【エルドレインの王権】第8回 ケンリス、死す…?

2021年2月7日

目次

はじめに

前回、ついに長年ガラクを苦しめていた呪いが解け、狩人ガラクがその姿を取り戻したのでした。

そして差し迫る崇王ケンリスの危機。

ウィルとローアンは、ガラクとともに、ケンリスを追うことになるのですが…。

 

記事を読むにあたって

※この記事は、公式の物語概要やキャラ紹介の情報をかき集めて作ったものです。

もし間違いや追加情報があった場合は、ぜひ出典を添えてコメント欄に記載をお願いします!!

楽しく紹介することを目指してるので、小さな祖語は許して…!(小声)

 

井戸端の邂逅

ローアンは、岸から上がるウィルを引き揚げながら、隣のガラクの変化にも気づきました。

安心し頬を緩める二人に、ガラクが低く伝えます。

「俺はオーコを狩る。来るか?」

ウィルとローアンの覚悟は、とっくに決まっていました。

「俺は簡単に追える。夜通し走れる。お前達はついて来られないだろうが、馬に力を与えよう」

 

ガラクの力により、馬の蹄は地に着くことなく滑るように走りました。

普通の旅なら何日、何週間という距離です。

一行は、恐ろしい速さで猟団に追いついたのでした。

 

たどり着いたのは、草生した古井戸。

そのそばに追いやられているのは、ケンリスが変身させられた大鹿。

そして、その退路をふさぐかのように円になるエルフたち。

 

ただ、ウィルには他にも気になるものが見えていました。

古井戸の桶には、人間の頭蓋骨と、それを突き刺す一本の剣。

しかもその剣は…探索する獣より与えられる剣ではありませんか。

 

その時、井戸からは煙が立ち上り、女性の姿を取ります。

頭はなく、ただ頭があるべき所に煙が渦巻いていました。

一羽の鴉が声を上げ、井戸の縁へと着地し、大鹿に対峙しました。

※画像はイメージです。

 

そして恐ろしいしわがれ声で言いました。

 

「人殺し」

 

大鹿は頭を下げて突進し、枝角を振るってその煙を散らしました。

鴉は一度鳴き、硬直したかと思うと、瞬く間にその羽根が干からびて粉々に砕け、肉に蛆がたかり、骨が崩れ、井戸へ落ちていきました。

ここは僻境の中でも、魔女の狩場だったのです。

(いいぞ!スタッツ的には勝てる!!)

 

ウィルは我に返ってローアンの腕を叩きました。

不可解な点は多いですが、今は父を助けるのが先でしょう。

ローアンは駆け出し、全員に聞こえるような大声で呼びかけました。

 

「止まって! この大鹿は崇王アルジェナス・ケンリスが魔法によって変身した姿です! もし殺したなら、あなたがたは王国との戦争を始めることになります!」

「遠い昔に始めるべきだった戦争だ!」

 

イリドンという名の若いエルフが進み出て、弓を構えました。

ですがその矢は炎に包まれ、怒れる風に灰が消し飛びました。

アヤーラの従姉妹という話であった、イルフラという名のエルフが叫びました。

 

「引きなさい、愚か者! この二人は崇王の子供たちです。彼らを害したなら、真に戦となります。気付いていないのですか、ここにいるのは私たちだけではないことを」

※ローアンは稲妻魔法専門のため、上で矢を焼いたのこのエルフ

 

ウィルがローアンの腕をつき、空を指さしました。

そこには何体ものグリフィンの群れが。

そのほとんどを占めるアーデンベイルのグリフィンには、リンデン女王とその騎士たち。

一体だけいるヴァントレスのグリフィンには、オーコによって鷲にされていたはずのエローウェンの姿があったのでした。

(移動手段がグリフィンってのがファンタジーっぽくてええですねぇ…フレイバーテキストも注目)

 



井戸端の戦争

リンデン女王はグリフィンより降り立つと、エルフに向かって言います。

 

「イルフラさん、ごきげんよう。私たちは、平和裏に私たちのものを回収しに参りました」

 

血気盛んなイリドンとは違い、イルフラは冷静でした。

 

「冬至の狩猟はひとつの命が得られてその血が大地と天へ捧げられるまで終えてはなりません。お二人を連れてここから去るべきではありませんか」

「この大鹿はあなたがたが狩って良いものではありません。伝承魔道士いわく、それは崇王アルジェナス・ケンリスが魔法にて変身させられた姿です。もしあなたがたが彼を殺したなら、私は僻境の森すべてを焼き尽くすまで決して立ち止まらないことを約束します」

 

イルフラは、静かなる怒りの視線を横のエローウェンに向けました。

一方の伝承魔道士は、飄々とした様子。

 

「どうやってここに?」

 

ローアンが叫びました。

 

「いい感じにアーデンベイルへ間に合って、女王に警告できたんだよ。だからグリフィンの騎士団を集めて僻境へ飛んで来られた。鷲があんなに速く飛べるなんて思わなかったよ。もう二度とできないのが残念だけどね!」

 

エローウェンの冗談めいた言葉に、イルフラはいらだちを隠せない様子です。

 

「あんたたちと評議会はある道化の餌食になったんだ。あんたたちの狩りについて言い争いはしない。けど私たち全員のために、その鹿を私たちに譲って平和裏に去ってくれないかな」

 

 

※"ある道化"

 

再びイリドンが飛び出し、弓を引きました。

しかし、身構えていたローアンがジャベリンを投げ、それが命中すると、エルフは感電し倒れこみました。

図らずも、戦乱の火ぶたが切って落とされたのでした。

 

エルフに切りかかるアーデンベイルの騎士。

槍で反撃するエルフ。

グリフィンの背から叫びリンデン。

角笛を吹いて命令するイルフラ。

そしてその全ての上で、耳障りな声で勝利の声を上げる一羽の鴉。

 

「僕たちはどうすればいい? これこそオーコが企んだ争いだ」

「氷と稲妻よ!」

 

ウィルは表情を引き締めました。この戦いを止めるチャンスは一度しかありません。

冷気を吸い、すべてのエネルギーを両手に。

ウィルはかつてないほど大きな氷の網の魔法を放ちました。

組み合わせるように、ローアンの放った稲妻が。

その衝撃に、騎士が、エルフが、リンデンやイルフラも動きを止めたのでした。

 

静止した戦い。

 

しかしその時。

立ち上がったアヤーラ女王は、目にも止まらぬ速さで弓を引くと、大鹿に矢を放ちました。

空気を切り裂いた矢は、まったく狙いを外すことなく、大鹿の胸に深々と刺さったのでした。

白い息をひとつ吐いて、井戸へもたれかかるように倒れた大鹿。

アヤーラ女王は勝ち誇り、全員に見せつけるように弓を掲げたのでした。