

最後にその心温まるシーンをご紹介して終わりにしますね。

チャンドラは顔を彼の肩に押し付け、腕に力を込めた。衣服越しの背中に暖かな吐息が途切れがちに触れた。

彼らを残し、二人は階段へ向かった。半ば下った所でチャンドラは片手を引き、熱を帯びた指でギデオンの肩をなぞった。軽く、優しく。腕毛の多くが逆立った。

「体中こんななの? こんな傷だらけなの? 拳骨の嵐を食らって負けでもしたの」

ギデオンは短く笑った。彼女のためでもあり、自分のためでもあった。そのこだまは階段を上に下に侘しく響いた。

「そうかもな」

「あんたは難攻不落だと思ってた」

「ちょっと工夫する必要があったんだ。だが私は今も厳密には……いや、難攻有落、かな」

そして下の階、治療師が詰める区画へと向かった。

「そんな言葉あるの」

「ジェイスは六冊の辞書を記憶していた筈だ。ゼヴ艦長と戻ってきたら尋ねてみるさ」

 

というわけで次回は、このジェイスがカラデシュの戦いにどうかかわっていたか、をご紹介するところから!

お楽しみに!

 

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*出典*

業火

 

Posted by オクハラデン