【イクサラン:失われし洞窟】第3回 マルコムと帝王マイコイド【ストーリー】
はじめに
前々回は太陽帝国、前回は薄暮の軍団のストーリーを紹介してきました。
そして最後となる勢力は、海賊!
海賊集団「鉄面連合」に所属するマルコムは、かつては船長ヴラスカとともに不滅の太陽を目指したセイレーンでした。
そんな彼もファイレクシア戦争終結後は落ち着いた生活を送っていたのですが…。
ひとつの知らせから、マルコムの物語は始まります。
鉱山を襲う悪夢
陽光湾近くの密林に現われたのは、ただれのように生えたキノコに覆われた死体。
亡くなった彼が持っていたという手紙は、下の町が攻撃されていることを警告するものでした。
自身の配下であったその者ーランクの死体から、マルコムはひとつの理解を得ます。
所有する鉱山の納入が遅れ、経済に影響を及ぼしている原因が、この「攻撃」にあるのではないかということに。
旧友であるゴブリン、ブリーチェスを含む幾名かの仲間とともに鉱山へ辿り着いたマルコムは、そこがまるで無人のようになっていることに気づいたのでした。
同時に、何かから逃げるように、一つを除いたリフトが全て上がっていることにも。
そして、彼はそこに一言だけ文字が書かれていることを認めたのです。
「下」
両腕の羽毛がぞわりと波立った。もしこれが罠なら、自分たちはまっすぐにそこへ踏み込んでいくということになる。けれどひとつの町の住人が全員消えて、何が起こったのかを知る方法が他にあるだろうか?
(中略)
感情のわからない表情をゴブリンらしい顔に浮かべながら、ブリーチェスは虚空の端に立っていた。
「した?」彼は尋ねた。
「ああ」マルコムはそう言い、伝言を見つめた。
「下だ」
昇降機にて地下まで降ったマルコム達が感じたのは、カビと腐敗の悪臭とランクと同様の死体。
そして菌類が弾け出たような肉体でさまよう者。
それは人型の者だけでなく、ラプトルの生きた死体も同じように地下を歩き回っていたのでした。
襲い来る怪物たちと、それにより傷を負う仲間たち。
マルコムはセイレーンの歌声によってそれらを幻惑の中に閉じ込めつつ、片端から切り裂いていったのです。
やがて全てを仕留め終わり、仲間たちの夢から醒めゆくころ。
マルコムが見たのは、負傷した仲間たちの傷が、奇妙な黒い、同心円状の模様として広がっていた光景でした。
「大丈夫か?」マルコムは尋ねた。
「具合は悪くない」
異口同音ではないものの、彼らはそれぞれ答えた。
マルコムは目を狭めた。嫌な感じだった。彼らをここに置いていくべきか、あるいは上へ送り返すべきか。
だが下の町の住人たちが失踪した謎を解かなくてはならない。あんな恐竜たちにまた遭遇するのなら戦力は必要、それに彼らの言う通り、本当に大丈夫なのかもしれない。
菌の暴走
昇降機が深みへと降っていく中、先に負傷した者たちの傷はその輪を広げ、不気味な緑色の発光をし始めたのでした。
突然止まる昇降機。
下降を妨げているキノコを切り落とさせると、それは緑色の胞子の雲となって立ち込めたのです。
負傷している仲間の、傷の輝きと似ているような色で。
突如として傷を負った海賊は、無傷の仲間をその雲の中へと押し込みます。
驚きの叫びは咳と嘔吐へ変化し、手負いの海賊は濁った緑色の瞳で他の者たちへと振り返ったのでした。
危険を察知し、昇降機のロープを辿り上へと逃れるマルコムとブリーチェス。
ゴブリンは叫んだ。
「にげる?」
だがその声に、感染した者たちが汚れた緑色の瞳で一斉に見上げた。
「綱を切れ」
ぞっとしながらマルコムは言った。
「急げ」
昇降機を繋ぐ太いロープを切るのに手間取る中、虚ろな目で綱を登り始める感染者たち。
筋肉の燃えるような痛みのすえに、すんでのところでちぎれた綱は、昇降機に残った海賊たちを奈落の底へと突き落したのでした。
連れ添ってきた仲間を全て失い、ついに二人となってしまったマルコムとブリーチェス。
地上へ引き揚げるか、原因究明のために下へと降るか。
