【団結のドミナリア】第5回 アジャニの裏切り、ヤヤの最期【ストーリー】

2022年9月4日

はじめに

前回までで、プレインズウォーカーやジョダーの活躍により、ドミナリア中の種族の協力を得た一向。

彼らはシヴにて、ついにファイレクシアたちと相対することとなります。

しかし、この英雄たちの連合にも、裏切り者はいるのでした…。

団結のドミナリア、最終章です!!




目次

裏切り者の正体

カーンは、ジョイラやテフェリーとともに、マナ・リグにいたのでした。

彼が特定できたのは、酒杯の起動方法。

彼が特定できなかったのは、新連合のスパイの正体。

敵の手の内が分からない以上、カーンは酒杯の起動方法を誰にも教えられなかったのです。

すると、そこに鳴り響く警報。

同時に現われるファイレクシアの軍勢。

そして空を駆けるウェザーライトは、カーンの安堵に反し完成させられていたのでした。

 

まるで怪物の輸送機のように、敵軍を降下させていくウェザーライト。

やがて、甲板から下りる人影が一人。

その人物は口元を歪め、にやりとした笑みをカーンに向けた。

「ずいぶんと久しぶりだねえ」

ありえない――だが間違いない。アーテイ。

(中略)

「カーン、あの方はお前を特別だと思っているかもしれないが」

アーテイが言った。

「私は本当のところを知っている。作られたものは何であろうと分解することができると」

アーテイは微笑み、四つの手で二重の弧を宙に描いた。

 

アーテイの放った魔法は、カーンが念のためかけていた防護魔法すらも無視し、彼の動きを止めたのでした。

二又の腕による、アーテイの掌握。

彼の及ぼす圧力は、カーンの頭に死をよぎらせるほどのもの。

カーンは忍び寄る最期を前にし、ひとつの固い思いを抱きます。

自分は死んでも、敵に酒杯を渡すことだけはできない。

自身の魔法で、遠くの酒杯を金属で覆い、壊せないよう封印するカーン。

…とその瞬間。

黄金の大帆船から飛び降りたアジャニは、アーテイの背へと斧の一撃を与えたのでした。

アジャニは牙をむき出しにし、敬礼するように斧を下げた。

「共に戦うために戻ってきました」

強烈な圧力にきしみながら、カーンは頭をもたげた。もはや戦える状態ではないが、それができるだけでも嬉しかった。

「感謝致します。ジョイラの工房を守らねばなりません」

(中略)

自分たちを見下ろす制御室をカーンは顎で示した。

「酒杯です。酒杯がジョイラの工房にあります」

獰猛なうなり声を返答に残し、アジャニは背を向けてファイレクシア兵へと襲いかかった。

 

