【コンスピラシー:王位争奪】第1回 幽霊暗殺者ケイヤの仕事【ストーリー】
はじめに
変則ドラフト用セット「コンスピラシー」の舞台となった次元、フィオーラ。
美しい景観の裏に、様々な嘘と陰謀が渦巻く次元。
そんなフィオーラ次元にも色んなストーリーがあるのですが、今回はそんな中でもこの次元へ”仕事”のためにやってきたケイヤの物語を中心にご紹介します。
彼女が初めて登場した時のストーリーをお楽しみください!
幽霊殺しへの依頼
酒場「スズメバチの巣」。
後ろ暗い人物たちが集まるその場所で紅茶を口にしていたのは、「幽霊殺し」の異名を持つ女性ケイヤ。
彼女はそこで仕事の依頼者を待っていたのでした。
一時間以上の待ちの末、ようやく臣下の者によって彼女は依頼者の元へと案内されます。
狭い部屋の中で彼女を待っていた人物。まあまあの影響力を持つ貴族一家の三男。
上質な衣服をまとい、指には印章指輪と豪奢な宝石たち。
「レヴァリー様でいらっしゃいますね」
彼女は適切な敬意を込めて言った。
(中略)
「それでは」 彼よりも先に、ケイヤは口を開いた。
「私はどういったお役に立てるのでしょう?」
今回の依頼者、エミリオ・レヴァリーは居心地悪そうに語り始めます。
母の死により、土地と邸宅を相続したこと。
しかし、それらの改築を行おうとすると、不可解な事象によって阻まれること。
そして…それらは母の死後から現われた現象であること。
レヴァリーは、母がこの家に執着していた、と吐き捨てるように言います。
彼女の死とともに、今度は自分の番だ、あの家がほしい、とも。
「ご自身でその幽霊を見たことはおありですか?」
「ない。信頼できる報告を受け取って以来、私はあの家に足を踏み入れてはいない。明確な理由から」
「明確な?」
「私は侵入者、であろう? 老いぼれた意地悪婆が財産に固執しているとしたら、誰よりも私を排除したいのは確かだ」
ケイヤは、この豪奢な男性がなぜ僻地の家にこだわるのか、その点に何かを感じつつ、この家の図面を要求します。
そして、図面を見るなど泥棒のやることだ、という貴族の指摘を躱しつつ、明日の夜これを実行することを約束しました。
加えて、書簡で伝えた報酬は半額を前払いで払うようにと。
「ああ、そうだな」 あからさまな嫌悪とともにレヴァリーは言った。
彼は机の下から鞄を取り出し、ケイヤは中を見ずにそれを受け取った。この男に自分を騙すような図太さは無い。
「私が間違っていた。この値段を思うに、君は泥棒ではない。払わせ屋だ」
「それを言うなら祓い屋です、閣下」
満面の笑みとともにケイヤは言った。
「霊をはらう、のですから。正しくは」
幽霊との戦い
黄昏と闇の狭間の時間。
暗闇の邸宅へと侵入したケイヤは、鬼火をかざしながら見えざる者へと呼びかけます。
果たして、彼女の挑発に乗せられる形で、怒り狂った幽霊が姿を表しました。
上品な老女の姿に見合わぬ、大口を開けた幽霊が。
ケイヤは自身を幽体化させると、頭に叩き込んだ図面を元に、部屋をすり抜
けながら霊との戦いを始めます。
「お母様」が前方の床から現れ、ケイヤは左に身を投げた。壁の向こう、図面では寝室の類と思われた中へ。そこは改装が予定されていたが、徹底的なものではなく――
その寝室に床はなかった。突き出た梁に囲まれた穴が開いているだけだった。その端を越える直前、作りかけの螺旋階段をケイヤは垣間見た。
これは図面にはなかった。
秘密! どうして貴族っていつも秘密を持っていようとするの?