判断に迷うマルコムの視界の端に映ったのは、急速に壁を登りゆく菌類と、それによって描かれた文字だったのです。
「安全」最初の単語はそう読めた。そして「下」。
これは停戦の申し出か、それとも罠か? マルコムにはわからなかった。だが少なくとも相手が知性を持っているということはわかった。そうであれば、交渉は不可能ではないかもしれない。下の町の住人たちはこの下のどこかで本当に生きていて、助けられるかもしれない。
希望とは何よりも危険な武器。マルコムは刃のように鋭いその武器が、肋骨の間を滑り込んで心臓に迫るのを感じた。
キノコの王
昇降機を失ったため、一つずつ階層を下りてゆくマルコム。
永遠とも思える降下の時間が経ったのち、彼らはようやく下層へと降り立ちます。
進んだトンネルを抜けた先にて遭遇したのは、街一つが入りそうなほどの巨大な洞窟。
息を呑むほど美しい菌類の森を抜けた先にて、彼らはカビに覆われた人間たちに出会ったのでした。
そのうちの一人が踏み出します。
それは元々下の町の町長であった、ザビエル・サルという男。
「この地へようこそ、我々は歓迎しよう」
ザビエルの言葉は抑揚がなかった。
「『我々』って?」
マルコムは尋ねた。
「我々は帝王マイコイド」
ザビエルが身振りで背後を示すと、不意にひとつの巨大な人影が数十体もの輝く菌類に照らされた。
網の中にぶら下がった帝王マイコイドは、悪意のある興味とともに二人を見つめます。
そして戦慄するセイレーンたちへ、説明を始めたのでした。
下の町の住人たちはみな「組み込まれた」。
帝王は彼らを知るために、全員を取り込んだのだと。
やがて、その生物は目的を語ります。
「我々が求めるのは……太陽だ」
ザビエルが言った。
「太陽だ」
感染した人々がそれを繰り返した。
「我々は長い間、チミルの光から拒まれてきた」ザビエルは続けた。
「お前たちの上には別の太陽がある。それを手に入れる」
単純に太陽を手にすることはできない。マルコムはそう思ったが、帝王マイコイドの発言が示唆するものを最大限に理解してそれを口には出さなかった。
(中略)
「じれったい話はもうよい」
ザビエルを操り人形のように用いてそれは言った。
「お前たちを同化し、地表に昇り、太陽を得る」
マルコムは高速で計算を巡らせると、魔法の歌声を発するとともにブリーチェスを連れて出口へと抜け出します。
トンネルの奥まで歌い続けるも、二人に迫る来る菌糸。
やがてそのトンネルは崖となって途切れ。
眼下の遥かなる海と都市には、川守りたちが見えたのでした。
魔法の声で警鐘を鳴らすマルコム。
すぐさまマーフォークの戦士が彼の前に現われ、事情を問うたのでした。
「私はニカンチル。一体いかなる邪悪を我らの岸に連れて来た?」
「帝王マイコイドって名乗ってたよ。人をキノコに変えちまうんだ」
背後でヒレを揺らし、ニカンチルはその言葉を考え込んだ。
「それは太陽帝国が言っていた危険と同じものに違いない。あの黄金の扉をくぐって行った者たちに警告しなければ。そちらの想定よりも近くまで来ていると」
彼らに警告することが扉をくぐっての脱出を意味するなら、マルコムは喜んで協力するつもりだった。
「来い」彼はブリーチェスへと言った。
「警報を鳴らしに行くぞ」
今回はここまで
ホラーすぎぃ!!!
今回のイクサランのストーリーは、地下の巨大都市だったり、えも言われぬ現地民だったりと不気味なのですが、このマルコムのストーリーがぶっちぎりでコエーし、なんやったらグロテスクです。
菌類に侵される定命っていう展開はキモチワルイヨ…。
操られていた者たちの主犯となったのは、マイコイドというキノコの王様。
それが言う「太陽を手に入れる」とは…?
そして、例によってマルコム達も、クイントやヴィトたちのいる謎の地下帝国へと合流しようとしています。
またも多数の勢力が入り混じる展開となったイクサランの物語の行く先は…!?
次回もお楽しみに!
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