アジャニと同時に戦線に合流したダニサ、ラーダ、そしてヤヤ。

カーンがヤヤに酒杯の確保と、それを持っての逃亡を指示する中、遠くに立ち上がる巨体の影。

それは、巨大機械を下半身に据え、マナ・リグと同等の高さで現われたシェオルドレッドでした。

法務官、そして複数体のファイレクシアン・ドレッドノートがマナ・リグを襲い。

その光景は、歴戦の英雄たちの希望を打ち砕く中。

しかしジョイラはついにマナ・リグの起動に成功し、その巨躯の優雅な動きはファイレクシアたちを蹴散らしたのです。

時を同じくして現われた、追加の戦力…ジョダーやデアリガズは、英雄たちに一縷の光をもたらしたのでした。

絶望的なまでの戦況は、打開できたと。

工房から巨大な金属の塊を持ち出したヤヤ。

彼女は、こんな重いものを持ってプレインズウォークなどできないとカーンに不満を垂れます。

カーンはひとつうなずくと、酒杯を覆う金属の封印を解いたのでした。

「ようやくか」

アジャニの声が歪んだように聞こえた。血に飢えたうなり声ではなく……機械のような。

カーンは友へと向き直った。

アジャニは苦痛に顔をしかめ、歯をむき出しにした。そして耳を低くし、無傷の目を固く閉じた。毛皮の下を蛆虫が這うかのように、皮膚が波打った。

信じられないというようにヤヤはうめいた。テフェリーは踏み出した。まさかアジャニが――ありえない――

アジャニは無傷の目を恐怖に見開いた。

やめろ、やめろ、やめろ。

彼は拒むようにかぶりを振り、くぐもった呟きを発して自身の腕を強く掴んだ。まるで皮膚の下に走るファイレクシアのケーブルに抵抗し、それを出させまいとするかのように。だがそれらは彼を貪り食い、筋肉と毛皮を引き裂き、彼自身の下に組み込まれていたファイレクシアの筋組織を露わにした。滑らかで、密な。

アジャニは完成されていたのだ。彼こそがスパイ、裏切り者だったのだ。

彼はシェオルドレッドに連合を売ったのだ。




ヤヤの最期

その光景に呆然としながらも、工房へ逃げ込もうとするヤヤ。

しかし、アジャニの斧は無情にもその背中に振り下ろされたのでした。

身体の動くままに、アジャニとヤヤの間に飛び込むカーン。

カーンに振り下ろされた武器は、まるで想定と異なるままに、彼の身体に深く突き刺さったのです。

引き抜くことすらできず戸惑うカーンを尻目に、横を通り過ぎるアジャニ。

「私を――殺すの――かい」 ヤヤが苦しい声を発した。

「その前にあんたを――」

「アア」

アジャニは簡素に言い、ヤヤを片手で宙へと持ち上げた。

「お前は死ヌ」

ヤヤは咳き込んだ

「かもね。けれど、独りじゃ、死なないよ」

ヤヤの身体から炎が溢れ出た――白と緋色の業火。アジャニはうなり声をあげて後ずさり、毛皮が焦げて皮膚の下の黒化したワイヤーとケーブルを露わにした。大気には焦げた油の匂いが漂った。傷ついた手で、彼はヤヤをマナ・リグから放り投げた。

テフェリーは声を失った。ジョダーは弱弱しい悲鳴をあげた。

 

アジャニは酒杯を握りつぶすと、カーンを掌握しました。

やがてマナ・リグへと降り立ったシェオルドレッドは、プレインズウォーカーたちの元へと歩み寄ります。

角の兜を外し、どこかから奪ったであろう女性の顔で。

彼女は小さな白い手をカーンの胸に置いた。

「マナ・リグハ私ノモノ。父上ハ私ノモノ。ドミナリアハ侵略ニ対シ、トテモ脆イ。我ラガ民ノ驚嘆ハ父上ノ驚嘆トナルデショウ。我ラノ美ハ父上ノ美トナルデショウ。真実ハタダヒトツ。進化ノ次ナル段階ガ完成スルノデス」

『真実ハタダヒトツ』 戦場の至る所でファイレクシア兵が呟いた。

(中略)

「計画ガゴザイマス。カーン様ノタメノ――ドミナリアノタメノ計画ガ。アラユル次元ノタメノ計画が」

「おあいにくさま」

マナ・リグの装置で増幅され、ジョイラの声が轟いた。

「お前たちの欲しいものは手に入らないわよ」

 

ジョイラは、苦渋のままにマナ・リグの自爆装置を起動したのでした。

彼女が指示を飛ばし、ジョダーがポータルで兵士たちを輸送します。

そして全てを避難させた後、ジョダーは無念の視線をカーンに向け、ポータルを抜けたのでした。

不気味な静けさの中、シェオルドレッドの合図で展開される光球。

まるでただのアーティファクトかのように持ち去られるカーンの身体。

次元橋を越えたその先にて。

カーンは、もう一柱の法務官、エリシュ・ノーンと対峙したのです。

足も動かぬ中、彼の目に留まる、白磁の土に生えた一本の若木。

ノーンは彼の顎を掴み、その視線を自分へと向けさせた。彼女は囁きかけた。

「なんと久しぶりでありましょう。我々の誰もが寂しく思っておりました。父様、来たるものの栄光を分かち合おうではありませんか」

(中略)