ケイヤは自身の手を死の領域へと移動させると、幽霊の身体をつかみ、落下の危機を脱します。
暴れる霊に連れられたのは、それ自身が現われた部屋の中。
窓や家具が破壊され、それらの破片は床へと散らばり、片隅には小さな瓦礫…。
それを見た瞬間、ケイヤは全てを悟ったのでした。
間もなく壁から襲い来る母親の霊。
「待ちなさい!」 ケイヤはそう言って、部屋の隅へじりじりと向かった。
多くの霊は理に適う怒りや悲嘆によって歪みきっている、だがあるいは……
幽霊へと理解を叫んだケイヤは、ダガーを床板へと突き立てます。
一枚ずつはがした先にあったのは、老女のしなびた屍。
“先ほどまで自分を襲い来ていた幽霊によく似た"死体。
その時の幽霊の叫びは、怒りではなく悲嘆に聞こえたのでした。
ケイヤは脇に避けたものを見た。男物の装身具、指輪とカフスボタン。ぼろぼろに引き裂かれた男物のシャツ。同じく裂かれた、気取った様子の貴人の肖像画。そしてその装身具の中には……
印章指輪。見覚えのある印章指輪。
「あいつ――」
然るべき報い
真夜中のレヴァリー宅。
遅い時間にも関わらず、レヴァリーは自身で玄関へと姿を現したのでした。
「終わったのか?」 尋ねるその両目には強欲がぎらついていた。
「レヴァリー様、今夜よりお母様は安らかな眠りにつかれるでしょう」
「連れて行ってくれ。あの家を見たい」
「私を信頼して下さったのではありませんか?」
憤りを隠さずにケイヤは言った。
「君は価値ある奉仕をしてくれた。支払をする前に君の仕事を確かめたい」
ケイヤは、依頼人とともに乗り物へと乗ると、つい先ほどまでいた屋敷へと戻ります。
そして、取り巻きを乗り物へ残し、レヴァリーはケイヤを案内させたのでした。
彼女は、母の幽霊と遭遇した場所へと誘います。
例の、壊れ果てた部屋へと。
レヴァリーは部屋の隅の剝がされた床板を目にし、激憤とともにケイヤを糾弾します。
しかし、ケイヤは整然とこの言葉を躱したのでした。
「親殺しから求めるものはありません」 ケイヤは言って、彼の肩の向こうへと頷いた。
「貴方が憂うべき存在は、私ではないでしょう」
「お母様」が現れた。悲嘆に満ち、死を越えて、強情な息子の背後へと。レヴァリーは振り返り、ケイヤは耳を塞いだ。
「馬鹿な。嫌だ、悪かった、母さん――」
ケイヤが床に落ちた角灯を吹き消すと、残ったのは貴族の醜い命乞いのみ。
息子の姿をみとめ、ゆるやかに近づく母の霊と、暗殺者に倍の報酬額を提示してわめく男。
ケイヤは契約の不履行を告げると、支払いの半額は必要ないと言います。
そして、怒りのままに突進してきた男を幽体化して躱すと、そのまま静かに閉じた扉を通り抜けたのでした。
「頼む――」
そして泣き叫ぶ母の霊が、その針のような歯と鋭い鉤爪で迫った。
(中略)
背後で、エミリオ・レヴァリーの叫びが上がった。そしてケイヤが階段を降り、崩壊した玄関を通り、館の分厚い木製扉をくぐり、その先の夜に消えてもまだ叫び続けていた。
今回はここまで
んーっ!
ケイヤというキャラクター、能力、仕事、そして考えをちゃんと示した良ストーリー!
ちゃんと懲悪の物語になっているのも良き!ですね。
とりあえずコンスピラシーの物語を語るうえで、ケイヤの「らしさ」を伝えるこのストーリーは話さざるを得ませんが、彼女がフィオーラ次元と深くかかわるのは、もう少し後のお話になります。
次回はそちらをご紹介します!
ぜひお楽しみに!
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