この地獄にて、怪物に囲まれながらも、彼はその木にどこか柔らかさを感じずにはいられなかった。生きているもの。生き延びるために、あらゆる不利と戦っている。

「それは?」

ノーンは彼を見下ろし、すらりと並ぶ歯が偽りの笑みの中で嘲った。

「大いなる行いの始まりです、父様。全ての始まりです」




テフェリーの決意

夜の砂漠にて。

テフェリーは生存者の救命を、ジョイラは残る者の救出を指示し。

二人とも疲労しきる中。

ジョダーは一人、膝をつき戦場を見つめていたのでした。

彼の手には、カーンの首飾りと。

ヤヤの髪のひと房。

「来てください」

テフェリーは彼の隣に屈みこんだ。

「食べて、眠らなければいけません」

ジョダーは占術装置の裏側をロケットのように開き、ヤヤの髪を収めた。

「これが別れだとは。再会したばかりだったんだ。ヤヤを失うなんて、こんなところで。若い頃からの付き合いだったけど、一緒に過ごした時間は全然足りない」

テフェリーは自らの内に広大な虚無を感じた。心を痛めるだけの気力すら残っていなかった。

 

テフェリーの提案により、築かれるヤヤの記念碑。

ジョダーはその思い出とともに涙に暮れ。

ジョイラが彼の肩に手をのせる中。

テフェリーは何も言わず。

しかし、彼女との思い出は絶対に忘れられないものだと分かっていたのでした。

仲間を悼む者たちを邪魔しないように立つサヒーリ。

テフェリーは覚悟を決めると、彼女とともにその場を立ち去ります。

そして、ウルザの塔の広間にて。

サヒーリは酒杯の完璧な複製とともに、テフェリーへと報告しました。

カーンが明らかにした、「どのように」酒杯を起動するかの方法は特定できなかったが。

それが「いつ」使われたのかは特定できたと。

ここからはテフェリーの役割だった。その「いつ」に戻り、カーンが既に特定していた内容――「どのように」を知る。どのように、酒杯は起動されたのか。

「テフェリーさん、幸運をお祈りします」

サヒーリが言った。

「私たち全員のために」

彼はつとめて力を抜いた。茶色の小鳥がアーチの窓にとまり、そして砂を浴びるために床へと降りた。カーンはこの種を、習性を知っていたのだろう。

故郷を救うため、多元宇宙を救うため、テフェリーは決してそれをしないという誓いを破る――時そのものを越える。




今回はここまで

嗚呼…

あああぁ…( ;∀;)

初見で読んだ時、あまりにつらかった。

アジャニの裏切りもそうだけど、ヤヤの死が…。

おばあちゃん…いいキャラだったのに…。

またそれ専用に用意されたイラストがまた切なくてよォ…。

お通夜です。お通夜。

マジックのストーリー、善人ばかり死んだり闇堕ちしたりするの…ドウシテナノ…。

光の消滅

ーヤヤは死にたくはなかったが、何かのために死ぬとしたら、ドミナリアのために死にたかった。

 

攫われたカーンはファイレクシアの懐へと招かれるわけですが…どどどどうなるの!?

そして、なんとテフェリーが次のエキスパンションへのストーリーをきれいに繋いでくれました!

ゴーゴスの酒杯が「いつ」起動されたのか。

そう!それはMTGの歴史上の出来事としても語られる…。

兄弟戦争!

…の最後の一幕ですね。

↑この瞬間

なるほど、こうしてストーリーが繋がって、兄弟戦争を振り返ることに物語的な整合性を作ったわけだ。

これは一本とられましたね。

公式が「今までとは異なる視点から」兄弟戦争を描く、と言っていたのも納得です。

まさかそれがテフェリーの目線になるとは…。

さてはて、酒杯の起動まで見届けるであろうテフェリーは、兄弟戦争に変に絡むことで歴史的事実を改変するなどはしないでしょうが。

次の兄弟戦争はテフェリーの介入によりどのように記されるのでしょうか?

次回のストーリーもめちゃくちゃ楽しみですね!

本ブログでは、次から団結のドミナリアのサイドストーリーを何本かご紹介!

お楽しみに!

 

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*出典*

メインストーリー第5話:風の中の囁き